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公開日: 2023/2/21(火)

「あいつがいるなら行かない」 愛媛県松山市、地域のしがらみを乗り越えた「誰がつくったかわからない磁石」

公開日: 2023/2/21(火)
公開日: 2023/2/21(火)

「あいつがいるなら行かない」 愛媛県松山市、地域のしがらみを乗り越えた「誰がつくったかわからない磁石」

公開日: 2023/2/21(火)
オーディオブック(ベータ版)

【提供】EY知恵のプラットフォーム

 

地方創生やまちづくりにおいて、地域内外のさまざまなステークホルダーから理解や協力を得るのは極めて重要であり、かつ困難である。

 

特に行政や地元の商店主、多様な価値観を持つ市民に至るまで、多くの人に地域のことを「自分事」として考えてもらうのは容易ではない。

 

第5回となる地方創生先駆者会議。

 

今回のプレゼンターは、愛媛県松山市で民主導のまちづくりに取り組む加戸 慎太郎氏だ。

 

市民を惹きつけるまちのビジョンを掲げ、客観的なデータからファクトベースでコミュニケーションを図り、さまざまなステークホルダーの理解と協力を得ながら、地域のエコシステムを構築してきた加戸さん。

 

同氏が代表取締役を務める株式会社まちづくり松山で手がけた「地域独自のデジタルマーケティングインフラの整備」は全国的に高く評価され、「第 10 回地域産業支援プログラム表彰事業(イノベーションネットアワード 2021)」において最も優秀な取り組みに与えられる「経済産業大臣賞」を受賞した。

 

まちづくりを自分事としてとらえ、主体的に参画したくなる仕組みをどうつくるか。

 

周りの理解・協力を得るために必要なコミュニケーションとは何か。

 

そして、地域エコシステムの構築にあたってキーワードになるという「浸透膜」と「逆浸透膜」とは何か。

 

加戸氏のプレゼンを基に、他市でも応用可能な成功のエッセンスを探っていく。

 

「データによる見える化」で
地域の軋轢を乗り越える

 

 加戸 慎太郎  皆さん、こんにちは。株式会社まちづくり松山の加戸です。自己紹介を兼ねて、これまでの歩みとその中での気づきを皆様にお伝えできればと思っています。

 

ファーストキャリアは2005年にゴールドマン・サックス証券に入社し、リーマンショックなど、さまざまな社会の推移を経験しました。その後、父が病気になったため地元・松山に帰り、家業を継いだのが2009年。街の現状に危機感を持ったのがきっかけで今から9年前の2014年に株式会社まちづくり松山の社長となって、地域の縮図ともいえる商店街を舞台にまちの活性化に取り組んでいます。

 

具体的な取り組みとして、お金の流れである「金流」、地域の人の流れである「人流」、そしてイベント販促やその他事業による「商流」。まちづくり松山ではこれら3つの流れを後押しし、分析するためのインフラを構築し、まちづくりの効率化を意識してきました。

 

図:データを集め、分析し、使うというサイクルを示している。

(提供:株式会社まちづくり松山)

 

金流では、地域におけるスマート決済サービスである「まちペイ」をスタート。2018年に、まずは中心部の商店街から地域キャッシュレスへの参加・活用の実績をつくり、2019年には経済産業省のキャッシュレス・消費者還元事業の盛り上がりを活用して、一気に加盟店を松山市全域へ拡大させました。

 

コロナ禍の2020年には、新型コロナの感染拡大によって打撃を受けた観光事業者・飲食事業者を市が集中支援する事業があったのですが、1000件(現在2000か所以上)を超える事業者が参加した同事業でも「まちペイ」が決済ツールとして導入され、決済データから事業効果を分析できるようにしました。

 

次に人流では、来街者捕捉カメラを2019年に市内に18台設置 。時間帯別・曜日別・日別の来街者データを取り、エリア間の動態を明らかにしました。域外からの来街者を「見える化」することで、経済効果が市内全体に行き渡っているかが診断できるようになりました。

 

商流では、「市民が集うおしゃれで楽しいまち」を目指して、2013年に「お城下スプリングフェスタ」を開催。歩行者天国を実現しました。グルメ出店や地元スポーツチームによる体験イベント、キャラクタースタンプラリーにライブパフォーマンスなど、商店街が課題としていたファミリー層をターゲットにした取り組みで、商店街や近隣エリアにビジネスの流れをつくりました。こちらもそれぞれのエリアで通行量を調査し、データとして提示できるようにしました。

