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構造化特集
若者の孤独孤立
公開日: 2023/10/12(木)

【若者の孤独孤立】つながり無き自立の壁

公開日: 2023/10/12(木)
構造化特集
若者の孤独孤立
公開日: 2023/10/12(木)

【若者の孤独孤立】つながり無き自立の壁

公開日: 2023/10/12(木)
構造化特集 : 若者の孤独孤立
構造化の視点

地域、学校、親族——。社会的つ

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地域、学校、親族——。社会的つながりが希薄で、信頼できる人や安心できる場所が少ない若者は、自立することの壁の高さに苦しんでいる。特に“家族に頼れない”若者の困難は深刻化しやすい現状がある。若者たちが孤独孤立状態に陥る背景と、若者たちが自立に困難を抱える構造を明らかにする。


オーディオブック(ベータ版)

「小学生の頃、父が重い病気になって。父は手術を繰り返しながら働いていたんですけど、いつもお金に余裕がない家庭で育ちました。

 

家族全員が苦しい状況だったので、ずっと自分の感情や意見を両親に伝えられませんでした。それが原因で、精神的な疾患を抱えるようになったんです。

 

両親は精神疾患に関して理解がなくて、うまくコミュニケーションがとれない。結局、家族と一緒にいても自分の意見を言えず、精神的な状態も改善しないと思ったので実家を出ました。

 

いまは支援団体が運営するシェルターで暮らしています。大学を休学して就職活動をしているんですけど、なかなか仕事が決まらなくて。

 

これから先どうしようかなと思っていますが、自立するまでは、なんとかがんばりたいです

 

そう話すのは、若者を支援する団体の居場所に通う大学生のNさん。「でも、僕はまだ何とかなるのに家を出てきたケースかなと思います。他の子たちはもっと大変なので」と言う。

 

 

リディラバジャーナル、今回の構造化特集のテーマは「若者の孤独孤立〜つながり無き自立の壁〜」。

 

信頼できる人や安心できる場所が少なく、社会的つながりが希薄な若者が、社会で自立することの壁の高さに苦しんでいる。

 

若者たちが孤独孤立状態に陥る要因とは何か。つながり無き若者は、自立しようとする際にどのような壁にぶつかるのか。そして、その壁はなぜ形成されているのか。

 

本特集では、孤独孤立状態にある若者が自立する際に困難を抱える構造を明らかにする。

信頼できる居場所がない。孤独孤立状態にある若者の現状

本特集では「孤独」「孤立」に苦しむ若者たちの困難を見ていくが、そもそも問題視されるべき孤独孤立の状態とは何か。

 

DVやいじめ、自殺願望等の悩みを抱え、孤独を感じる人たちのチャット相談事業を行う大空幸星さん(NPO法人あなたのいばしょ 理事長)は、孤独と孤立の定義について次のように話す。
 

大空幸星(おおぞら・こうき)
1998年、愛媛県松山市出身。「信頼できる人に確実にアクセスできる社会の実現」と「望まない孤独の根絶」を目的にNPOあなたのいばしょを設立。孤独対策、自殺対策をテーマに活動している。内閣官房孤独・孤立の実態把握に関する研究会構成員、内閣官房孤独・孤立対策担当室HP企画委員会委員、内閣官房こどもの居場所づくりに関する検討委員会委員など。慶應義塾大学総合政策学部卒業。

 

「社会学者のピーター・タウンゼントは、孤立とは“家族やコミュニティとほとんど接触がないこと”であり、孤独は“仲間づきあいの欠如あるいは喪失による好ましからざる感じを持つこと”と定義しています

 

孤独に関しては、『ロンリネス(loneliness)』と『ソリチュード(solitude)』の二つの側面があり、前者は消極的な孤独、後者は積極的な孤独を指しています。問題とされるべきは“望まない孤独”であるロンリネスです。

 

また、心理学者のペプローとパールマンは、孤独を『個人の社会的関係の不足から生じる』『主観的な体験である』『その体験は不快で苦痛を伴う』ものと説明しています。

 

重要なのは、孤独が主観的な概念であり、孤立が客観的な概念であるという点です。周囲とのつながりが少なく孤立しているように見えても孤独を感じていない人もおり、反対に、孤立していないように見えても深い孤独を感じて自傷行為や自殺に至るケースもあります」

 

現在、社会の中で孤独感を感じたり孤立している若者はどれくらいいるのか。

 

内閣官房孤独・孤立対策担当室の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年)」によれば、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人は、16〜19歳で5.2%、20〜29歳で7.1%、30〜39歳で7.2%だった。
 

