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構造化特集
不法投棄 第1回
公開日: 2026/1/8(木)
更新日: 2026/6/5(金)

安すぎる見積もりの“しわ寄せ”——。排出・解体時の不法投棄リスク

公開日: 2026/1/8(木)
更新日: 2026/6/5(金)
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不法投棄 第1回
公開日: 2026/1/8(木)
更新日: 2026/6/5(金)

安すぎる見積もりの“しわ寄せ”——。排出・解体時の不法投棄リスク

公開日: 2026/1/8(木)
更新日: 2026/6/5(金)
構造化の視点

夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる&mdash

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夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる——。いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。「排出・解体→中間処理→最終処分」という廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫る。

夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる——。いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。「排出・解体→中間処理→最終処分」という廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫る。

夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる——。いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。「排出・解体→中間処理→最終処分」という廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫る。


オーディオブック(ベータ版)

リディラバジャーナル構造化特集「不法投棄〜誰も扱えない産業廃棄物の行き先〜」。

 

第1回となる本記事では、排出・解体時に不法投棄リスクが発生する構造(1章)として、産業廃棄物を生み出す「排出・解体事業者」が抱える課題を明らかにしていく。

 

「不法投棄」の問題構造をイラストで示した構造化マップ

 

「30坪の住宅の解体で70万円?適正な価格は150万円です。その差額80万円、どこで埋めると思います?

 

そう問いかけるのは、東京都内で解体業を営むMさんだ。この一言が、解体業者を取り巻く問題を端的に表している。

 

産業廃棄物は「排出・解体→中間処理→最終処分」という流れで処理される。最初の段階である「排出・解体」では、工場や解体現場から出た廃棄物が、収集運搬業者(解体業者が兼ねる場合も多い)によって中間処理施設へ運ばれる。

 

その過程で、発注者から“異常に安い”費用で工事を請け負った業者が、不法投棄をしてしまうリスクが構造的に発生している

 

今回は、廃棄物を生み出す側——排出・解体事業者が抱える課題を詳しく見ていく。

人件費削減が不法投棄の引き金になり得る

「解体工事で削減できるコストは限られています。受注額を安くするためには、人件費か処分費を削る。この2つしかありません。

 

もちろん企業努力でコストを抑える業者もいますが、それでも限界があり、平均より半値になることはあり得ない

 

冒頭の問いかけに関して、そう断言するMさん。こうした安すぎる受注をきっかけに、不法投棄が起きるケースがあると話す。

 

Mさんによれば、1つ目の「人件費の削減」によって受注費を安くする場合、外国籍事業者や日雇い労働者を頼るケースが多いという。その中で、外国籍事業者とのコミュニケーション不全が、不法投棄を引き起こすリスクになっていると指摘する。

 

これまで県内の不法投棄事案に対応してきた千葉県の熊谷俊人知事も、次のように話す。

 

熊谷俊人氏の顔写真

熊谷俊人(クマガイ・トシヒト)
1978年生まれ、神戸市出身。2001年早稲田大学政治経済学部卒業、NTTコミュニケーションズ株式会社入社。2007年5月から千葉市議会議員、2009年6月、千葉市長選挙に立候補し当選。当時全国最年少市長(31歳)、政令指定都市では歴代最年少市長となる。2013年5月、2017年5月ともに歴代最多得票数を更新。2021年3月、千葉県知事選挙に立候補し当選。歴代最多得票数を更新。2025年3月、千葉県知事選挙に2期目当選。

 

「すべての外国籍事業者がそうではありませんが、中には法令に関する知識が不足しており、違反している認識自体がない方もいます

 

また言語の壁も大きく、さまざまな国籍の方々がいるので、行政指導の内容が十分に伝わらないことも課題です

 

違法と知らずに捨ててしまう、指導しようにも言葉が通じない——こうした悪循環が起きている。千葉県では自動翻訳機を導入し、外国籍事業者とのコミュニケーションの課題に対応している。

価格競争と処分費高騰の板挟み。支払えない処分費

解体業者が受注価格を下げるもう一つの方法が「処分費の削減」だ。

 

しかしMさんによれば、受注後に処分費を支払えず、不法投棄に至るケースが発生しているという。

 

なぜ、支払えない処分費を前提に見積もってしまうのか。背景には、受注価格を下げなければ差別化が難しいという激しい価格競争がある。

 

Mさんはこう語る。

 

建築系廃棄物をはじめ、多くの品目で処分費が上昇しています。当然、処分費をねん出するため解体費用も上げざるを得ないのですが、反対に下げてくる業者がいる。

 

これは、受注価格を下げないと差別化が難しいことに起因してます。処分費が上がっているのに、受注価格は下がる——この逆転現象の中で、処分費を払えない業者が出てくるんです」

 

