「犯罪者予備軍じゃない人って、この世の中にいるのか」――ひきこもりが話題になる事件について考える

「犯罪者予備軍じゃない人って、この世の中にいるのか」――ひきこもりが話題になる事件について考える
2019年、カリタス小学校の生徒や保護者らが殺傷された川崎殺傷事件や、元農林水産省事務次官が長男を殺害した痛ましい事件が起きた。
これらの事件に関連づけて「ひきこもり」についてもメディアで取り上げられることになったが、そのとき当事者たちはどんなことを考えていたのか。また彼・彼女らはなぜひきこもるのか。どのような支援が求められているのか。
恩田夏絵さん(一般社団法人ひきこもりUX会議代表理事)をモデレーターに迎え、ひきこもり当事者であり、当事者活動を行う林恭子さん(一般社団法人ひきこもりUX会議代表理事)と、ぼそっと池井多さん(VOSOT(チームぼそっと)代表)、対話による精神療法「オープンダイアローグ」の普及啓発に努める精神科医であり、産業医、臨床心理士の大井 雄一さんにざっくばらんに語ってもらった。
※本記事は、リディラバが主催する社会課題カンファレンス R-SIC 2019のセッション「ニュースでは教えてくれない『引きこもり』の真因」を記事にした中編です。
ひきこもり=犯罪者予備軍という認識について
恩田 夏絵 前回は、ひきこもりになる要因やひきこもりに対するイメージと実際の姿のギャップについてお話してきました。今回は、ひきこもりがフォーカスされた事件について触れたいと思っています。
2019年に起きた痛ましい事件に、神奈川県川崎市登戸で起きた殺傷事件と、農林水産省の元事務次官が息子を殺めた事件がありました。いずれも事件の背景の一つとして、ひきこもりという言葉が取り上げられました。
(林)恭子さんも、たくさんテレビに出られていましたが、ひきこもり経験者としてこの事件についてどう感じましたか。
林 恭子 事件が起きた3日後ぐらいに、私たちは当事者活動をしている「ひきこもりUX会議」(UXは、Unique eXperience=固有の体験を意味する)として声明文を出しました。20年前にひきこもりという言葉が世間に広まったときも、同じような事件があったんですね。
そのときに、ひきこもりの人たちは犯罪者予備軍だという偏見が広まってしまった。当事者や経験者は、そうした視線で見られることに辛い思いをしていたので、今回はひきこもりが犯罪に直結するといった取り上げ方をしないでほしいという声明文を出しました。
影響は分かりませんが、テレビでは「ひきこもりと犯罪を結びつけるものではありませんが」と冒頭で断りを入れるといった配慮をするようになっていました。ですが、外に出るのがただでさえ辛いひきこもりの当事者たちを追い詰めるような報道もありました。
相談件数が数十倍などになった支援団体もあったと聞きました。「自分も親に殺されるんじゃないか」とか、「我が子がもしかすると罪をおかしてしまうんじゃないか」というような不安と動揺が走ったんです。
恩田 私は(林)恭子さんと一緒にひきこもりなどの生きづらさを抱えている人たちのお話会や情報発信などをしているのですが、表立って活動している私たちとしてもどう捉えたらいいのか、難しいことでした。
「犯罪者予備軍じゃない人って、この世の中にいるのか」
恩田 ぼそっと(池井多)さんは、川崎での殺傷事件が起きた時期に、ひきこもり当事者、経験者の声を発信する『ひきポス』というメディアで「私は犯罪者予備軍である。あなたは?」という記事を書かれていますが、どのように捉えていますか。
ぼそっと池井多 私たちにも、ひきこもりの当事者からたくさんメッセージが届きました。
そのうち約6割が川崎事件の加害者を見て「自分もいつか、ああいうことをしてしまうのではないかと不安だ」など、決して加害者の犯行を礼賛するものではないけれども、自分の中にもあのような傾向が潜在しているという内容のものでした。
こうした話をすると、「ひきこもりを差別するな」「犯罪者予備軍と呼ぶな」と言っておきながら、「そんなことを言うのはおかしいじゃないか、矛盾しているじゃないか」と皆さん、思われますよね。
けれども、これはひきこもりという人間に内在する葛藤の表れなんです。
そもそも「ひきこもり」という行為自体が矛盾の産物なんですよね。「ひきこもる」という動詞を考えてみてください。「ひきこもる」ということは表で何もしないことですが、同時に「ひきこもる」という行為をしている。「しない」と「する」、矛盾する行為を内包した言葉です。同じように、ひきこもり状態にある人、一人ひとりのなかにもさまざまな矛盾や葛藤が渦巻いています。