 

この調査では、孤立の指標化も試みられている。

 

家族や友人とのコミュニケーション頻度が「週1〜2回未満」の若者を“孤立状態にある可能性が高い”とした場合、該当する若者は16〜19歳で1.9%、20〜29歳で5.8%、30〜39歳で6.2%だった。

 

また、「行政機関・NPO等の民間団体からの支援を受けておらず、不安や悩みが生じた場合の相談相手がいない」若者を“孤立状態にある可能性が高い”とした場合、該当する若者は16〜19歳で4.3%、20〜29歳で8.3%、30〜39歳で9.2%という結果が示された。
 

 

少なくない数の若者が孤独孤立状態に陥る中、居場所事業を行う支援現場には、孤独孤立状態の深刻化した若者たちが訪れている。

 

若者たちが多く集まる「夜のユースセンター」を運営する阿部渉さん(認定NPO法人育て上げネット)は、こう話す。
 

阿部渉(あべ・わたる)
若年者就労基礎訓練プログラム「ジョブトレ」の現場リーダーとして若者たちの成長を見守る。壁を作らない関わりが得意で、若者たちのアニキのような存在。

 

「家庭や学校、職場など、人にはさまざまな社会的つながりがありますが、ユースセンターにやってくる若者たちの大部分は、信頼できるつながりを持てていません

 

あったとしても一つくらい。信頼できる人や場所、自分らしくいられるコミュニティなどを複数持っているケースは、ほとんどありません

 

深刻な孤独孤立状態にある若者たちは、信頼できる帰属先が十分でないことに加えて、複数の困難を同時に抱えていたり、問題が連鎖的に生じていることも少なくない。

 

不登校や中退、経済的困難といった境遇にあるユース世代へのセーフティーネットと機会提供をミッションに掲げ、近年は大阪の繁華街でユースセンターの運営も行う今井紀明さん(認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長)は、「孤立状態が深刻化した若者が抱える問題は、身体的問題、社会的問題、金銭的問題、精神的問題と複合的です」と話す。

 

今井紀明(いまい・のりあき)
1985年札幌生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)卒。神戸在住、ステップファザー。高校生のとき、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立。その活動のために、当時、紛争地域だったイラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後「自己責任」の言葉のもと日本社会から大きなバッシングを受ける。結果、対人恐怖症になるも、大学進学後友人らに支えられ復帰。偶然、中退・不登校を経験した10代と出会う。親や先生から否定された経験を持つ彼らと自身のバッシングされた経験が重なり、2012年にNPO法人D×Pを設立。
経済困窮、家庭事情などで孤立しやすい10代が頼れる先をつくるべく、登録者10,000名を超えるLINE相談「ユキサキチャット」で全国から相談に応じる。また定時制高校での授業や居場所事業を行なう。10代の声を聴いて伝えることを使命に、SNSなどで発信を続けている。

 

「たとえば、親から虐待を受け、食事も満足に提供されず、貧困状態に置かれている。生活費や食費を自力で稼ごうと努力するも、親に収入を奪われる。

 

このような厳しい状況の中で、徐々にメンタルも不安定化していく……という若者がいます」

 

今井さんの話からは、孤立状態にあり、孤独を感じている若者は多くの困難に直面しやすいことがうかがえる。

つながりの希薄化、守られない家庭———。孤独孤立の社会的背景

若者が孤立し、孤独を感じる背景には、学校や地域コミュニティといった社会的つながりの変化がある。

 

家族社会学や生活保障論に詳しい宮本みち子さん(社会学者/放送大学副学長・千葉大学名誉教授)は、こう話す。

 

宮本みち子(みやもと・みちこ)
放送大学副学長、千葉大学名誉教授。社会学博士。専門は、若者政策、生活保障論。若年層における失業者・フリーター問題、生活困窮者、貧困問題、社会的な孤立等の問題について、日本及び国際比較の研究に尽力。国及び地方自治体の子ども・若者政策の立案や、全国の若者支援団体の活動に関与。
著書:『若者が無縁化する』(ちくま新書)『若者が《社会的弱者》に転落する』(洋泉社)『下層化する女性―仕事と家庭からの排除』(勁草書房)『すべての若者が生きられる未来をー家族・教育・仕事からの排除に抗して』(岩波書店)『若者の権利と若者政策』(明石書店)ほか。
社会活動歴:内閣府子どもの貧困対策検討会座長、内閣府子ども・若者育成支援推進点検・評価会議座長、労働政策審議会委員、社会保障審議会委員、中央教育審議会委員等。

 

