• 新しいお知らせ
    ×
公開日: 2019/2/18(月)

【社会課題解決とドネーション】寄付市場が拡大するためにできること

公開日: 2019/2/18(月)
公開日: 2019/2/18(月)

【社会課題解決とドネーション】寄付市場が拡大するためにできること

公開日: 2019/2/18(月)

ソーシャルセクターにおいて、寄付は大きな収入源のひとつ。しかし日本では寄付獲得に大きく成功している団体はほとんどない。寄付拡大に注力しているNPOやそれをサポートする団体の5名に集まっていただき、「ドネーション」をテーマに語ってもらった。

 

 

(写真左から)

  • 今井紀明さん(認定NPO法人D×P 理事長)
  • 鈴木美穂さん(認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事)
  • 米良はるかさん(READYFOR株式会社 代表取締役CEO)
  • 小畠瑞代さん(認定NPO法人かものはしプロジェクト 広報ファンドレイジング/経営管理ディレクター)
  • モデレーター:下垣圭介さん(gooddo株式会社 代表取締役)

 

※本記事は後編です。前編はこちら。

“寄付しない”の理由

 今井紀明  これまで(前編)の話を聞きながら考えていたんですが、そもそも寄付されるためには、信頼が必要ですよね。逆に言えば、寄付されないことの理由として、NPOという業態自体の信頼性がまだまだ低いんじゃないかというのが実感としてあります。

 

 米良はるか  たしかに、NPOに対して全く信頼してないという人と、信頼感を持って寄付している人とで、二分されますよね。

 

 今井  この会場にいる人だと、寄付したことがある人はどのくらいいますか?

 

(編集部注:4割くらいの手が上がる)

 

 今井  R-SICという社会問題に触れるカンファレンスに来ている人の6割が「寄付をしたことがない」というは興味深いですね。寄付したことがない理由を知りたい。

 

以前に僕のTwitterのフォロワー約1万人にも同様のアンケートを取ったことがあるんですが、「寄付したことがない」人がやっぱり半分くらいだった。あくまで推測ですが、その理由はNPOの信頼性も大きいのかなと。NPOはまだまだ多くの人にとっては遠い存在なんだと痛感します。

 

 下垣圭介  誰かこの会場で「寄付したことがない理由」を話してくれる人とかいますか?

 

 

 参加者  私は、つい最近まで寄付したことはありませんでした。社会問題について興味がないわけじゃないんですけど、そうした団体と接点がなかったということが大きいです。

 

たとえば駅とかで見かける街頭募金も、結局何に使われるのかがよくわからない。なので、接点がないのと、何に使われるのかがよくわからないのが理由です。

 

 下垣  接点ができれば使途も知ることができて、寄付するきっかけになるということですね。

 

 鈴木美穂  私たちもこれからはきちんとお金を集めていかないといけないので、ファンドレイジングチームをつくろうと動き出したところです。

 

私は、本業でテレビ局の記者をしているんですが(2018年9月当時)、テレビでもどんな番組を見てもらえるかを考えると、人はやっぱり損得勘定で動くものなのだと感じます。ならば、自分にとってどんなメリットがあるかを考えることも必要だなと。

 

寄付がいいことなのはわかるけど、それだけではなかなか寄付しない。どんなリターンをつくれるかを設計する必要性を感じますね。

 

 米良  そうですね。クラウドファンディングでもお金を出してくださった方に対するリターンはモノではなく体験のほうが喜ばれたりするんです。実際に、支援したことがきっかけになって団体に加わったという事例もあります。

 

クラウドファンディングでお金を出すことをきっかけに、自分のスキルを提供できる機会になる。そうしたマッチングしていくことも、今後はクラウドファンディングの可能性だと思っています。

 

本業はあるけど、別の場で自分の力を使って貢献したいと思っている人はたくさんいるはずです。そうした人たちは、せっかくなら自分が応援したいと思える団体のもとで力を発揮したいと思っていますから。

 

寄付市場が拡大するためにできること

 今井  確かにそうですね。寄付者を寄付者のままで終わらせず、それ以降の関わり方を設計することはいろんな可能性につながりますよね。僕らの団体では、寄付者限定のFacebookグループを始動させていて、コミュニティ化していきたいと思っているんです。

