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公開日: 2019/1/21(月)

社会変革をしたい人へ ーインパクト投資家が語るリディラバジャーナルの役割―

公開日: 2019/1/21(月)
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社会変革をしたい人へ ーインパクト投資家が語るリディラバジャーナルの役割―

公開日: 2019/1/21(月)
オーディオブック(ベータ版)
読者インタビュー第2弾は、グロービス経営大学院の専任教員であり、一般財団法人KIBOWで社会起業家への投資も行う山中礼二さん(45)のインタビューをお届けする。大企業の新規事業企画、ハーバード大学経営大学院MBA、医療ベンチャーCOOなどの経験を経て、ソーシャルビジネスにも携わる山中さんに、社会課題解決と事業化を両立するビジネスに必要なこと、そしてリディラバジャーナルの役割について訊いた。

 

「ソーシャル・ベンチャー・マネジメント講座」などの授業を持つ山中さん。

視野を広げていかないと仕事にならない

——山中さんは、どのような理由でリディラバジャーナルを購読されていますか。

 

私の場合は、社会問題の解決のために投資をする仕事をしているので、さまざまな社会問題について勉強しないといけないという危機感が強いですね。日本の社会問題は膨大な数あるにもかかわらず、自分が知っているのはごく一部なので、どんどん視野を広げていかないと仕事にならないんです。

 

——山中さんが感じるリディラバジャーナル購読のメリットを教えてください。

 

構造的な分析がなされているのがユニークなところだと思っています。

 

政策上の理由やビジネス上の理由、歴史的な背景など、いろんな構造的な要因があるから、社会課題はいまも解決されていないわけですが、それらの要因を多面的に掘り下げていますよね。

 

日本はこれからいろんな課題を解決しながら前に進んでいかなければならないので、問題を構造化して考えるスキルは、あらゆる人にとって大事になってくると思います。

 

構造化することで何がどう問題なのか、どこに問題のボトルネックがあるのかといったことがわかるため、とくに、ビジネスで社会を変えたい、または政策、制度で社会を変えたいと思っている人には参考になることがあるはずです。

 

あと、漠然と生き苦しさを感じている人、あるいはそうした人の近くにいて気になっている人。そういう人はリディラバジャーナルを読んでいると、その生きづらさの要因を知るいろんなヒントを見つけられると思います。

社会起業家への投資判断ポイント

——山中さんは2015年から一般財団法人KIBOWで社会起業家への投資をされています。リディラバジャーナルの読者にもソーシャルセクターの方々がいますが、社会起業家に投資をする、しないを分けるポイントはどんなところですか?

 

まず「社会が変わるか」という点と、「私たちが経済的なリターンを得られるか」という点を重視しています。「社会が変わる」というのは、社会システムが構造的に変化し、社会課題が解決されることを意味します。

 

「Y字モデル」(下図参照)というものがありまして、前述の2つの要点をもたらすのは、「ビジネスモデルのscalability(拡張可能性)」だと考えています。そして、それを支えるのは「マネジメントチームのcapability(組織的な能力)」なんです。

 

スライド提供 山中さん。
 

このY字のそれぞれのパーツが成り立っているかどうかを見て、意思決定をしています。

 

今まで、日本のソーシャルセクターのリーダーは、どちらかというと、お金を稼ぐのではなく、目の前の人にしっかり寄り添うことに集中していたんだと思うんです。だから、社会を変えようと頑張っても、事業としてリターンを得て拡大していくのは難しかった。

 

ですが今は、認定NPO法人フローレンスの駒崎(弘樹)さんのように、目の前の人に寄り添いながら、ビジネスモデルを組み立てて、収益性を担保し、事業をスケール(拡大)させていく、Y字モデルの要素を満たす若いリーダーが増えてきている感覚があります。

当事者の心理と社会構造を深く理解する視点を

——リディラバジャーナルも、そうしたソーシャルビジネスの起業をする上で役立つものになったらいいなと思っているんです。

 

リディラバジャーナルはいろんな役割を果たすと思います。以前は関心がなかったことに関心を持つきっかけにもなりますし、関心を持っていたことを構造的に理解するための助けにもなる。

 

それから、ソーシャルビジネスの場合、「当事者の心理」と「社会構造」の両方を深く考えて理解する必要があると思っています。

 

私がグロービスで担当している講座のひとつに、MBAの学生がチームをつくって3ヶ月から半年間かけて事業プランを考える「研究プロジェクト講座」というものがあって。

 

例えば、ひきこもっている方に、職業社会にデビューするきっかけを提供しようというプロジェクトがありました。そのときは、文献のリサーチをして、ひきこもりの人の家族、支援団体などにヒアリングして、家族の集まる話し合いの場やカンファレンスなどにも足を運んで学びました。

 

その際に、当事者の心理を深く考えるというのは、「そもそも職業社会に出ていけば本当に幸せなんだろうか」という難しい問いにしっかり向き合うこと。

 

コミュニケーションがすごく苦手な人が職業社会に出ていっても、またストレスを抱えて、傷ついてひきこもり状態になるかもしれません。そうしたことを考えることが問題を本当に解決できるのか検討するうえで必要になります。

 

一方で、構造的に深く考えるというのは、「なぜひきこもりの人が日本で増えているのか」、「何がその背景にあるのか」といったことを理解することです。

 

リディラバジャーナルの記事は、こうした視点を持って社会課題を考える良い機会になると思います。

 

教育と投資による課題解決

——リディラバジャーナルの特集の中で、とくに関心を持ったテーマはありますか?

 

どのテーマにも関心を持っているんですよね(笑)。中でもリディラバジャーナルをきっかけに関心を持つようになった問題は、「教員の多忙化」です。私自身も小学校のPTA会長をやっていたので、何となく、先生たちは忙しいと思ってはいたんです。ただ、教員の多忙化そのものが構造的な問題であり、これほどまでに現場が悲惨な状況とは知らなかった。

 

教員以外にも、看護師や医師など、社会構造のひずみによるしわ寄せがいってしまっている職業があると思いますので、ぜひ取り上げてもらいたいです。

 

——ありがとうございます。最後に、山中さんご自身の展望を教えてください。

 

実は私には夢がありまして……100年後の歴史の教科書に、「日本は超高齢化社会で社会問題が山積みでした。しかし、ソーシャルビジネスがどんどん立ち上がって、従来のように政府だけに依存せずに問題が解決されていく世の中になっていきました」といったことが書かれるようにしたいんです。

 

 

そのために、私は引き続き、大学院での教育提供によっていろんな社会課題に取り組む起業家を輩出し、投資によってその事業を加速させていきたいと思っています。「教育」と「投資」という両輪をどんどん回して、日本の社会課題解決をスピードアップさせていきたいですね。

編集後記

 

 

明日からはじまる特集は、「ヘイトスピーチ~ネット上に蔓延る憎悪~」です。

特集では、主にヘイトスピーチを行う「ネット右翼」に着目し、ヘイトスピーチが生み出されつづける構造を考えていきます。

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リディラバジャーナル編集部
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