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    • 構造化特集「不法投棄」始まりました!

      「不法投棄〜誰も扱えない産業廃棄物の行き先〜」を公開!いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けています。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫ります。記事はこちらから。

      2026/1/8(木)
構造化特集
不法投棄
公開日: 2026/1/8(木)

【不法投棄】誰も扱えない産業廃棄物の行き先

公開日: 2026/1/8(木)
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不法投棄
公開日: 2026/1/8(木)

【不法投棄】誰も扱えない産業廃棄物の行き先

公開日: 2026/1/8(木)
構造化特集 : 不法投棄
構造化の視点

夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる&mdash

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夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる——。いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。「排出・解体→中間処理→最終処分」という廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫る。


オーディオブック(ベータ版)

「気づいたら、いつの間にか山道にダンプ1台分のごみが捨てられている」——。

 

いま現場では、このような不法投棄の事案が発生している。

 

本来決められた場所や方法で廃棄物を処理しない“違法なごみ捨て”。かつては暴力団が関与し、数千トン単位の廃棄物を山に埋めるような大規模なものが主流だった。

 

しかし、近年は様相が変わっている。元千葉県産廃Gメンで、現在は環境コンサルタントとして多くの産廃会社の現場を見ている石渡正佳さんはこう語る。

 

「もうヤクザがやってることはほとんどなくて、いまは“ゲリラ不法投棄”です。小規模にスポットで発生しているので、なかなか見つけにくくなっています

 

木片が積み上げられた写真

 

リディラバジャーナル、構造化特集。今回のテーマは「不法投棄〜誰も扱えない産業廃棄物の行き先〜」。

 

いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている

 

「不法投棄」の問題構造をイラストで示した構造化マップ

 

環境省の調査によれば、令和5年度に新たに判明した不法投棄の件数は100件で、投棄された量は4.2万トン。ピーク時の10分の1以下に減少したものの、毎年数万トンの廃棄物が新たに捨てられている

 

捨てられた後、撤去されずに残り続けている産業廃棄物は1,011万トン。これは東京ドーム約8個分(※1)に相当する量だ

 

なぜ“ゲリラ不法投棄”が発生してしまうのか。そして、捨てられた産業廃棄物はなぜ撤去されないのか。

 

その背景には、廃棄物処理の各フェーズの課題により、不法投棄リスクが生じている構造がある

 

本特集では、単純な“悪質業者だけの問題”とは言えない、不法投棄の問題構造を明らかにする。

私たちの暮らしが生む“建設系廃棄物”

不法投棄された廃棄物の中で件数・量ともに7割を占めるのが、建物を壊したときに出る“建設系廃棄物”だ。

 

令和5年度に不法投棄された廃棄物の投棄件数を示した円グラフ

 

令和5年度に不法投棄された廃棄物の投棄量(新規判明事案)を示した円グラフ

 

がれき、木くず、廃プラスチック——。住宅の建て替えやリフォームの際に生まれる廃棄物であり、私たちの生活に密接に関係していると言える。

 

こうした廃棄物が捨てられ、片付けられないまま残り続けると、雨水による有害物質の溶出や地下水・河川への流入、悪臭などが発生する

 

現在は多くの不法投棄事案で「明確な支障はない」とされているが、放置が長期化すればこのようなリスクが顕在化する恐れがある。

 

また、たとえ支障が小さくても、自治体が撤去に踏み切れば多額の費用が発生する(行政代執行※2)。中には数億円から数百億円にのぼる例もあり、原因者が特定できなければ、その費用の一部を自治体や地域住民が背負うこともある

 

ゴミが渦高く積まれた写真

 

実際に自治体によって撤去されたケースの一つに、茨城県石岡市の廃プラスチックの大規模不法投棄事案がある。

 

ここからは茨城県石岡市の事案を通じて、産業廃棄物が不法投棄され、撤去されるまでの流れを詳しく見ていきたい。

不法投棄のストーリー——茨城県石岡市の場合

茨城県道笠間つくば線沿いに積み上げられた、フレコンバッグの山。

 

高さ数メートルに及ぶ廃棄物の重みで、もともと工場の資材置き場だった土地を囲っていた塀は外側に傾き、一部はすでに道路側に押し出されていた——。

 

フレコンバックの参考写真
※編集注:フレコンバック(大量の廃棄物を入れる大きな袋)のイメージ

 

