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    • 「小児性犯罪」加害者臨床の現場から 後編を公開

      「加害・被害を防ぐには?“包括的性教育”が与える影響——『小児性犯罪』加害者臨床の現場から(後編)」を公開しました。「性の教科書はAVでした」と語る、ある少年事件の加害者。加害・被害を防ぐアプローチの一つである包括的性教育の重要性に迫ります。記事はこちらから。

      2024/4/16(火)
公開日: 2024/4/10(水)
更新日: 2024/4/16(火)

1人の加害者から複数の被害者が…。発覚しづらい子どもへの性加害——「小児性犯罪」加害者臨床の現場から(前編)

公開日: 2024/4/10(水)
更新日: 2024/4/16(火)
公開日: 2024/4/10(水)
更新日: 2024/4/16(火)

1人の加害者から複数の被害者が…。発覚しづらい子どもへの性加害——「小児性犯罪」加害者臨床の現場から(前編)

公開日: 2024/4/10(水)
更新日: 2024/4/16(火)

「あくまで私の臨床経験に基づいた感覚ですが、見過ごされている被害はとても多いです。小児性犯罪は子どもたちの声が闇に葬られている重大な社会問題です

 

こう話すのは、クリニックをはじめ刑務所や拘置所、警察署で200人以上の小児性犯罪者の再犯防止プログラムに携わってきた斉藤章佳さん(大船榎本クリニック精神保健福祉部長/精神保健福祉士・社会福祉士)。

 

近年、故ジャニー喜多川氏の所属タレントへの性加害、四谷大塚の元講師による教え子への盗撮・逮捕など、子どもを狙った性犯罪のニュースが度々報じられている。

 

リディラバジャーナルでは2018年、構造化特集「小児性犯罪〜子どもを狙う加害者たちの実態〜」を公開。小児性犯罪を取り巻く課題の構造を明らかにすることで、どのようにして新たな被害を生まない仕組みをつくれるのかを考えた。

 

構造化特集「小児性犯罪〜子どもを狙う加害者たちの実態〜」より

 

今回は、当時取材した斉藤さんに再びインタビューを行った。加害者臨床の現場の最前線にいる斉藤さんは、現在の小児性犯罪を取り巻く課題をどのように見ているのか。

 

前編では近年の加害行為の手口や、小児性犯罪において根深く存在する“被害と加害の負のサイクル”などについて、リディラバジャーナル編集長の安部敏樹が聞いた。
 

※本記事では、子どもに対する性暴力加害に触れます。実態をお伝えするべくエピソードを掲載しているため、フラッシュバックやPTSD(心的外傷後ストレス障害)を懸念される方は、十分に注意しながらご覧ください。

 

 

斉藤章佳(さいとう・あきよし)
精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症回復施設の榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル、薬物、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニア(窃盗症)などあらゆる依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに2500人以上の性犯罪者、200人以上の小児性犯罪者の治療に関わる。『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)ほか著書多数。

性的グルーミングとは?
加害者の巧妙な手口

安部
構造化特集「小児性犯罪」が公開されてから約6年経ちました。斉藤さんは小児性犯罪を取り巻く状況の変化や現在の課題をどう見られていますか。

 

 斉藤 
2023年3月、故ジャニー喜多川氏の所属タレントへの性加害に関するBBCの報道があったことで、「性的グルーミング」という言葉が一般にも広く知られるようになりましたよね。

 

小児性犯罪において性的グルーミングとは「大人が子どもと特別な信頼関係を築き、関係性を巧みに利用して性的な接触をする行為」を指します。このような加害手法への理解を深めることで性被害を防ごうという視点が徐々に広がっていると感じています。

 

私もこの問題を社会に伝えるために、2023年11月に「子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か」という書籍を出版しました。

 

子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か」(著:斉藤章佳/幻冬舎新書)
「かわいいね」「君は特別だ」などと言葉巧みに近づく性的グルーミングでは、子ども本人が性暴力だと思わず、周囲も気づきにくいため、被害はより深刻になる。加害者は何を考え、どんな手口で迫るのか。子どもの異変やSOSをいかに察知するか。性犯罪者治療の専門家が、子どもを守るために大人や社会がすべきことを提言。

 

その中で性的グルーミングを


①オンライン上でのグルーミング
②面識のある間柄でのグルーミング
③面識のない間柄でのグルーミング

 

の3つのパターンに分類していますが、近年は特に「①オンライン上でのグルーミング」が目立っています。X(旧Twitter)、InstagramといったSNSや、ゲーム、アプリなどから子どもにつながろうとする大人たちが増加しています。

 

性的グルーミングの手口は非常に巧妙です。最初は自分の性的意図を隠しながら子どもに近づき、とても優しく接する。子どもの話を否定せずに傾聴し承認欲求を満たしてあげて、自分が信頼できる大人であると子どもに思わせる。そして、いつの間にか子どもにとっての陽だまりのような存在になっていく。

 

こうなると、たとえ親が関わるなと言っても、子どもは「あの人は悪くない」「私のことを唯一わかっている人なんだ」と親の言葉を聞き入れなくなります。こういったケースを現場では数多く見聞きしています。

 

また、加害者が狙うのは「学校や家庭に居場所がない」「死にたい、消えたい、いなくなりたい」と感じている孤独・孤立状態の子どもたちであることが少なくありません。

 

もちろん学校の成績も良く友達もたくさんいて、親との関係も良好だという子どもも標的になることはありますが、私の臨床経験の中では慢性的に孤立している自己肯定感が低い子どもが狙われているケースが多いです

 

繰り返される加害
発覚しづらいのはなぜか

安部

以前の特集で「一人の加害者によって複数の被害者が生まれてしまう」という点についてもお聞きしました。

 

「アメリカでは、エイブルの研究で一人の性犯罪者が生涯に出す被害者数の平均は380人というデータがあります。

 

ところが、ある刑務所の性犯罪者グループでこの話をしたところ、『その数字は少ない』という反応が多かったんです。小児性犯罪を繰り返していたある人は、少なく見積もっても被害者はその3倍はいるんじゃないかと言っていました」

 

ーー構造化特集【小児性犯罪】子どもを狙う加害者たちの実態より

 

この点はいまも変わらない課題でしょうか。
 

 

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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