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      2024/4/10(水)
構造化特集
無戸籍
公開日: 2023/2/17(金)

【無戸籍】負を生む「家族の証明」

公開日: 2023/2/17(金)
構造化特集
無戸籍
公開日: 2023/2/17(金)

【無戸籍】負を生む「家族の証明」

公開日: 2023/2/17(金)
構造化特集 : 無戸籍
構造化の視点

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態

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日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。


皆さんは、「自分には戸籍がある」と意識しながら暮らしているだろうか。

 

私たちの多くが当たり前のように持っている「戸籍」。

 

しかし日本には、自分自身の戸籍が存在しない「無戸籍」の人たちがいる。

 

様々な事情から無戸籍となった人たちは、パスポートや保険証の発行など行政サービスの利用に困難を抱える。

 

また、身分証明のハードルの高さから、民間サービスの利用や就労もスムーズに行えない場合もある。

 

「自分はいないことにされている」

 

生活上の困難が重なると、このような精神状態に陥る当事者も多く、自己実現の達成が困難となる。

 

リディラバジャーナル構造化特集、今回のテーマは「無戸籍」。

 

実は、戸籍制度を運用しているのは世界で日本と台湾のみ。

 

世界的にも珍しい戸籍制度を運用する日本において、どのような事情で無戸籍者が生まれるのか。

 

無戸籍者はどんな困難を抱え、無戸籍を脱する上でどんな課題に直面するのか。

 

そして、無戸籍という困難を生み出している戸籍制度には、そもそもどんな目的や機能があるのか。

 

無戸籍者の困難と、背景にある戸籍制度を特集する。

 

無戸籍とは何か


そもそも戸籍制度とは何か。

法務省のHPには以下の通り記載されている。

 

 

「親族関係を登録」との言葉にある通り、戸籍制度とは個人を家族単位で管理する仕組みだ。

 

そのため、私たちは一般的に、出生時に家族である親の戸籍に入ることによって、戸籍がある状態となる。

 

具体的には、子どもが生まれて14日以内に、親の本籍を記載した「出生届」を市区町村に提出し、市区町村が受理・戸籍への記載を行うことで、子どもは戸籍に登録される。


親が出生届を提出できないケースや、出生届を市区町村が不受理とするケースなど、様々な事情で上記のプロセスが完了されず、生まれた子どもの戸籍への記載が行われないと、その子は無戸籍状態となる。
 

無戸籍となる原因

 

具体的には、次のような理由から無戸籍者が発生する。

 


①民法772条による「嫡出推定」
(通称「離婚後300日問題」)

 

民法772条では

 

・妻が婚姻中に妊娠した子どもは、夫の子と推定すること
・離婚後300日以内に生まれた子どもは、婚姻中に妊娠したものと推定すること

 

を定めている。

 

このように婚姻関係や離婚からの日数によって、子どもの父親を規定する考え方を「嫡出推定」と呼ぶ。

 


嫡出推定の目的は、子どもの法的な父親をスムーズに確定させることによって、子どもに対しての責任を明確にし、安定的な養育を実現することにある。

 

しかし、子どもを守るための嫡出推定は、同時に子どもが無戸籍となる原因にもなっている。

 

例えば以下のようなケースが存在する。

 

離婚の話し合いに夫側が非協力的で、協議が長引く間に、別の男性との子どもを妊娠

その後、離婚が成立したため、その男性と再婚

離婚成立後250日目に出産。その男性を父親として子どもの出生届を提出

子どもの出生は、離婚成立から300日以内。嫡出推定によって父親は「元夫」となるため、その男性を父親とした出生届は不受理

実際の父親ではない元夫を法律上の父親にすることをためらい、出生届の提出を諦め、子どもが「無戸籍」に

 

国の制度によって父親が「推定」され、離婚と出産のタイミングによっては、血縁上の父親と法的な父親が異なるケースが生まれる。

 

嫡出推定の問題に直面した時、一定数の母親が、我が子を無戸籍状態としてしまう。

 

父親の「推定」によって子どもに不利益が生じる可能性がある現状の制度に問題はないのか。嫡出推定の実態は第3回の記事で特集する。

 

②親自身の都合(自身が無戸籍、困難な状況下での出産等)

 