「自分もやってしまうかもしれない」という不安を覚えているからといって、実際に犯行を起こすかというと、それはまったく別の話です。ただ、そういう二面性、あるいは葛藤、矛盾があるということを皆さんにお伝えしておきたいと思います。
恩田 (林)恭子さんは、ぼそっと(池井多)さんのお話について何か思うことはありますか。
林 ぼそっと(池井多)さんの文章のタイトルの「私は犯罪者予備軍である。あなたは?」という言葉は、すごく腑に落ちました。犯罪者予備軍じゃない人って、この世の中にいるのか、と。
それからお話にもあったように、ひきこもりに限らず、ひどい目にあったときに恨みを持つことはあると思いますが、実際に行動に移す人は少ないですよね。
恩田 東京新聞の調査によると、1999年以降の殺人事件の認知件数のうち、ひきこもり経験者が関与している割合は0.2%という結果が出ていますね。
精神科医であり、臨床心理士でもある大井さんはどのようにお考えでしょうか。
大井 雄一 ひきこもりに限りませんが、何か大きな事件を起こした加害者について、ひきこもりの状態にあったとか、精神疾患を持っていたとか、さまざまなバックグラウンドが話題になりますよね。
ただ、そういったバックグラウンドがある人が犯罪を起こすんだ、という短絡的な捉え方をするのは大きな問題があります。
私が日常で関わっている、いわゆる “ひきこもり状態” にある方々と会って実際に話して、私自身はそのような感覚をもったことは一度もありません。自分の目で見て、接してみて、話してみること。そうした実際の「体験」と、報道によって断片的な情報を知ることにはとても大きな乖離があると思います。そのギャップを埋めるためには、皆さんのように声を上げていくことが大事なんだと思います。
・・・後編では、ひきこもり状態にある方が求めている支援、支援者と被支援者の関係性について語り合います。
【登壇者プロフィール】
大井 雄一
茨城県出身、県立水戸第一高校卒。愛媛大学医学部卒業後、初期研修医を経て筑波大学大学院に入学し現研究室で学ぶ。2012年博士課程修了、同年7月より現職。産業医として労働者のメンタルヘルス支援に携わる。内閣府「第23回世界青年の船」心理アドバイザー。フィンランド発祥の、対話による精神療法「オープンダイアローグ」の普及啓発に努め、ひきこもりやうつなどの様々なメンタルヘルス問題に悩む家族に対し、社会ネットワークの観点から対話による支援を継続している。医師、臨床心理士、労働衛生コンサルタント。社会医学系専門医協会認定指導医、日本産業衛生学会関東地方会代議員。著書に『公務員がうつになったら読む本』(学陽書房、共著)、『ストレス対処力SOC: 健康を生成し健康に生きる力とその応用』(有信堂、共著)など。オープンダイアローグのトレーナーとなるべく、トレーニングコースをヘルシンキで受講中(2020年2月修了)。
林 恭子
新ひきこもりについて考える会世話人/ヒッキーネット事務局/NPO法人Node理事。高校2年で不登校、20代半ばでひきこもりを経験する。信頼できる精神科医や同じような経験をした仲間達と出会い少しずつ自分を取り戻す。現在はNPO法人に勤務しながらイベント開催や講演などの当事者活動をしている。
ぼそっと池井多
1962年生まれ。幼少期より母親に精神的虐待を受け青年期以降にうつ病発症。23歳、企業から就職内定を受けてひきこもり始める。一橋大学卒業後、20代のそとこもり(海外ひきこもり)を経て30代以降うちこもり(国内ひきこもり)、社会から遠ざかる。生活保護利用者。治療を求めた精神医療から組織的な虐待を受け、治療者の検閲を経ない患者の声を社会に届ける「当事者発信」の重要性に目覚め、2013年VOSOT(ぼそっとプロジェクト)開始。現在ひきこもり当事者の声を社会に発信する一方、「ひ老会(ひきこもりと老いを考える会)」「ひきこもり親子公開対論」を開催し、ひきこもりの高齢化「8050問題」の解決の方向性を提案している。ひきこもり当事者メディア「Hikipos」などに執筆記事多数。
恩田 夏絵
1986年生まれ。小2から不登校。その後、ひきこもり、リストカットなどを経て定時制高校を卒業するが、“生きること”への希望を見いだせず、人生最期の旅のつもりで地球一周の船旅へ。様々なヒトと出会うことで“生きること”の多様さを実感。死ぬのをやめてピースボートに就職する。企画運営、デザインを担当する傍ら、2010年に洋上フリースクール『ピースボート・グローバルスクール』を開校。2014年からは当事者経験を活かして“人生と社会をリデザインする”をコンセプトに活動するクリエイティブチーム「ひきこもりUX会議」を主宰。
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