• 新しいお知らせ
    ×
構造化特集
被災地とボランティア 第6回
公開日: 2018/4/4(水)

対症療法的な支援だけではダメ、東日本大震災の教訓

公開日: 2018/4/4(水)
構造化特集
被災地とボランティア 第6回
公開日: 2018/4/4(水)

対症療法的な支援だけではダメ、東日本大震災の教訓

公開日: 2018/4/4(水)
構造化の視点

被災地では、災害発生直後だけではなく、復興段階において

・・・もっと見る

被災地では、災害発生直後だけではなく、復興段階においても多くの人々が関わる必要があります。そして、初期段階でのボランティアとしてのかかわりが継続的な地域へのかかわりにつながります。本特集ではそうした復興段階を踏まえた上でのボランティアの初動という観点から、東日本大震災を振り返ります。

被災地では、災害発生直後だけではなく、復興段階においても多くの人々が関わる必要があります。そして、初期段階でのボランティアとしてのかかわりが継続的な地域へのかかわりにつながります。本特集ではそうした復興段階を踏まえた上でのボランティアの初動という観点から、東日本大震災を振り返ります。

被災地では、災害発生直後だけではなく、復興段階においても多くの人々が関わる必要があります。そして、初期段階でのボランティアとしてのかかわりが継続的な地域へのかかわりにつながります。本特集ではそうした復興段階を踏まえた上でのボランティアの初動という観点から、東日本大震災を振り返ります。


オーディオブック(ベータ版)

東日本大震災当時、大学生ボランティアとして被災地支援を始め、大学卒業後すぐに岩手県陸前高田市広田町に移住し、市議会議員になったNPO法人SET代表・三井俊介さん。

 

三井さんの広田町への関わりは、「災害ボランティア」から始まりました。そして今は、地域内から「地域に関わる人」を増やしている。

 

写真中央の男性が三井さん。広田町の根岬漁港にて、同じく広田町に移住したSETのメンバーと地元の住民の方と一緒に(三井さん提供)。

 

今回の記事では、そうした事例を踏まえて、震災発生直後には認識されていなかった被災地とボランティアの関係を見ていく。

 

建物の復旧などから、地域の産業・生業支援など長期的な復興の段階に移行していくにあたって、人々の被災地への関わり方は変化していく

 

そのため、「災害ボランティア」を長期的な視点で評価していく必要があるのだ。

 

被災地支援を行うボランティアの数と関わり方を表した図。

 

被災地では、時間が経つと「被災地としての課題」よりも、地域コミュニティや地域経済の衰退など、地方が直面している「一般的な課題」が顕在化していく。

 

そうした時に、ボランティアとして被災地に関わった人々は、消費者や観光客、移住者として、関わった地域を支えていく存在になり得る。

 

三井さんのケースは、まさにボランティアとして被災地に関わったことが、移住に繋がった事例だ。

移住者を「呼び込む」ではなくて「育てる」

現在の広田町の海(三井さん提供)。

 

三井さんは今もSETでの活動を通して、地元の人と外部の若者との交流を通した「まちづくり」活動を行っている。

 

現在、SETには150人以上のメンバーが所属しており、うち80人ほどの学生が毎月1回、入れ代わり立ち代わり広田町を訪れている。
 
SETのプログラムを通して広田町に関わりを持った人々の中には、移住する人もいる。SETの職員になる人もいれば、起業準備をしている人もいると三井さんは話す。

 

移住者を増やすことについて、三井さんは地域外の人を「呼び込む」という考え方ではなく、いい移住者になる人を「育てる」ことが大事ではないかと指摘する。

 

「そのまちが好きでそのまちのためになりたい、やっぱりそうした想いを持っている人が移住してこないと、数だけ増えても仕方ないと思っています。そういう意味ではSETのメンバーになって、SETで長く活動をして、移住するという流れを僕らもつくりたいですし、(そうした事例が)多いのが現状ですね」

 

ボランティアという文脈で地域に関わったり、SETの提供している地域課題の発見・解決を行うプログラムに参加したりする人々は、地域の課題解決に貢献するまちの貴重な資源となり得るのだ。

ボランティアができることは肉体労働だけではない

移住とまではいかなくても、ボランティアから消費者や観光客として地域を支える人を増やすことができれば、結果的には地域経済にプラスの効果をもたらす

 

国内外の災害支援に携わってきた被災地NGO協働センター代表の村井雅清さんは著書『災害ボランティアの心構え』(ソフトバンク新書、2011年)で、次のように述べている。

 

「(前略)被災地でボランティアをした人たちの何割かは、復興を成し遂げた後の被災地に観光客として戻ってくるはずだ。その割合は1割かもしれないが、1000人のボランティアを受け入れたら、100人の観光客を将来呼び込むことができる」

 

そして、村井さんは被災地を訪れるボランティアの数は、「多ければ多いほどいい」という。

 

阪神淡路大震災および東日本大震災のボランティア参加者数の推移を見ると、災害直後に関わるボランティアが多いほど、長期的に地域に関わるボランティアも多くなっている。

 

 

「阪神淡路大震災および東日本大震災のボランティア参加者数の推移」(「全社協 東日本大震災 岩手県・宮城県・福島県のボランティア活動者数(2018年3月掲載).pdf」および「兵庫県[32] 阪神・淡路大震災一般ボランティア活動者数推計(1995.1~2000.3)の基礎情報」を基に編集部作成)。

 