これは2024年9月当時、茨城県石岡市小見地内の不法投棄現場で起きていたことだ。地域住民の生活道路であり、児童の通学路にもなっている県道に、産業廃棄物が崩れ落ちそうになっている。その様子が幾度となくテレビで報道されていた。

 

「崩落する恐れがあり危ない。早急に撤去してもらいたい」——住民からの切実な声を受け、県は行政代執行を行なった。現時点(2026年1月)では廃棄物はすべて撤去されている。

 

茨城県不法投棄対策室の高島茂之室長(取材当時)は、石岡市の不法投棄事案を以下のように振り返る。

 

高島茂之さんの顔写真

高島茂之(タカシマ・シゲユキ)
茨城県県民生活環境部 廃棄物規制課不法投棄対策室 室長(取材当時)

 

「廃棄物のほとんどは『ポリ塩化ビニル(PVC ※3)』というプラスチックの一種でした。特に多かったのは、電線や配線の被覆材。それらの端材がびっしり詰まったフレコンバッグが数多く置かれていました」

 

この土地に廃プラスチックが運び込まれ始めたのは2020年9月頃。運搬したのは2名で、いずれも産業廃棄物処理業の許可を持たない者だったことが分かっている。

 

「当時は、保管場の設置や保管方法を規制する条例がまだ施行されておらず、廃プラスチックの保管に関しては許可が必要ありませんでした。

 

彼らは『これは廃棄物ではない』『リサイクル事業をしたい』と主張し、プラスチック類を置き始めました」

 

県は当初から問題を認識し、2年以上にわたって早急な撤去を指導した。しかし「これはリサイクル原料だ」との主張は変わらず、撤去されることはなかった。

 

転機となったのは2023年3月。茨城県は廃棄物処理法に基づく措置命令を発出し、1年以内の全量撤去を命じた。

 

「措置命令を出してからも、職員は何度も現場に足を運び、指導を続けました。彼らも当初は撤去の意思を示し、実際に約3,300㎥、全体の2割程度は撤去しました。

 

しかし、そこで止まってしまった」(高島さん)

 

2024年3月の撤去期限を過ぎても、1.2万㎥の廃プラスチックが残されたまま。この間にも塀の傾きは進行し、崩落の危険性は日に日に高まっていたという。

 

「早期発見、早期対応が我々の基本方針です。小規模なうちなら、指導の段階で自力で片付けられる。しかし、これだけの規模になってしまうと、もう彼らの手には負えません

 

崩落すれば住民へ危害が及ぶとして、2024年9月、茨城県は廃棄物処理法に基づく行政代執行に踏み切った。最終的な撤去費用は約4億1000万円にものぼった

 

石岡市のような大規模事案は一部に限られるが、規模の大小を問わず、このような不法投棄や残存の問題は各地で起こっている。

ゲリラ化する不法投棄——小規模・分散型で予測も対応も困難に

茨城県は現在、週6日のパトロールの実施や、不法投棄の通報機能があるゴミ拾いSNSアプリ「ピリカ」の導入など、さまざまな対策を進めている。

 

しかし、こうした対策にも限界があると高島さんは指摘する。

 

いま増えているのは『ゲリラ投棄』です。ダンプ1~2台分を夜中に農道や山道に捨てていく。小規模だからどこでも捨てられるんです。前触れもなくある日突然ゴミが現れるため、予測も対応も非常に難しい」

 

千葉県元産廃Gメン(不法投棄を取り締まる職員)で、現在は環境コンサルタントとして多くの産廃会社の現場を見ている石渡正佳さんは、こう話す。

 

石渡正佳さんの顔写真

石渡正佳(イシワタ・マサヨシ)
株式会社TOWALO代表取締役。千葉県庁時代には1996年から産業廃棄物行政を担当、産廃Gメン「グリーンキャップ」の創設に関与し、2001年には全国最悪といわれた銚子地域の不法投棄を短期間で制圧しその手法が全国自治体の模範となった。 2005年には優良産廃業者の公開情報分析手法「iメソッド」を開発し、企業への普及を図っている。2019年に千葉県庁を退職。2020年に株式会社TOWALOを設立し、代表取締役就任(現任)。主な著書:『産廃コネクション』(WAVE出版、第3回日経BP-BizTech図書賞受賞)、 『不法投棄はこうしてなくす 実践対策マニュアル』(岩波書店)、 『食品廃棄の裏側』(日経BP社)など 。NHK「クローズアップ現代」スタジオコメンテータ2回ほか、メディア出演多数。 


「かつては暴力団が背景にいて、組織的な不法投棄が多かったんです。

 

