立命館アジア太平洋大学とN高が目指す「新しい学校のかたち」
立命館アジア太平洋大学とN高が目指す「新しい学校のかたち」
学校とは、校舎があって自転車や電車などで通うもの、毎日通わねばならないもの――。
それは誰も疑うことのない「常識」だった。しかし少子化や多様化が進み、さまざまな事情を抱える子どもたちが増えるなか、果たしてこれまでの学校のあり方のままでいいのだろうか。
そこに疑問符を突きつけたのが、大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)と、“ネットの高校”であるN高等学校だ。
2000年に立命館アジア太平洋大学の立ち上げに奔走した元副学長の今村正治さん、学校法人角川ドワンゴ学園が運営する通信制高校「N高」を運営する園利一郎さんに加え、日本の大学のあり方を問い直すアルタナユニバーシティの喜多恒介さんがモデレーターとなり、「これから学校はどうなっていくべきか」について語った。
※本記事はリディラバが主催するカンファレンスR-SICのセッションを記事にしたものです。
実はすごい既存の学校の仕組み
園利一郎 まず、僕からN高がどういう学校なのかご説明したいのですが、ドワンゴ角川学園が運営する映像授業が中心の通信制の高校として2016年4月に開校し、現在、生徒数は全国で1万人を超えています。
もともとは通信制高校をつくることが目的だったわけでなく、通信制という仕組みを活用して、今までにない新しい高校をつくろうという趣旨でした。
N高では、通学時間がなく生徒の可処分時間が大きい分、プログラミングやいろんな職業を体験してもらったり、なかなか時間が取りづらい留学の準備などに充ててもらっています。
現在は、開講して4年目になりました。
喜多恒介 実際に「N高」をスタートさせて、どんなことが大変でしたか?
園 やればやるほど全日制の学校で培われてきた学校のフォーマットの良いところに気付かされました。
たとえば、既存の学校では1人の先生が40人くらいの生徒の担任になりますが、新卒で入った先生が教壇に上がっていきなり先生としてきちんと機能する、ということがいかにすごいかが、“生徒が一同に介する校舎”のない通信制を運営してみて、改めてわかりました。
通信制高校「N高」を運営する園利一郎さん
それから、部活動やさまざまな行事の実行委員など、やはり1カ所にみんなが集まって何かをすることの大きさです。それによって、あまりデザインされていない学びや社会接続のための活動に自然と取り組むことができるのだなということがわかりました。
「辺境で多分化」こそが無敵の学習環境
今村正治 僕はN高のファンなんですよ。好きすぎて、沖縄のうるま市にある本校まで校長先生に会いに行ったくらいです(笑)。
園 ありがとうございます。
今村 立命館アジア太平洋大学(以下、APU)は、2000年に開学して20年になります。約6000人の学生のうち半分の約3000人が国際学生で、世界約90カ国から学生が来ています。
この20年間で卒業した学生の国(地域)の数は、157カ国にも及んでいます。2019年の志願者数は過去最高で、3年間で志願者が倍に増えました。
喜多 3年で倍ですか?
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