【新型コロナウイルス】福岡市の150億円規模の迅速な独自支援策はなぜ実現できたのか | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
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2020/5/22(金) : 2020/5/29(金)まで無料公開
【新型コロナウイルス】福岡市の150億円規模の迅速な独自支援策はなぜ実現できたのか
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構造化特集 : 新型コロナウイルス
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世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症。その対策

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世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症。その対策における日本の政治的意思決定と、それらを国民に届けるパブリックコミュニケーションおよびオペレーションの課題について、政府、地方自治体、医療現場、そして国民の視点から考えていく。

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世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症。その対策における日本の政治的意思決定と、それらを国民に届けるパブリックコミュニケーションおよびオペレーションの課題について、政府、地方自治体、医療現場、そして国民の視点から考えていく。

世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症。その対策における日本の政治的意思決定と、それらを国民に届けるパブリックコミュニケーションおよびオペレーションの課題について、政府、地方自治体、医療現場、そして国民の視点から考えていく。

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「今回のコロナ対応のキーワードは、『コミュニケーション』と『IT』の2つに集約されると思います」

 

こう語るのは、福岡市の高島宗一郎市長だ。高島市長は緊急事態宣言の後、福岡県による休業や時短要請に協力した事業者への家賃8割補助や、医療機関・介護・保育施設職員への給付金などを盛り込んだ、約150億円にのぼる独自支援策を早期に打ち出してきた。

 

今回は、そんな高島市長へのインタビューをもとに、基礎自治体の役割や、迅速な対応ができた要因について考える。

 

私たちはどんなまちを、社会を望むのか、身近な政治について考えるきっかけにしてもらえたら幸いだ。

住民のニーズに迅速に応えるのは基礎自治体の役割

――新型コロナウイルス感染症の対応にあたって、都道府県と基礎自治体、それぞれの首長の役割はどのようになっていますか。

 

そもそもですが、県と市との違いって何だと思いますか? 

 

市の方が小さくて、県が市を束ねているというイメージがあるかもしれませんね。

 

でも、本質的な違いは、「市は市民サービスで、県は自治体サービス」ということなのです。

 

 

住民にいちばん近いのが基礎自治体。だからこそ、日本の地方自治の考え方には「基礎自治体優先の原則」というものがあって、住民に身近な市町村などの基礎自治体が中心となって、広く行政サービスを担っているのです。

 

住民にとっては、市町村などの基礎自治体に比べ、県は遠い存在です。何かあったら大抵は市役所に連絡があるんですね。

 

そうした要望を、いちいち県を通して対応しようとすると時間がかかります。

 

迅速な対応がしやすいのは、住民の声が直接届く基礎自治体なのです。

 

ただ、たとえば、福岡市のような160万人都市と、人口数千人の村のように、自治体によって持っている資源などは異なります。そこで、基礎自治体だけではできないことをフォローするのが県の役割なのです。

 

また、医療のように、市町村レベルでは完結せず、広域にまたがるものも県の管轄になります。たとえば、福岡市には大きな病院がいくつもありますが、これは福岡市民だけのものではなく、近隣市の住民も利用する、県民全体の財産です。

 

病床のコントロールなどが県の役割となっているのはそういうわけなのです。

コミュニケーションとオペレーションの課題には平時の備えが必要

――基礎自治体の首長として今回のコロナ対応の課題はどんなところにあると思いますか。

 

今回のコロナ対応のキーワードは、「コミュニケーション」と「IT」の2つに集約されると思います。

 

まず、コミュニケーションについてですが、福岡市では、市の情報発信を担う部署を、広報室ではなく「広報戦略室」という名前にしています。それは、ただ情報を発信するだけではなくて、どういうターゲットに対し、誰が、何を、どのような手段で伝えるかということまで考えることを大事にしているからです。

 

今回も、市内の感染状況の分析を、あえてユーチューブで動画配信したのですが、そうすることで注目が集まり、行政からの情報が届きにくい若い人にも見てもらえるのではないかと考えた結果です。

 

また、先ほど申し上げた通り、県は自治体サービスがメインなので、普段は行政関係者や専門家などと接することが多く、住民と直接コミュニケーションを取る機会はあまりないわけです。

 

いま、福岡県から外出自粛要請が出されていますが、たとえば、人との接触を8割減らしましょうというのは目的ではなくて、感染拡大を防ぐための手段ですよね。

 

にもかかわらず、目的と手段がいろんなところで曖昧になっているように思います。

 

