• 新しいお知らせ
    ×
公開日: 2021/3/17(水)

社会問題を「伝える」ことだけがメディアの価値ではない――人気報道番組制作者と考える「これからのメディアのありかた」(後編)

公開日: 2021/3/17(水)
公開日: 2021/3/17(水)

社会問題を「伝える」ことだけがメディアの価値ではない――人気報道番組制作者と考える「これからのメディアのありかた」(後編)

公開日: 2021/3/17(水)
オーディオブック(ベータ版)

社会問題を伝えるメディアの役割のひとつに、問題を議論する機会の提供がある。それぞれ違う価値観や意見を持った人間同士が議論するからこそ、その問題を可視化できる。

 

一方で、社会問題を取り上げるメディアそのものは、必ずしも直接お金を生み出すことにつながらないこともある。だが、良質なコンテンツをつくり発信し続けることが、間接的に事業の拡大や企業イメージに貢献していることも少なくない。

 

今回はリディラバジャーナル3周年記念として、社会問題解決のために必要なことは何かを出演者や視聴者とともに考える報道番組『ABEMA Prime』チーフプロデューサーの郭晃彰さんと、リディラバ代表の安部敏樹のスペシャル対談を実施。社会問題をメディアを通じて伝える立場として、社会問題を扱ううえで大切にしていることや、コンテンツとマネタイズの関係性などについて語った。
 

 

<郭晃彰さん>

1987年12月31日生まれ。株式会社テレビ朝日に2010年に入社。早朝帯番組でAD、Dを3年間務めた後、社会部に異動。国土交通省、海上保安庁、気象庁を担当。東日本大震災から5年の節目では、ドキュメンタリー番組「その時、『テレビ』は逃げた~黙殺されたSOS~」を制作。同番組は、NewYorkFilmFestivalに入賞。2016年の「ABEMA」開局に参加、夜帯のニュース番組『ABEMA Prime』のチーフプロデューサーを務める。

若者が議論できるようなテーマ設定を

 安部敏樹  『ABEMA Prime』(通称、アベプラ)はコンテンツとしてはテレビ的ですが、テーマ設定が新しいですよね。地上波で扱わないテーマに対して、出演者が右から左から意見を言うことに新規性があると感じます。

 

たとえば「原発に賛成か、反対か」というわかりやすいテーマをやっても、そこで新しい意見はなかなか生まれてこないですよね。視聴者側もすでに自分の意見を持っていそうですし。議論のテーマは、どのように決めているんですか。

 

 郭晃彰  おっしゃる通り、たとえば天皇に関することや原発のような「大きなテーマ」以外で、世の中で意見が割れていることを選ぶようにしています。

 

イメージとしては、視聴者の若い人たちが同じテーマで自分たちも熱く議論して「話し足りないから、続きは飲みながら話そう」と思えるようなテーマ設定を意識していますね。
 

 安部  「社会的なイシューをみんなが語りたがっている」という前提でメディアを運用している、ということですよね。それは僕たちも同じです。

 

僕はテレビにコメンテーターとして出るときは「視聴者をバカにしない」ことを大切にしています。「どうせこの問題について話したってわからないよね」とあきらめるのではなくて、真面目なテーマであっても伝え続けることが大事なんじゃないかな、と。

 

ただ、最近テレビというメディアにおいて感じるのは、報道やニュース番組などが減って、バラエティや生活情報番組などが増えているということ。世に出る情報の総量が減っているのは、社会問題に関心を持つ人が減っている表れなのかなとも思うんですが、そこは郭さんから見ていかがですか。
 

   僕がいるテレビ朝日はもともと報道やワイドショーなどが多い局なので、個人的には減っているとは感じていないのですが、社会問題に関心があったり語り合ったりしたい人たちは、世の中にたくさんいると思っています。Twitterを見ても、いろんな問題について、たくさんの人がそれぞれ議論していますよね。

 

ただ、議論をするうえでの「作法」は大切だなと思います。アベプラでもそうですが、単に相手をやり込めるような議論はすべきではありません。お互いに敬意を持ってそれぞれの意見は戦わせるけれども、議論が終わったあとは握手できるようなスタンスを取れないと、社会問題の解決には向かわないと思いますね。
 

