2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であるこ
2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。
2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。
2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。
異性を好きになることや、生まれた時に割り当てられた性のまま生きることが当たり前と思われている社会。この「当たり前」という意識が、LGBTの人々のカミングアウトや、アウティングに大きく影響を与えている。
そもそもLGBTとは、セクシュアリティとは何なのか——。LGBTに関する情報発信を行う、一般社団法人fair代表理事・松岡宗嗣(そうし)さんに解説してもらった。
左利きやAB型と同じくらいいるLGBT
LGBTとは「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシュアル」「トランスジェンダー」の四つの頭文字から取った、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称の一つです。
レズビアンは、性自認が女性で、性的指向(好きになる性)が女性の人。
ゲイは性自認が男性で、性的指向が男性の人。私はこの「ゲイ」の当事者のひとりです。
バイセクシュアルは、性的指向が男女どちらにも向く人。
トランスジェンダーとは、生まれた時に割り当てられた性別とは異なる性を自認する人です。
トランスジェンダーについて少し補足しておくと、誰もが性別適合手術を望んでいるわけではありません。自分の性自認に身体を近づけるために手術を望む人もいれば、手術は必要ないという人もいます。ただ、現在の日本では、戸籍上の性別を変えるためには、手術をする必要があり、そのために、性同一性障害という医学的な診断を受ける必要があります。
このLGBTですが、日本にどれくらいいるのか。
電通ダイバーシティ・ラボの調査では、2015年に7.6%という数字が出ており、この人口比は、左利きやAB型と同程度と言われています。2018年には、8.9%という数字も出ているんです。あくまでインターネットのスクリーニング調査で、学術的な調査ではありませんが、他のさまざまな調査でもが、大体数%の幅に収まっています。左利きの人や、AB型の人に会ったことがない人はいないと思います。マイノリティとはいえ、それくらいありふれた存在なんです。
四つの「性のあり方の軸」とは
そもそも、性別、あるいはセクシュアリティとはどのように決まるのか。性別やセクシュアリティと言うと、身体の性別をイメージする人が多いのではないでしょうか。
近年は、四つの「性のあり方の軸」の掛け合わせによって性のあり方は決まるのではないかと言われています。
四つの性のあり方の軸というのは、
①からだの性(および、そこから割り当てられる戸籍上の性別)
②性自認(こころの性)
③性的指向(好きになる性)
④表現する性
です。
一つ目のからだの性とは、生物学的性、つまり性染色体や生殖器のこと。さらに、それをもとに生まれた時に割り当てられる戸籍上の性別を軸として考えることが重要です。
二つ目、こころの性とは性自認のこと。ジェンダーアイデンティティーとも言われます。自分の性別をどのように認識しているかです。「女性と認識しているよ」「男性とも女性とも思ってるよ」「どちらでもないよ」「日によって変わるよ」など、本当に人それぞれです。
三つ目が、好きになる性。これは、性的指向やセクシュアルオリエンテーションと言われる、恋愛や性的関心がどの性別に向くか、あるいは向かないかを表す概念です。これも、「男性を好きになるよ」「女性が恋愛対象だよ」「誰も好きにならないよ」「両方好きになるよ」など多彩です。
四つ目は表現する性で、社会的性別とも言われます。一人称に「俺」を使うか「私」を使うか。男性的なしぐさが好きか、女性的な服装をしたいかなど、自分の性をどう表現したいかという軸です。
四つの軸で見る様々なセクシュアリティ
LGBTなどのセクシュアリティは、この四つの軸でどのように表せるでしょうか。
出生時に割り当てられた性別と、性自認が一致している人を「シスジェンダー」と呼びます。このシスジェンダーで、異性愛(ヘテロセクシュアル)の男性について、以下のように表せます。
男性として生まれたので、からだの性のマルは右。それを元に割り当てられる戸籍上の性別も、男性になります。自分のことを男性だと認識しているので、このマルも右にきています。好きになる性は女性なので、マルは左側。男性的な振る舞いを好む人であれば、表現する性のマルも男性側にきます。
次に、ゲイである私のセクシュアリティ。
私は男性として生まれて、自分のことを男性だと認識しているので、初めの二つの軸はいずれも男性側です。最後の表現する性については、男性的とされる振る舞いがしっくりくることが多いので、これも右側にマルがきます。
ただ三つ目、好きになる性というのが男性で、ここだけが先ほどのシスジェンダーで異性愛の男性とは違います。
バイセクシュアルの女性も見てみます。
女性として生まれて、自分のことを女性として認識しています。なので、最初の二つの軸はいずれも左側にマルがきています。
好きになる性は、男女両方なのでマルが二つあります。いわゆる女性的な振る舞いを好む人は、表現する性のマルも左に寄ります。
最後に、トランスジェンダーの男性です。
女性として生まれたので、からだの性のマルは左にあります。そして、それを元に割り当てられる戸籍上の性別は女性ということになります。
ですが、自分のことを男性だと認識しているので、このマルは右。先ほどまでの3人は、一つ目と二つ目の軸のマルが同じ方向にあったので、ここが違うポイントですね。
この人が異性愛者だった場合は、自分のことを男性と認識しているので、女性を好きになります。表現する性は、いわゆる男性的な振る舞いが好みだったらマルが右側にきます。
「人の数だけあると言っても過言ではない」セクシュアリティ
ここまで示した図ですが、軸の色をグラデーションで表しています。このグラデーションは、どこからが女性的、男性的と思うか、何をもって女性的、男性的と思うかは人によって異なることを示しています。
表現する性について、たとえば女性と自認している人のあいだでも、髪の毛がどれくらいの長さであれば女性っぽいと思うか、そもそも髪の長さによって女性的かどうかの認識が変わるのかなど、人それぞれ認識は異なりますよね。
また、自分のマルは範囲が広いとか、マルがいくつもあるという人もいるでしょう。
この他にも、Xジェンダー、Aセクシュアルといったセクシュアリティもあります。
こうして可視化していくと、突きつめれば「一人に一つのセクシュアリティがある」といっても過言ではないかもしれません。
−−
LGBTという言葉で総称される、多様なセクシュアリティ。その多様さの一方で、社会は未だ、多数派である「シスジェンダー」の「異性愛者」を前提としている。
次回は、この前提が、とくに同性愛者(ゲイ、レズビアン)のカミングアウトにどのような影響を与えているのかを見ていく。
【まとめ】
・LGBTとは、セクシュアルマイノリティの総称の一つ。
・セクシュアリティは、①からだの性、②こころの性、③好きになる性、④表現する性——の四つで示すことができる。
・女性的、男性的という認識も人それぞれで、セクシュアリティは一人に一つあるといっても過言ではない。
【問いかけ】
・四つの軸で示すと、自分はどのようなセクシュアリティですか?
(編集部注:スライドはいずれも松岡さん提供)
編集後記
セクシュアリティを表す言葉としては近年、「SOGI(ソジ、ソギ)」といった言葉も見かけます。
これは「セクシュアルオリエンテーション」と「ジェンダーアイデンティティ」の頭文字である「SO(性的指向)」と「GI(性自認)」を取ってつくられた言葉です。
セクシュアルマイノリティであるかどうかにかかわらず、誰しも何らかの性的指向や性自認は存在します。そのため、SOGIという言葉を使うことで、あらゆる人がこの問題の当事者であるという認識につながります。
ぜひ、LGBT以外にも、セクシュアリティに関係する言葉を、意識して探してみてください。
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