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公開日: 2023/7/28(金)

構造化はどのように問題解決に活きているのか。リディラバジャーナル5周年インタビュー(後編)

公開日: 2023/7/28(金)
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構造化はどのように問題解決に活きているのか。リディラバジャーナル5周年インタビュー(後編)

公開日: 2023/7/28(金)
オーディオブック(ベータ版)

2023年に5周年を迎えた、社会問題を構造化するメディア「リディラバジャーナル」。

 

今回は編集長の安部に、5年間の軌跡や構造化というコンセプトにこだわり続けてきた理由を聞きました。

 

後編では、構造化特集「食品ロス」「教員の多忙化」などを事例に、実際に構造化がどのように課題解決に活かされてきたのか、お話ししました。

 

聞き手は、リディラバ ジャーナル編集部の井上です。

 

※本記事は23年6月6日に開催した「【リディラバジャーナル5周年/編集長インタビュー】赤字でも構造化をやりぬく。編集長・安部敏樹が語る『社会課題メディア』の未来」を編集してお届けしています。

 


恵方巻きのロスが注目されるきっかけに。構造化特集「食品ロス」

井上

中編では、構造化にこだわる理由についてお話ししました。

 

ここからは、構造化が課題解決にどう活きているのか、事例を交えて聞いていきたいと思います。

 

まず、立ち上げ初期の大きな事例としては、特集「食品ロス」に関する動きでしょうか。
 

安部 

そうですね。2018年2月、リディラバジャーナルで食品ロスの特集を組みました。

 

【食品ロス】年間621万トンの真実

 

「生産・加工・小売・消費・再利用ないしは焼却」という流通モデル全体を構造化したことで、たとえば賞味期限の3分の1を過ぎたものは小売店舗に出せず廃棄される「3分の1ルール」の存在や、食品事業者の全ての食品ロスをカバーできない法律の課題などが浮き彫りになりました。

 

さらに、農林水産省の統計で食品ロス量は当時約600万トンと推計されていましたが、生産現場で発生するロスが国の統計上では「食品ロス」に含まれないことや、生産段階での廃棄を食品ロスと定義することの現実的な難しさなども明らかになりました。

 

構造化特集の前年には、ABEMA primeでも食品ロスを取り上げてもらいました。リディラバが実施していたスタディツアーがきっかけだったんですが、その写真や記事がYahoo!ニュースのトップに掲載されて。恵方巻きのロスが大きな注目を集めるきっかけにもなりました。

2月3日の節分に起こったピンポイントな問題としてではなく、流通モデルの構造的な問題として食品ロスを取り上げることができたのは大きかったですね

 

井上
最近では、社会全体で食品ロス削減への課題意識の高まりを感じますよね。

 

安部
食品ロス問題に対する動きは政府与党にも広がり、2019年には食品ロスについて社会全体での取り組みを規定した「食品ロス削減推進法」が定められました。

 

2022年には、国から食品業界の経営層に「3分の1ルール」の見直しが要請され、2023年時点では240の小売事業者が納品期限の緩和に取り組んでいます。

 

構造化をリディラバジャーナルのコンセプトに据えていくことに、確かな手応えを感じた特集でしたね。

教育現場の「デジタル化」推進の根拠にも。構造化特集「教員の多忙化」

井上
2018年10月には「教員の多忙化」特集で教育現場の実態を取り上げました。

 

教育現場に対する国の動きとしては、EdTech等を活用した新しい学習環境構築の実現に向けた経済産業省の「未来の教室実証事業」や、政府主導で一人一台のパソコンと高速ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」などがありましたが、この一連の動きについてお話をお聞きしても良いでしょうか。

 

安部
近年、子どもに関わるステークホルダーの問題が深刻化しているにも関わらず、子どもを取り巻く問題に関して「先生が悪い」「親が悪い」となりがちで、教育現場への理解が進んでいないと感じています

 

リディラバジャーナルではこれまで、教育現場の構造的な課題を明らかにする特集を多く取り上げてきました。その中で代表的なのが「教員の多忙化」特集です。現場の先生方からも、多忙化を構造的に取り上げてくれたのは初めてに近いのではと反響がありました。

