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構造化特集
地域医療 第6回
公開日: 2023/6/20(火)

揺れ動いてきた政策  勤務医の多忙化を招いた医師不足と偏在

公開日: 2023/6/20(火)
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揺れ動いてきた政策  勤務医の多忙化を招いた医師不足と偏在

公開日: 2023/6/20(火)
構造化の視点

世界的にも高い水準を誇る日本の医療。その裏で、医療費の

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世界的にも高い水準を誇る日本の医療。その裏で、医療費の増大、勤務医の多忙化、病院の経営難と様々な課題が押し寄せている。
経済成長・人口増加と「右肩上がり」の時代に構築された医療制度が、「右肩下がり」の時代を迎えた今、現場に与えている歪みを明らかにする。

世界的にも高い水準を誇る日本の医療。その裏で、医療費の増大、勤務医の多忙化、病院の経営難と様々な課題が押し寄せている。
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オーディオブック(ベータ版)

リディラバジャーナル構造化特集「地域医療」。

 

第6回となる本記事では、「勤務医の多忙化」(4章)として、約4割の勤務医が「過労死ライン」を超えた時間外労働を強いられるといった多忙化の背景を明らかにする。

 

構造化マップ


 

時間外労働は週40時間以上、勤怠管理は「自己研鑽」の名目で申請、土日も基本的には1日休めない、一部の残業代は支払われない…

 

前回の記事では、現役の勤務医が匿名で、過酷な勤務の実態を語った。

 

本記事では、勤務医の多忙化の背景にある医師不足と医師の偏在について解説する。

少ない医師数で多くの病床に対応
多忙化の背景

 

厚生労働省が実施したアンケートによると、アンケートに回答した勤務医のうち、37.8%が「過労死ライン」と呼ばれる月間80時間以上(年間960時間以上)の時間外労働を行っているという。
 
さらに、過労死ラインを超える医師のうち8.5%が月間160時間以上(年間1,920時間以上)の時間外労働を行っており、言うならばひとりの医師が「2人分以上」働くという極めて危険な勤務状況が発生している。

 

人口1000人に対する病床数と医師数を表すグラフ。

 

上の図は、OECD加盟国の人口あたり病院・病床数と医師数をまとめたものである。

 

日本は、加盟国中第2位と数多くの病床を持ちながら、医師数は平均以下。

 

少ない医師数で多くの病床に対応する構造からも、多忙化の問題が見て取れる

 
医療政策の研究を専門とする、国際医療福祉大学大学院の島崎謙治教授は、医師不足の問題について次のように語る。

 

島崎謙治(しまざき・けんじ)
1978年東京大学教養学部卒業。厚生省入省。千葉大学法経学部助教授、厚生労働省保険局保険課長、国立社会保障・人口問題研究所副所長、東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター客員教授等を経て、2007年政策研究大学院大学教授、2020年4月から国際医療福祉大学大学院教授。博士(商学、早稲田大学)

 

「前提として、医師は1人前になるのに医学部の6年に臨床研修期間や専門医の研修期間を入れると10年以上の時間および膨大なコストがかかります。

 

また、医師は定年がなく比較的長く働く専門職であり、将来を見据え過不足なく養成するのが理想です。

 

ただし、10年以上先の需給を予測するわけですから、率直に言ってこれは簡単ではありません。

 

そのため、国の医師養成数に関する方針は歴史的に揺れ動いてきました

 

医学部定員の推移を表した図。

 

国民皆保険の実現以降、医療需要の増加に応えるため医学部入学定員を増やす方針が採られた結果、医学部入学定員は1961年の2840人から1981年には8280人まで増加。

 

その後逆に、医師過剰による医療費の増大を懸念する声が高まり、82年に医師数を抑制する方針となり、医学部入学定員数は7600人台まで削減、しかし2008年からは再び増員に舵を切っています」

 

医学部定員の推移からは、国が医師養成数について難しい舵取りを迫られていた様子が見て取れる。

 

島崎さんは医師不足の今後について、次のように続ける。

 

「医師数の増減は新規の医師免許取得者数とリタイアする医師数の差し引きで決まりますが、現在は毎年4,000人程度増えています。

 

わが国は、人口減少に加え高齢者数も2040年頃にピークアウトすることを考えると、医師養成数をこれ以上増やすことは適当ではないと私は考えています。

 

また、医師不足の問題は医師の『総数』に限った問題ではありません。地域や診療科における医師の『偏在』も取り組むべき課題として存在します」

「看護師が見よう見まねで麻酔を」
偏在する医師たち

島崎さんが指摘する通り、勤務医の多忙化の原因は、医師数の不足だけではない。

 

都道府県ごとの人口10万人あたり医師数のグラフ

 

上の図は、都道府県ごとの人口10万人あたり医師数を示している。

 

最も多い徳島県と最も少ない埼玉県では、医師数に約2倍もの開きがある。
 
千葉県の「塩田病院」で総合診療部の部長を務める医師、青木信也さんは次のように語る。

 

青木信也(あおき・しんや)
医療法人SHIODA塩田病院総合診療科・部長。2007年滋賀医科大学医学部卒業。地域で役に立つ医師を目指して初期研修から湘南鎌倉総合病院で過ごし、小児から高齢者までどんな主訴の人も診る北米型ER(救急救命)研修を積む。その間、鹿児島や沖縄の島々で離島研修も経験。2013年北海道松前町立松前病院で「総合診療医」として慢性期外来、病棟、訪問診療、終末期ケアなどに従事し、市立函館病院の要請で道南部のドクターヘリにも乗る。長崎県上五島病院で1年間の離島医療+オーストラリア、クィーンズランド州での3ヶ月のrural general practitioner研修を経て、現在にいたる。「地域での医学教育」「地域医療」を自分の軸にしている。

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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CONTENTS
intro
高水準の日本型医療が成立した背景
no.
1
no.
2
現状の課題①医療の財源問題
no.
3
現状の課題②病院の経営難
no.
4
勤務医の多忙化
no.
5
no.
6
解決策としての地域医療構想と私たち
no.
7