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構造化特集
無戸籍 第8回
公開日: 2023/3/15(水)

負を生む「家族の証明」 戸籍制度は必要なのか

公開日: 2023/3/15(水)
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負を生む「家族の証明」 戸籍制度は必要なのか

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構造化の視点

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態

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日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。


オーディオブック(ベータ版)

リディラバジャーナル構造化特集「無戸籍」。

 

第8回となる本記事では、困難を生み出している戸籍制度の姿(4章)として、戸籍制度の必要性や問題点を議論する。




前回、自身の子どもが無戸籍となった三田さん(仮名)のインタビューをお届けした。

 

戸籍制度の影響で子どもが無戸籍となり、戸籍取得に奔走した三田さんは、インタビューの最後に「(戸籍制度の)必要性はあるのか、私にはわかりません」と語った。

 

今回は、無戸籍となった本人をはじめ、その親や周囲など多くの当事者に困難を生み出す戸籍制度そのものについて、専門家の声を元に解説する。

8-1:世界で類を見ない 
 日本の戸籍制度が生まれた理由 

戸籍制度を管轄する法務省は、戸籍について次のように説明している。



 

「親族関係を登録」との言葉にある通り、戸籍制度とは個人を家族単位で管理する仕組みである。

 

いつから、なぜ個人を家族単位で管理するようになったのか、書籍『戸籍と無戸籍ー「日本人」の輪郭』の著者で、戸籍問題に詳しい早稲田大学台湾研究所研究員の遠藤正敬さんは次のように説明する。


遠藤正敬(えんどう・まさたか)
1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。
専門は政治学、日本政治史。現在、早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。宇都宮大学、埼玉県立大学、東邦大学等で非常勤講師。
著書に、第39回サントリー学芸賞を受賞した『戸籍と無戸籍―「日本人」の輪郭』(人文書院)などがある。

 

「国に個人を登録する戸籍的な制度は、7世紀頃から存在していましたが、個人を『家族単位』で登録する現行の戸籍制度は、1872年の壬申戸籍が出発点です。

 

そして1898年施行の明治民法から『戸主と氏(姓)を同じくする家族』が戸籍編製の単位となりました。それ以前は、夫婦も別々の姓を名乗っていました。

 

なぜ明治になって、個人管理から家族管理への方向転換が行われたのか。


その背景には『家』を基盤とした国家構築を強めたい政府の意図がありました。

 

当時は、個人主義によって国家を形成してきた欧米勢力が台頭していた時代です。


欧米的な個人主義的思想が日本社会に蔓延して、国家の基盤が弱まることを恐れた政府が打ち出したのが、個人を家族単位で管理する戸籍制度なのです。

 

例えば、男性は外で働いて『家族』を養うものだとか、女性は家事や育児に専念して『家』を守るものだという、誰もが耳にしたことのある思想は、戸籍制度をはじめとした『家族』をめぐる様々な政策によって、明治以降に強化されてきたと言えます」

「夫婦同姓」の歴史は、実は120年あまり。欧米の個人主義に対抗するために戸籍制度が導入されたのが、夫婦別姓から夫婦同姓へのターニングポイントだったという。

遠藤さんは続ける。

「現在、日本のような戸籍制度は世界でも類がなく(※)、大半の国は基本的に個人単位での国民管理を行っています。

日本も、マイナンバー制度の登場により、国民管理は個人単位へと移行しています。


皆さんも、自分の戸籍を取り寄せる機会より、マイナンバーや住民票を利用する機会の方が多いかと思いますが、実生活においては個人単位での国民管理が主に活用されているのです」

(※)「戸籍」という概念に基づいた制度は台湾・中国の一部でも利用されているが、日本のように居住地と無関係の本籍地において、姓を同じくする夫婦と子を単位として編製される仕組みは日本のみ
 

 

8-2:残すは「相続」のみ…?
役割を失いつつある戸籍制度

 

では、現代の社会において戸籍は何のために使われているのか。


私たちが日常生活を送る中で、戸籍を必要とする場面は主に以下のようになっている。

 

・相続関連(預貯金の解約や遺言の作成など)
・厚生年金や遺族年金などの受給申請
・本籍地以外での結婚届・離婚届の提出
・パスポートの発給申請
・身分証明

 

しかし遠藤さんは、戸籍制度が担っている機能は実質的に「相続関連」のみだと指摘する。


 「厳密には戸籍制度にも色々と役割があって、例えば婚姻届を提出した時に、その人が重婚にならないかというのは、結婚の記録が記載されている戸籍によって判断できます。

 

ですが、現在の行政システムにおいては、婚姻関係などの情報は住民票にも反映されるため、戸籍の情報が無くても問題なく運用ができます。

 

戸籍制度が持っている代替不可能な機能は『相続』に関する事柄です。


亡くなった方の家族関係を、過去に婚姻していた方など含めて全員把握するには、戸籍の情報が必要になります。

 

言い換えると相続以外に戸籍が持つ代替不可能な機能はないわけですが、相続に関しても、遺言があれば遺言が優先されますし、戸籍がない他の国々でも個人単位の管理制度で対応できています」

 

実質的な機能をほぼ持たない戸籍制度を維持・運用するにあたっては様々なコストも生じている。

 

遠藤さんは続ける。

 

「全国どの自治体にも、『戸籍課』といった類の部署が存在します。


そこで働く職員の人件費も、各自治体で戸籍のデータを管理する維持費も必要になってきます。

 

戸籍にまつわるコストは自治体が負担する費用だけではありません。市民が戸籍を取り寄せたり、各種手続きを行ったりという意味でも、戸籍制度によって生じるコストは大きいのではと思います」

8-3:「国民管理の機能以上に…」 
戸籍制度は何を守る

運用しているのは世界でも日本と台湾だけ、実質的な機能はほぼ存在せず、維持・運用にあたってはコストが必要となる。

 

戸籍制度は、無戸籍者に課題を生んでいる以前に、制度そのものの必要性を考える必要があるのではないか。


国によって設立され、無戸籍を含めた法律支援事業を行う日本司法支援センター(法テラス)本部第一事業部長の生田康介弁護士は、次のように語る。

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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CONTENTS
intro
無戸籍者の困難
no.
1
no.
2
無戸籍が生まれる背景
no.
3
無戸籍者が生まれる背景
no.
4
no.
5
無戸籍状態を抜け出せない背景
no.
6
困難を生み出している戸籍制度の姿
no.
7
no.
8