「管理職になりたい」という思いをどう後押しする? 学校教育現場の女性活躍に向けた取り組み(第4回)
「管理職になりたい」という思いをどう後押しする? 学校教育現場の女性活躍に向けた取り組み(第4回)
「数値目標や方針を明確に示していること、従来から小学校を中心に女性管理職が身近な存在でありロールモデルがいること、管理職を含めて職員が働きやすい環境をつくること……。広島県で女性管理職が増加している背景には、さまざまな要因があると思います」(広島県教育委員会・園山さん)
「先生同士が主体的に学び合い、交流する。その機会をつくることが先生方のウェルビーイングにつながり、さらにその先に女性教員が『管理職を目指してみようかな』と思える雰囲気や環境があると思っています」(栃木県那須塩原市教育委員会・二階堂さん)
アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)やジェンダー不平等の課題。それらを乗り越え、学校教育現場の女性活躍を推進していくためには何が必要なのか。また、そのための具体的な取り組みにはどのようなものがあるのか。
第4回では、県や市区町村の教育委員会の取り組みにフォーカス。広島県教育委員会事務局管理部教職員課小中学校人事係長の園山和志さんと、栃木県那須塩原市教育委員会副主幹指導主事の二階堂祐紀子さんに、具体的な取り組みの工夫やいま感じている課題などについて聞いた。
※本記事は2024年12月26日に開催された「『学校と未来』を作る全国フォーラム 第二部講演」の内容を編集してお届けしています。
※本記事は文科省からの委託事業の一環で制作しており、無料で公開しています。
女性管理職増につながった
「数値目標や方針の明記」と「ロールモデルの存在」
聞き手園山さんは他の都道府県と比較して女性管理職の割合が高い広島県で、小中学校教職員の人事に関する業務を主に担当されているとのことですが、まずは広島県の現状について教えていただけますでしょうか。

園山和志はい。広島県における令和6年度の女性管理職の割合は、小学校では校長が約49%、教頭は約57%となっています。

(画像提供:園山さん)
中学校では校長が平成30年度の約11%から約20%に、同様に教頭が約15%から約33%に上昇しています。
高校は校長が約15%に、教頭が約21%に増加しています。特別支援学校では校長が約44%、教頭が約67%といずれも平成30年度と比べて増加しています。

(画像提供:園山さん)
女性管理職の割合の推移を見比べてみますと、小中学校の方は緩やかに増加しており、高校と特別支援学校では大きく増加しています。これは近年、県立の学校で管理職の女性登用に積極的に取り組んできた結果が表れているのだろうとみています。
全国と比較してみたところ、広島県は教員全体に対する女性割合も若干高めなのですが、それ以上に管理職に占める女性割合が高い。このことから単に女性職員比率が高いということだけが要因ではないことがわかります。
聞き手女性管理職の増加に最も影響を与えた要因はなんですか?
園山いろいろな要因が影響していると考えています。
1つ目は、数値目標や方針を明確に示し、さまざまな場面で伝えてきたことです。意識を高め、目標に向かって手立てを講じる動機づけになっているんじゃないかなと思います。
たとえば数値の面では、令和8年4月1日の管理的地位にある職員の女性の割合について、全体で40%、校長32%、教頭45%を目標値に掲げています。
また人事異動の方針では、管理職への女性の任用を積極的に推進することをかなり以前から明記しています。

