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    • 「小児性犯罪」加害者臨床の現場から 後編を公開

      「加害・被害を防ぐには?“包括的性教育”が与える影響——『小児性犯罪』加害者臨床の現場から(後編)」を公開しました。「性の教科書はAVでした」と語る、ある少年事件の加害者。加害・被害を防ぐアプローチの一つである包括的性教育の重要性に迫ります。記事はこちらから。

      2024/4/16(火)
    • 前編公開!「小児性犯罪」加害者臨床の現場から

      「1人の加害者から複数の被害者が…。発覚しづらい子どもへの性加害——『小児性犯罪』加害者臨床の現場から(前編)」を公開しました。性的グルーミング、その巧妙な手口とは?被害が発覚しづらい3つの理由とは?そして「被害が次の被害を生んでしまう構造」とは?記事はこちらから

      2024/4/10(水)
構造化特集
ヘイトスピーチ
公開日: 2019/1/22(火)

【ヘイトスピーチ】ネットに拡がる憎悪

公開日: 2019/1/22(火)
構造化特集
ヘイトスピーチ
公開日: 2019/1/22(火)

【ヘイトスピーチ】ネットに拡がる憎悪

公開日: 2019/1/22(火)
構造化特集 : ヘイトスピーチ
構造化の視点

特定のレッテルを貼り、差別や憎悪を煽るヘイトスピーチ。

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特定のレッテルを貼り、差別や憎悪を煽るヘイトスピーチ。被害を受けた女性は「私のツイッターが、私の心が、ゴミ箱のように思える日もあった」と言う。ネット上で拡散されるヘイトスピーチはどのように生み出されていくのか。在特会会長のインタビューなどから、その構造を紐解く。


「ツイッターが流行っているのは、パッと見てわかるくらいの文字数制限があるからだと思うんですよね。その文字数が人の悪口を言うのにちょうどいい長さなんじゃないかと」

 

こう語るのは、「在日特権を許さない市民の会」(以下、在特会)の八木康洋会長(45)。在特会は、路上やインターネット上で、主に在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチを行うことで知られる。八木会長は、次のように続ける。

 

「別に人の悪口を言うのが目的ではないんですけれども、人の悪口を書いていかないと多分誰も見てくれないだろうと思っていて。だから、文章を書くときには、わざわざ誰かを批判したり、対立関係を煽ったりして、それで読んでもらう。そういうことはちょっと意識していますし、それが活動家としてのやり方だと思っています」

 

在特会の八木会長。

 

今回取り上げるテーマは、「ヘイトスピーチ」。

 

特集では、インターネット上でヘイトスピーチを行う「ネット右翼」と呼ばれる人々に焦点を当て、ヘイトスピーチが生み出されていく構造を探る。



ヘイトスピーチについての確立された定義はないが、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(東京都新宿区)は、「在日コリアンに対するヘイト・スピーチ被害実態調査報告書」の中で、国際人権条約を参考に「人種、民族、言語、宗教、国籍、世系、性別などに基づく差別、敵意、憎悪の表明とその煽動および暴力の煽動」と表現している。

 

法務省人権擁護局は、「特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動」といった表現を用いているが、本特集ではより広い概念であり、国際条約にもとづく前者の概念をヘイトスピーチとして考える。

 

また、日本におけるヘイトスピーチの代表的なものとして、在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチを主に取り上げる。

「心がゴミ箱のように思えた」

ヘイトスピーチは具体的に、どのような被害を生み出しているのか。

 

2017年12月11日、在日朝鮮人の李信恵(り・しね)さんに対する差別的な文言を掲載したとして、まとめサイト「保守速報」運営者に対し、損害賠償200万円の支払いを命じる最高裁判決が確定した。

 

保守速報は、インターネット上の掲示板「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)に書き込まれた李さんへのヘイトスピーチや、李さんの写真を無断で転載した記事を作成。記事には、「ゴキブリ朝鮮人」「ドブネズミ」などの言葉が並んだ。

 