 

それと、オンラインサロンもやってみています。10代や20代にもっとNPOのことを考えてもらおうという主旨で、現在は100人くらいがサロンメンバーになっている。そうした「つながり」によって新たな可能性が生まれるのかどうかを模索していきたいですね。

 

 鈴木  マギーズの場合で言うと、東京以外に世界に19のセンターがあるんですが、各国のセンターが、それぞれのやり方でファンドレイジングをしているんですね。

 

なかには、寄付者が寄付を募るといった取り組みをしているセンターもあります。約300人の寄付者の方々に、年1回ずつイベント開いてもらうんです。中学生だったら誕生日会を開いたり、歌手だったらライブをやってみたりして、チャリティとして寄付を募る。

 

1人1回ずつでも、1年間に300回寄付を募る場があることになり、そうすることで運営しているんです。

 

 今井  それは、めちゃくちゃ面白いですね。支援者一人一人がファンドレイザーになると。

 

 鈴木  そうですね。私も直接活動を見に行ったことがあって、支援者が嬉しそうに集まった寄付金を見せてくれるんです。支援者は、親ががんになったから参加したという人もいれば、地域でその活動をすること自体が毎年の楽しみになっている人もいます。

 

 

 今井  そうした話を聞くと、もちろん各国や地域のカラーがあるけれども、ファンドレイジングの手法はまだ開発され尽くしているわけではないですよね。僕ら自身も、実験できていない施策がたくさんあるような気がします。

 

ファンドレイジングの手法も、もっと情報公開されてもいいんじゃないかと感じます。それによって、ソーシャルセクター全体で寄付市場を拡大できるんじゃないかと。

 

 小畠瑞代  本当にそう思います。私たち自身も、毎年新しい手法を試して結局うまくいかないほうが多いですから。一団体だけでノウハウを蓄積していくのはもったいないかもしれないですね。

 

 今井  これは実験だったんですが、個人投資家さんから寄付をいただいたときに、プレスリリースを出してみたんです。スタートアップの業界では、投資を受けたらプレスリリースを出すじゃないですか。それを真似してみたんです。

 

そうしたら、意外と反響が大きく、もともと寄付していた方からも「金額をアップするから、プレスリリースを出してほしい」といったことを言われたりしました。

 

寄付者も、おそらく「こういう意図があって寄付している」ということを伝えたいのかなと思います。プレスリリースをつくること自体はそれほど難しくはないですからね。

 

 

 小畠  それは企業や団体、あるいは個人が寄付をする場合、その意図を説明したり、PRする機会がないということですよね。なぜその団体に寄付をしたのか、より多くの人に知ってほしいからプレスリリースを出してほしいと。

 

 今井  そうですね。僕としては、寄付すること自体が、もう少し意見表明のような考え方にシフトしていけば、寄付することのハードルが下がり、それが寄付のマーケットの拡大にもつながるんじゃないかと思っています。

 

 米良  学生時代にアメリカに留学しているときにクラウドファンディングに出会いました。そのときに思ったのが、日本人は寄付しないとか日本には寄付マーケットがないと言われますが、それは寄付する「仕組み」がないからだと思ったんです。

 

たとえば、寄付することを楽しいと思える体験や寄付した後のお金の流れが見えるといった寄付する「体験」を工夫するだけで、そうした状況を少しは変えられるんじゃないかと思ったんですよね。

 

 

 下垣  僕らもユーザーが応援したい社会貢献団体を無料で支援することができるプラットフォームですが、どうすれば寄付してもらえるかについてはいろんなことを試しています。

 

最近面白かったのが、「寄付してください」という前に、簡単なアンケートに答えてもらう取り組みをしました。アンケートに答える過程で、その社会問題や団体の活動を知ってもらうんです。その上で「この団体、応援したいですか?」と聞くと、多くの人がイエスと言う。

 

そして最後に「こういう寄付の制度があるんですけど、検討したいですか?」と聞くと、やはり6割くらいの人がイエスと言う。ただ「寄付しませんか?」と聞くよりは、とても効果的なアプローチだと感じました。

