2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であるこ
2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。

2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。
2015年8月、告白した男性同級生から同性愛者であることを同意なく暴露されたことをきっかけに、一橋大学法科大学院の男子学生が亡くなりました。本特集では、その遺族や原告側代理人弁護士などへの取材を通して、アウティングやカミングアウトに伴う困難や対応のあり方について考えます。
「母親には、自分からカミングアウトしようと思ったわけじゃないんです。いつも『彼女できた?』と聞いてくるんですが、その日『彼氏できた?』と聞かれたんです。そこで、『実は、女性のことは好きになれないんだ』と伝えました」
そう語るのは、LGBTに関する情報発信を行う、一般社団法人fair代表理事・松岡宗嗣(そうし)さん。ゲイである松岡さんが母親にカミングアウトをしたのは4年前。20歳のときだった。

メディアなどでLGBTに関する情報発信を行う松岡宗嗣さん。
松岡さんは、母親に水を向けられたことをきっかけにカミングアウトしたが、もっとも近い人間関係である親にだけはカミングアウトできないという人は少なくない。
その理由について、松岡さんは以下のように説明する。
「もっとも身近で、日々顔を合わせる親だからこそ、『すこしでも受け入れられなかったら』と思うと、カミングアウトのハードルは高くなりますよね」

近いからこそ生まれる嫌悪感
受け入れられなかったら——。残念ながら、これは松岡さんの杞憂ではない。
『性的マイノリティについての意識—2015年全国調査報告書』(釜野さおり・石田仁・風間孝・吉仲崇・河口和也、2016)によると、自分の子どもが同性愛者の場合、「嫌だ」と回答した割合は45.6%。「どちらかといえば嫌だ」は26.8%。あわせて72.4%の人が嫌悪感を示している。

この割合は、近所の人が同性愛者だった場合の「嫌だ」(12.9%)、「どちらかといえば嫌だ」(26.5%)の嫌悪感(39.4%)より多い。
近い関係だからこその難しさ
松岡さんの母・成子(せいこ)さんは当時のことを振り返り、以下のように語る。
「ゲイというのが男性の同性愛者だと言うのは何となくわかっていたんですが、LGBTといった色々なセクシュアリティがあることを知りませんでした。なので、『お化粧はしたくないの?』『何でオネエ言葉で話さないの?』などと聞いてしまったんです」

松岡さんの母・成子さん(AbemaTV「AbemaPrime」提供)。
このような、知識がないための失敗もあったが、「宗嗣の人生なんだから、好きに生きなさい」「宗嗣が病気になった時、隣に誰かがいることが大事。それが男性であろうが女性であろうがそんなことは問題ではない」とも伝えた。
松岡さんは、こうした母・成子さんの言葉が「自信や勇気につながった」と感謝する。
しかし、厳しい現実もあることを成子さんは明かす。
「うちの家族は、笑ってカミングアウトを受け入れられました。でも、同じ時期に同じように子どもからカミングアウトを受けて、自死してしまった母親もいます」
もっとも近い間柄だからこそ、知ってほしいという思いが募る。そして、親に受け入れられることは自信につながる。一方で、近いからこそ受け入れられないという現実もある。ここに、親にカミングアウトする難しさがある。
嬉しいけれど、抵抗感も…複雑な感情
この、親密な関係における受容の難しさは、友人関係でも同じだ。
「はじめに」でも紹介した、福岡県の女性(32)。大学時代、親友から同性が好きであることを明かされた。
「驚いたけれど、信頼されていると感じ嬉しかったです」と、カミングアウトを受けた当時の思いを語る。
前出の調査でも、仲の良い同性の友人から同性愛者だと告げられた場合の反応として多いのは、「理解したい」「言ってくれてうれしい」という回答だ。

一方で、男性では2割を超える人が「気持ち悪い」「聞かなかったことにしたい」と回答するなど、近い関係にあるからと言って、皆が皆受け入れられるわけではないのが現実だ。
それを示すように、性別ごとに仲の良い友人が同性愛者だった場合の抵抗感を尋ねた調査では、男女ともに4〜5割の人が、抵抗感があるとしている。

設問が同一ではないので、単純な比較はできないが、前出の近所の人が同性愛者であることへの嫌悪感より、友人が同性愛者であることへの抵抗感の方が大きいことがわかる。
男性の半数以上が、男性同士の恋愛感情を「おかしい」とする現実
親しいからこそ生じる、同性愛者への抵抗感や嫌悪感。同時に、親しいからこそ芽生える恋愛感情というものもある。
そして、前出の調査では、同性への恋愛感情について、3〜5割の人が「おかしい」と感じている現実が明らかになっている。

一橋大学法科大学院の男子学生Aさん(当時25歳)が亡くなったアウティング事件の発端も、男子同級生のZさんへの恋愛感情の告白だった。
バズフィードなどの報道によると、告白を受けたのち、本人の同意のないセクシュアリティの暴露であるアウティングをしたZさんは裁判で、交際を断った後も、以前と同じように食事に誘うなどしてくるAさんを避けている理由について、周囲に理解してもらうためには、Aさんが同性愛者であることを明かすしかなかったと主張していた。
「カミングアウトされたら、どうしていいかわからない」
「大学生を見ていると、LGBTへの寛容さや理解の必要性は感じています。一方で、恋愛感情の告白と、セクシュアリティの告白、そして『誰にも言わないでね』というお願いが3点セットになったカミングアウトを受けた時、どうしていいかわからないというのも現実です」
そう指摘するのは、筑波大学助教の河野禎之さん。

体制の確立を進めるものの、学内でのアウティングの発生を危惧する河野さん。
実際、講義の中でカミングアウトをされたらどうするか尋ねたところ「どうしていいかわからない」とする学生が大半だったという。
その経験から、「カミングアウトをされた人が対応できず、偶発的にアウティングが起こる可能性は捨てきれない」とする。
NHKを始め様々な調査で、カミングアウトは、友人や家族といった親しい相手に行われることがわかっている。
他方、これまで見てきたように、親しいからこそ生まれる嫌悪感や拒否感もある。
この難しさの中行われるため、カミングアウトは、アウティングにつながる危険性を孕んでいる。
だが、「嫌悪感や抵抗感があっても、アウティングだけはしてはいけない」と識者は指摘する。
なぜ、アウティングだけはしてはいけないのか。次回はこの点について見ていく。
【まとめ】
・『性的マイノリティについての意識—2015年全国調査報告書』によると、自分の子どもが同性愛者の場合、72.4%の人が嫌悪感を示している。
・親、家族、友人など、親しいからこそカミングアウトの相手に選ぶが、親しいからこそ受け入れられないという現実がある。
・そのため、「親しい相手にこそカミングアウトのハードルが高い」といった当事者の声も。
【問いかけ】
・セクシュアリティに限らず、親しいからこそ言い出せなかったという経験はありますか?
編集後記
「多くの当事者が『親にだけは言えない』と言います」
取材中、こうした声を何度も聞きました。
たしかに、自分だったら親に言えるだろうか。考え込んでしまいました。
受け入れてもらえなかったらという思いはもちろんのこと、打ち明けることで親を悩ませてしまうのでは……。
大切な人だからこそカミングアウトしたい。でもできない。
そうした複雑な心情を、少しでも多くの人に知ってもらえればと感じながら取材しました。

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル
続きをみるこんにちはリディラバジャーナルです。
6月はプライド月間です。街中やSNSでレインボーフラッグを目にする機会も増えるこの時期。LGBTQ+という言葉も、以前に比べれば広く知られるようになりました。
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