【提供】EY知恵のプラットフォーム
「地域にすごい人がいないと成功できない? 地方創生のこの"常識"を打破したいんです」
こう語るのは、内閣官房「まち・ひと・しごと創生本部」時代以来、地方創生を主導してきた村上敬亮さんだ。
政府の立場から、日本各地の取り組みを支援する中で、地方創生がいかに「人」に依存しているのかを痛感したという。
「地方創生」は、ひとたび大きな注目を集めた。
確かに、開始から約10年、域外からの多くの人材を集め活気を取り戻した島根県海士町や、「ローカルベンチャー」を掲げた岡山県西粟倉村など、良く知られた成功事例も生まれ始めている。
それでもなお、全国の各地域が地方創生に取り組む中で、成功事例は一握りだ。
ほとんどの地域は課題を抱えたまま、首都圏一極集中と地域の衰退というマクロな流れを変えられず、まだ道半ばと言える。
「一握りの成功」から次のステップに向かうには何が必要か。村上さんは続ける。
「いま生まれつつある成功事例を『素晴らしいね、良かったね』で終わらせてはいけない。
成功事例から、どの地域でも活用できるエッセンスを抽出して、成功の『型』のようなものを作っていきたい。
自らが成功体験を持ち、他地域の事例を分析できる人たちと議論を重ねたら、成功の型が見えてくるのではと考えました」
こうした考え方に共鳴したのが、EYの菅田充浩さんだ。
彼は、共助社会の実現に向けた社会の設計と、そこにおけるビジネスを模索する取組として、社内で、中田さん、橋本さんらの仲間とともに、「知恵のプラットフォーム」という新たなチームを立ち上げた。
そこで取り組む最初のテーマに選んだのが、村上さんの問題意識である地方創生の脱「人依存」だった。
(左から 中田さん、菅田さん、橋本さん)
EY知恵のプラットフォームでは、地方創生の成功事例を先導している7人の先駆者たちを集め、成功の「型」探しのための「先駆者会議」を主催。
先駆者たちが、自ら講演者となって様々な方に語る機会は多い。
しかし、先駆者同士が自分の経験をぶつけ合い、互いに語り合う場は、今までにない新たな取り組みとなった。
この「先駆者会議」では、7人それぞれが自身の事例を発表し、事例を基に、先駆者自身同士が議論しながら成功の「型」を見出していく。
地域の活動を通して誰しもがぶつかる課題に、先駆者自身はどう立ち向かったのか。
先駆者たちは、他地域の成功事例を見て何を思い、何をエッセンスとして抽出するのか。
この会議のMCを引き受けたジャーナリストの堀潤氏、宮瀬茉祐子氏が、それぞれの先駆者の現場を取材し、映像の力で、更に深く切り込んでいく。
先駆者たちの議論から、地方創生の全体像を俯瞰することで、今すぐ地方創生に活用できる小さなノウハウから、10年後に見据える大きな政策の方向性まで、地方創生の未来が見えてくる。
【各回一覧】
第一回 香川県三豊市のケース ㈱Umari 代表 古田 秘馬 氏
「5年で観光客は100倍に香川県三豊市 成功を生んだ『自分がやる』と『みんなでやる』の逆転
ダイジェスト記事/動画・全文議事録
第二回 島根県海士町のケース ㈱トビムシ 代表取締役 竹本 吉輝 氏
「財政破綻寸前の島が移住者で溢れる 島根県海士町 計画なき変革の先」
ダイジェスト記事/動画・全文議事録
第三回 民泊新法のケース ㈱百戦錬磨 代表取締役 上山 康博 氏
「民間の政治家?地域を救う事業家? なにわの商人が踏破した『民泊』という獣道」
ダイジェスト記事/動画・全文議事録
第四回 北海道上士幌町のケース ㈱国際社会経済研究所 理事長 藤沢 久美 氏
「あなたの地域は挑戦に値するか 北海道上士幌町 異質の町長がもたらした『投資思考』」
ダイジェスト記事/動画・全文議事録
第五回 愛媛県松山市のケース ㈱まちづくり松山 代表取締役社長 加戸 慎太郎 氏
「あいつがいるなら行かない」 愛媛県松山市、地域のしがらみを乗り越えた「誰がつくったかわからない磁石」
ダイジェスト記事/動画・全文議事録
第六回 新潟県 大地の芸術祭のケース ㈱Ridilover 代表取締役 安部 敏樹 氏
地域に必要な「藻場」 新潟県越後妻有 芸術祭が生んだ成功の循環
ダイジェスト記事/動画・全文議事録
第七回 西粟倉村 エーゼロ㈱ 代表取締役 牧 大介 氏
岡山県西粟倉村 移住増・起業増を生んだ「百年の森林」構想と次なるステージ
ダイジェスト記事/動画・全文議事録
