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公開日: 2022/6/3(金)

5年で観光客は100倍に 香川県三豊市 強い地域に共通する「煽り力」とは(後編)

公開日: 2022/6/3(金)
公開日: 2022/6/3(金)

5年で観光客は100倍に 香川県三豊市 強い地域に共通する「煽り力」とは(後編)

公開日: 2022/6/3(金)
オーディオブック(ベータ版)

【提供】EY知恵のプラットフォーム


「行政がやってくれる、大企業がやってくれる、先代社長がやってくれる、東京から来た誰かがやってくれる。
地域の一番の敵は『依存心』だと感じたんです」

こう語るのは、古田秘馬(ふるた ひま)さん。人口約5万人の小さなまち、香川県三豊(みとよ)市の地方創生を成功に導いたキーマンだ。

「日本のウユニ塩湖」と呼ばれる父母ヶ浜で有名な三豊市には、現在年間50万人もの観光客が訪れている。

一見すると、日本中どこにもない観光資源を武器にして、地方創生の階段を駆け上がったように見える三豊市だが、実は数年前まで観光客は年間5000人程度。
決して「日本のウユニ」で成功した地域ではない。

数年間で約100倍と、急激な成長を支えた背景には、地域で次々と新たな取り組みを生み出した古田さんの存在がある。

地方創生の成功事例から、他地域でも応用できる「型」を見出す連続企画。
第1回の事例は、香川県三豊(みとよ)市。

前編では「お金」をテーマに、地域の魅力を商品化していく方法、また地域で新しい取り組みを始める際の資金集めのコツを聞いた。

後編のテーマは、「人」。
一緒に頑張れる仲間が見つからない、新たな取り組みに反対する人がいる、など地域でのチャレンジにあたって、常につきまとう人の問題。

各地で成功事例を作り上げてきた7名の先駆者たちが、古田さんの事例を基に、地域を担う人について議論を深めていく。

地域の敵は「依存心」

MC堀:ここまでは、地域の魅力をどうやって商品化・プロジェクト化していくのか、その際に必要なお金はどうやって調達するかと、「お金」を中心に話してきました、
ここからはテーマを「人」に移して、皆さんで議論していきます。

まずは古田さんから、三豊市の事例についてプレゼンをお願いできたらと思います。
 


MCを勤める堀潤さんと宮瀬 茉祐子さん
 

古田:三豊で私が宿泊施設「UDON HOUSE」を立ち上げ、各種メディアで取り上げられるようになると、地域の中でも「何か三豊が変わりつつあるぞ」という雰囲気が生まれてきました。

そのうち、30代を中心とした現地の住民が「自分たちで何かをやってみたい!」と声をあげるようになりました。

彼ら・彼女らはちょうど子育て世代ということで、みんな三豊で子育てをする人たちの役に立ちたいと思っていたので、共同で「おむすび座」という会社を作り、子育て世代向けの飲食店を立ち上げました。

ひとつのチャレンジから、「あの人ができるなら自分にもできるかも」「あの人が頑張るなら自分もやってみよう」という連鎖が生まれて、最終的に地域内で15もの会社が新設されました。
地域の人が自分たちの力で何かチャレンジをするんだ、という文化が生まれたんですね。

そういった地域内での小さなチャレンジが積み重なり、結果として観光客は急増していきました。
2014年に年間5000人だったところ、2019年には年間50万人と、数年で約100倍に膨れ上がると、当然の流れとして大企業も三豊市に注目するようになります。

ある時、全国的に有名なホテルチェーンが三豊に進出するとの噂が流れました。

大企業の力で、大きなホテルができたら、地域に税金を落としてくれますし、地域内での雇用も生まれます。
自分たちではできないことを、代わりにやってもらえるかもしれません。結果、地域にポジティブな変化も生まれるかもしれません。

ただ、地域で新たなチャレンジを踏み出したメンバーたちは「それでいいのか」と考えました。
自分たちや地元の企業が大手企業の下請けになってしまう、地域の大事な宿泊施設に自分たちが関われない、それでいいんだろうかと。

地域のメンバーたちが毎晩のように議論を重ね、ホテルは自分たちで作る、大手ホテルの誘致はしないと決めました。

地元の11社が500万円ずつ出資し、そこに地元の金融機関からの融資を加えて「URASHIMA VILLAGE」という宿泊施設を作りました。


「URASHIMA VILLAGE」の様子(公式HPより)

このプロセスを経て私は、地域の一番の敵が「依存心」だと感じたんです。
行政がやってくれる、大企業がやってくれる、先代社長がやってくれる、東京から来た誰かがやってくれる。

三豊のメンバーにはその依存心がなかった。
自分たちのまちは自分たちで作るという文化を、この数年で築き上げました。

これは決して、地域内で起業をしたような一部のメンバーに限ったことではありません。
三豊は住民のクラウドファンディング参加率が日本で一番高いまちです。地域の取り組みを主体的に支える市民も多数いるわけです。

「自分も地域のために何かしたい」という気持ちが連鎖し、地域について考えて、語り合うのが当たり前になった。

外から見ると、「URASHIMA VILLAGE」が作れてすごい、と思うかもしれません。
ただ、本質的に価値があるのは、外から見えない地域住民の議論や姿勢なんです。