福岡市の場合は、感染経路のわからない新規の感染者数は減ってきていて、退院者数も増えているので、市民が自粛解除をはじめてしまっているんです。でも、それはそうだよねと思うんです。市民のみなさんからしたら、何のために外出自粛を続けているのか、わからなくなってしまっているから。

 

住民に外出自粛を続けてほしいのであれば、ゴールを定め、それを住民に伝わる言葉で共有し、「そのための手段として、外出自粛をしてください」というコミュニケーションが必要です。具体的には、いまどのぐらいの病床が埋まっているのかなどの、情報の見える化をしていく必要があります。

 

共感がないと人は動いてくれません。その共感を生み出していくために、情報を公開し、それを随時アップデートして、共通の前提を住民に持ってもらわなければならないんです。そうしないと行動に結びつかないですよね。

 

――IT関連ではどんなことが課題になっていますか。

 

行政は極めて紙文化なんです。福岡市では基本的に電子に移行していますが、自治体をまたぐとそれが通用しないので、県単位などの広域の集計には時間がかかります。

 

2016年4月の熊本地震直後に、支援物資を届けたときにも同じように、情報をリアルタイムで反映していくことに課題がありました。

 

福岡市では、熊本県の避難所に職員を派遣したのですが、そのときに、クラウド上に独自の物資供給システムを構築し、スマホやタブレットで、どの避難所で、何が、何個足りないかなどの数値を入力してもらいました。

 

それを見れば、どこで、何が、どのぐらい必要なのか、総計でどのぐらいになるのかが一目でわかります。

 

それらの物資の仕分けを福岡市の小学校跡地で行い、熊本の派遣部隊とリアルタイムで情報を共有し、必要分をヘリやトラックで送りました。

 

避難所のデータを統合し、可視化したことで、支援をスムーズに実施できました。これはITの力によるところが大きいです。

 

――コロナ禍で行政サービスのオンライン化への機運が高まっていますが、組織の意思決定のスピード感という文脈も含め、どのようにお考えでしょうか。

 

実は福岡市では、新型コロナウイルスの感染拡大前から、行政手続きをオンラインで完結させるため、手続きのハンコレス化を進めていました。

 

今年度中に、国や県で決められているもの以外のすべてのハンコ手続きをなくす方針で、既に相当数のハンコ手続きを減らしています。

 

こうしたことは、やはりトップからの大号令がないとできないんです。

 

そういう意味では、もし普段自分でITを使ったことがないリーダーだったら、オンライン化すると何が起こるかが想像できないから、チャレンジできないですよね。

 

自治体においては、どのようなトップを選ぶかは、まさに県民、市民次第だと思いますが、福岡市は10年前の選挙で、若く、政治経験もなかった私を市長に選ぶような市民が多く住んでいるので、やはりイノベーションや変化が好きなんでしょうね。

 

だからこそ、福岡市ではオンライン化は進めやすいと思って、普段から取り組みを進めていたので、意思決定が早いというのもあると思います。

災害時に素早く動けるのは県よりも基礎自治体

――今回のような緊急事態に対応するにあたって、平時の災害支援への向き合い方によって自治体間で差が出てくるのではないかと思うのですが、これまで積極的な災害支援を行ってきたのはどのような理由からでしょうか。

 

九州最大都市である福岡市の市長であるという自覚、また前職アナウンサー時代に九州・山口エリアの番組を担当していたこともあり、福岡市だけでなく、九州に何かあれば守るという自負を持っていることが一つです。

 

もう一つは、災害のときに、いちばん困ることや対応すべきことは、基礎自治体の管轄にあるということです。消防も、避難所になる小・中学校や公民館、助けを必要としている要支援者の把握もそうです。

 

ですが、国は災害対策本部を県につくるんです。もちろん、その方が統括しやすいからだと思いますが、現場の状態を把握しづらい県はどう運用すればいいかわからないわけです。

 

災害支援の基本は、ボトルネックを探し出し、それを解消することなのですが、何がボトルネックになっているかは、普段から作業をしている人でないとわかりません。

 

だからこそ、災害発生時すぐに、基礎自治体が機動的に動くことが大切なんです。

 

私はこのような思いを持ってやっていますが、市長が変わると機能しなくなるような、人に依存しすぎる状態は良くないと思っています。

 

そこで、九州市長会に防災部会をつくり、福岡市が会長市になって、災害時の相互支援体制を構築するなど、仕組みとして動けるようにしてきました。

 

――緊急事態宣言後に、素早く独自支援策を打ち出したことが話題になっていますが、どのような準備があって実現できているのでしょうか。

 