複数台のダンプが関わる大規模なもので、許可のある処分場に一旦廃棄物を集めて、夜中にダンプで運び出すというやり方でした。

 

現場を開設するのは暴力団で、コーディネーター役の『まとめ屋』もヤクザ系が多かった」

 

しかし、現在は様相が一変しているという。

 

「もうヤクザがやってることはほとんどなくて、組織的に堂々と100万トンの穴を開けるなんてことはなくなりました。

 

いまは小規模にスポットで発生しているケースが多いすごく分散しているので、なかなか見つけにくくなっています

 

たとえば、解体業者が単独で処分場に持っていかず捨ててしまうパターンや、中間処理業者がリサイクルを標榜するも再生品が売れずに捨ててしまうことがあります」

 

環境省の調査によれば、令和5年度の新規判明事案における不法投棄実行者について、投棄件数ベースで見ると排出事業者(44%)不明(29%)複数(18%)が多い。

 

令和5年度の新規判明事案における不法投棄実行者の内訳を示した円グラフ

 

もちろんこうした業者は一部に過ぎないが、不法投棄は大規模・組織型から小規模・分散型の「ゲリラ不法投棄」へと姿を変え、予測や対応をより難しくさせていることが考えられる

解体、中間処理、最終処分。各フェーズで発生する不法投棄

では、なぜ産業廃棄物は不法投棄されてしまうのか。

 

その背景を見る前に、まず廃棄物がどのように処理されているのかを押さえたい。

 

産業廃棄物は、「排出・解体→ 中間処理 → 最終処分」という流れで処理される。

 

工場や解体現場から排出された廃棄物は、収集運搬業者(解体業者が兼ねる場合も多い)が中間処理施設へ運ぶ。

 

中間処理施設では、破砕や選別などで廃棄物を品目ごとに分類する。金属などの有価物は売却され、リサイクル可能なものは専門業者へ、焼却が必要なものは焼却施設へと送られる。

 

それでも処理しきれない廃棄物が、最終処分場で埋め立てられることになる。

 

「不法投棄」の問題構造をイラストで示した構造化マップ

 

今回リディラバジャーナル編集部で調査したところ、処理の各フェーズに不法投棄が生まれるリスクがあることがわかった

 

【排出・解体(解体工事などでごみが出る場面)】

 

「排出・解体」のフェーズでは、業者が極端に安い価格で工事を請け負うことで、不法投棄につながってしまうケースがある

 

解体費を安くするには「人件費」か「処分費」を減らすという2つの方法がある。

 

人件費の削減では、外国人労働者や日雇い労働者に頼る場合が少なくないが、法令の知識不足で違反の認識がないまま廃棄物を捨ててしまっている場合がある。

 

また、処分費を削減して受注するも、受注後に処分費を支払えずに不法投棄してしまう業者がいる。

 

【排出・解体→中間処理(ごみの破砕や選別などを行う場面)】

 

「排出・解体→中間処理」のフェーズでは、業者が廃棄物を中間処理施設に運び込めず、廃棄物が滞留してしまうケースがあり、不法投棄発生のリスクが高まる。

 

こうした背景には、中間処理業者が再生品(※4)を作っても買い手がつかないために、新たな廃棄物を受け入れづらい状態になっていることがある。

 

再生品が売れないのは「売り先がない」といった問題がある。

 

【中間処理→最終処分(ごみを最後に埋め立てる場面)】

 

「中間処理→最終処分」のフェーズ」では、最終処分場の受け入れ余力が限界に達し、正規ルートに乗らない廃棄物が溢れるケースが発生している

 

最終処分場は逼迫しており処分費が高騰。新規の受け入れが難しくなっており、かといって新しく処分場を作れるかというと、住民の反対があり容易にはいかない。既存施設の処分費を下げることも現実的ではない。

 


 

このように各フェーズに構造的な問題があることで、一連の流れのどこかで不法投棄が発生するリスクが高まっている。

 

詳しくは、第1章「排出・解体時」、第2章「排出・解体から中間処理時」、第3章「中間処理から最終処分時」と、それぞれ明らかにしていく。

 

さらに、不法投棄された産業廃棄物を撤去できない背景にも構造的な問題がある。

 

不法投棄された産業廃棄物が業者によって撤去されない場合、最終的に撤去するのは行政だ。

 

しかし、原因者の特定の難しさ税金を使うことへのジレンマといった課題があり、なかなかその選択肢を取りづらい事情がある。

 

