医療的ケア児:生きのびた子どもたちのその後 | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
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医療的ケア児
生きのびた子どもたちのその後

世界でもっとも赤ちゃんが安全に生まれる国、日本――。

医療技術の進歩により、新生児死亡率は著しく低くなった。

 

そして、以前であれば亡くなってしまった子どもたちも生きることができるようになった。

 

しかし、生命は救われても日常的に医療的ケアを必要とする子どもたちとその家族を取り巻く環境は厳しい。

 

(Shutterstock)

 

本特集で取り上げるのは『医療的ケア児』と呼ばれる子どもたちとその家族を取り巻く課題だ。

 

厚生労働省によると、医療的ケア児は「医学の進歩を背景として、新生児集中治療室等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児」を指す。

人工呼吸器を身につける子どもは10年前の10倍以上

0歳から19歳の医療的ケア児の数は、2016年時点で推計約1万8000人(厚生労働省)。10年前と比較すると約2倍だ。

 

自宅で人工呼吸器を身につける未成年者も2005年から2015年までの10年間で約10倍に増えている。

 


(出典:平成29年度厚生労働科学研究費補助金障害者政策総合研究事業「医 療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関す る研究(田村班)」報告)

 

厚生労働省の障害児・発達障害者支援室長・山口正行さんは、「医療的ケア児が増えている背景には、医療技術の進歩に加えて、周産期医療を提供する施設の増加によって安全な出産環境へアクセスしやすくなったことや、医療機器の小型化によって従来なら入院する必要があった子どもでも家庭で暮らせるようになったことも寄与しているのではないか」と話す。

追いつかない社会の受け入れ体制

そうした社会の変化がある一方で、地域で医療的ケア児やその家族を支えていく体制づくりが追いついていない。

 

そのため、家庭で子どもの医療的ケアをおこなう家族の負担は大きい。

 

今回取材をした2歳の女の子は、「痰の吸引」、「胃ろうの注入」、「酸素投与」、「人工呼吸器の使用」の4つの医療的ケアを日常的に必要とする。

 

多いときには5分に1回、両親が痰の吸引をし、夜間も両親が交代で起床しケアをおこなう。

 

夜間も医療的ケアが必要な子どもの場合、親は恒常的に睡眠不足だったり、睡眠を断続的にとらざるを得なかったりする。

 

子どもにつきっきりでケアをおこなう家族が休息をとることも必要だが、医療的ケアを必要とする子どもを受け入れる施設が多くないことも課題だ。

 

就学し、看護師が配置されている特別支援学校に通ったとしても、医療的ケアのために保護者の付添いが求められることもある。

 

特集では、そうした医療的ケア児とその家族が抱える課題や、子どもたちが病院から退院した後の生活を支える体制が広がらない理由を探っていく。

 

 

医療的ケア児やその家族を支援する医療型短期入所施設「もみじの家」(東京都世田谷区)ハウスマネージャーの内多勝康さんは、「高齢者福祉は社会全体で担っていくという認識が広まっているのに対して、子どもの分野に関してはそうした認識が十分に広がっているとは言い難い」と指摘する。

 

「医療が進歩して寿命が伸びた結果、介護が必要な高齢者が増えました。家族だけで介護できないケースも多くなり、社会全体で支えていきましょうということで、介護保険ができました。みんなでお金を出しあって社会全体で支えていこう、と。ただし、子どもについては、医療と介護が必要でも、病院から退院した後はすべて家族の責任と考えられてしまいがちです

 

2018年8月に『「医療的ケア」の必要な子どもたち』(ミネルヴァ書房)を出版した内多さん。

 

今後ますます増えていくと考えられる医療的ケア児。

 

これから親になる人や、医療、介護、保育、教育関係者にとっては他人事ではない。また、医療的ケア児の保育施設や学校での受け入れ、親の就労環境のサポートのためには周囲の協力も欠かせない。

 

本特集を機に、医療的ケア児とその家族の抱える課題をぜひ多くの人に知ってもらいたい。

 

第1章は《当事者家族の思い》。

 

 

第1回【医療的ケア児家庭にも選択の自由を】では、医療的ケアを必要とする2歳の女の子の両親のインタビュー記事をお届けする。子どもと自らの選択肢を広げるために地方都市から東京に移住してきた夫婦が直面した困難や希望を語ってもらった。

 

第2章は《病院から地域へ》。

 

 

第2回【制度のはざまに陥る医療的ケア児と家族の困難】では、医療的ケア児家族の就労問題と社会的サポートについて考える。病院から家庭・地域に戻ってきたあと、どのような支援体制が求められているのか。

 

第3回【子どもを寝たきりにさせたくない…地域療育の苦難】では、医療的ケア児家庭を支える施設の課題に迫る。より多くの子どもたちが可能性を最大限に広げられる療育環境にアクセスできるよう、何が必要なのかみていく。

 

第3章は《学校現場》。

 

(Shutterstock)

 

第4回【「ひとりで学校に通う権利を」医療的ケア児の就学】では、学校現場と医療、福祉の連携の課題を考えていく。医療的ケア児とその家族が就学段階になって直面する困難とは――。

 

第4章は《社会の理解》。

 

 

第5回【医療的ケア児に、社会との接点を】では、「統合保育」や先進的な自治体の取り組みなどを参考に、医療的ケア児に対する理解を社会に広めていく意義を考える。

 

第6回【リディラバ安部が考える「医療的ケア児」】では、リディラバジャーナル編集長である安部敏樹が医療的ケア児を取り巻く社会について、自らの考えを語る。

 

 

※また、「障がい者(児)」は「障害者(児)」と表記します。「障がい者(児)」という表記の場合、音声読み上げソフト等で読み上げる際、「さわりがいしゃ(じ)」と読み上げられる場合があります。そのため、音声読み上げを利用される方のアクセシビリティに配慮して「障害者(児)」という表記を利用します。

 

(2018年10月23日22:31「酸素呼吸器」を「酸素投与および人工呼吸器の使用」に訂正しました。)

(2018年10月25日11:47 「酸素投与および人工呼吸器の使用」を「酸素投与」、「人工呼吸器の使用」の2項目に分けました。)

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この記事に寄せられたコメント

User
Masataka Yoshida
途上国にいると新生児死亡率は高いが、四肢欠損や白斑、自閉症などの障碍は見かけるものの、医療ケアを受けながら生きていく人をあまり見かけない。
色々思うところはあるのだが、あまり書きたくない気持ち。それはきっとここに自分の悩ましい思いがあるからなのだろう。
Masataka Yoshidaさん、コメントありがとうございます。
医療的ケア児を巡っては、本来生存する能力が十分にない子どもとして、無理に生かすことはないのでは、という意見もあります。そうした声に対して、厚生労働省の山口正行さんは、子どものご両親と話したり、そうした子どもたちと接する機会があれば、そういった気持にはならないのではと話されていました。
そして、「だからこそ、頭で理解するだけではなくて、町中に医療的ケアを必要とする子どもたちも出ていけるようになり、地域の人にこういう子どもたちがいるよと経験をもって知ってもらうことが大切だと思います」とお話されていました。
ご参考までに、こうした議論も知ってもらえたらと思います。
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0章 はじめに
1章 当事者家族の思い
2章 病院から地域へ
3章 学校現場
4章 社会の理解
5章 安部コラム
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