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特別養子縁組〜大手法人ベビーライフ廃業の裏に見える構造〜
2021/10/29(金)
「養子縁組は人身売買」過熱する報道に苦しむ養親
2021/10/29(金)
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特別養子縁組〜大手法人ベビーライフ廃業の裏に見える構造〜
2021/10/29(金)
「養子縁組は人身売買」過熱する報道に苦しむ養親
2021/10/29(金)



経済的事情や健康状態など、様々な事情で生みの親が育てられない子どもを育ての親に託し、親子の未来を守る「特別養子縁組」制度。

2020年7月に養子縁組をあっせんする機関「ベビーライフ」が突然廃業し、連絡が途絶えた問題について特集する。

 

前回は、廃業直後に問題となった養子縁組の情報管理について、ベビーライフのずさんな実態に加えて、現状の法制度の限界を明らかにした。

 

今回は、ベビーライフを巡る各種メディア報道に着目する。

一部報道では「人身売買」などの言葉を用いて、養子縁組制度自体を批判する声や、海外へのあっせんを問題視する声が見られたが、関係者はこれらの報道と実際のずれを指摘する。


養子縁組は「人身売買」なのか

「報道を読んだ後2~3日動けなくなりましたよ。この報道のどこに重要性があるのかも分からず、悪意を感じました」

 

4年前、ベビーライフを通じて養子を受け入れた石井友子さん(仮名)は、ベビーライフ廃業を報じた一部メディアへの憤りをこのように語る。

 

ベビーライフの廃業に関しては大手を含めた多くのメディアで報じられた。

前回までに見てきたように、ベビーライフやその周辺環境には様々な問題が潜んでおり、報道によって人々の認知や制度の改善を促す動きは重要だ。

 

一方、石井さんのコメントにもある通り、一部では不適切とも見える報道が見られた。

具体的な報道内容と共に紹介する。

 

21年3月24日付の読売新聞朝刊には、以下のような記載がある。

 

「日本から国際養子縁組で海外に渡った子供が、2011〜19年の約9年で少なくとも336人に上ることが、読売新聞の集計でわかった。(中略)国際養子縁組を巡っては、人身売買に巻き込まれることや、子供の出自に関する情報を得ることが難しくなるといった問題が指摘される」


該当箇所を指摘する養親の石井さん(仮名)

 

また、21年3月23日に公開された毎日新聞の記事には、以下のような記載がある。

 

「ベビーライフが昨年7月に事業を停止した問題で、同団体が2012~18年度にあっせんした子ども約300人のうち、半数以上の養親は外国籍だったことが23日、東京都への取材で判明した。厚生労働省は養子縁組のあっせんを「原則国内」としているが、多くの子どもが国外に送られた可能性がある」

 

このように、一部メディアではベビーライフ、ひいては民間あっせん機関が「原則国内」のルールを反故にし、海外へ子どもをあっせんしていたと報じている。

海外へのあっせんそのものが問題であり、「人身売買」や「子どもが国外に送られる」と強い言葉を用いて海外あっせんを問題視している。

しかし、国や現場からは異なる意見が聞こえてきた。
養子縁組制度の活用を促進する厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課の石原珠代さんは次のように語る。

 

「法律では国内での養子縁組が優先となっていますが、私たちも海外縁組が100%不適切だと思っているかというと、そうではありません。実親さんが海外にルーツを持っているなど海外での養子縁組が適切と考えられるケースはあり得ると考えています」

 

東京都で民間あっせんを行う認定NPO法人「フローレンス」の藤田さんも海外あっせんのの選択肢は子どものために必要と訴える。

 

「可能な限り国内で養親を探すべきであることはもちろんです。しかし、ケースによってはどうしても、その時登録している養親希望者の中で養親が見つけられない場合もあります。海外の道が一切閉ざされてしまうと、子どもが家庭に行ける機会が減ってしまいます」

 

国も現場も、海外あっせんそのものを全て問題とは考えておらず、むしろ場合によっては海外が最適な選択となるケースもあると考えているのである。

 

その上で、「原則国内」のルールのなか、ベビーライフが数多くの海外あっせんを行なっていたことは事実だ。

しかし、海外あっせん数の推移からは、ルール順守に向けた変化が見て取れる。


 