行政の抱える問題については、第4章「不法投棄された廃棄物を撤去しづらい構造」で詳しく見ていく。

 


 

どこか遠くの出来事ではなく、私たちの暮らしの延長線上で起きている不法投棄。

 

それは単なる悪質な業者による違法行為ではなく、“そうせざるを得ない”社会の構造が生み出す「出口なき廃棄物の象徴」でもある

 

本特集では、廃棄物が処理の流れの中でどのように行き場を失い、なぜ残り続けてしまうのかを構造的な視点で明らかにする。

 

各記事の紹介

第1章 排出・解体時に不法投棄リスクが発生する構造

 

第1回 安すぎる見積もりの“しわ寄せ”——。排出・解体時の不法投棄リスク

 

家の解体現場の写真を背景に、第1回の記事のタイトル書かれた画像

 

「30坪70万円。適正は150万円。その差額80万円、どこで埋めると思います?」

 

解体業者のMさんの一言が示すのは、安すぎる見積もりが“人件費か処分費の削減”に直結し、不法投棄リスクを呼び込む現実だ。

 

処分費高騰、ミンチ解体、制度の抜け穴——。現場の証言から、排出・解体の段階でどのようなリスクがあるのかを解き明かす。

 

第2章 排出・解体から中間処理時に不法投棄リスクが発生する構造

 

<第2回 「売り先がないから溜めてしまう」。排出・解体から中間処理時の不法投棄リスク>

 

瓦礫の写真を背景に、第2回の記事のタイトル書かれた画像

 

「がれき、入れられる所ありませんか?」——中間処理業者に、解体業者からの問い合わせの電話が鳴る。背景にあるのは、再生品の売り先がない、使われないことでヤードに滞留し、中間処理業者が新規搬入を受けられないリスクがあるという問題だ。

 

さまざまな要因が絡み合い、「売れない→溜まる→受入制限→行き場を失う→不法投棄リスク」へとつながり得る構造を追う。

 

<第3回 社会情勢の変化で高まる不法投棄リスク。中間処理時に廃棄物が行き場を失う危うさ>

 

太陽光パネルの写真を背景に、第3回の記事のタイトル書かれた画像

 

第2回で見たリスクのある状況に、社会情勢の変化が重なると、滞留が加速し不法投棄リスクが高まる恐れがある。過去の中国禁輸で起きた廃プラの混乱、そして次に迫る大量の太陽光パネル問題。中間処理時に廃棄物が行き場を失う危うさを見る。

 

第3章 中間処理から最終処分時に不法投棄リスクが発生する構造

 

<第4回 「最後の砦」が機能不全に?最終処分時に発生する不法投棄リスク>

 

ゴミ処理場の写真を背景に、第4回の記事のタイトルが書かれている画像

 

リサイクルできなかった廃棄物の終着点、最終処分場。いま、その“最後の砦”が機能不全に陥るリスクを抱えている。

 

処分費の高騰に加え、電気代や人件費、埋立後も続く維持管理など「削れないコスト」を抱える。さらに新設は住民反対などで進みにくい。出口が詰まれば、解体・中間処理にも玉突きで圧力が伝わり、不法投棄リスクが高まる構造を解き明かす。

 

第4章 不法投棄された廃棄物を撤去しづらい構造

 

<第5回 誰が片付けるのか、いつ片付くのか——。不法投棄された廃棄物を撤去しづらい構造>

 

がれきの写真を背景に、第5回の記事のタイトル書かれた画像

 

不法投棄のゴミは、誰が、いつ片付けるのか。なぜ撤去が進まないのか——。

 

第5回では主に最終的な撤去を担う自治体の声をメインに、不法投棄をした人の特定の難しさ、「最後は公費(税金)で片付ける」ことへのジレンマ、そして国の支援制度の失効という“3つの壁”を明らかにする。

 

 

※1 残存する産業廃棄物の「比重(t/m³)」を「1t=1m³」と簡易的に換算した場合
※2 行政代執行:法律によって命じられた行為や、法律にもとづいて行政から命じられた行為を履行していない義務者に対して、行政が本人に代わって実行すること
※3 ポリ塩化ビニル:塩化ビニルが重合した無味無臭・透明・非結晶性の高分子化合物で、プラスチックの一種。使い捨て手袋から建設資材までさまざまな製品に使用されている
※4 再生品:廃棄物を選別・破砕・洗浄などの処理をして、もう一度資材として使えるようにしたもの

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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排出・解体時に不法投棄リスクが発生する構造
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