 

そうしたことも含め、まだまだ寄付獲得のためにできることはありそうですね。

note
リディラバジャーナル編集部
noteのicon
「同性婚を認めないのは違憲」互いの違いを尊重できる成熟した社会へ
2024年3月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
能登半島地震、深刻なボランティア受け入れ態勢不足が課題
2024年3月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
学校の死亡事故の7割が国に未報告。求められる事故検証システム
2024年3月1日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「思いこみ」も背景に?女性管理職への道を阻むもの【なぜ少ない?学校教育現場の女性管理職】
2024年2月23日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。こちらの記事の最後には、全文無料で読める!「学校経営の新時代、女性管理職の可能性 ~ロールモデル・取り組み事例資料集~」もご紹介しています。ぜひご活用ください!

続きをみる
旭川いじめ事件から3年。再発防止が進まない訳は…
2024年2月16日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
DVから逃げられなくなる!?「共同親権」このまま進めて本当に大丈夫?
2024年2月2日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「被災地へボランティアに行くのは迷惑?」悩んでいる人にこそ読んでほしい!【3.11から学ぶ。構造化特集を全記事お届け!】
2024年1月12日

みなさん、こんにちは。リディラバジャーナルです。

1月1日、能登半島地震が発生しました。亡くなられた方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、被害に遭われたすべての方にお見舞い申し上げます。

続きをみる
市販薬を覚せい剤代わりにする若者たち。その背景には孤独孤立か?
2023年12月22日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
万引きを繰り返すのは手癖が悪いのか、それとも?「万引き依存症」をご存知ですか?
2023年12月15日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
大学進学は親の財力やきょうだいの数によって左右されていいのか?
2023年12月11日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
反ワクチン情報を流す医師がいるのはなぜ?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2023年12月1日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
病院の約半数、公立病院は98%が赤字。診療報酬の引き下げは医療レベルの引き下げに?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2023年11月24日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
構造化特集「地域医療」の内容を一部公開します
2023年6月9日

みなさんこんにちは、リディラバの鈴木です!今回は、リディラバジャーナルで公開中の構造化特集「地域医療」の冒頭をこちらのnoteでも公開します。何かあったら病院で治療が受けられる。私たちの「当たり前」を維持するために、様々な課題を抱えながら尽力する医療現場の姿を知ってもらえたら嬉しいです。


続きをみる
6月の構造化特集「地域医療」への思い
2023年6月9日

この投稿はリディラバジャーナル会員限定のFBグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。

******みなさん、こんにちは!担当した構造化特集「地域医療 超高齢化社会に必要な『撤退戦』」が本日より公開となりました!今日は特集内には書いていない、特集に込めた思いをご紹介させてください。

続きをみる
子どもの発達障害、構造化マップを公開
2023年4月16日

※この投稿はリディラバジャーナルの会員限定FBグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。*****みなさん、こんにちは!!!リディラバジャーナルの井上です。

今週はとても嬉しいことがあったので、ご報告させてくださいm(_ _)m

続きをみる
構造化。テーマは「子どもの発達障害」
2023年4月7日

この投稿はリディラバジャーナル会員限定のFBグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。******みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルの井上です。

早くも4月ですね。あっという間に過ぎ去る日々に「!?!?」という感じですが、今日も今日とて、リディラバジャーナルのご案内です。

続きをみる
編集部メンバーの想いを公開しました
2023年3月26日

※この記事はリディラバジャーナルの会員限定Facebookグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。******皆さん、こんにちは〜!

編集部の井上です。今日は、

続きをみる
「無戸籍」当事者の声を聞いてほしい。
2023年3月26日

※この記事はリディラバジャーナルの会員限定Facebookグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。ーーーみなさん、こんにちは!リディラバジャーナル編集部の井上です。

2〜3月は3年ぶりの構造化特集の復活ということで、「無戸籍」をテーマに構造化特集をお届けしてきました。

続きをみる
×
CONTENTS
intro
no.
1
R-SIC
no.
2