つくられた社会に暮らすだけでよいのか——現場の声から問い直す、社会・公共の担い方
つくられた社会に暮らすだけでよいのか——現場の声から問い直す、社会・公共の担い方
税金を納め、役所で手続きをし、行政サービスを利用する。私たちは、すでに用意された仕組みの中で暮らしている。だが、それらのサービスも、最初からそこにあったわけではない。誰かが考え、つくってきたものだ。
2026年8月6日(木)、自由学園明日館(東京都豊島区)で開かれた「リディフェス2026」。「政治・行政分科会」で見えてきたのは、政治や行政という仕事の話だけではない。社会や公共の仕組みを誰がつくり、誰が担うのか。さらに、「なぜ自分が社会を変えるのか」という問いまでが浮かび上がった。
社会をつくる側に回るとは、どういうことなのか。登壇者と参加者の言葉から考える。
【登壇者・モデレーター】
髙島崚輔(タカシマ・リョウスケ)
芦屋市長。ハーバード大学(環境工学専攻、環境科学・公共政策副専攻)卒業。大学在学中のNPO法人グローバルな学びのコミュニティ・留学フェローシップ理事長、芦屋市役所でのインターンなどを経て、2023年に芦屋市長に就任。日本史上最年少の市長となる。
仲川げん(ナカガワ・ゲン)
奈良市長。立命館大学経済学部卒業後、帝国石油株式会社(現・株式会社INPEX)、奈良NPOセンターでの勤務を経て、2009年に33歳で奈良市長に初当選。現在5期目。
西経子(ニシ・キョウコ)
富山県副知事。1994年に農林水産省へ入省。農林水産省のほか、国土庁(現国土交通省)、外務省、埼玉県庁、首相官邸、内閣官房などで勤務し、2026年4月に富山県副知事に就任。米国コーネル大学MBA。
林有理(ハヤシ・ユウリ)【モデレーター】
元四條畷市副市長。2003年にリクルートへ入社し、住宅情報メディアの企画・編集に携わる。『SUUMOマガジン』編集長を務めた後、全国公募を経て2017年に四條畷市初の女性副市長に就任し、組織改革などを推進。2021年の退任後は、地域づくりや自治体組織の活性化、人材育成に取り組む。
※本記事は、「リディフェス2026」で行われた「政治・行政」分科会の内容をもとに記事化したものです。発言は意味を変えない範囲で整理し、読みやすさのため、一部を省略しています。
「何になるか」ではなく「何を変えたいか」で選んだ、政治・行政という選択肢
若くして市長になった人は、早くから政治家を目指してきたように見える。しかし、髙島さんが目指したのは、その職業ではなかった。
髙島崚輔この仕事を選んだのは、政治に関心があったからというより、役所で働きたかったからです。特に市役所で働きたかった。市役所が一番市民に近く、手触り感を持って世の中を変えていけるんじゃないかと思ったんです。
もともと持っていた問題意識の一つが、なにか課題があれば役所のような「お上」が解決してくれるといった「お上意識」のようなものを変えたい、ということでした。市民一人ひとりが「どうやったら世の中が良くなるか」と考えて、直接行動する。そんな社会っていいなと思ったんです。大きく言えば、「民主主義をどうやって強くするか」が、私のテーマでした。
これを実現するには、市役所しかない。市民と直接対話をしながらまちづくりができるし、一つの市でやったことが、ほかのまちにも広がっていくことも魅力でした。市役所で働く方法は、二つしかありません。採用試験を受けて行政職員になるか、選挙に出て首長になるか。私は、後者を選んだというわけです。
仲川げん僕は教育関係のNPOを立ち上げたことがきっかけで、ほかのNPOの活動も支えるようになりました。行政や政治に対して、「もっと世の中をよくするには、こうしたほうがいい」と政策提言をしていたんですけれども、なかなからちがあかない。担当者が替わったら、また話が振り出しに戻る。外から押しても、なかなか扉が開きませんでした。
だったら、仕組みをつくる側に回ったほうが、早く世の中をよくできるんじゃないかと思ったんです。子どもの頃、自分たちで遊びのルールを決めていたように、世の中のルールをつくる側に回りたいと思って、市長選挙に出ました。僕は、仕組みをつくる側に回りたいという思いで、たまたま選んだのが市長だったんです。
林有理政治と行政の違いの一つは、選挙ですよね。選挙で市民の共感と賛同を得た首長は、「こういう未来をつくりたい」という意思を示し、さまざまなことを動かします。では、その意思を、行政はどう実現していくのでしょうか。
西経子県では、県民が選挙で知事を選びます。知事は「こういう県にしたい」と公約を掲げる。県庁職員は、県民の皆さんが選んだ知事のやりたい政策を実現するために、予算や事業をつくったり、県議会に諮る条例をつくったり、県民の皆さんと一緒に仕事をしたりします。それが行政の人です。

仲川げんさん
髙島さんと仲川さんが先に考えたのは、役職ではなく、自分が変えたいものと、そこへどう働きかけるかだった。政治や行政も、「何になるか」から選ぶ職業である前に、「何を変えたいか」から選び取る手段になり得る。

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