戸籍制度は「家族単位での管理」を行う仕組みであり、子どもは親の戸籍に入ることになる。

 

親が無戸籍の場合、入る戸籍が存在しないため、出生届を提出する通常のプロセスでは戸籍に記載ができず、無戸籍となるケースが存在する。

 

また、出生届には、出産に立ち会った医師または看護師の署名が必要な「出生証明書」が付いており、出生証明書に記載が無いと、基本的に出生届は受理されない。

 

貧困状態で病院にかかれず、自宅出産となるケースなどにおいては、出生証明書がハードルとなり無戸籍となるケースが存在する。

 

その他にも、若年妊娠や夫・交際相手からのDVなど、様々な事情で出産直後に出生届を役所まで提出する精神的・身体的余裕がなく、無戸籍となるケースも存在する。

 

このような親自身の困難については、第4回の記事で特集する。

 

③一定の条件下における外国籍の親の出産

 

戸籍とは日本国籍を持つ人のみが対象となる制度である。

 

外国籍の人々はそもそも戸籍制度の対象ではないため、戸籍が無い状態でも「無戸籍者」として問題を抱えるわけではない。

 

しかし、一定の条件下で外国籍の親から生まれた子どもは、本来日本国籍となり、戸籍にも記載をされるはずが、実態として無戸籍となっているケースがある。

 

例えば「外国籍の母親と、婚姻関係にない日本人の父親の間に生まれた子ども」のケース。

 

日本国籍について定めた「国籍法」によると、日本国籍が取得できる条件のひとつに「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」という文言がある。

 

外国籍の母親と、婚姻関係にない日本人の父親の間に生まれた子どもは、日本人である父の戸籍に入ることができるのだが、その男性が認知を拒んだ結果、子どもが無戸籍となるケースが存在する。

 



また、外国籍の母親が不法滞在の場合には、不法滞在の発覚を恐れて出生届の役所への提出を行わず、子どもが無戸籍となるケースも存在する。

 

外国籍の親から生まれた子どもの一部が無戸籍となっている問題は、第4回で特集する。

 

④両親不明、身元不明人など

 

出生届が一度提出され、戸籍があるにもかかわらず、実質的に無戸籍状態となるケースも存在する。

 

例えば、「捨て子」として両親の情報が一切わからないまま成長した場合、親が出生届を出しており、本人に戸籍がある可能性もあり得るが、本人と戸籍を結びつける根拠がないため、実質的に無戸籍状態となる。

 

⑤行政による戸籍滅失

 

出生届が受理され、自身では子どもが戸籍に入ったと認識していても、結果的に無戸籍となるケースが存在する。

 

例えば、市区町村が出生届を受け取ってから、戸籍に記載するまでの間に、災害等で出生届を滅失してしまう可能性がある。

 

実際、東日本大震災の際には、津波の被害を受けて、4自治体で出生届の滅失が見られた。震災後、再度出生届の受理を行ったが、全ての戸籍の回復には至っていない可能性が高いという。


④両親不明⑤行政による滅失の問題については、第5回で特集する。

 

無戸籍者の人数

 

様々な事情によって無戸籍状態となっている人はどれだけ存在するのだろうか。

 

戸籍制度を管轄する法務省が無戸籍者の調査を始めたのは2008年。2023年1月10日時点で、累計4402名の無戸籍者を把握しているという。

 

無戸籍者本人はもちろん、母親・父親(と推定される元夫)も、無戸籍問題に影響を受けると考えると、10,000人以上が無戸籍問題の当事者、関係者となる。

 

しかし、この数字はあくまで国が把握している無戸籍者の数である。

 

児童相談所や役場、法務局など、行政に無戸籍である旨の相談をした人数に限られており、この数字の裏側には、行政が把握していない当事者も存在する。

 

多くの自治体が法務省の調査に対して「把握せず」と回答していることや、無戸籍解消のための裁判・調停手続きの数を考慮すると、無戸籍者は「少なくとも10,000人以上」存在するのではないかと、「民法772条による無戸籍児家族の会」代表の井戸まさえさんは指摘している。

 

母親・父親を含めると、無戸籍問題の当事者、関係者は数万人にまで膨れ上がると言える。

 

無戸籍問題の構造

 