 

データは周囲のコンセンサスを得るためにとても大切です。

 

「お城下スプリングフェスタ」のような事業に取り組む際、周りから「そんなお金を使って何になるんだ」との声が上がることもあります。だったらちゃんとデータを取って、予測を立てて、それに基づいたコミュニケーションを行い、効果が出るところを見せようと。

 

実際に、取り組みに際しては関係者のもとに足を運び、計測したデータと地図を広げ、「こことここは通行量が多いけれど、ここは少ないんです。ここを盛り上げることで全体に裨益させることができるから、このチャレンジにお金をかけさせてください」と、説明させていただきました。

 

データを持っていろんな企業にお願いに行った当時、私は地域の中では、何の役もしていないただの青年でした。

 

家業を引き継いだばかりの3代目の経営者。関係者の中でも一番年下です。でも、一生懸命コンセンサスを取っていった結果、無事にイベントができました。

 

(加戸慎太郎さん)

 

「誰がつくったかわからない磁石」で
円卓を囲む

 加戸  続いて、こうした取り組みをどのように進めていくべきかについてお話しします。

 

先ほどの話で、データに基づきファクトベースでコミュニケーションを取る重要性についてはご理解いただけたかと思います。しかし、それだけでは人は動きません。取り組みの意義や効果について理解してもらえたとしても、「自分事化」して積極的に参加してもらうには他にも大事なことがあります。

 

それは「みんなを『円卓』に座らせる」こと。

 

例えば、会議やプロジェクトのときに「集まってください」と声掛けをしても、「なんでそれ行かなきゃいけないの?」「誰が来んの?」「おまえは何なの?」と必ず言われます。誰が来るか聞いた上で、「あいつがいるなら行かない」とか、「おまえのために俺が集まれってことか」といった話になる。

 

そこで大事になるのが「自分を消す」ことです。誰か特定の人がリーダーをやったり演出したりすると、みんな誰かに踊らされるのが嫌なので付いてこないんです。自分を消した上で、みんなが納得できるようなまちのビジョンを掲げ、居場所と出番を用意すると、みんながどんどん引き寄せられていく。場に「磁石」の効果が生まれて、みんなが円卓に乗ってくれるんですね。

 

この磁石は誰がつくったものか、わからないものでないといけません。先ほどお話ししたように、特定の誰かに踊らされているという感覚を持たれないよう、取り組みについても「自分がつくった」とは言わない。

 

自分を消して周りをプロデュースしていくんです。私が頑張った、ではなく、みんなでやったことをみんなで共有する。私が関わっていたプロジェクトにおいても、それを繰り返すうちにいつの間にか磁石ができあがり、様子見していた人たちが集まってきて、「私もやるわ」や「やってみたい」という声が聞かれるようになりました。

 

一度「自分事化」すれば、もう人から何を言われても、気にせずどんどんやっていきます。

 

「誰が作ったかわからない磁石」をどう作るのかが、まちづくりを推進する上で、とても重要なポイントになると思っています。
 

地域の持続的発展を実現する
「MAP'S+O」体制

 

 加戸  これまでは「地方創生」という言葉をあまり使ってこなかったのですが、村上さんと出会って以来、本気で「地方創生」に向き合うようになりました。

 

何のためにやるのかといえば、私の結論は「経済を活性化させる」ためです。

 

自力自走で経済を回す。地方から継続的に、自立した発展を促していく。

 

そのためには、いわゆるスタートアップが欠かせません。スタートアップが自然発生的に生まれてくる状況までいけばいいのですが、せめて、事業の種を植えたら、自然と育っていってくれるようなスタートアップエコシステムが必要だと思っています。

 

また、地域の現状として、ものすごく少ないパイを奪い合っていることに課題意識を持っています。これでは地域全体の経済を支えていくことなんて到底できないので、お互いにパイを分け合いながら納得できる形で進めてきました。

 

ただ、最終的には、パイの分配というメリットに基づくつながりではなく、コミュニケーションによる相互理解でストレスのない地域をつくるのが一番、という結論にたどり着いています。

 

私は地域の持続的発展に必要な考え方を、「MAP'S+O」と整理しました。「M」がマネージャー、「A」がアグリゲーター、「P」がプレイヤー、「S」がスポンサー、そしてこの実行を支えるためのオフィス、オーガナイザーが「O」。