「今日の学校では教員の多忙化が問題となっています。教員と子どもが十分にコミュニケーションを取る時間は少なく、学業についていけない子や、友人関係に悩む子が置き去りにされ、学校での居場所を見失っている可能性があります。

 

地域コミュニティの側面では、かつて近隣のおじさん、おばさんが声をかけてくれていたような身近なつながりが減少しています。

 

さらに、核家族化が進んでおり親戚との交流も大幅に縮小しています。

 

結果として、“目の前にいるのは親だけ”という状況にある子が多いのではないかと思います」

 

今年(23年)4月に発表された「教職員勤務実態調査2022」によれば、小学校教諭の64.5%、中学校教諭の77.1%が国の指針で定める「月45時間」の上限を超える時間外勤務をしている。子ども一人ひとりを気にかける時間的・精神的余裕がない教員は少なくない

 

地域コミュニティとのつながりの希薄化については、「社会意識に関する世論調査(令和4年12月調査)」によると、地域での付き合いの程度について43.4%の人々が「付き合っていない」と回答。この割合は年を追うごとに増加している。

 

 

そして世帯構成の変化も顕著で、「男女共同参画白書 令和4年版」によれば、1980年時点では「3世代等」の割合は19.9%だったが、2020年には7.7%にまで低下している

 

 

学校や地域、親類とのつながりが希薄化する中で、若者にとっては“家庭”の重要性が高まっている。

 

しかし「家庭を取り巻く環境は近年大きく変化しており、いまは“家庭が守られていない”という状況になっています」と宮本さんは語る。

 

「1980年代頃までは、家庭の主要な機能は結婚して子どもを産み、集団生活を維持し、子どもを実社会に送り出すことであり、家庭は個人の責任で維持されるべきであるという社会的意識が強くありました。

 

この時代は国内の経済状況が良く、勤めてさえいれば企業が家庭を守ってくれていた。家庭は貧困を防ぐ場でもあり、そこにいさえすれば何とか食べられていました。

 

しかし、90年代には婚姻率・出生率が低下し、離婚率が上昇。家庭内でも個人の意思や生き方、選択の自由が尊重される『家族の個人化』が進み始めます。

 

2000年代にはそこに社会的な経済問題が加わり、企業が守っていた家庭の安定は失われていきます。

 

結果、家族の個人化が進んだ状況下で、経済的に困窮している家庭が出てきます。たとえば、『我慢して離婚しなければやりくりできるけど、精神的に耐えられない』という夫婦が離婚し、経済的困窮のひとり親世帯が生まれる……といったケースです。

 

現代では、家庭を守る基盤が弱まっていて、家族が失業したり病気になった際、社会的つながりがないと非常に厳しい状態に置かれてしまいます

 

家庭が守られていないために、家庭内で居場所を失った若者が困難を抱えやすいという現状があると思います」

 

現場で若者たちと関わる阿部さん、今井さんも「家庭環境の不安定化が若者に及ぼす影響は大きい」と口をそろえる。

 

家族としかつながっておらず、家庭に居場所がない若者が抱える困難は大きいです。母子家庭で夜に食べるものが用意されていない若者、家庭内暴力で家にいられない若者、家族の介護を行う若者などが支援の場につながってきています」(阿部さん)

 

「相談に来る若者の大半は、親との関係性が悪いです。家庭に居場所がない、親に頼れないという環境の子ほど、厳しい状態に置かれています」(今井さん)

 

若者は、地域や学校、親族といった社会的つながりが希薄化している。その中でも特に重要なつながりである家庭は、社会の中で守られていないことから不安定化のリスクが大きく、家庭内で居場所を失った若者が困難を抱えやすい現状がある。

住まいも仕事も見つけづらい。つながり無き自立の壁

地域や学校に居場所がなく、唯一の拠り所である家族との関係性も悪化している。そんな若者が、自立に向けて一歩踏み出そうとするとき、大きな障壁となるのが“住居の確保”だ。

 

生活困窮者やホームレスの人たちへの就労支援、生活支援等を行う認定NPO法人Homedoorの浦越有希さんは、住まいの壁についてこう話す。

 

浦越有希(うらこし・ゆき)
認定 NPO 法人 Homedoor(ホームドア)生活相談員 広島大学大学院総合科学研究科修了。修士課程では、貧困層・低所得層の支援団体と関わり、 ソーシャルアクションを学ぶ。修了後は無料低額診療を行う病院に勤務。2021 年 10 月より Homedoor 相談員。 

 

「たとえば、寮付きの派遣仕事を始めたものの、仕事内容や人間関係に適応できずに退職し、住居も仕事も失ってしまう方などがいます。

 