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第一回
5年で観光客は100倍に
香川県三豊市 成功を生んだ「自分がやる」と「みんなでやる」の逆転(前編)
「日本のウユニ塩湖」と呼ばれる父母ヶ浜で有名な三豊市は、現在年間50万人もの観光客を受け入れている。
一見すると、日本中どこにもない観光資源を武器にして、地方創生の階段を駆け上がったように見える三豊市だが、実は数年前まで観光客は年間5000人程度。
決して「日本のウユニ」で成功した地域ではない。
数年間で約100倍と、急激な成長を支えた背景には、地域で次々と新たな取り組みを生み出したキーマン、古田秘馬(ふるた ひま)さんの存在がある。
東京都の丸の内エリアで様々な企業と連携して、朝の学びを推進した「丸の内朝大学」を筆頭に、地域でのプロジェクト作りを多数行ってきた古田さんは、2018年から三豊市に関わることになる。
当時の三豊市の状況を「誰もいなかったし、何もなかった」と振り返る古田さん。
古田さんは「何もない」ところから、うどんと宿泊を掛け合わせた体験型施設「UDON HOUSE」など様々な事業を生み出した。
地域で何かチャレンジをしたい。
そう思っても、何から始めたらいいのか、活動のお金はどうやって集めたらいいのか、など乗り越える壁は多い。
地元の「やり尽くした」を疑う、「融資」と「投資」は逆転で使うetc..
古田さん独自の「コト起こし論」を徹底解説する。
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5年で観光客は100倍に
香川県三豊市 強い地域に共通する「煽り力」とは(後編)
「行政がやってくれる、大企業がやってくれる、先代社長がやってくれる、東京から来た誰かがやってくれる。
地域の一番の敵は『依存心』だと感じたんです」
こう語るのは人口約5万人の小さなまち、香川県三豊(みとよ)市の地方創生を成功に導いたキーマン、、古田秘馬さん。
「日本のウユニ塩湖」と呼ばれる父母ヶ浜で有名な三豊市には、現在年間50万人もの観光客が訪れている。
一見すると、日本中どこにもない観光資源を武器にして、地方創生の階段を駆け上がったように見える三豊市だが、実は数年前まで観光客は年間5000人程度。
決して「日本のウユニ」で成功した地域ではない。
数年間で約100倍と、急激な成長を支えた背景には、地域で次々と新たな取り組みを生み出した古田さんの存在がある。
後編のテーマは、「人」。
一緒に頑張れる仲間が見つからない、新たな取り組みに反対する人がいる、など地域でのチャレンジにあたって、常につきまとう人の問題。
地域の敵は「依存心」、勝てる地域に共通するのは「煽り力」など、地域を変えるための人材論が続々飛び出す。
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第二回
財政破綻寸前の島が移住者で溢れる
島根県海士町 計画なき変革の先
東京から片道5時間以上の離島、隠岐(おき)諸島。
この辺鄙な島に、全国が注目する地方創生の取り組みがある。
人口約2000人の町、海士町(あまちょう)は、人口減と高齢化で、文字通り「存続の危機」に瀕していた。
しかし、そんな海士町に、2004年からの約20年弱で800名もの人々が移り住んできたという。
驚くべき移住増の背景には、町の高校を廃校から救い、地域の中心に据えようとする「高校魅力化プロジェクト」の存在があった。
地域をあげた一大プロジェクトの成功によって、起死回生の移住者増をもたらしたように見える海士町。
しかし、その成功の裏側には、地域の財政危機や、卒業生が島に戻れる産業作りなど、その時々で必要な取り組みをひとつずつ積み重ねる姿が見えてきた。
地方創生の成功事例から、他地域でも応用できる「型」を見出す連続企画。
第2回は島根県海士町の事例を紹介する。
海士町が成功したポイントはどこだったのか。他の地域に応用できるエッセンスは何か。
「高校魅力化プロジェクト」をはじめ、14年にわたって海士町で活動を続ける株式会社トビムシの竹本吉輝代表取締役のプレゼンで、最初に語られたテーマは「ブータンの森林」
地域を「生態系」として捉える竹本さん独自の視点で、海士町の成功例からエッセンスを抽出する。
第三回
民間の政治家?地域を救う事業家?
