• 新しいお知らせ
    ×
構造化特集
無戸籍 第3回
公開日: 2023/3/1(水)

父親を国が「推定」 法律が生んだ無戸籍者たち

公開日: 2023/3/1(水)
構造化特集
無戸籍 第3回
公開日: 2023/3/1(水)

父親を国が「推定」 法律が生んだ無戸籍者たち

公開日: 2023/3/1(水)
構造化の視点

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態

・・・もっと見る

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。

日本に生まれ、日本で暮らすの人の中には、「無戸籍」状態で、身分証明や行政サービスの利用に困難を抱える人たちがいる。実は、世界的にも稀な戸籍制度はどのような制度なのか。そして制度からこぼれ落ちる人たちはどのような課題を抱えるのか。明治から続く戸籍制度の構造を紐解く。


オーディオブック(ベータ版)

リディラバジャーナル構造化特集「無戸籍」。
 


 

第3回となる本記事では、当事者が生まれる背景(2章)として、民法772条に定められた嫡出推定、通称「300日問題」を解説する。
 



「現代社会にマッチした制度とは言えない」

 

無戸籍者の戸籍取得を支援してきた弁護士の南和行さんは、民法772条で定められた「嫡出推定」と呼ばれる制度を、こう評価する。

 

無戸籍者が生まれる要因は多数存在する(詳細は第0回の記事を参照)が、今回は、その中でも主要な要因として問題視されている「嫡出推定」に着目。

 

民法772条によって規定され、「時代錯誤」と評される嫡出推定とはどのような制度なのか。また、嫡出推定によってなぜ無戸籍者が発生するのか。

 

現状の法制度によって、当事者が生まれる構造を解説する。

3-1:離婚後300日以内に生まれた子
「嫡出推定」とは何か

無戸籍者を生む要因として問題視されている、嫡出推定とはどのような考え方なのか。


民法772条には次のような内容が記載されている。
 

民法772条 妻が婚姻中に懐胎した子どもは夫の子と推定する 婚姻の成立の日から二百日を経過した後、又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する

 

実際の父親が誰であるかに関わらず、婚姻関係や離婚後の日数によって父親を「推定」する。


民法で定められたこの考え方を「嫡出推定」と呼ぶ。

 

この制度によって、離婚後300日以内に生まれた子どもの法的な父親は、元夫となる。
 


では、なぜ嫡出推定によって無戸籍者が生まれるのか。


戸籍制度を管轄する法務省のホームページには、次のような記載がある。

 

戸籍は、法律上の親子関係を公証するものですから、出生届書には、法律上の親子関係のある父母を記載する必要があります。

 

子の血縁上の父が元夫とは別の者である場合には(中略)血縁上の父を父とする出生届書を提出しても、出生の届出は受理されません。

 

つまり、次のような流れで無戸籍者が発生するのだ。


1.離婚成立前、もしくは離婚成立後300日以内に、元夫とは異なる別の男性との子供を出産

 

2.母親は、子供の父親が別の男性だと認識しているため、別の男性を父親として出生届を提出

 

3.しかし、法的には子どもの父親は元夫となるため、出生届は受理されない

 

4.実際の父親と異なる元夫を、子どもの父親として登録することをためらう母親が、出生届を再提出しない

 

5.出生届の出されていない子どもが無戸籍となる

 

嫡出推定によって、母親が子どもの出生届を出したくても出せないケースが存在しており、無戸籍者を生み出す要因となっている。

3-2:表向きは「子の安定」 
嫡出推定が存在する理由

無戸籍者を生み出す要因となっている嫡出推定の仕組みは、何のために存在しているのだろうか。

 

国によって設立され、無戸籍を含めた総合法律支援の事業を行う日本司法支援センター(法テラス)本部第一事業部長の生田康介弁護士は、嫡出推定の目的を次のように解説する。
 

※リディラバジャーナルについてもっと知りたい方はコチラ
リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
note
リディラバジャーナル編集部
noteのicon
【強迫症啓発週間】発達障害支援に欠けた「学校・家庭・福祉をつなぐ"あいだ"の存在」
2024年10月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「東大だと結婚が難しくなるから、慶應にしておけば」国際ガールズ・デーに読みたい、女子にかけられている呪い
2024年10月11日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
東京・埼玉で相次いだ闇バイトによる強盗。指示役に脅されていた若者も?
2024年10月4日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「選択的夫婦別姓制度」が総裁選の焦点に?日本の姓の歴史の背景をひもとく
2024年9月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
新しい認知症観とは?“常識”を捨て、認知症の人に「寄り添う」ことが、その人らしさの尊重に繋がる
2024年9月6日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「9月1日」を乗り越えた子どものその後は?SOSを聞き逃さず、切れ目のない支援を
2024年8月30日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
子どもは「安心して学校を休む権利」をもっている。夏休み明けの子どもの自殺防止に役立つチェックリストも
2024年8月23日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「食品ロス」が「日本の食料自給率」を救う?2つの社会課題を解決へ導く循環型システム
2024年8月9日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「パパは寝てる」Tシャツの裏で、男性の育休取得率は過去最高に。新旧の価値観がぶつかり合う転換期
2024年8月2日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
起業家が受ける不当な圧力・セクハラ。背景にあるものは?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年7月26日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「障害者が子どもを産むな」ひとつでもできないことがあれば子どもをもってはいけないのか?
2024年7月19日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
芸術祭なのに、米作りに雪かき?「大地の芸術祭」が挑む地域づくりとは
2024年7月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
「夏休みに特別な体験をさせられない」子どもの体験格差は、学ぶ意欲や将来の可能性にまで影響を及ぼす?
2024年7月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
メディアが作り出した? 生活保護費引き下げにつながった世論
2024年7月1日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
在日クルド人に対するSNSでのヘイトスピーチ。書き込みへの法的措置の意義とは?
2024年6月21日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
輪島・珠洲の断水解消も、水道は使えない。復興を左右するのは世間の関心の深さ
2024年5月31日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
少しずつ可視化されてきた「恋愛的にも性的にも惹かれない」人たち。アロマンティック・アセクシュアルとは?
2024年5月24日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
喜べない教員の給与増。残業が残業だと認められない給特法とは?
2024年5月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
勤務時間15分減で退職金ゼロ?非正規の人の労働条件を改善するための制度のはずが…
2024年5月14日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
性犯罪の被害者の約半数が子ども。わが子をグルーミングから守るには?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年5月7日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
動物の虐待摘発過去最多。「保護犬・保護猫」前進の裏で生まれる課題
2024年4月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
スクールカウンセラー約250人が雇い止め。子どもの心の健康を支える専門職なのに任期は1年?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2024年4月4日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
依存症の人に必要なのは「反省や刑罰」ではなく「治療と仲間」
2024年3月29日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「同性婚を認めないのは違憲」互いの違いを尊重できる成熟した社会へ
2024年3月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
能登半島地震、深刻なボランティア受け入れ態勢不足が課題
2024年3月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
×
CONTENTS
intro
無戸籍者の困難
no.
1
no.
2
無戸籍が生まれる背景
no.
3
無戸籍者が生まれる背景
no.
4
no.
5
無戸籍状態を抜け出せない背景
no.
6
困難を生み出している戸籍制度の姿
no.
7
no.
8