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公開日: 2023/9/28(木)

「正直、無理だと思った」 28,000もの行政手続を全面デジタル化 都政の変革に迫る(前編)

公開日: 2023/9/28(木)
公開日: 2023/9/28(木)

「正直、無理だと思った」 28,000もの行政手続を全面デジタル化 都政の変革に迫る(前編)

公開日: 2023/9/28(木)
オーディオブック(ベータ版)

「全ての業務が紙とはんこを前提にフロー化されていたので、これらの業務フローを全部変えるのかと思った

 

都が掲げた「28,000の行政手続を全面デジタル化」という高い目標に対して、当初職員はこのように感じたという。

 

当初困難が予想されたものの、3年間で28,000存在する手続のうち約7割のオンライン化を実現する見込みという。

 

人員や財源の逼迫により、全国の自治体が業務改善やデジタル化を大きな課題として抱える中、東京都がスピーディーに推進できるのはなぜか。

 

また、デジタル化を進める上で、職員の意識にはどのような変化が生まれたのか。

 

今回、DXの専門部署であるデジタルサービス局戦略部戦略課で行政手続デジタル化の推進に係る全体調整に携わる西田氏と、全国で初めてオンライン上で完結する「パートナーシップ宣誓制度」を運営する人権部事業推進担当課長の下河辺氏に話を伺った。

 

 

(左から 下河辺氏・西田氏)

「原則書面」から「原則デジタル化」へ
都政の方針が180度転換した背景

鈴木(聞き手)東京都のデジタル化政策を見ていて非常に驚いたのですが、「全ての行政手続のデジタル化」を掲げていますよね。

 

約28,000もの手続があるそうですが、これらを全てデジタル化するという動きは、どういった経緯で生まれたのでしょうか。

 

西田当初は「原則書面」の前提のもと、可能な手続についてはデジタル「でも」できるようと、対象を限定してひとつずつデジタル化を進めていました。

 

その流れを180度転換させたのが、コロナ禍です。

 

ワクチンもなく、感染による影響が不透明だった頃、都としては、紙を出すために窓口に出向いてもらうことは、生命に関わるリスクを与える行為だと考えました。

 

そこでポストコロナ社会を見据えた都政の構造改革の一環として、「東京デジタルファースト条例」を制定(2020年10月成立、2021年4月1日施行)しました。

 

この条例により、行政手続は「原則デジタル化」を前提にするという方針が定められました。

 

許認可、届出、補助金申請などの行政手続は、都民や事業者の皆様にとって最も一般的な都庁との「接点」のひとつです。

 

こうした手続を原則デジタル化へ転換することで利用者の負担を減らし、行政サービスの更なるQOS(クオリティ・オブ・サービス)向上を図ることとしました。

 

鈴木とはいえ、全ての手続をデジタル化するというのは非常に大きな目標設定だなと思いました。現在の進捗状況を教えてください。

 

西田先ほどの通り、28,000という膨大な手続がありますので、受付件数の多い主要な行政手続を169ピックアップしました。

 

169手続のうち、119手続は都の権限でデジタル化が可能、40手続については国の法律等による制約のあるもの、残りの10手続は廃止するものとして分類し、取組を進めることとしました。

 

この3年間で都が対応可能な119手続のうち約94%、112手続のデジタル化が完了し、残りの7手続についても完了の見通しが立っています

 

同時に、都が権限を持たない40手続については国などに働きかけを進めています。

 

次の段階として28,000プロセスのデジタル化を目標としています。

 

既に多くのデジタル化が進んでおり、今年度末(2024年3月)までに約70%のデジタル化を実現予定です

 

国の指針を凌駕
DX推進をもたらした独自の「目標設定」

鈴木条例改正から3年間で主要169手続のデジタル化は既に見通しが立ち、28,000プロセスについても70%まで推進予定であると。

 

デジタル化の進展に頭を抱える自治体も多い中で、東京都がこれほどのスピード感で推進できている要因はどこにあるのでしょうか。

 

西田何より重要だったと思うのは、「原則デジタル化」という最初の目標設定です

 

2020年に国は、地方公共団体が優先的にオンライン化すべき31の手続を選定しました。

 

この中で都道府県が主導でオンライン化すべき手続は4つのみ。ほかの27つは、市区町村管轄の手続です。

 

国の通知をそのまま受け取ると「4つだけデジタル化すればいい」という話になりますが、東京都では4手続にとどまらず、条例を整備して「原則デジタル化」のビジョンを掲げました

 

コロナ禍以前の、「原則対面・可能ならオンラインも」という状態では、通常業務もある中でデジタル化を積極的に進めるのは難しかったと思います。

 

この目標設定が、何よりの推進力になったと感じています。

 

鈴木もうひとつ、都庁の取り組みで特徴的だなと思ったのが、「専門部隊の設置」です。


2021年、都政のデジタル化の旗振り役・牽引役としてデジタルサービス局が設置されましたが、どんな役割を担っているのですか。

 

西田デジタルサービス局の役割は大きく2つあります。

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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