リディラバジャーナル構造化特集「ヤングケアラー」。
第3回となる本記事では、ヤングケアラーと家族を取り巻く困難(2章)として、ヤングケアラーの家族、特に親が抱える困難に焦点を当てる。
「自分の子どものことを『ヤングケアラー』と言われるのが辛い。そう話してくれる親御さんもいます。
余裕がない中で、親として一生懸命がんばっている。子どもにケアを担わせ過ぎないように、仕事も家事も精一杯こなそうとしているのに、自分の子どもに対して『ヤングケアラー』という言葉を使われると、自分が責められている気持ちになる、と」
認定NPO法人カタリバでヤングケアラーとその家族向けの伴走型支援を行う和田果樹さんは語る。
ケアを要する家族がいる場合、子どもだけではなく、その親もまた社会的に孤立し、困難を抱えていることがある。家庭への不本意な介入を恐れ、外部への相談が難しいことも少なくない。
ケアを担う家族が直面する課題とは何なのか。その実態を見ていく。
「虐待でもネグレクトでもないのに」
理解されづらいヤングケアラーの親の立場
家族のケアを担うヤングケアラー。ケア負担の大きさによっては、学業や就職、友人関係に支障をきたす子どももいる。
一方、ヤングケアラーのメディア報道が増えるにつれ、批判に晒される傾向にあるのが当事者の家族、特に親だ。「子どもにケアを任せるなんて、親は何をしているんだ」と、子どもがケアを担う状況は親に責任があるとする声も聞かれる。
確かに、親から虐待やネグレクトを受けているヤングケアラーも存在する。緊急性の高い事例については、行政介入による速やかな対応が求められる。
しかし、全てのヤングケアラーが虐待やネグレクトを受けているわけではない。神戸市のこども・若者ケアラー相談・支援窓口で担当課長を務める上田智也さんは、現状について次のように語る。
神戸市福祉局相談支援課こども・若者ケアラー相談・支援窓口の担当課長。
「ヤングケアラーを、虐待やネグレクトを受けている子どもとしてイメージしている人も多いでしょう。
しかし、実態はそうではありません。虐待やネグレクトという枠には到底入らないケースが、むしろたくさんあると感じています。
例えば、経済的な問題を抱えている家庭の場合。親が朝から夜遅くまで働きに出ていれば、子どもが祖父母やきょうだいの面倒を見、料理や掃除などの家事を担わざるを得ないかもしれません。
このようなケースにおいて、家族のために精一杯働いている親を責めることができるでしょうか」
認定NPO法人カタリバでヤングケアラーとその家族向けの伴走型支援を行う和田果樹さんは、参加者の親から、自分の子どものことを「ヤングケアラー」と言われるのが辛いという声を聞いた。
1990年生まれ。兵庫県出身。東京大学大学院教育学研究科修了後、新卒で認定NPO法人カタリバに入職。東日本大震災の被災地で子どもの居場所づくりや学習支援に従事するが、社会人になった矢先に母が難病を発症し、介護のため入職後1年半で休職。自身の介護の経験から、現在は同団体でヤングケアラー支援の立ち上げと企画運営を担当。
「余裕がない中で、親として一生懸命がんばっている。子どもにケアを担わせ過ぎないように、仕事も家事も精一杯こなそうとしているのに、自分の子どもに対して『ヤングケアラー』という言葉を使われると、自分が責められている気持ちになるということでした。
『ヤングケアラー』という言葉が、虐待やネグレクトなどと結びつけられて、マイナスのイメージで語られやすいことが影響していると思います」
本当に困っているからこそ、相談できない。公的サービスに対する親の葛藤
家族のケアについて、本来なら利用できるはずの外部からの支援を受けていない親もいる。しかし、それは必ずしも親の怠慢や子どもに対する思いやりのなさに起因するものではないと、神戸市の上田さんは言う。
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