(写真 郭晃彰さん)

違う意見の人たちが議論するほうが問題が「可視化」されやすい

 安部  メディアの信頼性を高めていくためには、コンテンツのクオリティを担保することが大事だと思うんですが、そこはどうされていますか。

 

   僕たちの場合、番組のクオリティを担保するために欠かせない存在が、番組に出演していただくコメンテーターの方々ですね。

 

たとえば「番組でホームレスの問題を扱うときは、安部さんに話してもらえば間違いないな」とか。障害者の問題だったら乙武洋匡さん、下ネタと笑いの境界にあるようなテーマなら芸人のケンドーコバヤシさんに聞く、とかですね。

 

各テーマにくわしい、信頼できる方たちを各ジャンルに持っておく。それができているおかげで、幅広いテーマを扱うことができているなと思います。
 

 安部  とくに視聴者からの反響が大きいテーマはありますか。

※リディラバジャーナルについてもっと知りたい方はコチラ
note
リディラバジャーナル編集部
noteのicon
【強迫症啓発週間】発達障害支援に欠けた「学校・家庭・福祉をつなぐ"あいだ"の存在」
2024年10月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「東大だと結婚が難しくなるから、慶應にしておけば」国際ガールズ・デーに読みたい、女子にかけられている呪い
2024年10月11日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
東京・埼玉で相次いだ闇バイトによる強盗。指示役に脅されていた若者も?
2024年10月4日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「選択的夫婦別姓制度」が総裁選の焦点に?日本の姓の歴史の背景をひもとく
2024年9月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
新しい認知症観とは?“常識”を捨て、認知症の人に「寄り添う」ことが、その人らしさの尊重に繋がる
2024年9月6日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「9月1日」を乗り越えた子どものその後は?SOSを聞き逃さず、切れ目のない支援を
2024年8月30日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
子どもは「安心して学校を休む権利」をもっている。夏休み明けの子どもの自殺防止に役立つチェックリストも
2024年8月23日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「食品ロス」が「日本の食料自給率」を救う?2つの社会課題を解決へ導く循環型システム
2024年8月9日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「パパは寝てる」Tシャツの裏で、男性の育休取得率は過去最高に。新旧の価値観がぶつかり合う転換期
2024年8月2日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
起業家が受ける不当な圧力・セクハラ。背景にあるものは?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年7月26日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「障害者が子どもを産むな」ひとつでもできないことがあれば子どもをもってはいけないのか?
2024年7月19日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
芸術祭なのに、米作りに雪かき?「大地の芸術祭」が挑む地域づくりとは
2024年7月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
「夏休みに特別な体験をさせられない」子どもの体験格差は、学ぶ意欲や将来の可能性にまで影響を及ぼす?
2024年7月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
メディアが作り出した? 生活保護費引き下げにつながった世論
2024年7月1日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
在日クルド人に対するSNSでのヘイトスピーチ。書き込みへの法的措置の意義とは?
2024年6月21日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
輪島・珠洲の断水解消も、水道は使えない。復興を左右するのは世間の関心の深さ
2024年5月31日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
少しずつ可視化されてきた「恋愛的にも性的にも惹かれない」人たち。アロマンティック・アセクシュアルとは?
2024年5月24日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
喜べない教員の給与増。残業が残業だと認められない給特法とは?
2024年5月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
勤務時間15分減で退職金ゼロ?非正規の人の労働条件を改善するための制度のはずが…
2024年5月14日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
性犯罪の被害者の約半数が子ども。わが子をグルーミングから守るには?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年5月7日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
動物の虐待摘発過去最多。「保護犬・保護猫」前進の裏で生まれる課題
2024年4月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
スクールカウンセラー約250人が雇い止め。子どもの心の健康を支える専門職なのに任期は1年?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2024年4月4日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
依存症の人に必要なのは「反省や刑罰」ではなく「治療と仲間」
2024年3月29日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「同性婚を認めないのは違憲」互いの違いを尊重できる成熟した社会へ
2024年3月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
能登半島地震、深刻なボランティア受け入れ態勢不足が課題
2024年3月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
×
CONTENTS
intro
イベントレポート
no.
6
社会課題とメディア
no.
7
no.
8