地域のプレイヤーを奮起させる
「煽り力」

いかに地域のメンバーが「依存心」から脱却できるか
地域の成功をわけるポイントをこう語った古田さん。

この古田さんのプレゼンに対して、他の先駆者7名が議論を投げかける。
議論の口火を切ったのは、藤沢久美さん。

日本初の投資信託評価会社「ソフィアバンク」を立ち上げ、各界のリーダーたちと対峙しながら、Jリーグ理事や地元奈良の観光協会アドバイザーとして、自らも地域振興に携わってきた。
日本や世界のリーダーを知っているゆえに、地域で感じる苦悩をぶつけた。


藤沢久美さん

藤沢:すごくいい話がたくさんで、メモがいっぱいになりました。(笑)
古田さんの取り組みに地域の皆さんが感化されて、新たに15の会社が生まれた話もありましたが、三豊には「スーパー本気」のプレイヤーがいたんだと思います。

地域が良くなっていくには、「熱量高い本気の人が必要だ」ってよく言われます。それは間違いないのですが、それって中途半端な熱量では足りなくて、「スーパー本気」でないといけないんだと。

私も地元の奈良で色々と取り組みを行っていて、確かに地元の若いメンバーは皆何かしたいと思っているし、アイデアもあります。
私が現地にいる間は皆頑張って動くけれど、私が離れてしばらくすると動きが停滞してしまう人も多い。

どうやって「スーパー本気」の人を地域で見つけて、育てていけるのか、と考えていました。

藤沢さんの悩みに、他の先駆者も声をあげる。
林業を起点に各地の産業振興、まちづくりを支援する「株式会社トビムシ」の竹本吉輝代表は重ねる。


竹本:私が通っている地域って、一言で言えば「心が折れている人」が多いところです。
地域のメンバーに、ポジティブな熱量が足りないと感じる場面が多いです。

私は林業を中心に地域支援を行なっていますが、一次産業の世界には「これがやりたい!」と自分の意思を持っている人が少ない印象があります。一次産業が業界として長らく苦境にあるからかもしれません。

産業構造なのか、出会う人の差なのか、地域性なのか、熱量の高いスーパー本気の人がいる地域とそうでない地域の差はどこから生まれるのでしょうか。

古田:確かに、地域を変えていこうと思った時に、変化を起こしやすい領域とそうでない領域があるように思います。
人体でも、表面のかすり傷はすぐ治るけれども、内側にある臓器の治療には時間がかかります。

それと同じで、例えば長年の歴史と成功体験がある漁業よりも、比較的新しいサービス業の方が、過去の経験や地域のしがらみにとらわれず、新しいチャレンジがしやすい。
少しの変化で「俺はすごいことをした」と思えるわけです。

スーパー本気の人を見つける意味では、チャレンジが起こりやすい領域の人に目を付ける、という考え方があると思います。

らに、スーパー本気の人を育てるポイントについて、社会課題・地域課題の現場をツアーの企画に変え、第三者の関与を促す活動などを行う「リディラバ」の安部敏樹代表が語る。


安部敏樹さん

安部:スーパー本気の人が生まれてくる地域と、そうでない地域の差としては、地域内の「煽り力」を感じるんですよね。

MC堀:煽り力?どういうことでしょうか。

安部:例えば我々の場合、地域の社会課題の現場に人を連れて行くツアーを実施するときは、ツアーの中で受け入れる側の地域の人と一緒に参加者を煽るような設計になってるですよね。「あなたこの課題、解決しないの?」「移住しちゃえば?」と。

というのは、「俺は人生かけてこの地域のこの課題を解決するんだ!」とひとりで勝手に思いを強める人ってほとんどいないんです。

大抵の人は、「そろそろ生まれた地域の役に立ちたいな」とか「この地域ってこのままでいいのかな」とか「自分もいつか古田さんみたいな先駆者になれたらな」程度のちょっとした思いから始まります。

その思いを高める方法はいくつかあるんですが、ひとつが周囲からの期待です。

自分ひとりで取り組んでいると、思いが消えてもOK、辞めたくなったら辞めてもOKとなってしまう。
ただ、自分の取り組みを応援してくれる人、定期的に話して「もっとやれるよ」と言ってくれる人がいると、取り組みは自分だけのものではなくなります。

三豊では、古田さんが地域の外から入って、新しい活動を成功させたことが「煽り」になって、地域内のプレイヤーを生んだ。
そして、そのメンバーたちが共同で事業を行なったことが、お互いを「煽る」機能となって、お互いに本気度を高めるようになっていたのだと感じました。

今、成功している地域を見ていると、相互に「煽り合う」状態が自然発生的に生まれていると思います。
ただ、この「煽り」の機能は「型」としてどの地域でも生まれるように設計していけるとも思うんですよね。

村上:前編では、お金の仕組みを議論しましたが、今回は人の仕組みの話ができました。

地方創生においては、ヒトが大事だ、ヒトにこうやってアプローチするんだ、という議論は一定ありますが、お金の仕組みと併せた議論はまだ少ない。

地方創生が属人的な現象ではなく、応用可能なフェーズに進化するには、このお金と人の仕組みを両面から考えるのがカギです。全7回を通して、お金づくりと人づくりの型を皆さんと一緒に見出していきたいです。
 



 

特設ページでは、約3時間に及ぶ白熱の議論を全て絵書き起こした全文議事録や、議論のダイジェスト動画を公開しています。
より深い先駆者の議論はこちらの特設ページからご覧ください。


 


 

 

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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地方創生先駆者会議
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