
さまざまな社会問題が山積しているなか、数年前から「コレクティブ・インパクト」というアプローチが注目を浴びるようになった。これは一つの問題に対し、それまでバラバラだったプレイヤーを連携させることで問題解決を加速させようとする動きだ。
経済的に苦しい生活状態に置かれている子どもの家に定期的に食品を届ける子ども宅食、塾や習い事などの学校外教育に使い道を限定したクーポンを提供し、学校外の教育格差を埋めようとするスタディ・クーポンなど、セクターを超えた連携による取り組み事例は生まれているが、まだまだ広がっているわけではない。
コレクティブ・インパクトによって問題解決を加速させるためには、何をどう実践すればいいのか。今回は、社会起業家の支援に取り組むNPO法人ETIC.(エティック)で、コレクティブ・インパクトの研究・推進を担当している番野智行さんに話を聞いた。
連携することは「同じプロジェクトに一緒に取り組むこと」ではない
近年、日本でも注目されるようになったコレクティブ・インパクトですが、国内ではさまざまな理解があるように思います。
私の解釈では、コレクティブ・インパクトは「異なるセクターが問題解決のために共通の目標をもって動くこと」であり、必ずしも同じプロジェクトに一緒に取り組むことを指しているわけではありません。
たとえば、わかりやすいので国外の事例を用いますが、イスラエルでハイテク企業が深刻な人手不足に陥っている問題がありました。その原因の一つに、高度レベルの数学を学ぶ高校生の数が激減したということがあったと。
この状況を作り出しているのは誰で、誰が解決のカギを持っているのか。学校現場で何かが起きているのかもしれないし、行政の政策変更が重要なのかもしれない。あるいは、ハイテク企業に何かできることがあるかもしれない。
そこで、教育省やハイテク企業、NPOなどの各セクターが集まり、問題の全体像について対話し、深く分析しました。そして「イスラエルの高校で提供されるSTEM教育(※)において、高い探求・分析スキルを獲得する学生の数を2倍にする」という共通のアジェンダに合意し、その達成に向けてそれぞれの取り組みを見直しました。...

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