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公開日: 2023/5/4(木)

「数字の先には人命がある」 飢餓問題に挑む国連WFPの「データ・ヒーロー」に迫る(前編)

公開日: 2023/5/4(木)
公開日: 2023/5/4(木)

「数字の先には人命がある」 飢餓問題に挑む国連WFPの「データ・ヒーロー」に迫る(前編)

公開日: 2023/5/4(木)
オーディオブック(ベータ版)

「支援によって、自らの人生を切り開いてくれる人の姿を見ると、やってきてよかったなと感じます」


こう語るのは、田島大基(たじま・だいき)さん。

田島さんは、飢餓問題の解決に向けて「国連世界食糧計画(WFP)」という国際機関で働いている。


国連WFPは、「ゼロ・ハンガー(飢餓をゼロにする)」を目指して活動する国連の専門機関で、これまで123の国と地域で約1億5800万人(2022年度)を支援してきた。世界最大の人道支援機関としてノーベル平和賞も受賞しており、飢餓問題の解決に大きな役割を担っているが、多くの人にとっては馴染みが薄い組織かもしれない。

 

新興国・途上国を中心に経済が成長しているにもかかわらず、実はこの10年ほど、世界の飢餓人口は増加している。
急激な人口増加や、多発する紛争、さらにはコロナウイルスの影響を受け、飢餓問題は深刻化の一途を辿っているという。


そんな飢餓問題に取り組む国連WFPの活動内容や組織の姿について、「中の人」である田島さんに聞いていく。

前編のテーマは「WFPで働くリアル」。
田島さんが日々取り組む仕事について聞いた。

 


 

飢餓問題の解決のためには何でもやる
国連WFPは何をしているのか

リディラバジャーナル編集部 鈴木
田島さん、今日はよろしくお願いします。今はどちらにいらっしゃいますか。
 

田島さん
よろしくお願いします!
今はタイのバンコクにある自宅からお話しています。


 

田島大基(たじま・だいき)さん
国連WFP在バンコク・アジア太平洋地域局  予算担当官
東京大学経済学部卒業後、三菱UFJ銀行、インド地場会計事務所を経て、 タフツ大学フレッチャースクールにて国際ビジネスの修士号取得。 大学院卒業後、JICA勤務を経て2019年4月より国連WFPで勤務開始。東アフリカ地域局、ケニア国事務所を経て、2022年4月よりアジア太平洋地域局所属。


鈴木
まず最初に、国連WFPとはどんな組織か、教えてください。


田島さん
国連WFPは、飢餓のない世界を目指して活動する、国連の食料支援機関です。
 

2022年の統計では、全世界の飢餓人口は8億2800万人と推定されています。
世界の人口は約79億人なので、だいたい10人に1人が「飢餓状態(※編集部注:身長に対して妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要なエネルギーを摂取できていない状態)」にあることになります。

さらに、そのうち4300万人は飢きんの瀬戸際にあるとされ、餓死に至る可能性をはらんでいます。

日本で暮らしていると、飢餓を身近に感じる機会は少ないかもしれませんが、世界的には非常に多くの人々が飢餓で苦しんでいます。
 

飢餓人口は年々増加し続けていて、特に最近では新型コロナウイルスや、ウクライナ危機などの影響で、飢餓や飢餓の一歩手前にいる人たちは急増しています。

鈴木
世界の10人に1人。さらに、現在も増え続けているというのは予想外でした。
飢餓問題に対して、国連WFPが行う「食料支援」とはどのような活動でしょうか。

 

田島さん
食料支援と聞くと、トラックで食料を運んで、飢餓に苦しむ人たちに届けるといったイメージを持つかもしれません。
 

そのような支援は「現物支援」と呼ばれ、国連WFPの主要な活動のひとつです。ただ、食料を届けるだけではなくて、その他にも様々な活動を行っています。

 

例えば、中長期的な食料の自給を目的として小規模農家の支援を行ったり、支援を受ける人が自分たちの買いたい食料を買えるよう、現金・電子マネー・食料引換券等を配給する「現金支援」も行ったりしています。

 

また、WFPは国連の中でのロジスティックス(物流)のリーダーとも呼ばれており、食料に限らない支援物資の輸送や、緊急時の通信・ネット環境整備なども担っています。

 

鈴木
単に「食料を届ける」だけではないんですね。

 

田島さん
他にも、生産された食べ物が1人でも多くの人に届くように、食品ロスの削減に向けたキャンペーン(※2022年度は♯ごちそうさまチャレンジという名前)をやっていたりもして、とにかく飢餓問題の解決のためには何でもやる組織だと思っています。


(現物支援の様子)

国際協力を諦められず単身インドへ
田島さんの異質なキャリア

鈴木
「日本で暮らしていると、飢餓は身近ではない」とのお話もありましたが、田島さんはなぜ飢餓の問題に関心を持って、国連WFPで働くことになったのですか。

 

田島さん
大学時代、スタディツアーでモンゴルに行ったことがきっかけで、国際協力に関心を持ち始めました。

卒業後はJICA(国際協力機構)等の国際協力に直接関わる組織で働こうとしましたが、残念ながら縁がなく、民間の金融機関に就職しました。


でも、やっぱり国際協力の仕事を諦められず、金融の知識・経験が活用できる場所はないかなと考えて、インドの会計事務所に転職をしました。


(インドでの勤務の様子)

 

鈴木
日本の金融機関を辞めてインドに…!
それは、何か日本人を募集していたり、誘いがあったりしたのでしょうか。

 

田島さん
大学時代の開発経済学のゼミの先輩から偶然お誘いの電話があり、色々と悩んだのですが途上国の現場に近づけるとの想いで転職を決意し、現地スタッフとして採用されました。


インドで働く中で、国際協力についてもっと体系的に学びたいと思い、アメリカの大学院へ進学しました。

大学院在学中の夏休みの期間で、ルワンダという国にインターンシップに行き、そこで初めて「難民」の人たちに出会いました。


実際に難民の方々と関わる中で、飢餓など様々な課題に苦しんでいる実態を知り、難民の人たちに何かしたいと思うようになって、外務省が実施する国連JPO試験を通じて、国連WFPの仕事に応募しました。

 

鈴木
国連WFPでは具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。

 

田島さん
「予算担当官」と呼ばれる仕事をしています。

 

飢餓に苦しむ人たちは世界各国にいるので、国連WFPの食料支援は活動国ごとに予算計画を作成して行います。

例えば、私の場合はアジア地域局からバングラデシュやパキスタンなどの予算計画のサポートを担当しています。

 

食料支援を効率的に行うためには、飢餓の人がどれくらいいて、食料はどれくらい必要、という需要サイドの情報と、活動資金がどれくらいあるのかという供給サイドの情報に基づいて、いつ・どれくらい・どこに・何の食料を届けるのがいいのか、計画を立てる必要があります。
 

「予算担当官」は、この支援計画を作り、実際に計画通り支援が行われるよう運用していく仕事です。

 

鈴木
「予算」担当官というよりは、支援のロジスティックを一手に担う、幅広い業務ですね。
 

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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