課題解決の担い手を増やし、その取組を拡大させていくためには〜地域でのインパクト投資実践における課題〜

課題解決の担い手を増やし、その取組を拡大させていくためには〜地域でのインパクト投資実践における課題〜
前回の記事では、地域でのインパクト投資普及に向けた課題とその解決策を実際に取り組む事例をもとに紹介した。
第3回となる本記事では、同じように地域でのインパクト投資推進に向けたポイントを紹介し、最後に投資家だけでなく地域における課題解決の担い手を増やしていくために重要となる心構えを探る。
※本特集は令和6年度中国経済産業局委託事業「社会的起業家に対する地域での投資実践に向けた調査・広報事業」の一環で制作しており、無料で公開しています。記事の公開は2025年3月31日(月)までとなります。
※また記事内の発言は、上記事業の一環として開催した広報イベントの登壇者の発言をもとにしています。
ここまで、財務的なリターンと社会的・環境的課題の解決を同時に追求する投資手法である「インパクト投資」を推進していく際の課題として、「地域の課題を精緻に理解し、整理することが難しい」という投資家からの声があることや、短期的利益の創出が難しい場合もある中で出資者を獲得・巻き込みをしていく上での難しさを紹介した。
他方で、「地域」と一口に言っても対象は広く、規模や状況には差異がある。インパクト投資を考えていく上で「地域」とはどのように捉えられるのだろうか。
本質的な課題解決を志向する——地域の規模に応じたアプローチ
地域金融機関のような組織が接する人口が数十万人、数百万人、あるいは数千万人の規模の地域と、人口が1万人に届かない数千人規模の地域では、置かれている状況が大きく異なる。
人口が数千人規模の地域では、その地域の課題の全体的な構造を1つの事業者がおおよそ把握することできる場合が多い。そして解決するための事業をつくったり、地域外から人材を紹介したりするといったことが、少数の事業者による取組で完結する場合が多い。
たとえば、森林資源の有効活用と観光人口の増加、地域産業の創出というような複数の課題も、単一の事業者がそれらを関連づけて取り組むことができる規模感である。
人口約1,300人の岡山県西粟倉村で、インパクト投資による資金調達を実施しながら地域活性化に取り組んでいる株式会社エーゼログループ(以下、エーゼロ)の松崎光弘さんは以下のように話す。
株式会社エーゼログループ Chief Research Officer / 創発推進本部本部長
「エーゼログループでは、地域の資源を活用してビジネスを行う『ローカルベンチャー』を増やすための取組を西粟倉村で行ってきました。
小規模地域の場合、個別具体の課題解決に注力するのではなく、課題の全体的な構造の解決に取り組む必要があります。
これまでの取組により、村内の課税対象所得が増加する等ある程度の成果が出てきました。そこで、これを仕組み化して小規模(人口1万人〜5万人程度)の自治体に導入する仕事を全国で展開しています。
一方で、この展開を考える際に、人口規模が5万人以上の地域で同じ手法を用いることは難しいと感じています」
松崎さんの発言は、小規模地域において課題を整理し、インパクト創出を目指していく上で重要な特徴を示している。小規模地域では、個々の社会課題がより互いに密接に関係しており、部分的な解決策よりも全体的な解決策が効果的になる。
実際にエーゼログループでは、地域における自然資本(森林や水などの環境資源)、社会関係資本(地域内の信頼やネットワーク)、経済資本(お金や設備)の3つの相関関係を総合的に捉え、これら全体に作用する「レバレッジポイント」(一つの変化が複数の課題解決につながる戦略的な介入点)を特定している。
具体的には、西粟倉村の豊かな森林資源を活用した木材事業を核に、村内での雇用創出と移住促進を結びつけ、さらに地域内での経済循環を生み出すというアプローチだ。
この結果、2015年から2020年にかけて、村内での起業数が増加し、地域の課税対象所得額は大幅に増加した。
(画像提供:株式会社エーゼログループ 松崎さん)
このように、一つの資源活用を起点に複数の課題解決につなげる手法は、まさに統合的視点から生まれたものと言える。
一方で、人口が10万、100万、1000万と規模が大きくなると、単一の事業者だけでは課題に対応することが難しくなる。
その場合、前回の記事でも紹介したような地域課題の全体構造を多くの人の声をもとに可視化し、複数の事業者が協力しなければならない。
たとえば大規模地域では、高齢者の医療・介護問題は住宅政策、交通政策、コミュニティ形成など多様な領域と複雑に絡み合うが、1つの事業者だけでは対応できない。そのため、各専門分野に強みを持つ事業者がそれぞれの領域で解決策を提供し、それらを有機的に連携させる必要がある。
前回の記事でも紹介した、奈良県およびその周辺地域の課題解決に取り組む「やまと社会インパクトファンド」の運営に携わる、株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ(以下、CMV)の青木武士さんは次のように語る。