福岡市では独自支援策として、県からの要請を受けて休業あるいは時間短縮で営業することとなった店舗への家賃8割補助、感染症対策の最前線で働いていただいている医療・介護・保育関係施設職員への特別給付、デリバリーの利用促進支援などを迅速に打ち出しました。

 

このような支援策はスピードがないと意味がなくなってしまいますよね。今回は、緊急事態宣言前にも考える時間があったわけですから、素早い対応をするためにも、やはり事前に準備しておかなければいけなかったと思います。

 

福岡市は、オンライン会議などもフル活用して関係部署間での協議を頻繁に行いながら、様々なパターンを想定し、準備してきたのです。

 

財源は、いざという時のために平時から積み立てをしてきた「財政調整基金」を取り崩して、出し惜しみせずに充てることにしました。

 

この基金は、2009年度末には68億円だったのですが、2010年の市長就任以降、コツコツ貯めて、今年度末までに250億円を確保していたものです。

 

財政調整基金というお財布は、自治体はどこでも持っています。

 

いざという時のために、ここにお金を貯めておくというのは、都市経営者としてはあたり前のことなのです。ここから1円も出せませんなんてことはないはずです。

 

 

また、お金がないなりにも、できることはたくさんあると思います。

 

コロナ対応にあたって、休業要請を出している各知事は、「店を休ませるということは、本当に大変なことを強いているんだ」という意識を持ち、重く受け止めなければならないと思っています。

 

事業者が大変な思いをしているのに、役所が平時の対応で「お金がありません」と言っていたら、事業者からも当然、「こっちもお金がないんだ」と言われます。

 

大変なことを頼むのに、軽い気持ちでお願いしてはいけません。先ほども共感がないと人は動かないという話をしましたが、どう伝わるかが大事です。

 

あらゆる状況を想定して、できることは全部していく。そういう姿勢を示した時に、「それなら協力しよう」と初めて思ってもらえるのです。

政治のあり方は私たちの選択の結果

――今回の経験を踏まえて国に対する要望はありますか。

 

政府が、というよりは、私たち国民がこの機会に教訓を得ることが大切だと思っています。

 

もし現政権でなかったらもっと早く対応ができたのかと考えると、できなかったと思うんですね。

 

それは、政府が何かを決めようとするときに、なかなか決められない、決めさせない社会や仕組みに、私たち国民がしてきたからです。

 

海外の対応と比較されることもありますが、他国は国民の権利を制限することに踏み込んでいるわけです。一方で、日本は戦後の流れの中で、国民の権利を制限するような局面をつくらないようにしてきました。

 

もちろん、権利を制限しないのは良いことですが、その反面として、感染症対策のようにみんなで協力しなければならないときに、他国のように強い措置を取りづらいということがわかりました。

 

そうした両面を踏まえて、私たちがどんな社会をつくっていきたいのかということを考えていかなければなりません。

 

たとえば、今回、国の特別定額給付金がなかなか届かないのも、政府には情報を握らせたくないという国民の思いが強かったからです。

 

マイナンバーと、所得や口座情報、福祉情報などを紐づけておけば、必要な人にもっと早くお金を届けられたはずです。

 

ECサイトなど、民間のサービスには個人情報やクレジットカード情報などを抵抗なく登録する一方で、国に情報を知られるのは不安という声が強く、結果、マイナンバーでの一元管理ではなく、情報のありかを分散させているのが現状です。

 

今回のことを踏まえて、自分に対するセーフティネットとしてマイナンバーカードの有用性、利便性を感じるか、引き続き、政府に個人情報を握られるのは不安だという思いが勝るか。

 

つまり、私たち一人ひとりが、今回の経験を経たうえで、次に、どのような社会にしたいかを考えることが大事なのです。
 

――いまの社会は、私たちが選んできたものだということですね。

 

そうです。だから、「人に望む」というより、「自分が、これから何ができるか」が大事です。

 

自分が住んでいる自治体に不満があるとしても、その首長を選んだのは自分かもしれません。あるいは投票にすら行ってないのかもしれません。

 

今回の経験を踏まえ、どのような行動をする人に投票すべきなのかを考えてみる機会にしてもらえたら良いのではないかと思います。

 

個人的には、若い首長がもっともっと全国で増えてくると良いなと思っています。


 

写真:福岡市提供。

※本記事は、2020年5月11日のzoomでの取材に基づくものです。
※2020年5月22日15:20 タイトルの「100億円規模」を、第2弾の支援策50億円を加えた「150億円規模」に訂正しました。

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