李さんに言及した保守速報の記事が出ると、ツイッターでの記事のリツイート数や李さんへのメンションの数は、少ないときでも数千件に及んだ。

 

李さんへの影響は、過食嘔吐を繰り返す、円形脱毛症になるなどの身体症状としても現れたという。

 

李さんは在特会の桜井誠前会長らからも、路上やネット上で数々のヘイトスピーチを浴びせられた経験を持ち、「私のツイッターが、私の心が、ゴミ箱のように思える日もあった」と述べている。(『#黙らない女たち』、かもがわ出版)

ネット上の言論空間への危機感

在特会のような過激なヘイトスピーチを行う人はインターネットユーザーの中でもごく一部とされている。しかし、ヘイトスピーチを行う街宣活動の様子を撮影した動画などは、保存・拡散されて、新たな偏見や差別意識を生み出しかねない。

 

現に、帰省したら、親が排外主義的な発言をするようになっていたというケースもあり、ツイッター上などでも事例が報告されている。


「何かへの反感を煽る。それが共感を生み出すのにいちばん手っ取り早い。だから、反感を通じた共感で人々がつながっていくんです」

 

そう語るのは、社会運動やネット右翼の研究を行う成蹊大学文学部の伊藤昌亮(いとう・まさあき)教授だ。伊藤教授はネット上の言論空間の危うさについて次のように語る。


成蹊大学の伊藤昌亮教授。


「ネット空間は、誰でも全世界に向けて、情報の受発信ができる新しい言論空間をつくった点ではよかった。ですが、SNSの時代になってからは、すごい勢いで“複雑性の縮減”を進めていきました。つまり、複雑な事象も極めて単純化した議論に持っていってしまうんです。そして、絶対悪をつくり上げたうえで、それに対抗するかたちで人々が結び付いていくようになります


では、ヘイトスピーチによって、新たな差別意識を生み出すのを防ぐためにはどうしたらよいのか――。

 

本特集を通して、ヘイトスピーチが行われ、拡散されていく構造と、その被害を防ぐ対策について考察していきたい。

 

同時に、表現の自由やインターネット上での自由なコミュニケーションのあり方について、見つめ直すきっかけにしてもらえれば幸いだ。
 

 

第1章 「ネット右翼」の誕生

 

 

第1回【“嫌韓”運動はどのようにして生まれたのか】では、識者の調査、研究から「ネット右翼」と呼ばれる人々の主義主張とその内実を紐解いていく。

 

第2章 拡散されるヘイトスピーチ

 

 

第2回【在特会会長が語る「ネット右翼」巻き込み戦略】では、「ネット右翼」を自称する在特会の会長に、どのようにして人々を巻き込んでいるのか話を訊いた。

 

第3回【ひどいことをしたなと思いますが…在特会会長の告白】では、在特会がなぜヘイトスピーチを行うのか、ヘイトスピーチについてどのような認識を持っているのかを探っていく。

 

第3章 ヘイトスピーチ対策

 

(Shutterstock)

 

第4回【ヘイトスピーチへの抑止効果。法的措置をとる意義】では、「元ネット右翼」を自称する文筆家の古谷経衡さんにネット右翼界隈に入り込んでいった事情と、ネット上の誹謗中傷やヘイトスピーチに対して法的措置をとる意義を語ってもらった。

 

第5回【ヘイトスピーチをいかに防ぐか】では、ヘイトスピーチを浴びてきた在日朝鮮人の思いと、新たなヘイトスピーチによる被害を生まないために必要なことを考えていく。

 

第4章 安部コラム

 

 

最終回【リディラバ安部が考える「ヘイトスピーチとネット右翼」】では、リディラバジャーナル編集長である安部敏樹がヘイトスピーチやネット右翼についての考えを語る。

 

 

(2019年1月26日14:31 特集タイトルを「ネットに蔓延る憎悪」から「ネットに拡がる憎悪」に変更しました。)

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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CONTENTS
intro
「ネット右翼」の誕生
no.
1
拡散されるヘイトスピーチ
no.
2
no.
3
ヘイトスピーチ対策
no.
4
no.
5
安部コラム
no.
6