いま、解体業者を取り巻く状況は厳しい。処分費を支払えなくなる要因には、近年の住宅の解体コストの増大もあるという

 

現代の住宅では、阪神淡路大震災以降、耐震性の向上を目的として「ベタ基礎」が広く採用されるようになった。

 

昔ながらの「布基礎」と比べると、コンクリートや鉄筋の使用量が多く、施工工程も増える。そのぶん工期が長くなり、基礎工事や解体時のコストが高くなる傾向がある。

 

こうした変化により、同じ規模の建物でも、昔より見積もりが高くなりやすい背景がある。

 

また、こうした工期増加に対して「ミンチ解体」という手法を採用する業者もいるという。Mさんは次のように話す。

 

「分別すれば処分費が半値になる品目もあります。でも分別解体は丁寧にやる必要があり、時間がかかる。そのため、ミンチ解体と呼ばれるような上からガシャンと壊す方法を採用する業者が多い。分別なら3日かかる作業も、ミンチなら1日で終わりますからね」

 

家を解体するイメージ写真

 

建設リサイクル法では、80㎡以上の建物を解体する際には、木材やコンクリートなどを分別する「分別解体」が義務付けられている。

 

しかし、Mさんは「行政が監視することはほとんどなく、いまだに現場でミンチ解体が行われるケースは少なくない」と話す。

 

ミンチ解体により工事は早く終わるが、廃棄物の分別が難しくなり、実務的には選別不能・混合廃棄物として扱われ、高めの処分費が適用されるケースが多い。

 

「ミンチ解体している一部の業者を見ると、不法投棄している可能性があるのではと疑ってしまいます。処分費を正規に払っていたら、あの解体価格では絶対に採算が合わないので」

 

このように、激しい価格競争のなかで採算の合わない処分費を設定せざるを得ない業者が生まれ、さらに解体コストや処分費の高騰が追い打ちをかける。その結果、処分費を支払えずに不法投棄が発生するリスクが生じている。

リサイクル困難な建材の増加が、処分費高騰に拍車をかける

なお、処分費が高騰している背景にはさまざま要因があるが、一つには住宅に使われる建材の中で一部リサイクルが難しいものが出てきている点もあるという。

 

こうした廃棄物は「管理型最終処分場」に持ち込むしかなく、費用が高くつく。

 

最終処分場は「安定型」「管理型」「遮断型」の3種類に分かれる。安定型は環境への影響が少ないもの、管理型は浸出水が出て地下水を汚染する可能性のある廃棄物を受け入れている。遮断型は有害物質を含む廃棄物だ。当然、安定型より管理型の方が処分費は高くなる。

 

管理型に持ち込まれるリサイクル困難な建材には、たとえば「石膏ボード(建築物の壁や天井などに広く用いられる建築用内装材料)」がある。

 

「乾いた状態なら破砕して粉にすれば、もう一回ボードに生まれ変わる。ただ、水にぬれると硫化水素ガスが発生し危険な廃棄物になるので、管理型でないと埋立できないんです」(Mさん)

 

石膏ボードのイメージ写真

 

ほかには、アスベスト含有建材などもある。現在は法律で禁止されているが、2006年まで製造されていたため、20年ほど前までに建てられた住宅では含有の可能性がある。

 

建材のイメージ写真

 

Mさんは「いまの住宅は見た目重視で、さまざまな装飾を使っています。それらを引きはがすことは難しく、分別できないゴミになるんです」と話す。

 

また、廃棄物の収集・運搬から最終処分まで行う株式会社山一商事の米山さんも、次のように話す。

 

米山雄司氏の顔写真

米山雄司(ヨネヤマ・ユウジ)
株式会社山一商事 事業本部長。

 

「年々分別しにくい建設廃棄物は増えています。

 

たとえば、鉄スクラップは有価物で取引できますが、建材によっては接着剤で煉瓦と貼り付けているものがある。これは引きはがすのはほぼ不可能ですし、重機でやると団子状になってしまい、余計分別できません」

 

分別ができなければ処分費は上がる。施主の多様なニーズに応えられるように建材の種類・仕様が多様化してきたことが、解体現場の問題に一部影響を与えている。

参入障壁の低さ、制度の悪用——。悪質業者が生まれる背景

ここまで解体業者を取り巻く課題について触れてきたが、あくまで不法投棄に至る可能性のある業者は一部だ。誠実に事業を行う業者も多い。

 

それでも不法投棄に手を染めてしまう業者が生まれる背景には、解体業への参入障壁の低さと、制度の抜け穴という問題もある。

 

解体工事は、請負金額が500万円以上の場合、「建設業許可(業種区分:解体工事業)」の許可が必要となる。一方、500万円未満の解体工事を請け負う場合は「解体工事業登録」が求められる(ただし、土木・建築・解体いずれかの建設業許可を持つ場合は登録手続き不要)。

