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構造化特集
地域医療 第2回
公開日: 2023/6/12(月)

「地域医療は医局に依存している」 目に見えない医療業界の内側

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構造化の視点

世界的にも高い水準を誇る日本の医療。その裏で、医療費の

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世界的にも高い水準を誇る日本の医療。その裏で、医療費の増大、勤務医の多忙化、病院の経営難と様々な課題が押し寄せている。
経済成長・人口増加と「右肩上がり」の時代に構築された医療制度が、「右肩下がり」の時代を迎えた今、現場に与えている歪みを明らかにする。

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オーディオブック(ベータ版)

リディラバジャーナル構造化特集「地域医療」。
 
第2回となる本記事では、高水準の日本型医療が成立した背景(1章)として、医師会や医局制度など、「医療業界」の内側に焦点を当てる。

 

 

「日本には、科学的根拠を基に医療制度・医療政策を議論する文化がまだ未成熟だと感じます。
 
本来、医療界や国民を代表するはずの専門家が、自分の業界への利益誘導を狙う場合もありますし、政治家と既に関係性の強い、言うならば『お抱え有識者』たちで会議体が構成され、政策が立案されていく場合もあります」
 

医療マンガ「コウノドリ」の今橋医師のモデルとなった医師、今西洋介さんは次のように語る。
 
私たちが日々生活を送る中では見えづらい医療業界内部の動きは、現代の医療にどのような影響をもたらしてきたのだろうか。
 

今回は、医師の約半数が加盟しており、政策に強い影響力を持つ業界団体「日本医師会」と、医療界特有の人事組織「医局」の例を基に、医療業界と現代の医療制度の関係性を解説する。

「最も強力な圧力団体」
日本医師会が与えた影響

前回前々回の記事で、日本の医療は国際的にも高い水準を保っていること、高水準の背景として、高い福祉的機能を持った医療制度・医療政策が整備されてきたことを解説した。

 

医療提供に大きな影響をもたらす、医療制度・医療政策はどのように決定されているのか。
 
医療シンクタンク「日本医療政策機構」は、日本の医療政策決定プロセスについて、次のようにまとめている。
 

「日本の医療政策の大部分は医療費の変化を考慮し随時改正が加えられるものの、基本的には立法の手続きを経た法案が政府の予算を含む政策プロセスの全体を形作っている
-『Japan Health Policy NOW(JHPN)2.プロセスおよびプレイヤー』より


つまり、医療政策の大部分は法律によって規定されている。
 
内閣が新たな法律を制定する、もしくは既存の法律を改定・廃止する過程では、「審議会」などの名称で、関係者間での協議が行われる場合がある。


医療領域においても、「社会保障審議会」などの会議にて、医療従事者、学者、民間事業者といった関係者間で政策が議論されている。
 
関係者の中でも、政策決定に大きな影響力を持つと言われている団体が「日本医師会」である

 

日本医師会の影響力について、医療評論家の水野肇氏は、著書にて次のように記載している。

 

 「日本医師会は、医療政策について、所管官庁だった厚生省の方針に唯々諾々と従うようなことは、まったくなかったといってもいい。
(中略)
戦後の日本の医療は、厚生省の考えた形で進展してきたのではなく、そこには日本医師会が立ちはだかった形跡が大きい

こと医療政策に限っていえば、戦後ほとんど内閣をとりつづけてきた自民党の反対勢力として存在していた日本社会党よりも、日本医師会のほうが反対勢力としては強かった側面もある」
―『誰も書かなかった日本医師会』(草思社,2003年)p16-18


日本医師会の影響力が見て取れる事例として、診療報酬改定の議論が挙げられる。

保険診療の対象となる医療サービスの報酬は、「診療報酬」として国が全国一律で定めており、医療者は自らで価格を設定できない。

診療報酬の決定は医療現場の収益に直結する非常に重要なテーマであり、医療の進歩や社会情勢の変化に対応する形で、2年に1回、診療報酬の改定が協議される。

個別の診療報酬については、「中央社会保険医療協議会(中医協)」という厚生労働省の諮問機関で議論がされている。

中医協は、診療側(医療関係者)・支払側(保健関係者など)・公益代表(研究者など)の3者により構成されているが、2004年まで(※)、診療側8名のうち5名の推薦権を日本医師会が保有していた

残りの3名は歯科医と薬剤師の代表となっており、歯科医以外の医師代表については全ての推薦権を医師会が持っていたことになる。

(※2004年に発覚した中医協の汚職問題の際、委員が「特定の組織に固定化」したことを反省点とし、以降医師会が推薦枠を独占する体制は終了した)
 
診療報酬という医療政策の根幹においても日本医師会の影響力の強さが見て取れるが、その影響力は審議会など公の場面に留まらない。


慶應義塾大学大学院の名誉教授を務め、医療政策を専門とする政治学者の高木安雄氏は、著書にて次のように記載している。

 

「日本医師会は、伝説の武見太郎会長(1904-1983年)時代から日本で最も強力な圧力団体とみなされてきた。

大きな力を持つようになった背景には、地方と国の両方のレベルにおいて、寄付金と票で自民党を支援してきたこともある。

自民党政務調査会(政調会)の部会、また選挙区にある日本医師会の支部とつながりを持つ数多くの自民党一般党員が日本医師会の強力な利益代表となっている」
―『包括的で持続的な発展のためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―日本からの教訓』(池上直己編著, 日本国際交流センター,2014)p144


日本医師会は政治家との繋がりを強固に持ち、審議会など公の場面だけでなく、表に現れない場面でも影響力を強く発揮してきたのである。

「現場の声は届かない」
政策立案における課題

ここまで日本医師会の事例に焦点を当てたが、医療制度は業界団体・有識者と国の間で協議や調整を行い定められてきた。

 

日本における制度・政策づくりの問題を、今西医師は次のように指摘する。

今西洋介(いまにし・ようすけ)
新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を努める。作中の今橋先生のモデルでもある。NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。Twitter:@doctor_nw

 

「日本には、科学的根拠を基に医療制度・医療政策を議論する文化がまだ未成熟だと感じます。

本来、医療界や国民を代表するはずの専門家が、自分の業界への利益誘導を狙う場合もありますし、政治家と既に関係性の強い、言うならば『お抱え有識者』たちで会議体が構成され、政策が立案されていく場合もあります。

例えばアメリカでは、政府と独立した専門のシンクタンクが存在し、科学的根拠を基に政策提言を行い、政府がその内容を基に政策を決定する、という関係性が形成されています。

もちろん日本でも、科学的根拠が一切無視されているということはなく、適切な議論のもとで立案された政策も数多くあります。

ただ、関係者の意志が科学的根拠以上に優先される可能性がある、現在の政策立案のあり方には問題意識を抱いています」

制度・政策づくりに関しては、「当事者不在」の問題も指摘されている。

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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CONTENTS
intro
高水準の日本型医療が成立した背景
no.
1
no.
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現状の課題①医療の財源問題
no.
3
現状の課題②病院の経営難
no.
4
勤務医の多忙化
no.
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no.
6
解決策としての地域医療構想と私たち
no.
7