アルコール依存症:「否認の病」その実態 | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
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アルコール依存症
「否認の病」その実態

古くから人間の暮らしとともにある、アルコール。

 

紀元前4000年頃には、すでにメソポタミア地方でビールが飲まれていたと考えられています。

 

日本では、奈良時代には日本酒の製造方法が確立していました。

(出典:『日本人の飲酒動態』
 

とは言え、あくまで祭礼や慶事の際に飲むもので、さらに言えば、貴族など限られた階級の人だけが口にできるものでした。時代が下るにしたがって、特権階級以外もアルコールを飲めるようになりましたが、それでも飲めるのは「経済力のある人」だけ。

 

前出の『日本人の飲酒動態』では、金銭の問題などを踏まえると、日本で誰でも飲みたいだけ飲めるようになったのは戦後のことで、この状況を「日本の飲酒史上、初めて実現した事態」と指摘しています。

 

こうした「誰でも飲みたいだけ飲める」時代になり、大きな問題となった病気があります。

 

それは、アルコール依存症。

 

(monticello/Shutterstock.com)

 

厚生労働省のHPでは、アルコール依存症について以下のように説明しています。

 

「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態」です。具体的には、飲酒のコントロールができない、離脱症状がみられる、健康問題等の原因が飲酒とわかっていながら断酒ができない、などの症状が認められます。

(みんなのメンタルヘルス総合サイト)

 

なぜ、アルコールは古くから存在するのに、アルコール依存症は現代になって問題となったのでしょうか。


 

「一定量以上の飲酒を、相当期間にわたって継続した場合になるのがアルコール依存症です。つまりアルコール依存症は、1年を通してお酒が手に入るようになった社会になって現れた病気と言えます」

 

そう説明するのは、川崎市立多摩病院(神奈川県川崎市)神経精神科長の阿部大樹(だいじゅ)さん。精神科医として日々、アルコール依存症の治療に当たっています。

 

 

つまり、「誰でも飲みたいだけ飲める」時代が、「アルコール依存症に“なれる”」環境を生み出したのです。日本では、それが戦後になってからでした。

 

 

厚生労働省の研究班が2013年に行なった調査によると、アルコール依存症になったことがある人は109万人、アルコール依存症者は58万人と推計されています。

仙台市の人口が約109万人、鳥取県の人口が約57万人であることを考えると、いかにその影響が大きいかわかります。

しかし、治療のため医療機関を受診しているのは約4万人程度。アルコール依存症の予防などに取り組む「特定非営利活動法人アスク」(東京都中央区)では、依存症者の数と治療を受けている人数の差の背景には、病気への誤解もあるとみています。

社会に蔓延する、アルコール依存症への誤解

「公園や駅のベンチで朝から酒を飲んでひっくり返っているイメージでしたから、自分は絶対アルコール依存症ではないと思っていました」

 

そう語るのは、松本和頼さん。アルコール依存症だったものの、病気への誤解もあり、自分は依存症ではないと考えていました。

 

 

実はこうした声は、多くの依存症経験者から聞かれます。


 

アルコール依存症の背景として、ストレスや孤独感といった当事者の抱える問題が指摘されますが、実はこうした「誤ったイメージ」や、「誰でも飲みたいだけ飲める」、「アルコールをたくさん飲んでほしいメーカーの存在」といった社会の側の問題も無視できません。

 

 



そこで本特集では、アルコール依存症の実態と回復までの道のり、その過程にある問題点、そして、アルコール依存症を生む社会のあり方について紹介し、アルコール依存症を「社会問題」として再定義していきます。

 


第1章【アルコール依存症とは】

第1回【自己責任では片付けられない。社会が生み出す「アルコール依存症」】では、そもそもアルコール依存症の定義とは何か、「飲まなければならない」依存症になるのは自己責任なのかを考えていきます。アルコール依存症には、社会も大きく影響していました。

 

(Rawpixel.com/Shutterstock.com)


第2章【当事者の実態】

第2回の【「それでも依存症とは思わなかった」ある回復者の話】では、アルコール依存症から回復した男性のエピソードを通して、「アル中」の略称とともに誤ったイメージが広まっている病の実態を見ていきます。

 

第3回は【なぜアルコール依存症者は「否認」するのか】。アルコール依存症者の多くが当初、「自分は依存症ではない」と「否認」します。なぜ否認してしまうのでしょうか。

 


第3章【回復に向けて】

第4回【回復には「底つき体験」が必要なのか】では、アルコール依存症を語る際に出る「底つき体験」とは何なのか、本当に必要なのかを考えます。

 

第5回は【仲間とともに回復する場、自助グループ】。アルコール依存症からの回復に重要な役割を果たす自助グループについて紹介します。

 

第6回は【ブログ、オフ会…新しい支え合いのかたち】。AA、断酒会といった伝統的な自助グループではない、新しい当事者同士の支え合いの様子を見ていきます。

 

第7回【飲まない日々を積み重ねるために】では、酒を断ち続けなければならない当事者を、いかに社会で支援していくかを考えていきます。

 


第4章【安部コラム】

第8回【リディラバ安部の考える「アルコール依存症の問題点」】では、アルコール依存症をめぐる社会の諸問題について綴ります。

 

(fotogiunta/Shutterstock.com)

 

 

ヘッダー画像(Axel Bueckert/Shutterstock.com)

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この記事に寄せられたコメント

User
港谷武広
確かに、アルコールがコンビニでも買えてしまう時代、アルコール依存症になる人が多くなっていると言うのは理解できます。本人としては、飲めば一時的に嫌な事も忘れ、気分も高揚すると思っているのかもしれませんが、そういった飲み方は不健全で依存症になっていくのかもしれません。社会的な背景としては、売り込みをかける酒造メーカーや、深夜でもアルコールを買えてしまう社会なども一因だろうと思います。そして、アルコール依存症についてくる問題として、飲酒をやめさせようとして依存状態に陥ってしまう共依存の問題も忘れてはならないと思います。10万人、100万人単位でアルコール依存症者がいる社会はすぐ近くにいる人がそうである事もあり得ると思います。他人ごとと思わず読み進めて行きます。
港谷さん、コメントありがとうございます。
今回の取材を通して、改めてこれほどまでにアルコール依存症の人がいるのかと驚くとともに、知っているようで知らない病気だな、と痛感したところです。
ぜひ、本特集で新たに知った点について、引き続きコメントいただけると嬉しいです。
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