 

前者の「建設業許可」には、経営体制や技術者配置、財産面など複数の要件がある。後者の「解体工事業登録」も、所定の資格・実務経験を満たす技術管理者の選任が必要になるが、建設業許可に比べて求められる要件は相対的に少ない。

 

Mさんは「うちは建設業許可を持っています。クリーンな会社だという証明になるからです。この許可証がそのまま差別化要因になっています」と話す。

 

「ただ、(500万円未満の工事の範囲なら)許可を取らなくても営業できるため、さまざまなバックグラウンドを持つ企業が解体業者に存在しているのが現状です」とMさんは続ける。

 

また、産業廃棄物の処理には、誰が排出・運搬・処分したかを記録する「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」という記録制度があるが、これを悪用する例もあるという。

 

「自社運搬という仕組みがありますが、排出事業者と収集運搬業者が同じ会社なら、収集運搬業の許可がいらないんです。自分のゴミを自分で運ぶだけだから。

 

そこで、この制度を悪用し、実際には別の業者が運搬しているのに、書類上は同じ会社名にすることで、無許可で廃棄物を運搬する下請け業者もいるんです。

 

マニフェストを持って処分場に行っても、誰もその会社の社員かどうかなんて確認しない。トラックの名前も関係ありません。書類さえあれば通ってしまうんです」

 

つまり、「A社(排出) → A社(自社運搬と偽装) → C社(処分)」という流れになる。実際にはD社(許可なしの下請け)が運搬しているが、マニフェストにはA社と記載されており、気づかれない。

 

ここでD社が廃棄物を不法投棄しても、追跡は難しい。書類上ではA社がきちんと処分場に持ち込んだことになっているからだ。

 

悪質な解体業者による不法投棄リスクが生じる背景には、こうした制度の問題もある。

 

また、あくまで一部のケースではあるが、他にも以下のような悪質業者の事例もあったと、山一商事の米山さんは話す。

 

「何回か弊社の処分場に来られたことのある業者の方が、うちの従業員のサインを偽造して『処分場に運搬していた』と、お客さん(排出業者)に報告していたことがありました。

 

実際、うちには廃棄物は持ち込まれていないんですよ。その業者はお客さんから処分費としてお金をいただいているのに、実際は処分してない。そのゴミはどこへ行ったのか……」

不法投棄発生のリスク要因には「発注者側の意識」も

排出事業者から安い費用で工事を請け負った業者が不法投棄をしてしまう構造には、人件費・処分費の削減によるリスク増大、制度の抜け穴といった要因があることがわかった。

 

一方で、受注側である解体業者だけでなく、発注者側にも要因がある。それが価格意識の問題だ。Mさんはこう話す。

 

「おにぎりが10円で売っていたら普通は怖いと感じるでしょう? それは、おにぎりの相場が150円前後だとみんな知っているからです。

 

でも解体工事は違う。一生に一度あるかないかの工事だから、相場なんて誰も知らないんです」

 

発注者側が低価格を受け入れる際には「壊すものにお金をかけたくない」という心理も働くだろう。新築には惜しみなく投資しても、解体は「なくなるもの」への出費。少しでも安く済ませたいという気持ちが、異常な低価格を受け入れる土壌を作っている可能性がある。

 


 

今回は、排出・解体時に不法投棄リスクが発生する構造を明らかにした。

 

<構造化の視点>「 排出・解体時に不法投棄リスクが発生する構造とは」 ・過剰な価格競争で安い処分費を提示せざるを得ず、人件費・処分費の削減から不法投棄リスクが生じている ・処分費を支払えず不法投棄してしまう背景には、処分費の高騰や解体コストの増大がある ・参入障壁の低さや制度の悪用などにより、悪質な業者による不法投棄が生まれる可能性もある ・リサイクル困難な建材の増加や、発注者側の意識の問題など、消費者側の要因もある


「誠実にやっていると『高いね』と言われ、50万円安い業者に仕事を取られる。でも数カ月後には『着工金を渡したら逃げられた』と電話が来ることもあります」

 

Mさんがそう話すように、適正処理を貫く業者ほど苦境に立たされているという構造も見えた。

 

次回は、排出・解体業者から廃棄物を受け取る「中間処理業者」の実態に迫る。分別、破砕、そして再資源化。リサイクルの要となる工程で、なぜ不法投棄のリスクが生まれてしまうのか。その実態を追う。

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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リディラバジャーナル編集部
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CONTENTS
intro
排出・解体時に不法投棄リスクが発生する構造
no.
1
排出・解体から中間処理時に不法投棄リスクが発生する構造
no.
2
no.
3
中間処理から最終処分時に不法投棄リスクが発生する構造
no.
4
不法投棄された廃棄物を撤去しづらい構造
no.
5