編集部は、無戸籍の問題を多様な視点から分析するため、支援者・当事者・国・自治体・専門家・弁護士など様々な関係者に取材を行った。

 

本特集では、当事者が直面する困難、戸籍制度の実態、それぞれの観点から、無戸籍の問題が生まれ、解決されにくい「構造」をお伝えする。



第1章から第3章ではまず、当事者の視点から無戸籍問題を整理する。

 

当事者が1.なぜ無戸籍となるのか 2.どんな課題を抱えるのか 3.なぜ無戸籍を抜け出せないのか、という当事者が辿る時間軸を踏まえながら、問題の構造を明らかにする。

 

第4章では「戸籍制度」に着目して問題を整理する。

 

1~3章で見てきた課題の根底にある「戸籍制度」について、戸籍制度の目的や機能、そして無戸籍者の問題と戸籍制度の関連を明らかにする。

 

5章では、解決に向けた方向性を提示する。

 

1~4章で明らかになった無戸籍問題の構造を踏まえて、課題解決の上で重要なポイントを整理する。


<各記事の紹介>


第1回 無戸籍者の困難:「無戸籍者を想定していない」行政サービスの穴
 


無戸籍状態での困難として、当事者・関係者が口を揃えて語るのが「行政サービス」の問題だ。


国は無戸籍者に対しても義務教育や保健サービス、住民票の発行などを可能としているが、実際には「無戸籍者には住民票が出せない、保険証は作れない」など、様々な行政サービスが無戸籍を理由に提供されていない実態がある。

 

本来は戸籍の有無を問わず利用できるはずの行政サービスが、現実には利用しにくい状態となっているのはなぜか。背景にある行政サービスと戸籍の関係性を明らかにする。


第2回 無戸籍者の困難:「戸籍があれば人生が違った」阻まれる自己実現
 

行政サービスが適切に利用できないことを起点に、当事者の困難は教育や就労、心身の健康や人間関係の構築など、様々な領域に及んでいく。

 

無戸籍によって生じる課題はどのようなものであり、当事者にどういった心身の悪影響を及ぼすのか。

 

「あの時住民票を出してくれたら、人生全然違ったよ」

 

無戸籍当事者のミサコさんへのインタビューを基に、当事者が自己実現に向かいづらい構造を伝える。

 

第3回 無戸籍が生まれる背景:父親を国が『推定』 法律が生んだ無戸籍者たち
 

行政サービスの利用が難しく、自己実現に向かいづらい無戸籍問題の当事者。

 

どういった経緯で、彼ら/彼女らは無戸籍状態となるのか。

 

第3回では、無戸籍の原因として問題視されている「嫡出推定」の問題(通称「離婚後300日問題」)に焦点をあてる。

 

「父親を確定させ、子どもを安定させる」という目的の背景には、婚姻関係にある家族を重視する「家族主義」的な法制度のあり方が見えてきた。

 

第4回 無戸籍が生まれる背景:結婚しないと無戸籍に…? 外国籍者の出産
 

無戸籍になる原因は嫡出推定の問題にとどまらない。

 

一定条件下における外国籍の母親、自身が無戸籍など困難を抱える母親には、出生届を提出する上でのハードルが高くなりやすい。

 

一部の母親が出生届の提出をためらうのには、どんな事情があるのか。

 

入国管理や妊娠・出産期の課題など、他の社会課題と連関した問題点を解説する。

 

第5回 無戸籍が生まれる背景:「出したくても出せない」 出生届の高いハードル
 

第5回では、嫡出推定・母親の課題以外で無戸籍となるいくつかのパターンに焦点をあてる。

 

一度出生届を提出してもなお、無戸籍状態になるケースなど、無戸籍に至る多様なケースを網羅的に紹介する。

 

第6回 無戸籍を抜け出せない背景:日本人の証明・元夫との接触 堂々巡りの戸籍記載
 

自身あるいは自身の子どもが無戸籍状態になったとしても、様々な方法により無戸籍を抜け出すことが可能である。

 

しかし、無戸籍状態から抜け出すため行動する当事者の全員が戸籍記載を実現できるわけではない。

 

無戸籍状態を抜け出す上でのハードルはどこにあるのか。

 