(画像提供:園山さん)
2つ目に、広島県では昔から女性管理職が身近な存在だったことが挙げられます。
特に小学校では従来から女性の管理職が多く、女性教員が管理職になることの抵抗感が少ないように思います。
最近の小・中学校で管理職選考試験の受験者からよく聞く志望動機としては「先輩の校長先生や教頭先生に憧れて、自分も管理職になりたいと思った」という言葉です。
やはりロールモデルの存在は大きく、女性職員の(管理職選考試験の)受験につながっているのだろうと推測できます。
働きやすく、休みやすい
管理職になりたいと思える環境や機会を意識的につくる
園山3つ目は働きやすい環境づくりです。「仕事と子育て両立のサポートハンドブック」を作成し、管理職や教職員に周知して、制度を活用しながら働きやすい環境となるように取り組んでいます。
たとえば出産等のライフステージの変化に応じて、どのような休暇が取れるのかをわかりやすくまとめています。職員の出産育児に際して管理職が適切に対応できるように、管理職のための子育て支援チェックリストを掲載し、しっかりと活用していただくようにお願いしているところです。
最近では管理職が出産休暇や育児休業を取得するケースも例外ではありません。本県では産休を取られている教頭先生も現にいらっしゃいます。
聞き手管理職も休暇をとりやすくするのは非常に大事な取り組みですね。
園山そうですね。育児休業から安心して復帰するための研修も平成20年から行なっています。こうした地道な取り組みが、将来、女性管理職になりたいと思う方が増えていく下地になっていくのだと思います。
また、男性の育児休業の促進も重要です。
本県では、男性職員の育児休業の取得状況は令和2年度の10.2%から令和5年度の38.6%と上昇傾向にあります。
家庭での性別役割分担意識の変化や、効率的な業務の進め方に意識が向けられるようになるといいなと思います。

最後に4つ目ですが、管理職を意識できる機会の創出です。
まず初任者研修のときにキャリアの全体像を示して、将来管理職として働く姿を意識しやすいようにしています。
また推薦研修ではありますが、管理職候補者として指導力向上を図ることを目的にした教育総合講座を実施しており、受講者は希望すれば管理職選考の1次試験を受験できます。
これらの取り組みは、管理職を意識したりキャリアを目指したりするきっかけづくりとして行なっています。
過去の発想にとらわれない人材登用がポイント
一方で管理職のなり手不足という課題も
聞き手広島県では人材登用に関してもさまざまな取り組みを行なっているそうですね。
園山はい。令和3年度には、工業高校の分野で初めて女性校長を登用しました。令和5年度には図書館サービス活性化のために初めて女性の校長先生を副館長に登用し、その方は現在館長になっています。
県教育委員会事務局の管理職についても学校現場での経験を重視しており、女性管理職経験者などを幹部職員として積極的に登用しています。
そのほか、高等学校の教職員を特別支援学校の校長に登用する取り組みも計画的に行なっています。

(画像提供:園山さん)
女性登用の視点だけではなく、過去の発想にとらわれない人材登用を行うことで、組織の活性化につなげるという試みです。
聞き手さまざまな試みを進めている中で、課題に感じていることはありますか?
園山女性登用以前に、どこの都道府県でも同様かと思いますが、管理職のなり手不足、特に教頭不足が深刻です。
若年層の職員は増加していますが、中堅層が非常に少ない状況にあります。いま広島県では再任用制度や役職定年の特例の制度を活用し、60歳以上の方にも管理職として力を貸していただきながら、次期候補者の確保に地道に取り組んでいます。
中堅層の方が管理職の受験に至らない理由は、「子育てが落ち着くまでは(受験を控えたい)」というライフイベント上の要因等が大きいように思います。
特効薬のようなものはないですが、引き続き働きやすい環境づくりを続けていく必要があります。
ミドル層同士の学び合いが、
管理職への一歩を踏み出すきっかけに
聞き手ありがとうございました。続いて、二階堂祐紀子さんに那須塩原市教育委員会の取り組みをお聞きしたいと思います。

二階堂祐紀子はい。最初に簡単に自己紹介できればと思いますが、私は小学校の教員として働き始め、本格的な教員生活がスタートしました。
教員時代は7年間にわたって担任をしながら、児童指導主任を担当し、ミドルリーダーとして学校組織マネジメントに参画しました。
その後、2019年から那須塩原市の教育委員会指導主事となり、現在は学習指導担当として学力向上に関する業務を行なっています。
那須塩原市の取り組みですが、まず前提として本市では「学びが面白い学校」を目指し、ワクワクドキドキする学校づくりに取り組んでいます。
教員がウェルビーイングになることが、子どもたちの指導にも良い方向につながるという教育長の方針があります。

