2050年、海に漂うプラスチックごみの量は、世界の海中
2050年、海に漂うプラスチックごみの量は、世界の海中の魚を合わせた量を上回るとも試算されている。そうした海洋汚染問題の主な原因は、私たちが大量消費しているプラスチックごみです。リサイクルされていると思われていた資源は、実は「循環」していないという現実も。プラスチックがごみになった「その後」を構造的に考えます。
2050年、海に漂うプラスチックごみの量は、世界の海中の魚を合わせた量を上回るとも試算されている。そうした海洋汚染問題の主な原因は、私たちが大量消費しているプラスチックごみです。リサイクルされていると思われていた資源は、実は「循環」していないという現実も。プラスチックがごみになった「その後」を構造的に考えます。
2050年、海に漂うプラスチックごみの量は、世界の海中の魚を合わせた量を上回るとも試算されている。そうした海洋汚染問題の主な原因は、私たちが大量消費しているプラスチックごみです。リサイクルされていると思われていた資源は、実は「循環」していないという現実も。プラスチックがごみになった「その後」を構造的に考えます。
提供:株式会社放電精密加工研究所
「従来から、リサイクルするよりも新たな原料で作る方が、結局は安上がりだし、高品質になるというのが通説でした」
廃棄物処理・リサイクルの専門雑誌『週刊循環経済新聞』の記者として、廃プラスチックにまつわる取材を行ってきた中西康文さんは、プラスチックのリサイクルをこのように評価する。
リディラバジャーナル、今回のテーマは「プラスチック資源循環の現在地と未来」
編集部は、2017年からプラスチック資源循環の問題を取材し、18年には構造化特集「プラスチックごみ」を公開した。
その後、環境問題への関心は年々高まり、各企業の「脱プラ」に向けた取り組みや、リサイクル製品の発表など、ポジティブな報道を目にする機会が増えたものの、個別の取り組みを超えた問題の全体像に触れる報道は決して多く無い。
そこで今回は、専門家・リサイクル事業者・自治体にインタビューを実施。いま日本のプラスチック資源循環が抱える課題と、課題を乗り越える方法を聞いた。
前編では、「プラスチック資源循環の現在地」をテーマに、3Rそれぞれの観点から、日本のプラスチック事情を明らかにする。
プラスチック大国日本
大量消費の理由
資源循環のキーワードとして挙げられる「3R」。
①Reduce(リデュース):発生抑制
②Reuse(リユース):再利用
③Recycle(リサイクル):再生利用
を意味するが、①→②→③の順番で優先的に取り組むことになっている。
そもそもごみが発生しなければ再利用も再生利用も必要ない、再利用ができれば再生利用は必要ない、といった考え方で、資源循環の上流過程での対策を優先している。
日本のプラスチック資源循環は、現状どのようになっているのか。
まずは、最優先である①「リデュース」の現状について。
2020年時点で、日本の廃プラスチック総排出量は年間822万トン。
世界的には、年間5000万トン近くのプラスチックを排出するアメリカ・中国などのインパクトが大きいものの、日本も世界有数のプラスチック排出国である。
中でも日本は、レジ袋やコンビニ弁当の容器など、「使い捨てプラスチック容器包装」の使用が非常に多い。
2018年の国連環境計画の発表によると、日本の一人あたり「使い捨てプラスチック容器包装」廃棄量はアメリカに次ぐ世界第2位だという。
プラスチックの発生そのものを抑えるリデュースの観点から、日本の抱える課題は大きいと言える。
レジ袋の有料化が象徴するように、近年では、プラスチックの使用を抑える取り組みが次々と生まれ、「脱プラ」が進んでいるが、なぜ日本はここまでプラスチックを大量に消費しているのだろうか。中西さんは次のように語る。
「矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、日本のプラスチック使用量が多い要因のひとつは、日本の技術力の高さです。
例えば、コンビニなどで貰えるレジ袋は、非常に耐性が強く、何回使っても、なかなか破れません。
スーパーで売っている醤油やマヨネーズは、長期間保存しても品質が劣化せず、賞味期限も長いですが、これは良質なプラスチック容器があってのことです。
技術力が高いゆえに、高品質な製品が作れてしまう。結果として多くのプラスチックが消費されてきました」
(『週刊循環経済新聞』編集部 中西さん)
東京都・千葉県でプラスチックのリサイクル工場等を経営し、廃プラスチック問題に詳しいサイクラーズ株式会社の福田隆代表取締役も、プラスチックの価値を次のように語る。
「端的に言うと、プラスチックというのは、非常に優秀な素材なんです。
価格・加工のしやすさ・耐久性・使いやすさなど、色々な観点を考えると、プラスチックを使うのが合理的な場面が多いゆえに、様々な場面で活用されてきました。