 

【教員の多忙化】学校現場のブラックな実態

 

多忙化の問題を深く掘り下げると、残業月80時間以上の“過労死ライン”を超えて働く教諭が多いという実態や、公立学校の教育職員の多忙化には、残業代を支払わない代わりに給料の月額4%を支給する「給特法」が要因にあることなどがわかりました。

 

教員の多忙化が深刻な事態になっている。そして、学校の先生の負担を減らさない限り、子どもたちに良い教育もできない状況がある。

 

そうした問題への打ち手の一つとして、「デジタル化」がありました。

 

教育現場のデジタル化により、業務の統一化や効率化、ノウハウの共有などが可能になり、教員の時間的・精神的余裕を生み出すことができる。

 

教員が業務をデジタル化するには、生徒がパソコンを持つことが必要です。

 

生徒一人ひとりの採点や進捗管理を効率的に行ったり、適切な教育コンテンツを提供したり。パソコンを買えない貧困家庭の子どもたちの、デジタル格差の是正にもなります。

 

リディラバとしても関わらせていただいた「未来の教室実証事業」の中で、生徒一人に一台のパソコンを整備する「GIGAスクール構想」が進んでいきました。

 

さまざまな要因が絡まり合って問題が生じているとき、どこかで一点突破して変えていかなければならないタイミングがあります。その際に、構造化で明らかにしたファクトや問題構造が根拠になりうるということを、強く感じた特集でした

「知っている」ことが問題解決のスタートライン

井上
ここまで、リディラバジャーナルの構造化がどう問題解決に活きているのか、事例を通して見てきました。

 

最後にリディラバジャーナルを応援してくださっている方や、興味を持ってくださった方々にメッセージをお願いします。

 

安部
私は、物事を知っているということは、優しさであり愛であると思っています。 

 

社会問題やその構造を知ると、「自分には何もできない」と無力感を抱き、情報から離れたくなる方も多いと思います。

 

でも当事者にとっては、周囲の人が問題を知っているということだけでも、生きやすくなります。たとえば、LGBTQの方々にお話を聞くと、個別の課題はありつつも、この20年間で当事者を取り巻く問題の認知が進んだことも事実だと。

 

リディラバジャーナルとしては、社会問題を知っているという人の数を、社会の中に増やし、広げていくことが重要だと考えています。

 

 

井上
リディラバジャーナルには、メンバーシップに参加していただいた方が記事のURLをシェアすると、メンバーシップに参加してない人も記事の全文を1週間読める機能があります。シェアする記事数に制限はありません。

 

安部
記事を無料でシェアできる仕組みは、メディア立ち上げ時に関係者から「事業として成り立たない」と言われたけど、私のこだわりとして組み入れました。確かに、誰かがシェアし続けたら、課金しなくても読めてしまうので(笑)。

 

でも、リディラバが目指す「社会の無関心の打破」は私たちだけで達成できません。リディラバジャーナルに参加することで、無関心の打破という社会運動に一緒に関わってもらえたら嬉しいです。

 

井上
リディラバでは国、自治体、企業、非営利団体など、あらゆる方と一緒に社会問題の解決に取り組んでいきたいと思っています。

 

その前提となる社会課題の構造化を、何とかして続けていきたい。

 

いま以上に、読んだ方が次の行動に生かしていける記事にしたいですし、サービス自体も日々改善していきたいと考えています。繰り返しになりますが、関心を持っていただいた皆さんは、ぜひ輪に加わっていただけたら嬉しいです。

 

安部
「社会なんてどうせ変わらない」と感じている人も多いかもしれません。

 

でも、問題の構造を多くの人が知り、議論し、一つずつ解決に向けて行動し続けることで、「問題があってもなんとか解決できる。一緒に頑張ろうよ」と言える社会になるはずです。

 

ぜひ皆さんと一緒に、そんな社会を目指していけたらと思っています。

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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リディラバジャーナル5周年インタビュー
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