(画像提供:二階堂さん)
子どもたちだけでなく、先生方もモチベーション高く学び続けることができるように、教育委員会が主催する研修には特に力を入れています。
聞き手そうした研修が女性管理職の増加や女性活躍の推進につながっていくと思うのですが、ぜひ教職員に向けてどのような研修をしているのかお聞きしたいです。
二階堂現在さまざまな研修を行なっていますが、ここでは2つの研修を紹介できればと思います。
1つ目は「教育課題セミナー」です。ミドルリーダーとしての学校経営の参画に関する講話・演習を行なっています。今年で2年目になりますが、今年度は43名が参加しました。
参加した先生方には、いまの学校内での立場でできるマネジメントに取り組んでいただき、情報共有や成果・課題の話し合いも行なっていただいています。
講話・演習については、たとえば講師の先生に「同僚性(横のつながりの中でお互いに認め合い、寄り添うことができる力)」をキーワードにお話しいただきながら、参加者が学校内での立場や役割、目指す学校像、職員像などについて対話を行なったりします。
これは、ミドルリーダーとしての資質・能力を向上させていくことが狙いです。
ミドル層が同僚のことを意識して行動することで、学校の活性化や先生方の心理的安全性の確保につながります。若手の先生も安心して勤務することができ、自分の力を発揮することができるのではないかと考えています。
また、自身のこれまでの取り組みを振り返りながら、視野を広げたり、自分の強みに気づいたりすることで、ミドルリーダーとしての一歩を踏み出すことにつながっていると思います。
今年度は参加者同士が苦労や成果などを共有する場も設け、さらに学校経営参画の意識が強くなったように感じます。
中堅層というのは、活躍が期待される世代であり、負担や苦労も多くあります。研修会で思いを共有することで、お互いに励まし合い安心する過程も大切にしながら、成功体験を増やしていっていただきたいと考えています。
そしてそうした成功体験を通じて、管理職になりたいと思う女性教員が増えていったらいいなと思っています。
先生のウェルビーイングの先に
意欲が生まれる雰囲気や環境がある
二階堂2つ目は、主体性を大切にした希望制での研修「学び場ミーティング(VIVAミーティング)」です。
授業づくりについて交流を希望する教職員が集まり、対話を通して情報共有や協議を行う完全希望制の研修で、昨年度は4回実施し延べ89名が参加しました。
「小学校外国語部会」「ICT機器活用部会」「国語部会」「道徳部会」「フリートーク部会」などさまざまな部会を開設しています。
部会ごとにざっくばらんにテーマに沿って話をしてもらうことで、教員一人ひとりの授業力向上を目指しています。放課後に先生方が今日あったことを談笑するような雰囲気を目指しています。
聞き手放課後の談笑の雰囲気になる、というのは面白いですね。ミドルリーダー同士の交流の機会にもなりますし、先生方のネットワーク構築を支援する取り組みとして参考になるなと思いました。
二階堂リラックスした笑顔の中にも、真剣になる瞬間や、悩みを絞り出すように話す瞬間があったりと、本当にいろいろな先生方の表情が見える研修です。
授業力向上も狙いですが、那須塩原市の横のつながりをつくっていただくことも目的にしています。
1つ目にお話しした「教育課題セミナー」もそうですが、このような研修を通していろいろな世代の先生方が主体的に、段階を追って学んでいくことが大切だと思っています。
結果として一人ひとりの力を伸ばすことにつながっていき、学び続ける先生方の応援となり、働きがいを持って子どもと向き合う先生方のウェルビーイングにつながる。
その先に、女性教員が管理職を目指してみようかなと思える雰囲気や環境があると思っています。
聞き手二階堂さん、園山さん、本日は非常に参考になるお話をありがとうございました。

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