企業も個人も、それぞれのできる範囲で脱プラを進めるのは重要です。
ですが、プラスチックがこれほど社会に浸透しているのは、それなりの理由がある。
言い換えると、脱プラは不便さやコスト増をもたらす瞬間もあると理解した上で、脱プラの議論を進めるべきだと感じます」
(サイクラーズ株式会社 福田隆代表取締役)
私たち消費者はエコバックを持ち歩く、プラスチック使用の少ない製品を選ぶなど、企業は製品の簡易包装に取り組むなど、個人・企業それぞれにできることはある。
ただ、現状の技術ではプラスチックが素材として優秀であり、使用が合理的であるとの前提を理解し、リデュースだけに依存せず、リユース、リサイクルも含めて総合的に資源循環に取り組む必要があるのだ。
リサイクル率86%
高水準に隠された問題
次に優先とされている②「リユース」について。
プラスチックのリユース例として
・シャンプーのボトルを毎回買うのではなく、つめかえパックを購入して、ボトルを再使用する
・不用になった家電を捨てるのではなく、オークションサービス等を利用して他人に使ってもらう
などがある。
リユースについて、中西さんは次のように語る。
「日本のプラスチックごみの特徴は、『使い捨てプラスチック容器包装』の多さです。
その使い捨てプラスチック容器の回収・洗浄システムを整えてリユースするという取り組みは、現状日本ではあまり事例がありません。
トイレタリー製品において、詰め替えパックの中身を充填して空きボトルを家庭で再使用するぐらいです。
プラスチック容器に替わって金属製のリユース容器を使う取り組みなども出ていますが、まだまだ、リデュースとリサイクルの問題を中心に考えるのが一般的だと思います」
最後に③「リサイクル」について。
プラスチックのリサイクル手法は主に
・プラスチックから再び物を作る「マテリアルリサイクル」
・プラスチックを科学的に分解して、原料に作り替える「ケミカルリサイクル」
・プラスチックを燃やしてエネルギーを回収する「サーマルリサイクル」
の3種類がある。
では、日本において、廃プラスチックはどれほどリサイクルされているのだろうか。次の図をご覧頂きたい。
先述した3種類のリサイクル手法を合計すると、廃プラスチック全体の86%がリサイクル処理されており、焼却・埋め立ては14%に留まっている。
86%という数字を見る限り、高い水準でリサイクルが行われているようにも見えるが、この数字には2つのポイントがある。
中西さんは次のように語る。
「第一のポイントとして、全体の60%超を占めるサーマルリサイクルは、熱回収や発電をしているとはいえ、廃プラスチックを燃焼しているということで、国内的にはリサイクルに該当しないとされています。
国ではリサイクルを、21%を占める『マテリアルリサイクル』と、3%を占める『ケミカルリサイク』を指すとしています。
第二のポイントとして、21%を占めるマテリアルリサイクルの大半は、日本から海外にプラスチックスクラップ(プラスチックくず)を輸出し、海外でリサイクルされており、国内でリサイクルが完結しているわけではありません」
86%と高水準に見える日本のリサイクル率だが、国内基準に該当しないサーマルリサイクル、そして海外で処理されているマテリアルリサイクルを除くと、実質的に国内でリサイクルされているプラスチックは、全体の10%~15%程度にとどまる。
加えて、廃プラスチックを海外に輸出して処理する手法は、国際的な潮流に逆行しているという。
福田さんは、次のように語る。
「2017年、世界最大のプラスチック輸入国であり、日本の最大輸出国でもある中国が、プラスチックの輸入停止を決定しました。
この出来事は『中国ショック』と呼ばれ、当時日本の廃プラスチックが行き場を失う問題が発生しました。
2018年撮影:行き場を失い福田さんの工場に滞留した廃プラスチックの山
「中国ショック以降、日本の廃プラスチックはマレーシア、ベトナムなど東南アジア諸国に輸出するようになりましたが、廃プラスチックの輸出入はどの国でも規制が強まっており、国際的な潮流として国内処理が求められています」
2021年には、有害廃棄物の国境を超えた移動に関する国際条約「バーゼル条約」の附属書が改正され、リサイクルに適さない廃プラスチックの輸出にあたっては、輸出国との同意が必須となるなど、廃プラスチックは国内処理を重視する傾向にある。
しかし、日本の場合は、国内処理に限界があり、今後も海外と協力する必要があると中西さんは指摘する。
「中国ショックやバーゼル条約など、周辺環境の影響を受けて、日本でも国内処理の機運は高まっていると感じます。
ただ、東南アジア諸国が、今の所はまだ経済状況的にプラスチックくずを欲しがっていることもあって、バーゼル条約の手続きに則った形でプラスチックくずを輸出すれば、一定量は受け入れてくれます。