 

良い取り組みをするためには、地域のプレイヤー(P)を生み出し、適切に事業者(A)の参加を受け入れ、全体をマネジメント(M)する力が必要です。さらに、それらを支え、事業と地域内外をつなぐ情報共有、発信力を備えた事務局機能(O)が正常に働くことで、サポーターやスポンサー(S)の支援を集められるようになる。結果、事業が前進して、地域の持続的発展を実現できるのです。

 

 堀 潤  これまでの先駆者の皆さんの現場は、担い手たちが外から入ってくるケースが多かったし、外から来た人と内の人材が協力して何かを起こしていく仕組みを見てきました。

 

しかし、われわれが松山の加戸さんの現場に行った感触としては、外からの人材が中心にはならずに、地場でずっとやって来られた方々の参画を促していく。さらに、その人材を育てていきながら、新しい分野に投入していくといった、かなり内製化した取組を進めていらっしゃったように感じます。

 

取り組みを進めるには人材の多様性も大切になると思うのですが、その部分は内側にいる方々で担ってこられたんですか?それとも、外から来られた方々も入ってこられたんでしょうか?

 

(MCを勤める堀潤さんと宮瀬 茉祐子さん)

 

 加戸  この土壌を形成する段階では、地域外から関わった人はあまりいないと思います。

 

「地域に対する投資」を担うアセットマネージャー、つまり「地域におけるGP」の輪を少しずつ広げる中で、多様性を吸収していったというイメージの経緯です。

 

資料:そもそも、「地域におけるGP」とは何か? 「地域に対する投資」に対する“アセット”マネージャー。(主な役割) ①投資する原資を集めてくる。②投資するプロジェクトを見つけてくる。③投資先のプロジェクトを成功させリターンをLPへ返す。【参考】地方創成SDGs官民連携PFWS資料(抜粋)

(株式会社Ridilover作成)

 

これまで、いろんなレイヤーを組み替えながら進めてきました。場面、場面で少しずつメンバーが違う。巻き込み引き出すことに集中してきました。ただ、どんな場面でも未だに自分が最年少といった状態が続いて、「おまえがやってくれ」になりやすい。

 

誰かひとりの力ででやるのは限界だと気づいたし、理想のマネジメント体制ってなんだろうと考えた時に、「MAP'S+O」の体制を組んで、できる限り醸成したものを、次の誰かに引き継いでいきたいと考えるようになりました。

 

 図:【これまで:一人のスーパーマンがGP「人材」としてPJ・事業を立ち上げ(リターンの見えにくい/小さな地方創生、リスクを取ってチャレンジできる人材は限られる)】→【これから:GP的な「機能」をシステムとして担保する(リスクをみんなで分担し、チャレンジが起こりやすい地域へ)】
(株式会社Ridilover作成)

 

都会に吸い上げられ続けるー。
現状を変えるために必要な「逆浸透膜」

 

ここまで、まちづくり松山の活動を切り口に、「地域内」での地方創生の取り組みについて話を深めてきたが、話は都会と地方、地域から見たときの中と外の関係性へと移っていく。

 

松山という一つのエリアを、核と膜を持つ細胞のように見立てたとき、そこには、地域の中から外へと流れていく「浸透膜」の機能と、地域の外から中へと流れてくる「逆浸透膜」の機能がある。

 

 宮瀬 茉祐子  加戸さんの「少ないパイを奪い合っている」地域のお話を聞いて、都会と地方の間にある「浸透膜」がキーワードになると思いました。せっかく松山で良いことをしても、浸透膜が引かれることでリソースや成果が都会に吸い上げられていく。

 

先程の金流の話でも、もし「まちペイ」ではなく、PayPayを使って地域の販促をしていたら、せっかく地元で使われたお金のデータや経済効果が、条件の有利な都会の事業者、外に流れていってしまう。

 

地域独自に持てる武器の決済システムである「まちペイ」を使うことで、お金もデータも全て地元のために使えるし、付与されたポイントも地元の中だけで回すことができる。まさに藩札ですよね。

 

現状は、地方から都市へとリソースが吸い上げられる「浸透膜」にかかる浸透圧が以前にも増して強くなっていると思いますが、発想を変えれば、「逆浸透膜」を意識的に引いておくことで、今度は良いものだけを都市部から松山に取り入れることができるようになる可能性がある。

