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公開日: 2024/2/15(木)
更新日: 2024/2/22(木)

多忙、責任の重さ、アンコンシャス・バイアス——。なぜ少ない?学校教育現場の女性管理職(前編)

公開日: 2024/2/15(木)
更新日: 2024/2/22(木)
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更新日: 2024/2/22(木)

多忙、責任の重さ、アンコンシャス・バイアス——。なぜ少ない?学校教育現場の女性管理職(前編)

公開日: 2024/2/15(木)
更新日: 2024/2/22(木)
オーディオブック(ベータ版)

「管理職の忙しさ、責任の重さを考えると、自分に務まるとは思えない」「管理職の業務と、育児や介護が両立できる環境にない」——。

 

学校教育現場で働く女性教員たちに「管理職になりたいと思えない理由」を聞いたところ、このような声が返ってきた。

 

日本の学校教育現場では、女性の管理職比率が低い。

 

文部科学省の「学校基本統計」(令和5年度)によれば、教員全体に占める女性の割合と比較して、管理職に占める女性の割合は低い

 

職位別には校長に占める女性の割合が最も低く、中学校や高校では特にその傾向が顕著になっている。
 

文部科学省の「学校基本統計」(令和5年度)より作成

 

また、国際比較を見てみると、日本の小学校・中学校での校長に占める女性の割合は、他国と比べても極めて低いことがわかる。(※)

 

 

 

※出典:独立行政法人教職員支援機構「学校における男女共同参画の推進:校内研修シリーズ117」独立行政法人国立女性教育会館(飯島絵里)より

 

リディラバジャーナル、今回の特集は「なぜ少ない?学校教育現場の女性管理職」。

 

なぜ日本の学校教育現場では女性の管理職比率が低いのか。管理職比率を高めるためには、どのような壁が存在しているのか。

 

さまざまな課題がある中でも、今回は特に「ワークライフバランス」「キャリア形成」にフォーカスする。そして、これらの課題に向き合いながら、現場の最前線で働いている女性管理職の声を紹介する。

 

全3回にわたってお届けするが、まず前編では「ワークライフバランス」における課題について考える。

 

※本記事は文科省からの委託事業の一環で制作しており、無料で公開しています。

なぜ女性管理職比率を高めることが重要なのか

そもそも、女性管理職の比率を高めることの重要性はどこにあるのか。

 

その一つに、学校教育現場における女性管理職比率が低い状況は、児童や生徒にも影響を及ぼす可能性がある

 

独立行政法人国立女性教育会館の報告(※)によると、小中学生に対して「女性の校長はなぜ少ないと思うか」と問いかけたところ、

 

「おとこのほうがつよいから(小1)」


「男の先生がしっかりしているから(小4)」

 

といった固定的な性別のイメージ・固定観念に関する回答が約3割を占めた

 

※NWEC実践研究『女性校長はなぜ少ないのか、少ないことはなぜ問題か 学校教員の男女格差の現状と子供のまなざし』(著者:飯島絵里)より抜粋 https://nwec.repo.nii.ac.jp/records/18871

 

教員の現状が、子どもたちの固定的な性別役割分担意識に影響を与えている可能性があることがうかがえる。

 

また、国立女性教育会館の「学校における女性の管理職登用の促進に向けてⅡ(※)」では、多様なリーダーによる組織づくりの重要性が強調されている。

 

※独立行政法人国立女性教育会館「学校における女性の管理職登用の促進に向けてⅡ」 https://nwec.repo.nii.ac.jp/records/19014

 

「社会全体が大きな変化に直面する今日、画一的で多様性のない組織では、時代に即した柔軟な対応や意思決定が十分になされないリスクが高くなるといわれています。

 

学校組織においても同様であり、子供たちの健やかな育ちを支えていくためには、異なる強みを持つ多様なリーダーによる組織づくりが鍵となります」

 

こうした点を踏まえて、これまで政府は学校教育現場の女性管理職比率を高めるための取組を進めてきている。たとえば校長に占める女性の割合は、小学校では1990年代に増加、2019年には2割を超え再び増加傾向にあり、中学校・高校でも1990年代半ばからゆるやかに増加している。

 

政府はさらに増加させていくため、第5次男女共同参画基本計画「学校教育分野における政策・方針決定過程への女性の参画拡大に関する施策の基本的方向」において以下の目標を設定している。

 

▼初等中等教育機関の教頭以上に占める女性の割合

  • 副校長・教頭 20.5%(2019年) → 25%(2025年)
  • 校長 15.4%(2019年) → 20%(2025年)

 

▼都道府県及び市町村の教育委員会のうち、女性の教育委員のいない教育委員会の数

  • 64(1,856教育委員会の内数。2019年)→ 0(2025年)

 

一方で、前述したように、女性の管理職比率は依然として低い状況が続いている。

 

では、女性管理職比率の増加を阻む壁はどこにあるのか。その一つが「ワークライフバランス」に関する課題だ。

「家庭との両立を考えると…」女性が育児や介護を長時間担っている現状

女性の学校教員は、男性よりも家事、育児、介護を担っている割合が高いという現状がある。

 

「女性教員の活躍推進に関する調査研究(平成28~30年度 独立行政法人国立女性教育会館)」の 「学校教員のキャリアと生活に関する調査(※)」によると、子どもが未就学から小学生の間に、女性教員の79.4%が家事や育児等の半分以上を担っている(た)とされている。一方で、男性教員ではその割合は3.5%だった

