夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる&mdash
夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる——。いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。「排出・解体→中間処理→最終処分」という廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫る。

夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる——。いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。「排出・解体→中間処理→最終処分」という廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫る。
夜中の山道にダンプ1台分のごみが突然現れる——。いま、解体・建設現場などから発生した産業廃棄物が、処理の流れからあふれ出し、行き場を失い残り続けている。なぜ廃棄物が不法投棄され、撤去されないのか。「排出・解体→中間処理→最終処分」という廃棄物処理の各フェーズでリスクが生じている構造と、自治体による撤去が進みづらい構造に迫る。
リディラバジャーナル構造化特集「不法投棄〜誰も扱えない産業廃棄物の行き先〜」。
第3回となる本記事では、排出・解体から中間処理時に不法投棄リスクが発生する構造(2章)として、中間処理時に“廃棄物や再生品の行き場がない状態”が生まれることで起こる、さまざまな問題を明らかにしていく。

「あと10年もすれば、大量の太陽光パネルの処理に迫られます。正直、さばき切れる自信はありません」
ある関東の中間処理業者Aさんは、危機感をにじませてこう語る。
第2回では、排出・解体から中間処理の段階で、
再生品の売り先の喪失 → ヤード滞留 → 新規受け入れ制限 → 行き場を失う廃棄物 → 不法投棄リスク
という連鎖が生じる可能性を示した。
こうしたリスクのある状態が続いていると、社会情勢の変化をきっかけに滞留が加速し、不法投棄リスクが高まる恐れがある。
過去には廃プラスチック問題が、そして近い将来には太陽光パネル廃棄問題が懸念されている。リサイクルの停滞による環境負荷の増大もその一つだ。
本記事では、これらの問題が発生するリスクのある構造を見ていく。
社会情勢の変化で、廃棄物の滞留が加速する
中間処理業者が「新規受け入れ困難」のリスクを抱えている状況では、社会情勢の変化によって廃棄物の出口が突然塞がれた際に、受け入れ・処理が追いつかず、不法投棄リスクが高まる恐れがある。
その代表例が、数年前に発生した廃プラスチック問題だ。
2017年末、中国政府が環境および人の健康保全のため、廃プラスチックを含む廃棄物原料の輸入禁止を発表した。2017年の日本の廃プラ輸出量は143万トン。そのうち52.3%(約75万トン)が中国向けだった。
主要な輸出先が消滅したことは、国内の廃棄物処理に大きな影響を与えた。元千葉県産廃Gメンで、現在は環境コンサルタントとして多くの産廃会社の現場を見ている石渡正佳さんは以下のように話す。

株式会社TOWALO代表取締役。千葉県庁時代には1996年から産業廃棄物行政を担当、産廃Gメン「グリーンキャップ」の創設に関与し、2001年には全国最悪といわれた銚子地域の不法投棄を短期間で制圧しその手法が全国自治体の模範となった。 2005年には優良産廃業者の公開情報分析手法「iメソッド」を開発し、企業への普及を図っている。2019年に千葉県庁を退職。2020年に株式会社TOWALOを設立し、代表取締役就任(現任)。主な著書:『産廃コネクション』(WAVE出版、第3回日経BP-BizTech図書賞受賞)、 『不法投棄はこうしてなくす 実践対策マニュアル』(岩波書店)、 『食品廃棄の裏側』(日経BP社)など 。NHK「クローズアップ現代」スタジオコメンテータ2回ほか、メディア出演多数。
「行き先を失った廃プラは、ベトナムやタイ、マレーシアなどに向かいましたが、処理できる量はせいぜい月数万。国内での処理量が増加し、少なくない量の廃プラが国内で滞留することになったと思います」

その後、東南アジア諸国も次々と輸入規制を導入。さらに多くの廃プラが国内での処理に追い込まれ、かつて海外に有価物として売れていたものは、処理費を払って国内で引き取ってもらう「逆有償」の廃棄物となった。
環境省の資料でも当時、「中国や東南アジアによる禁輸措置が実施・拡大中であり、すでに大量の廃プラスチックが国内で滞留しており、社会問題化。焼却・埋立量や処理コストも増加傾向」と言及されている。
さらに自治体・処分業者への調査では、廃棄物置き場の埋まり具合を示す「保管率」が80%以上の施設割合が、輸入禁止直前(2017年末)の8.5%から、最ひっ迫期(2017年末〜2019年末まで)には14.8%まで上昇していた。