(東京都への調査を基に編集部にて作成)

東京都によると、ベビーライフが数多くの海外あっせんを行なっていたのは2017年度までであり、18年度は9人と大幅に減少している。

 

国は2012年より「原則国内」の指針を出していたが、これはあくまで通達であり、2018年4月のあっせん法施行の際に初めて「原則国内」は法的に規定された。

ベビーライフは、この法改正に従って、あっせんのあり方を転換していたと見える。(※)

 

まとめると、養親・実親・子どもにとって最適なあっせんを考える中で原則は国内、必要がある場合は海外も検討する必要があり、そもそも海外へのあっせんが一概に悪とはいえない。
その中で、ベビーライフは海外あっせんを多数行っていた時期もあったが、制度改正後は海外あっせんを大幅に減らしていたと見える。


(編集部注:ベビーライフは2018年以降、成立した養子縁組の一部を都に報告していなかったことが明らかになっており、把握されていない海外あっせんが存在する可能性があります)


「子どもを不正に得たと思われる」
報道に傷つく養親

 

今回の一部報道は、養子縁組への誤った理解を促進するだけでなく、当事者へ悪影響も及ぼしている。

養親の石井さんは、今回の報道について次のように憤りを語る。

 

「一番許せなかったのは『国際養子縁組を巡っては、人身売買に巻き込まれると問題が指摘されている』という部分。まるで養子縁組=人身売買かのような書き方をされていて、読んだ後2~3日動けなくなりました」

 

そもそも、国内・国際を問わず特別養子縁組は人身売買ではない。

ユニセフによると、人身売買とは「弱い立場にある人々を搾取する目的で、強制的な手段や暴力、脅迫、誘拐、詐欺行為を用いて又は脆弱な立場に乗じて、人を獲得・輸送・受け渡ししたり、労働を強いたり、奴隷化したりすること」とされる。

 

養子縁組の成立には最終的に家庭裁判所による許可が必要となるため、定義にある「強制的な手段」や「詐欺行為」によって子どもの権利を脅かす場合、裁判所が縁組を認めない。

 

該当記事における「人身売買」は、国際養子縁組の場合、縁組が成立した後に成長を追いかけることが難しくなるため、養親によって新たに人身売買に巻き込まれる可能性があると示唆したいのだと思われる。
しかし、今回の報道の仕方では養子縁組そのものが人身売買であるように見えても仕方がない。

 

養親の石井さんは次のように続ける。

 

「養親さんたちの多くは、これから特別養子縁組の道が狭まっていくことを心配しています。また、自分たちが、世間から何か不正によって子どもを手にしたとイメージを持たれることも気にしています。ベビーライフがなくなって不安な上に、報道に関して心配したり、傷ついたりするのは本当に悲しいです」

 

養親である石井さんも、厚労省も、民間あっせん機関である認定NPO法人「フローレンス」も、関係者は口を揃えて「今回の報道で、特別養子縁組や、民間あっせんそのものにネガティブな印象を持たないで欲しい」と語る。

 

国際縁組において、縁組成立後の継続的なモニタリングに改善の余地があるのは事実だが、「人身売買」のような言葉を用いて、海外あっせんや縁組制度自体を否定する報道には問題がある。

 

読者の皆さんには既存の報道のあり方に声をあげることで、当事者や未来の養親を守る協力をお願いしたい。



・・・次回、最終回ではここまでの様々な課題の根底にある民間あっせん機関の財政的な難しさと、今後に向けた解決策を明らかにする。

 

 

リディラバジャーナルでは、特別養子縁組制度について全14記事の特集記事を2018年に公開しています。
より深く問題を知りたい方はこちらから、特集記事もお読みください。

編集後記

新たに開始した「第3のニュース」特集。
この特集では、社会課題にまつわるニュースを起点に、その裏にある構造を解き明かしていきます。
ニュースの見え方が変わっていく、ニュースがわかるようになる新特集、ぜひお楽しみください。

「第3のニュース」という特集名に込められた思いや、新たな特集を開始した背景は、近日公開予定の編集長インタビューにてご紹介します。
こちらもぜひ、本特集と併せてお読みください。

 

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CONTENTS
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特別養子縁組〜大手法人ベビーライフ廃業の裏に見える構造〜
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