 

地域のことを考えた時に、どれぐらいのバランスがいいのでしょう。

 

 加戸  そうですね。吸い上げられるのはお金だけでなく、若い労働力も考えられます。残念ながら、今は都会に強く吸い上げられるようになってしまっている。

 

だからこそ、逆浸透膜を引いて、都会のいいところを自分たちの地域に持って来られる手段を作って、地域の人材を留めたり、呼び込めたりできないかと考えています。

 

でも、地域の側に引き抜くとなると都会の人は無意識に大反対。気づかれないよう、こっそりやらないといけないんですね。

 

今日は皆さんに、逆浸透膜を作って独自の手段を持つ是非について意見をいただきたい。もしそれが叶わないんだったら、正直もう地方は難しいでしょう。

 

また、地方か都会かという二者択一な話ではなく、資本主義の仕組みを地方で爆発させ、創発させていくことで、日本全体が良くなるのであれば、その可能性についても考えたいです。

 

 藤沢 久美  浸透膜と逆浸透膜のバランスは、今私の中でとても妄想が広がるキーワードだなと思って伺っていました。確かにヒト、モノ、カネ、データ、全てが外に出ていってしまうのは、地方だけではなく日本全体で言えることです。

 

北海道には外国人の方々がたくさん観光に訪れるキロロやニセコといった地域がありますよね。国内の都市部に取られるだけでなく、国外へと吸い上げられる地方もあります。

 

逆浸透膜の圧がポイントだと思っていて、圧にどんな種類があるのか、どのくらいの圧力がちょうどいいのかを、今日うかがいたいです。

 

(藤沢久美さん)

 

 安部 敏樹  浸透膜や逆浸透膜はめちゃくちゃ好きな話で、自分の研究分野です。いわゆる「散逸構造」ですね。システムをつくったときに、完全に閉じてしまうとシステムは崩壊してしまう。だから、ちょっと開かなきゃいけない。でも、開き過ぎると崩壊しちゃう。そのバランスを調整するものの一つに、浸透膜と逆浸透膜があります。

 

街の中には人流もあれば、金流もあり、さらに情報の流れもある。いろんな流れのレイヤーでどういう浸透膜をつくっていけば良いのか。加えて、それぞれのレイヤー同士が連動しているので、情報と人とどちらが相対的に重要度が高いかを検討する必要も出てきますよね。
 

(リディラバ・安部敏樹)

 

プラットフォーマーを動かすための
「大義」の重要性

 

 牧 大介  先ほどのPayPayとまちペイの比較がとても面白いと思って聞いていました。うちも西粟倉村と厚真町でふるさと納税の取りまとめをやっていまして、今のふるさと納税は、いくら広告料を積むかで、大体の勝負が決まる構造になっています。あらゆる情報が、納税事務に強いプラットフォーム事業者に集約されていて、地域には全く入ってきません。

 

強いプラットフォームからどうやって自立していくか。情報とお金を自分たちの力で回して、資産として蓄積していく仕組みを考えて、今色々試しているところです

 

 古田 秘馬  牧さんのお話しを受けて一つご紹介したいのが、北海道のサッポロドラッグさんが運営されている「EZOCA」です。以前、「Tポイントを導入しませんか」と相談が来たそうなんですが、サッポロドラッグさんは、自分たちでつくってしまった。現在は200万人もの会員がいるそうです。

 

サッポロドラッグさんのような小売店が「北海道に全て還元する」との前提でポイント事業を始めたことで、周りの関係者が全員導入しているんですね。

 

この手の仕組みは使う場所で一気に始めることが重要です。また、彼らは自分たちじゃなく、「北海道を盛り上げる」ための還元にこだわったから、うまくいったのだと思います。

 

(古田秘馬さん)

 

 加戸  サッポロドラッグさんの「EZOCA」はドラッグストア発、飛騨高山の“さるぼぼ”は金融機関発。理想は、事業の可能性を信じている人がそっとはじめて、誰がつくったかわからないようにして、いろんなところに広がっていく流れだと思います。うちの場合は、構想から7年かかっています。当時はいろんな人から、「こんなのはできない」とご指摘をいただくところからスタートしました。

 

 堀  ポイント制度を導入しようとしても、やはり商店街ごとにそれぞれに力関係や独自のものがあるから難しかった。実際、まちペイが誕生するまでにはいろんな試行錯誤があったんですよね。それをシステム化していかれた加戸さんの取り組みは、他の地域にとって良き手本になると思います。

 

 上山 康博   つ質問がありまして、まちペイはマイレージや電子マネーなどとは等価交換できる形になっているんですか?