退職時には一定の所持金があるので、ネットカフェなどで寝泊まりできますが、新しい仕事が見つけられず、お金がなくなってしまい支援につながるというケースがあります。

 

こういった方々は、寮付きの派遣仕事を選ぶ時点で、家族に頼れない方が少なくありません。親との関係が悪かったり、虐待を受けていたりした方などにとっては、寮付きの就労が実家からの脱出の手段となっていることもあります」

 

家族に頼ることができない若者は、民間の賃貸住宅を借りようとする際にも大きな困難が伴う。

 

「緊急連絡先になる人がいなかったり、初期費用を払えるだけの貯蓄がなかったりする場合が多いです。保証会社の審査に通りづらいという壁もあります」

 

また、孤独孤立状態に陥った若者は、就労面でも多くの壁にぶつかりやすい。育て上げネットの阿部さんは「働くことへの自信がなかったり、新しい環境や人間関係への不安を感じている若者は多いです」と言う。

 

「背景としては、家庭や学校でのつながりの欠如や、人に認められるという経験の不足があります。

 

親御さんの教育方針に苦しめられたこと、親御さんの介護が必要な状況で生きてきたこと。あるいは、学校という場に馴染めずに不登校になったことなどです。

 

働き始めてから、つまずいてしまう場合もあります。子ども時代の負の経験から、職場の人に聞きたいことや相談したいことを言い出せず、自分で抱え込んでしまう、働きすぎて潰れてしまう方などがいます」

 

住居や就労といった壁にぶつかった際、若者は貧困ビジネスや犯罪組織などにつながっていってしまうリスクもある。

 

親や身近な大人を頼れない若者の「居場所」「仕事」「住まい」の3つの支援に取り組む荒井佑介さん(NPO法人サンカクシャ代表理事)は、こう話す。

 

荒井佑介(あらい・ゆうすけ)
1989年埼玉県出身。 大学生時代からホームレス支援や子どもの貧困問題に関わり始める。 生活保護世帯を対象とする中学3年生の学習支援に長く関わっていたが、高校進学後に、中退、妊娠出産、進路就職で躓く子達を多く見たことから、NPO法人サンカクシャを立ち上げる。サンカクシャでは、15歳から25歳前後までの親や身近な大人を頼れない若者の「居場所」「住まい」「仕事」の3つをメインの支援として実施している。

 

ネットやSNSなどを通じて、反社や半グレ、貧困ビジネス業者といった危険な組織と簡単につながれる環境があります

 

住居や仕事を失い、誰も頼れないとき、X(旧Twitter)で『シェアハウス』と検索する。『安くて即日で住める!』という情報が出てきて、それに飛びついてしまう。

 

その背後には悪徳業者が待ち構えていて、SNS上に掲載されていた写真と全く違う部屋で暮らすことになる……といったケースがあります。

 

困ったときに頼れるつながりがないと、危険な状況に陥りやすいという構造があります

 

社会的つながりが希薄化し孤独孤立状態に陥った若者は、自立への道のりで多くの壁にぶつかり、結果としてさらなる困難や危険な状況に置かれてしまう可能性がある。

 

本特集では、一人でも多くの若者が安心安全な状態で自立できる社会のために、孤独孤立状態に陥る若者の困難や、困難が生じる構造を明らかにしていく。

各記事の紹介 

【1章 つながり無き若者たち】

 

1回 信頼できる人や場所が少ない。孤独孤立状態にある若者の現状

 

 

「自分の意思を言えない」「家に居場所がない」——。家庭、学校、地域といったつながりが希薄化する中で、若者たちはどのような困難を抱えているのか。

 

当事者へのインタビューや、民間団体、専門家の声などを通じて、孤独孤立状態にある若者の現状に迫る。

 

<2回 「家族に頼れない」「保護後のつながりがない」。若者が孤独孤立状態に陥る背景

 

 

なぜ若者は孤独孤立状態に陥ってしまうのか。

 

親子関係、家庭の経済状況、学校生活。さらには社会的養護のその後のつながりづらさなど、孤独孤立状態に陥る要因にはさまざまなものがある。

 

第1回に続いて、当事者や民間団体、専門家の声をもとに、若者が孤独孤立状態に陥る背景を明らかにする。
 

【2章 立ちはだかる自立への壁】

 

<3回 暮らせる余裕も、選択肢もない——。孤独孤立状態にある若者の住居の困難

 

 

孤独孤立状態が深刻化した若者は、住居を借りることの壁が高くなる。

 