現在は当時のような混乱は沈静化しているが、このように社会情勢の変化によって廃棄物処理が一気に滞留する恐れがある。
廃棄物の出口が塞がれば、新規受け入れの困難は生じやすくなる。その先にあるのは、滞留の長期化、そして不法投棄リスクの上昇だ。
次に来る“出口崩壊”のリスク——太陽光パネルの処理問題
中間処理業者のAさんが「次の問題」として指摘するのは、太陽光パネルの処理問題だ。これも社会的要因によって廃棄物の出口が塞がれ得る例の一つである。
「太陽光パネルの法定耐用年数は17年、実際の寿命は約20〜30年とされていますが、あと10年もすれば大量の廃パネルが発生します。壊れたパネルが中間処理の段階で詰まる可能性は高いです」

日本では2012年の固定価格買取制度(FIT)の開始により、2013〜2015年に太陽光発電が急増した。
経済産業省の資料によれば、その時期に設置されたパネルが寿命(20〜30年)を迎え始める2035~2037年頃に排出量がピークに達し、年間約17~28万トン(最終処分量の1.7~2.7%)、最大では約50万トンの廃パネルが発生すると予測されている。

国では「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」の公表や、「太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度」の義務化など、対策を進めている。
一方でAさんによれば、太陽光パネルの適正処理にはさまざまな方法があるものの、技術的なハードルがあるという。
「太陽光パネルに使われているガラスは、メーカーによって成分や作り方が少しずつ違います。
メーカーごとに分けて処理できれば良いのですが、現場に届くときには、どこの製品かわからない状態でやってきます。
大量に持ち込まれたら、正直、さばききれる自信はありません」
さらに、将来的には“住宅用”の廃パネルも問題になる恐れがある。現在、東京都や京都府など、各自治体で住宅等への太陽光パネルの設置義務化が推進されている。

Aさんはこう話す。
「その家の解体が始まる頃——30年後かもしれませんが——使用済みの太陽光パネルがどっと出てくる。受け入れ先がなければ、不法投棄につながる恐れがあります」
30年後には設置企業そのものが倒産している可能性もある。
「もし会社が倒産していたら、パネルはそのまま放置されるかもしれない。解体されずに屋根に残ったままのケースも想定されます」(Aさん)
10年後と30年後に迫る太陽光パネルの処理問題。上述した廃プラスチックの問題と同様に、社会的要因によって一気に廃棄物問題が顕在化する可能性がある。
リサイクル停滞は環境負荷増大のリスクも
中間処理業者の逼迫によって起こり得る課題は、将来的なリスクだけにとどまらない。
第2回で触れたように、中間処理業者の新規受け入れ困難が発生する背景には、再生品の売り先不足がある。
再生品が売れなければ製造にコストをかけられず、リサイクルは進まない。その結果、環境負荷の増大を招きかねない。
たとえば、前回「価格競争と処分費高騰の板挟みの中で、再生品よりバージン材(未使用・未加工の新品の原材料)が使用されることがある」と触れたが、Aさんはバージン材の利用増加を次のように懸念する。
「バージン材を大量に使えば、砕石や砂といった天然資源の採取が必要になります。
せっかく再生材をつくっても十分に使われない。資源を掘り続ける一方で循環が機能しないという、矛盾した状況に陥ってしまいます」

また、焼却の割合が高い廃棄物の品目も少なくない。たとえば廃プラスチックがそうだ。
※編集注)以下のデータは一般廃棄物も含む“全国の廃プラスチック総排出量”であり、焼却の割合の高さを示す代表例として挙げています
プラスチック循環利用協会の調査によれば、2023年の廃プラスチック総排出量769万トンのうち、「サーマルリサイクル(=実質的に焼却しながらエネルギー回収)」が64%を占める。
廃棄物をその性質を変えずに新たな製品の材料として再利用する「マテリアルリサイクル」は22%。廃棄物を化学的に分解して原料に戻す「ケミカルリサイクル」は3%にとどまっている。
本特集で扱う建設系廃棄物に限られる数字ではないものの、現状、焼却の割合は高い。
このように、再生品の需要不足や中間処理の逼迫が起こると、環境負荷が積み上がる恐れがある。

今回は、中間処理時に“廃棄物や再生品の行き場がない状態”が続くと、どのような問題が表面化するのかを見てきた。
社会情勢の変化によって廃棄物の出口が塞がれば、滞留は加速し、不法投棄のリスクが高まる可能性がある。
また、リサイクルが進まなければ環境負荷も積み上がる可能性があることもわかった。
次回からは「最終処分」に視点を移し、中間処理から最終処分時に不法投棄リスクが発生する構造を明らかにする。


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