 

 加戸  もともとは交換できるようにするつもりでしたが、結果から言えばできませんでした。ベンダーロックというか、「地方でそんなことやるのはおかしい」と言われてしまいました。

 

 上山  基本的に、大手は最終的に自分のところに吸い上げるエコシステムをつくっているので外に出したくない。だけど本来、ポイントは松山だけに閉じる話ではないですよね。グローバルでポイントなりマイレージを持っている事業者の人たちとも、「地域に対する貢献になる」との大義を持って話をしていけば、等価交換できるようになる可能性がある気がするんです。

 

松山はその一つの基点です。ここを全部やり切ったら大きく変わりますよ。やりがいがありますよね。

 

(上山康博さん)

 

地域の「複層性」をどう捉えるか

 

 村上 敬亮  ここで新たにキーワード、「ミルフィーユ」を付け加えたいです。地域はまさにミルフィーユだと考えていて、多層的に積み上がって成り立っている。そしてそれぞれの層の中に尖っている人と調整する人がいる。

 

この構図が加戸さんのお話にも出てきますが、加戸さんの場合、尖っている人の役を1人で引き受け過ぎなんです。普通はもうちょっと域外から仲間を連れてきて集団戦をやるので、戦う方も守る方も数が拮抗するはず。

 

加戸さんは極端に一人で全部背負っているので、しんどい代わりにその分「膜」がどこまでかが非常にわかりやすくなって、対立の構図が見えやすい。

 

松山のケースで、ミルフィーユ的に何がどう広がって、プラットフォームである「まちペイ」がどう差し込まれたかを見ていけば、他の地域に使える方程式が見えてくるのではないでしょうか。

 

(村上敬亮さん)

 

 加戸  まさにそうだと思います。算数や数学ができる人は、具体と抽象の行き来ができる。膜の境界線や範囲を類推、導き出すこともできる。ある人やある事象を見るときに、その構造を分解した上で答えを出して、突き進む力があるんです。今はそれをシステムに入れようとしています。

 

 安部  少し引いた形で、各地域がそれぞれの経済圏を持つために、何が必要かを考えた時、松山の事例は非常に示唆深いと思っています。

 

まず、松山自体が四国周辺領域から吸い上げる側でもあるとの話がある。松山の街は核と膜もわかりやすいですよね。お城があって、囲うように街ができあがっていて、地域全体どころか島全体も含めて吸い上げるようなところがあり、膜の線を引けるところが複数ある。だから、一つの街としての単位が複層的に設定できるのだと思います。

 

あと、加戸さんの考えの背景にある「外の経済にそのまま接続すると、結局大きいほうが強い」ということ。為替でもトレードでも、流通量が多い方が強いですよね。例えば、僕が松山に行ったときにPayPayポイントがあって、PayPayポイントをわざわざまちペイに変えて、松山経済にコミットする理由があまりない。

 

なぜ松山でしか使えない「まちペイ」に変える必要があるのか。まちペイのプレミアをどのように地域全体で合意形成をつくって乗せていくかが、一番肝になると思いました。

 

***

 

データ化された市民の行動や意思決定を元に、ファクトベースで周囲とコミュニケーションを重ねてきた加戸さん。自分を消して、「誰がつくったかわからない磁石」でまちの人たちを引き寄せ、それぞれに出番と居場所を用意することで周囲の理解と協力を得てきた。

 

地域内では一定の成功を収めたものの、地域の中と外の関係性という視点から見てみると、都会との難しい駆け引きという課題も残っている。一地域では答えが出しにくい問いに対し、他地域の先駆者たちと複眼的に検討を重ねることで、さまざまな切り口が見えてきた。

 

地方創生先駆者会議、円卓を囲んだ先駆者たちの議論はなおも続いていく。

 


 

特設ページでは、約3時間に及ぶ白熱の議論を全て書き起こした全文議事録や、議論のダイジェスト動画を公開しています。
より深い先駆者の議論はこちらの特設ページからご覧ください。



 




 

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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