株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ 代表取締役
「私たちは『医療』ないし『地域×医療』という得意分野に注力する場合もあります。
地域全体を俯瞰した上で、そこに必要な1つの機能として自らの役割を定義します。そしてその分野においてはどのような論点にも可能な限り対応できるように準備をしています」
(出典:やまと社会インパクトファンド インパクトレポート2023)
青木さんの発言からは、大規模な地域で複雑な課題構造を解決する際の重要な戦略が見えてくる。
人口規模の大きな地域では、すべての課題を網羅的に把握することは現実的ではなく、特定の分野に専門性を絞り込み、深い知見を持つことが、結果として効果的な投資判断や支援を可能にする。
このように、地域と一口に言っても規模によって置かれている状況や最適な解決策は大きく異なる。この地域特性を区別しないままインパクト投資を開始してしまうと、本来意図していたインパクトの創出や、理想の社会の実現に近づかない可能性がある。
インパクト投資では課題の根本的な発生要因の解決に取り組んでいくことが重要であるが、その実現のためには小規模地域で課題の全体的な構造の解決に取り組むか、大規模地域で特定領域における課題の構造の解決に取り組むかを、初めの段階で選択することが効果的である。
そしてこの選択をする際には、投資家としての自社の強みはどこにあるのかを分析することや、自社が最も強く意図を持つ地域や課題領域がどこかを議論することが重要となってくる。
当事者意識はどう生まれる?持続的な地域課題解決の担い手を増やすために
本特集の最後に、インパクト投資だけでなく、課題解決に取り組む担い手を増やし、より良い地域をつくるために重要だと考えられる点を紹介したい。
第一回の記事でも述べたように、地域では人口減少や高齢化が進行し、固有の課題が山積している。
行政や公的機関だけでは解決が難しくなりつつあるなかで、地域に当事者意識をもち、社会性と事業性の両立に挑戦する新たな課題解決の担い手を増やしていく必要がある。
課題解決の担い手を増やしていく際のポイントとして、自らも地域で事業を立ち上げるプレイヤーでありながら、ローカルベンチャー育成に取り組む立場であるエーゼロの松崎さんはこのように話す。
「地域への当事者意識は、何かきっかけがあって初めて生まれるものであると考えています。そのきっかけをつくるにはいくつかステップを踏む必要があると思います。
たとえば、エーゼロでローカルベンチャースクールというプログラムを実施したとき、『自分のために、この事業を、この村でやりたい』という想いを持つ人が集まりました。そしてそのような人を応援する地元の人々を増やしていくための取組を行いました。
自分の我欲が起点にあり、それが応援されることで当事者意識の範囲が広がっていき、地域のためになる事業が生まれていくのではないでしょうか」
松崎さんの指摘から、事業性と社会性は二項対立するものではなく、むしろ相互に補完し合う関係にあるという点が考えられる。
西粟倉村の例は、「自分のため」という内発的動機から始まった事業が、地域からの支援を受けて成長し、成長する中でより広範囲への利益を考えるようになり、結果として地域全体に価値をもたらすという好循環を示していると言える。
資金提供手段にとどまらない、共通言語としての「インパクト」
このように個人や自社としての動機や利益と、他者や地域の利益が重なる点をつくることが、課題解決に取り組む担い手を増やしていくためには重要なことになる。
そしてこれは、裏を返せば地域や社会を良くすることが、結果的に自分の利益となって返ってくるという好循環を生み出す可能性を秘めている。
こうした考え方や取り組みは、地域においてこれまでもさまざまな形で行われていた。多くの地域事業者や地域金融機関は、地域との共存共栄を前提に事業活動を行なっている。
「インパクト」という概念やインパクト投資という手法は、そうした地域に根ざした活動を新たな視点から捉え直し、より明確な形で可視化・評価するための共通言語として機能する。
これまで地域で行われてきた既存の取組や事業活動の価値や効果が可視化され、それをもとにした対話が進むことで、関係者や地域全体の利益につながることが明確になる。そして、そのような取組にお金という資源を戦略的に提供していくのがインパクト投資の役割である。
このような考え方は、個人の成長、事業の発展、地域の活性化を有機的につなぎ、これまで培われてきた地域の知恵や実践をさらに発展させる可能性を秘めている。
地域の文脈を尊重しながら、新たな視点と資金の流れを加えることが、持続可能な地域社会の構築に貢献する。それがインパクト投資の本質と言える。

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