なにわの商人が踏破した「民泊」という獣道
「地域の人がみんな『どうせ変わらへんやん』って言うんです。だったら俺が東京行って、政治家に話して来たる!って。もう、訳のわからん使命感ですわ」
民泊について定めた日本初の法律、通称「民泊新法」の成立を民間側で推進したキーパーソン、上山(かみやま)康博さんは語る。
訪日外国人の増加や「Airbnb」等の台頭によって、近年注目を集めているのが「民泊」。
しかし、市場の成長に法整備が追いつかず、この民泊新法が成立するまでは、ほとんどの民泊施設が違法状態だったという。
ホテル・旅館や、法律を守る一部の民泊施設が、違法民泊に宿泊客を奪われてしまう。
さらに、違法民泊によってゴミや騒音のトラブルが続出し、住民も被害を被る。
本来なら新たな観光客を生み、地域を救うはずの民泊が、地域を苦しめている。
そんな状況を変えるべく、上山さんは「訳のわからん使命感」を持って民泊新法の成立を目指した。
地方創生の成功事例から、他地域でも応用できる「型」を見出す連続企画。
第3回のテーマは、政治・行政との付き合い方。
地域でチャレンジをする際、議会や自治体がなかなか協力してくれない、法律や条例がネックになって、思うように取り組みが進まない、と政治や行政の壁にぶつかるケースが多々ある。
冒頭の「どうせ変わらへんやん」というコメントに象徴されるように、政治や行政は、自分たちで変えられるものではないとの印象を持つ人もいるだろう。
しかし上山さんは、適切な問題意識を基に、適切なコミュニケーションの手順を踏めば、法律や条例など既存のルールは変えられる、政治や行政は対話可能な組織だと語る。
地域に初めて関わった時を「社会主義国家に来たのかと思った」と振り返る上山さんは、いかにして地域の声を政治に届け、法律を変えたのか。
上山さんの挑戦からは、政治・行政と向き合う上でのポイントが見えてきた。
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第四回
あなたの地域は挑戦に値するか
北海道上士幌町 異質の町長がもたらした「投資思考」
「地方創生って、まさに『投資』そのものです。
放っておけば、この地域は衰退してしまう。だったらいまリスクを背負って、資源をかき集めないといけない。なのに、地域には『投資』の概念が薄いんです」
日本初の投資信託評価会社を自ら立ち上げて以来、投資の世界で活躍してきた藤沢久美(ふじさわ・くみ)さんは、地域に「投資」思考が必要だと語る。
地方創生の成功事例から、他地域でも応用できる「型」を見出す連続企画。
第4回となるのテーマは、「強い地域に共通する『投資』思考」
地域の活性化には、ヒト・モノ・カネといった資源が欠かせないが、人口減少社会においては、減り続ける資源を各地域が奪い合う構図になる。
良質な人材や、意欲的な企業に選ばれる地域になるためには何が必要なのか。
北海道上士幌(かみしほろ)町では、「KPIの設定と結果の公開」を重視し、政策の結果を全て公開するなど、異質な取り組みを重ねて人口増を実現した。
上士幌には、多くの自治体が持っていない「投資思考」があったと語る藤沢さんのプレゼンでは、町の全てを把握する町長、自らスカウトで人材を獲得する役場、単年度予算の壁を乗り越える方法など、自治体の当たり前を覆すエピソードが続々登場。
上士幌の事例をベースに、地域に必要な「投資思考」について考える。
第五回
「あいつがいるなら行かない」
愛媛県松山市、地域のしがらみを乗り越えた「誰がつくったかわからない磁石」