「経済的余裕がなく、賃貸契約の経験や知識に乏しかったり、相談できる人もいなかったりする中で住居を借りることは簡単ではありません」(NPO法人Homedoor・浦越さん)

 

賃貸住宅の高い入居・契約ハードルや、住宅の選択肢の限界など、若者が住居を借りる際の困難を整理する。
 

<4回 損なわれる自信と経験。孤独孤立状態にある若者の就労の困難

 

 

「支援につながっている多くの若者は、何をするにも十分にこなせる能力があって、コミュニケーションも問題ない。でも彼らにとって、新しい環境に飛び込むことへのプレッシャーは計り知れないんです」(認定NPO法人育て上げネット・阿部渉さん)

 

孤独孤立に陥った若者は、これまでの負の経験から、働くことに高いハードルを感じているケースが少なくない。

 

働き始めるまでの状況や、新しい環境への不安など、若者の就労を取り巻く課題を明らかにする。

 

【3章 自立への壁をつくるもの】

 

<5回 「家族で支え合う」 が前提に。孤独孤立状態の若者を支える制度の課題

 

 

「若者への自立支援の制度は整備され始めており、さまざまな関係者が尽力していますが、理念に対して現場の体制が追いついていない現状があります」

 

そう話すのは、若者政策に詳しい社会学者の宮本みち子さん。第5回では、民間団体や専門家の声をもとに、若者を取り巻く制度的課題や、社会的養護を受けたケアリーバーに関する課題を整理する。

 

<6回 つながりたいけど、つながれない。孤独孤立状態の若者を支える支援現場の課題

 

 

自治体や民間支援団体は、孤独孤立の若者に「つながりたいけどつながれない」という難しさに直面している。

 

「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年)」によれば、「日常生活に不安や悩みを感じていることがある」と回答した若者の中で、行政機関・NPO等からの支援を受けていない若者の割合は88.2%にのぼる。

 

若者支援に積極的に取り組む鎌倉市、民間団体の声を通じて、若者の自立を支える支援の課題を考える。

 

【4章 自立につまづいた先の困難】

 

<7回 「そこにしか居場所がなかった」。孤独孤立に陥った若者が危険組織とつながる背景

 

 

「悪い地縁やネットSNSから犯罪組織につながる若者がいます。“そこにしか居場所がなかった”から所属するも、一度入ったら恐怖心から抜け出せないという構造があります」

 

自立につまづいた若者は、なぜ闇バイト等の犯罪に手を出したり、貧困ビジネス等につながってしまうのか。

 

「闇バイト 凶悪化する若者のリアル」の著者である廣末登さん(龍谷大学犯罪学研究センター嘱託研究員)へのインタビューをもとに、若者が悪意ある大人とつながる背景を明らかにする。

 

【5章 解決の方向性】

 

<8回 解決の方向性>

 

若者が自立するための社会的なつながりが量的・質的に保障されており、一人でも多くの若者が安心安全な状態で社会に参加している状態を作るためには、何が必要なのか。5章では、解決のための方向性を示す。

 

 

【参考文献など】

<書籍・論文>

大空 幸星「望まない孤独」(扶桑社、2022)

宮本みち子、佐藤洋作、宮本太郎(著・編集)「アンダークラス化する若者たち――生活保障をどう立て直すか」(明石書店、2021)

廣末 登「闇バイト 凶悪化する若者のリアル」(祥伝社、2023)

<調査等>
内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」

内閣府「令和4年版 子供・若者白書」

内閣府「社会意識に関する世論調査」
内閣官房孤独・孤立対策担当室「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年人々のつながりに関する基礎調査)調査結果の概要」
厚生労働省「児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査(令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業)」

厚生労働省社会・援護局保護課「無料低額宿泊事業を行う施設の状況に関する調査結果について(令和2年)」

文部科学省「不登校に関する実態調査 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書〜( 平成 26 年7月 不登校生徒に関する追跡調査研究会)」

東京都福祉保健局生活福祉部生活支援課「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査報告書(平成30年1月)」

総務省行政評価局「要保護児童の社会的養護に関する実態調査結果報告書(令和2年12月)」

警察庁「特殊詐欺に犯行利用された番号種別件数の推移及び受け子等になった経緯について」

一般社団法人つくろい東京ファンド「生活保護利用に関するアンケート調査結果」

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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CONTENTS
intro
つながり無き若者たち
no.
1
no.
2
立ちはだかる自立への壁
no.
3
no.
4
若者の孤独孤立〜つながり無き自立の壁〜
no.
5
no.
6
自立につまづいた先の困難
no.
7