日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態
日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。
日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。
日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。
リディラバジャーナル構造化特集「無戸籍」。
第1回となる本記事では、当事者が抱える困難(1章)として「行政サービスからの疎外」を紹介するとともに、その困難が生じる構造を解説する。
「どの職についても、職場から住民票を求められて、『無戸籍なんです』と説明すると『じゃあ働けないね』と言われてしまう。
戸籍が無理なら、せめて住民票だけでもと思い、役所にお願いしましたが『無戸籍者には作れません』の一点張りでした」
現在、無戸籍状態にあるミサコさんは、住民票発行を求めた際の行政の対応を、このように振り返る。
行政サービスが享受できずに困難を抱えている無戸籍者は多く、冒頭のミサコさんのようなケースは決して珍しくない。
生活の基盤であると同時に、住民票や保険証など「身分証」としての機能も持っている行政サービス。
無戸籍者はなぜ、生活上必須とも言える行政サービスから遠ざけられてしまうのだろうか。
1-1:本当は使える
無戸籍者と行政サービスの関係性
当事者の支援に取り組む「無戸籍の人を救う会」代表の市川真由美さんは、行政サービスの実態を次のように語る。
1967年、奈良県在住。2010年に景品玩具を販売する「いち屋」を立ち上げ、3年後に法人化した。従業員のマイナンバーがなかったことをきっかけにNPO法人「無戸籍の人を支援する会」を設立。全国から舞い込む相談に親身になって対応し、住民票や戸籍の取得に尽力。
「たくさんの無戸籍者が相談にきますが、行政サービスを一般の方と同じように利用できている人はほとんどいません。
皆さんそれぞれ、役所から『対応できない』『わからない』『法務局に行ってくれ』などの理由で取り合ってもらえず、私のところに相談に来ています」
このように、無戸籍者が行政サービスの利用に困難を抱える事例は多数見られているという。
戸籍がなければ行政サービスを利用できないとする自治体の対応は適切なのか。
書籍『戸籍と無戸籍ー「日本人」の輪郭』の著者で、戸籍問題に詳しい早稲田大学台湾研究所研究員の遠藤正敬さんに聞いた。
1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。
専門は政治学、日本政治史。現在、早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。宇都宮大学、埼玉県立大学、東邦大学等で非常勤講師。
著書に、第39回サントリー学芸賞を受賞した『戸籍と無戸籍―「日本人」の輪郭』(人文書院)などがある。
「義務教育も住民票も保険証も、原則として無戸籍状態でも利用することができます。
民法第772条に起因するもの(※)という条件つきではありますが、無戸籍者でも利用できるようにとの通達や通知も国から自治体に送られています。
そのため、日常的に必要となるような基本的な行政サービスについて、無戸籍を理由に自治体が提供を拒否することは、基本的に誤った対応となります」
義務教育を管轄する文部科学省は、戸籍や住民票の有無にかかわらず就学の機会を提供する旨の通達を2014年に出している。
また、住民票を管轄する総務省は、無戸籍者に対して一定の条件を満たせば市区町村長の判断で住民票に記載してよい旨の通知を2008年に出している。
(※民法772条については第3回で特集)
その他サービスにおいても、調査したところ、以下の通りとなった。
原則としてはほとんどの行政サービスが戸籍の有無にかかわらず利用できることがわかる。
1-2:使えるはずが使えない
国と現場、すれ違いの理由
では、なぜ自治体での対応が原則と乖離するのだろうか。
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