三井さんたちのように、被災地支援で終わらずに復興段階に入ってからも地域を支える人を増やすためには、人々の関心が高い災害直後に多くのボランティアを巻き込むことが一つの策となる。

 

被災地の復興支援を行う一般社団法人RCF(東京都)の藤沢烈さんは、平時から震災などの有事の対応策を考えておくことの重要性を指摘する。

 

「やっぱり大事なのは平時に準備しておくことです。(災害が)起きてからは、会議しましょうとか、提案書作りましょうという場合ではなくなってしまうので、事前に調整を終えておかなければなりません。ボランティアへの対応や復興計画もそうです。震災が起きてから復興計画を作ると、ボランティアなどがやってきて一時的に人が増えるため、元のまちの状態を大きく超えた理想を目指すことになってしまいます」

 

避難所訓練だけではなく、「復興訓練」や「事前・復興計画作成」も大事だと語る藤沢さん。

 

藤沢さんはボランティアの仕事内容についても言及する。

 

初期段階には、泥かきなどが主なボランティア作業だったため、肉体労働ができる人がボランティアの対象であった。

 

だが、藤沢さんは、被災地では手伝って欲しい仕事はたくさんあっても、マッチングが上手くなされていなかったと指摘する。

 

また、被災地の仕事を遠隔で支援できる仕組みをつくれば、さらにできることがあると言う。

 

例えば東京で働くデザイナーに、被災地の事業者のロゴ制作をお願いするなど、「被災地のために何かしたい」という思いを持った人ができる仕事がもっとあったはずだ。

 

こうした肉体労働以外の支援の必要性が認識されていれば、もっと多くのボランティアを巻き込めたはずなのである。

被災地にとってのボランティアの価値を見直す

現在の広田町の海(三井さん提供)。

 

本特集で、振り返ってきた東日本大震災の災害ボランティア。

 

人々の被災地への関わり方が、ボランティアから観光客や消費者、移住者までシームレスに繋がっている――。

 

取材を通して、災害ボランティアの意義を振り返るためには、短期的な視点だけでなく、長期的な視点で被災地とボランティアの関係性を考えることが重要だと分かった。

 

少子高齢化や都市部への人口流出によって各地域で人口減少が進む中、被災した地域が生き残っていくためには、住民はもちろん、地域外の人々が関心を持っていくことが必要である。

 

地域外の人々は、観光客や消費者、そして将来の地域の住民や産業の担い手として関わるだけではなく、復興予算一つとっても関心の高さによって、被災地に影響を及ぼす。

 

そうした視点を持って、被災地にとってのボランティアの意義を見直し、今後起こり得る災害に一個人あるいは一組織としてどう関わるのかを考えていけば、将来起こる災害の被害を減らすことができるのではないか。

 

 

【まとめ】

  • 地域に長期的に関わっていく人が生まれると地域にとっては経済的効果がもたらされる。被災地の場合には、ボランティアとして地域に関わった人が、消費者・観光客・移住者・産業の担い手など、別のかたちで地域を支えることにつながる。

  • 災害当初は「わかりやすい緊急対応」に追われてしまうが、初期段階に最も多く人や物が集まるため、復興段階を見据えて、支援を受け入れ、活用していくことが重要である。

  • 肉体労働以外にもボランティアができる仕事があった。仕事と、ボランティアを上手くマッチングする仕組みや、遠隔地から支援できる仕組みがあれば、もっと多くのボランティアを巻き込むことができたのではないか。

 

【問い】

  • あなたは、被災地とどんな関係を築いていきたいですか。

  • 今後起こり得る災害に備えて、何か準備をしていますか。

編集後記

NPO法人SET代表の三井さんは、「観光客」を増やしていくつもりはないと言います。

その理由は、「まちの人にとって何が大事なのか」ということを考えているからと三井さんは話します。

 

「観光の町にはしようと思っていないので。暮らしの質が上がることが何より大事だと思っています。そのために、何が必要なのか、ということを考えます。地域外の人との交流が必要だということであれば、適切な規模の交流の機会をつくっていきます。地域経済をまわすことが必要ということであれば、いくら稼げば幸せなのかというところからスタートします。たくさん人がきたからといって、生活の質が上がることとはつながらない場合もあります」

 

災害直後だけではなく、復興段階においても地域に関わる人々の存在は重要です。

 

ただし、長期スパンでの地域の活性化を考えていく上では、その地域に何が必要なのか、どのように人々が関わっていくべきなのかをきちんと考えつづける必要があります。

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
note
リディラバジャーナル編集部
noteのicon
「今、熊本に関わる」ことが復興の道を作る。東北は道半ば、能登は入口。復興は長期戦。【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2026年8月7日

令和8年熊本地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、一日も早く被災されたみなさまの安全が確保され、平穏な日々を取り戻されることを、心よりお祈り申し上げます。

令和8年熊本地震を受け、リディジャーナルでは地震や防災について考える2つの特集を9月3日(木)まで、全記事無料公開しております。

続きをみる
「夏休みの過ごし方は留守番」責任があるのは保護者だけか?【「体験格差」全記事無料公開!】【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2026年7月31日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

続きをみる
60年で100トン→13トンに激減。「今年はうなぎが安い」と単純に喜んでいいのか?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2026年7月24日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

続きをみる
×
CONTENTS
intro
ボランティアの巻き込み
no.
1
no.
2
ボランティア活動の開始
no.
3
ボランティアの継続
no.
4
新たに人を呼び込むための情報発信・口コミ
no.
5
地域との長期的な関与
no.
6
安部コラム
no.
7