受け入れを停止した中国に対しても、廃プラスチックをペレット(高品質な粒状のリサイクルプラスチック原料)に加工するなど、実質的にプラスチックを輸出しているケースは多々あります。
国内処理を推進して、資源循環を進めることに異論はありませんが、適正な輸出とは今後も併存した形になると思います」
なぜリサイクルが進まない
乗り越えるべき2つのコスト
リサイクル率は実質10%台、廃プラスチックは「国内処理」という国際的な潮流から遅れを取りつつある日本。
リサイクルを推進する上でのネックは「分別」と「物流」のコストだと、福田さん・中西さんは指摘する。
中西さんは次のように語る。
「プラスチックなら何でもリサイクルできるわけではありません。
良質な素材が無いと良質な製品ができないのと同じで、良質な廃プラスチックが無いと、リサイクルの難易度は高まります。
例えば、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルでペットボトルを作りたいとします。
この時、手元にある材料が、ペットボトル・ラベル・キャップ・ポリ袋など、素材がごちゃ混ぜになっていたら、そこからペットボトルは作れません。
また、手元にある材料がペットボトルだけだとしても、汚れや傷があるものが混ざっていれば、リサイクルしてペットボトルを作るには多大な手間とコストがかかります。
つまり、廃プラスチックの中から、リサイクルに活用できる良質な素材を分別する必要があるのです。
ケミカルリサイクルも同様です。
ケミカルリサイクルにあたっては、1拠点あたり年間数十万トン〜数百万トン単位と、非常に大量の廃プラスチックが必要になります。
日本全体の廃プラスチックが約年間800万トン、これは当然ながら素材も質もバラバラです。
ここから、良質なプラスチックだけを分別し、数十万トン単位で1つの場所に届けるのは、非常に難易度が高いです」
福田さんも同様に、分別と物流のコストについて指摘する。
「分別には多くの人的コストが必要になります。
廃プラスチックというのは要するにごみですから、出す人が『これは良質だ』とか『これは質が悪い』と分別してくれません。
ですから、収集した後で、人の手を使って、良質な廃プラスチックとそうでないものをわけたり、複数の素材が混ざったプラスチックを分解したりする必要があります。
物流には多くの金銭的コストが必要になります。
例えば、ごみ収集車を稼働させると、安く見積もっても1日あたり2~3万円が必要になります。
1台で1日1トンのごみを集めたとしても、その時点で1キロあたり20~30円のコストが掛かります。
集めて終わりではなく、その後『中間処理業者』→『リサイクル事業者』→『販売メーカー』と、製品になるまでに多くの事業者を経由します。
各地に少量ずつ点在する廃プラスチックを、多様な業者を通して製品化する流れでは、物流コストが大きくなってしまうのです」
結果として、多くの場合リサイクルするよりも新品を作る方が合理的になってしまうと、中西さんは語る。
「国内のリサイクルが実質10%台になっているのは、簡単に言うと『リサイクルでは大規模な物量での事業モデルが構築しにくい』『コストを考慮すると、リサイクル原料を作っても国内にユーザーがみつからない』からです。
製品や業界によって事情は異なるので一概には言えませんが、リサイクルで製品を作るよりも、海外でバージン素材から新たに製品を作って、その製品を輸入した方が安上がりになるんです」
分別と物流のコストをいかに抑え、リサイクルがコスト構造上採算が取れるようなモデルを構築することが、今後のプラスチック資源循環のポイントとなる。
ここまで、「プラスチック資源循環の現在地」をテーマに、3Rそれぞれの観点から、日本の廃プラスチック事情を明らかにした。
現在のプラスチックに依存した社会システムや、リサイクルの技術レベルを考えると、急激にプラスチックの使用量が減るような変化や、全てのプラスチックが安価にリサイクルされる変化は現実的ではない。
私たちは、プラスチック大量生産・大量廃棄社会から、プラスチック資源循環型社会への過渡期にいると理解し、小さな変化を積み重ねていくことが重要となる。
後編では、「プラスチック資源循環の未来」をテーマに、国や自治体、事業者がどのような動きを見せているのか、そして今回明らかになった分別と物流の課題に対して、どのような解決策があるのかを探る。
株式会社放電精密加工研究所は、混合溶融技術を用いて従来リサイクルできなかったプラスチック製品のマテリアルリサイクルを推進しています。
また、プラスチックと木や竹など地域で有効活用されてない天然資源を融合したアップサイクル材にし、資源循環型社会の構築と持続可能な社会の実現に向けて取組んでいます。
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