地方創生やまちづくりにおいて、地域内外のさまざまなステークホルダーから理解や協力を得るのは極めて重要であり、かつ困難である。
特に行政や地元の商店主、多様な価値観を持つ市民に至るまで、多くの人に地域のことを「自分事」として考えてもらうのは容易ではない。
第5回となる地方創生先駆者会議。
今回のプレゼンターは、愛媛県松山市で民主導のまちづくりに取り組む加戸 慎太郎氏だ。
市民を惹きつけるまちのビジョンを掲げ、客観的なデータからファクトベースでコミュニケーションを図り、さまざまなステークホルダーの理解と協力を得ながら、地域のエコシステムを構築してきた加戸さん。
同氏が代表取締役を務める株式会社まちづくり松山で手がけた「地域独自のデジタルマーケティングインフラの整備」は全国的に高く評価され、「第 10 回地域産業支援プログラム表彰事業(イノベーションネットアワード 2021)」において最も優秀な取り組みに与えられる「経済産業大臣賞」を受賞した。
まちづくりを自分事としてとらえ、主体的に参画したくなる仕組みをどうつくるか。
周りの理解・協力を得るために必要なコミュニケーションとは何か。
そして、地域エコシステムの構築にあたってキーワードになるという「浸透膜」と「逆浸透膜」とは何か。
加戸氏のプレゼンを基に、他市でも応用可能な成功のエッセンスを探っていく。
第六回
地域に必要な「藻場」
新潟県越後妻有 芸術祭が生んだ成功の循環
「魚になりそうな卵を海に突っ込んでも、いきなり魚が生まれてくることはありません。
藻や酸素やプランクトンなど、生育に必要な要素がそろって初めて、卵から魚が育つエコシステムが構築される。
地域も同じで、地域をよくする人たちを連れてくるだけでは意味がない。エコシステムを作るための仕組みが、「藻場」みたいな場所なんじゃないかと思っています」
社会課題の現場に足を運ぶ「スタディツアー」事業をはじめとして、省庁・企業・学校・個人といった様々なプレイヤーに社会課題への関心を生み出す「リディラバ」の代表、安部敏樹さんはこのように語る。
地方創生の成功事例から、他地域でも応用できる「型」を見出す連続企画。
第6回となる今回のテーマは、「地域に必要な『藻場』の重要性」
良質な人材がいるだけでは、地域の活性化につながらない。
人材・資金・地域の協力・周囲の支援など様々な環境が整うことで、地域活性の可能性が高まっていく。
新潟県越後妻有(えちごつまり)地域で開催され、年間50万人以上が訪れる「大地の芸術祭」の事例から展開される安部さんのプレゼンに対して、各地で成功事例を作り上げてきた7名の先駆者たちが議論を重ねた。
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第七回
岡山県西粟倉村
移住増・起業増を生んだ「百年の森林」構想と次なるステージ
最終回を飾る今回のスピーカーは、岡山県西粟倉村を中心に株式会社エーゼログループを手がける牧 大介さんが務める。
15年以上前から地方創生に取り組み、同領域をリードしてきた西粟倉。
地方創生の先駆者として、長年、未知の領域を開拓してきた。
取り組みの成果もあって、村には新たな事業が次々と誕生し、人口の社会増も見られた。
そんな地域が、目下直面している課題は「村での雇用創出や所得の向上」。
起業で若い人たちがたくさん活躍するようになったものの、それが地域の雇用に結び付いてるかといえば必ずしもそうではない。
小さな起業を、地域の人々の生活を支える雇用にどう繋いでいくのか。
キーワードとなったのは「地域投資」と「オーナーシップ」。
先駆者の軌跡を追いながら、さらなる展開に向けた一手を探る。