 

また、家族の介護を経験したと答える女性教員は25.3%、男性教員は 20.8%。「介護を理由に仕事を辞めることを考えたことがある」と答えた女性は33.1%に対し、男性は16.1%だった。

 

※独立行政法人国立女性教育会館「学校教員のキャリアと生活に関する調査」結果の概要 https://nwec.repo.nii.ac.jp/records/18821

 

富山県富山市立呉羽小学校の校長である深井美和さんは、学校現場で働く女性教員の“ためらい”について次のように語る。

 

深井美和(ふかい・みわ)
富山大学教育学部卒業後、小学校教員採用。学年主任などを経験後、富山市教育委員会 東部教育事務所主幹指導主事を務め、現在は富山市立呉羽小学校校長。

 

「優秀な女性の先生に管理職への挑戦を勧めた際、『本当に自分にできるのでしょうか』という不安の声が返ってきたことがありました

 

『挑戦してみたい気持ちはあるけれど、子どもがまだ小さく、学校に遅くまでいることができないから、管理職の業務が自分に務められるのか自信が持てない』と」

 

深井さんは、定時で退勤できるような働き方の提案や、「業務内容や分担を見直して教頭や校長がカバーするから」といった声かけをしたことで、女性教員のモチベーションが上がり、家庭との両立が実現できたと言う。しかし、家庭との両立に不安を感じるために、管理職を望まない女性教員がいることがうかがえる。

 

こうした不安を抱える背景には、管理職が多忙な業務であるという点もある。

 

文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度)によれば、たとえば副校長と教頭は平日の勤務時間が最も長く、小学校・中学校ともに一日平均11時間40分以上に及ぶ

 

市の教育委員会で働くOさんは、教頭の忙しさについてこのように語る。

 

「教頭先生は、学校内外で多くの実務を担当しています。

 

校内では、組織や仕事の方法の変更の取りまとめ、学年主任の責任が及ばないところのさまざまな業務、なかには生徒指導や学級崩壊にも対応している場合もあります。

 

対外的には、国や県、市の調査や外部アンケートへの回答なども担っています」

 

また、小学校で保健主事を担当する教員Mさんは、身近な女性管理職を見て「私はやりたくないと思ってしまった」と話す。

 

「PTA、地区の子ども会、警察といった外部とのやり取りはもちろん、校内でも物が壊れたら対応する、人手が足りないときには生徒指導に入るなど、本当に多岐にわたる業務をこなしていて。休日でも対応することがあり、“なんでも屋さん”という印象です。

 

正直、とても大変そうなので私はやりたくないと思ってしまいます」

アンコンシャス・バイアスがあるケースも。女性教員を取り巻く課題

Mさんのように、多忙な職務から管理職になりたくないと考えている女性教員は少なくない。

 

 「学校教員のキャリアと生活に関する調査」によれば、管理職になりたいと思う教員の割合は女性が7.0%、男性が29.0%となっている。

 

管理職になりたくないと答えた人の理由として、特に女性のほうが男性より割合が高い項目は、「責任が重くなると、自分の家庭の育児や介護等との両立が難しい」「労働時間が増えると、自分の家庭の育児や介護等との両立が難しい」などだった。

 

 

また、このような状況の背景には、学校教育現場で「女性は家事、育児、介護をするのが当たり前」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)がある可能性も考えられる。

 

県の教育委員会で勤務するYさんは「もちろん学校現場によって異なるのですが、いまだに『女性は家庭のことをやるのが当たり前』という認識のところもあります」と話す。

 

「たとえば、管理職のポジションを決める際、校長が無意識のうちに『女性は家事をしなければならないから長時間働くことはできないだろう』『突発的な事態には対応できないだろう』と考え、管理職を男性に任せているケースがあります」

 

「学校教員のキャリアと生活に関する調査」では、管理職の約半数が「育児や介護等を担う教員には管理職になるための試験や研修を勧めにくい」と答えている。

 

この結果からは、育児や介護を担う多くの女性教員が、評価者(管理職)から管理職になるための機会・チャンスを提供されにくい傾向があることも考えられる

 

Yさんは続ける。

 

「女性教員から、『そもそも女性は家庭との両立が課題とされるが、この考え自体が“家事・介護・育児は女性がするもの”という前提に立っているのではないか。まずこの認識を変える必要があるのではないか』という意見をいただいたことがありました。

 

我々としても、まずこのような認識や価値観を変えていくことが必要だと思っています」

 


 

ここまで、ワークライフバランスにおける課題を見てきた。

 

管理職の多忙さとその責任の重さから、家庭での育児や介護との両立が難しいと感じ、管理職になりたくないと考える女性教員がいる。

 

さらに、この課題の背景には、学校教育現場に「女性は家事、育児、介護をするのが当たり前」というアンコンシャス・バイアスが根付いている可能性もあることもうかがえた。

 

三回にわたってお届けする特集「なぜ少ない?学校教育現場の女性管理職」。中編は、キャリア形成における課題に迫る。

 

 

 

※2024年2月19日 20:00
編集部内で下記の記載漏れが確認されたため、追記いたしました。
「※本記事は文科省からの委託事業の一環で制作しており、無料で公開しています。」
これまで委託事業の一環で制作した記事は必ずその旨を記載しておりましたが、編集部内での作業時に手違いがあり、記載が漏れていたため追記いたしました。

 


 

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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キャリア形成
no.
2
ロールモデル
no.
3