2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であるこ
2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。

2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。
2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。
「カミングアウトに対してどうすればよいかわからないとき、何か気になることがあるときは、カミングアウトされた側もDACセンター(ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター)に相談に来て下さい」
これは「LGBT等に関する筑波大学の基本理念と対応ガイドライン」にある一文だ。
ガイドラインにある、カミングアウトされた人向けの記述。
能力を最大限発揮してもらうために
2017年3月、筑波大学は全国の大学に先駆け、大学としてのセクシュアルマイノリティへの相談・支援体制などをまとめたガイドラインを公表した。
そこには、セクシュアルマイノリティ当事者がどのような相談ができるか、どのような配慮を受けられるかといった情報のほか、カミングアウトを受けた周囲の人間の相談も受け付けてることが明記されている。
このように手厚い体制を取る理由について、セクシュアルマイノリティ支援の窓口・DACセンターの担当者として、ガイドライン策定を進めてきた助教・河野禎之さんは以下のように語る。

臨床心理士でもある河野さん。
「一つは、教育の機会均等を図るためです。同性愛者だから、トランスジェンダーだからと機会が与えられない、評価が歪められるといったことがあってはならない。もう一つは、能力を最大限発揮してもらうためです。大学というのは、学業に励み、ユニークな研究をしてもらう場です。こう考えると、セクシュアルマイノリティも含めて、誰もが何の気兼ねもなく学問に集中できる環境でなくてはいけない」
この考えにもとづき、
①少数者を差別しない
②自己決定を尊重する
③修学・服務の妨げを取り除く
という基本理念を掲げて相談・支援体制の整備を進めてきた。
ガイドラインには、「性別違和にもとづく通称名の変更の手順」「更衣室の配慮」「LGBTの就職活動支援」といった、大学生活における具体的なサポートのあり方を紹介している。
河野さんによると、2016年度にスタートした相談窓口には、例年10〜20件程度の相談が寄せられているという。
「僕も困惑したと思うから」
筑波大学では、サポート対象はセクシュアルマイノリティだけではない。冒頭にもあるように、カミングアウトを受けた人など、周囲の人間のサポートも明文化し、強く意識している。その理由について、河野さんは以下のように説明する。
「繰り返しになりますが、誰もが何の気兼ねもなく学問に集中できる環境を作るためには、カミングアウトしたい人はできる、そしてアウティングされないというのは重要です。当事者だけを支援していても、そうした環境は作れません」
実は、河野さん自身、2015年4月にDACセンター担当となるまで、「LGBとTの違いもわからなかった」という。
「僕自身、少し前まで全然知識がなかった。あの時カミングアウトされていたら、どう対応していいかわからず困惑したと思う。誰もがカミングアウトを受ける可能性がある中、知識がないとひとりで抱え込み、アウティングしてしまう可能性はゼロではありません。なので、アウティングの危険性と、カミングアウトをされて受け止めきれない場合は、大学に相談できるということをセットでアナウンスしています」
「守秘義務がある機関への相談は問題ない」
筑波大学では、相談窓口の周知を図るだけでなく、カミングアウトを受けた人向けのワークシートも作成している。
ワークシートには、「性的指向など、何をカミングアウトされたのか」「要望された接し方」「今後自分がどのようにしたいか」などが書き込めるようになっている。
「突然カミングアウトされて混乱しても、このワークシートを埋めることによって、自分の考えを整理することができます」
そう説明するのは、河野さんとともにガイドライン策定に携わった助教・土井裕人さん。
ガイドラインには、土井さんや学生当事者の意見も盛り込まれた。
土井さん自身、体は男性だが、心の性別は不明というセクシュアルマイノリティだ。当事者としての視点も活かしながら、ガイドラインやワークシート作りに取り組んできた。
河野さんと同じく、土井さんもカミングアウトを受けた側のフォローに力を入れる。
「ガイドラインにも盛り込みましたが、カミングアウトを受けて『内緒にしてね』と言われても、守秘義務がある機関に相談することは問題ありません。不幸なアウティングを避けるためにも、この点は知っておいてほしいです」
能力を最大限発揮できるよう、何の気兼ねもない環境を作る──。この考えにもとづき、セクシュアルマイノリティと周囲の人間の相談・支援体制を整備する筑波大学。
個々人が能力を最大限発揮できる環境作りは、とくに少子化が進む日本において、大学だけでなく、企業を含めあらゆる組織、そして社会が考えなければならないことだ。
河野さんは「今年度はとくに留学生の相談が多いんです。これから外国人が増えていくことを考えると、セクシュアルマイノリティへの支援は、ひいては優秀な人材を獲得することにもつながると思います」とする。
しかし、筑波大学のように「カミングアウトをされた側」の支援まで目配せできている組織はまだまだ少数だ。
セクシュアルマイノリティへの理解も広がりつつある今、どのような啓発・支援体制があるのか。また、今後構築していかなければならないのか。次回はこの点について考える。
【まとめ】
・筑波大学ではDACセンターを中心に、セクシュアルマイノリティ当事者はもちろん、カミングアウトを受けた人など周囲の人々への相談・支援体制を整備している。
・その理由について、DACセンターを担当する河野助教は大学の存在意義も踏まえ「誰もが何の気兼ねもなく学問に集中できる環境でなくてはいけないから」とする。
【問いかけ】
・所属する組織(大学や企業など)のセクシュアルマイノリティや、カミングアウトされた周囲の人々への相談・支援体制はどの程度整っていますか?
編集後記
これまで本特集では、カミングアウトやアウティングの持つ深刻な意味を紹介してきました。
一方でお伝えしておきたいのが、自分のセクシュアリティやカミングアウトについて、どの程度深刻な問題と捉えているかは本当に人それぞれということです。
実際、取材した中で「カミングアウトをそんなに深刻に考えたことはない」という声も当事者からは聞かれました。
どの程度深刻に捉えているかは、本人に聞いてみないことにはわかりません。だからこそ、「深刻に捉え、悩んでいる人もいる」という前提で考えることが重要です。

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル
続きをみるこんにちはリディラバジャーナルです。
6月はプライド月間です。街中やSNSでレインボーフラッグを目にする機会も増えるこの時期。LGBTQ+という言葉も、以前に比べれば広く知られるようになりました。
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