裁判所を介した「調停手続き」「就籍許可の審判」などの手続きに焦点をあて、当事者に精神的・物理的・経済的負担を強いる制度を解説する。

 

第7回 困難を生み出している戸籍制度の姿:「戸籍制度」の狭間 子どもが無戸籍となった親の告白 
 



第7回では、自身の子どもが無戸籍状態となった当事者のインタビューを通して、戸籍制度そのもののあり方を考える。

 

個人を「家族単位」で管理する戸籍制度によって、当事者にどのような困難が生まれているのか。

 

「そこまでしてなぜ、家族単位での管理を行っているのか、必要性はあるのか、私にはわかりません」

 

当事者の声を基に、戸籍制度のあり方を考える。

 

第8回 困難を生み出している戸籍制度の姿:負を生む「家族の証明」 戸籍制度は必要なのか
 

第8回では、無戸籍者の困難を生み出している「戸籍制度」に注目する。

 

実は、戸籍制度を現在に至るまで運用しているのは、日本と台湾のみで、その他ほぼ全ての国は「家族単位」での管理ではなく「個人単位」での管理を行っている。

 

家族単位での管理にはどのような意図・機能があるのか。

 

そして、無戸籍問題に対応した戸籍制度の改正では、何が変わり、何が変わらなかったのか。

 

戸籍制度の歴史的経緯と、現在の課題の関係性を明らかにする。

 

第9回:無戸籍問題、解決の方向性

 

最後に、解決の方向性を提示する。

 

無戸籍者を生んでしまう民法772条はどのように変化していくべきか、無戸籍者が行政サービスを利用できるようにするには何が必要か、無戸籍を回復するにあたっての負担をどのように軽減するのか。

 

特集内で明らかになった課題の乗り越え方を明らかにする。

 


 

ほとんどの国が個人単位での国民管理制度を用いる中、世界のマイノリティとして家族単位での国民管理「戸籍制度」を運用する日本。

 

この戸籍制度によって、一定の状況下で無戸籍者が発生し、無戸籍者は生活の様々な場面で困難を抱える現状がある。

 

無戸籍者はどんな理由で、どのような困難に直面するのか、そして、困難を生む戸籍制度にはどのような問題があるのか。

 

無戸籍問題の構造を、全9回の特集を通して明らかにする。

【参考文献など】

<書籍・論文>
●井戸まさえ「日本の無戸籍者」(岩波新書、2017年)
●井戸まさえ「無戸籍の日本人」(集英社、2016年)
●秋山千佳「戸籍のない日本人」(双葉新書、 2015年)
●遠藤 正敬 「戸籍と無戸籍――『日本人』の輪郭」(人文書院 、2017年)
●遠藤正敬「戸籍と国籍の近現代史 民族・血統・日本人」(明石書店、2013年)
●無国籍研究会「日本における無国籍者―類型論的調査―」(2017年)
●総務省「諸外国における国民 ID 制度の現状等に関する調査研究報告書」(国際大学・グローバル・コミュニケーション・センター、2010年)
●桜井 梓紗「『無戸籍問題』をめぐる現状と論点」(立法と調査 / 参議院事務局企画調整室 編 381、2016年)
●内田 亜也子「再婚禁止と嫡出推定から見る家族法制の在り方 : 最高裁違憲判決を受けた民法改正案の国会論議」(立法と調査 / 参議院事務局企画調整室 編 380、2016年)
●井戸まさえ「無戸籍はいかにして社会問題となったか : 運動とメディアの役割」(東京女子大学社会学年報 8、2020年)

<ウェブサイト等>
法務省ホームページ「戸籍」
親子法制無戸籍当事者支援ヒアリング
法務省戸籍制度研究会「戸籍制度に関する研究会 最終取りまとめ」
法務省「東日本大震災により滅失した戸籍の再製データの作成完了について」
法務省 民法(親子法制)部会「嫡出推定制度の見直しについての検討」
法務省「民法(親子法制)等の改正に関する要綱案」


 

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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CONTENTS
intro
無戸籍者の困難
no.
1
no.
2
無戸籍が生まれる背景
no.
3
無戸籍者が生まれる背景
no.
4
no.
5
無戸籍状態を抜け出せない背景
no.
6
困難を生み出している戸籍制度の姿
no.
7
no.
8