本人を取り巻く環境によって、困りごとの顕在化・深刻化が
本人を取り巻く環境によって、困りごとの顕在化・深刻化が左右される発達障害。いま小中学校の通常学級では、発達障害やそれらに近い特性のある子どもの困りごとが見過ごされ、挫折経験をしている現状がある。学校、家庭、医療・福祉の視点から、子どもが困難を抱える構造に迫る。
本人を取り巻く環境によって、困りごとの顕在化・深刻化が左右される発達障害。いま小中学校の通常学級では、発達障害やそれらに近い特性のある子どもの困りごとが見過ごされ、挫折経験をしている現状がある。学校、家庭、医療・福祉の視点から、子どもが困難を抱える構造に迫る。
本人を取り巻く環境によって、困りごとの顕在化・深刻化が左右される発達障害。いま小中学校の通常学級では、発達障害やそれらに近い特性のある子どもの困りごとが見過ごされ、挫折経験をしている現状がある。学校、家庭、医療・福祉の視点から、子どもが困難を抱える構造に迫る。
リディラバジャーナル構造化特集「学齢期の発達障害」。
第1回となる本記事では居場所なき子どもたち(1章)として、当事者へのインタビューをもとに、発達障害やそれらに近い特性のある子どもが、小中学校の通常学級で直面する課題を整理する。
「本当にひとりぼっちだったんですよね。理解してくれる人や信頼できる人は、ひとりもいなかった」
現在ライターとして活動している宇樹義子さんは、子ども時代を振り返ってそう話す。
宇樹さんは発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)の当事者であり、32歳のときに高機能自閉症(※)と診断された(現在ではASDに分類されることが多い)。症状としては、特にコミュニケーション障害と感覚過敏が強いという。
※高機能自閉症:3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。文部科学省HPより
今回は宇樹さんへのインタビューを通じて、発達障害やそれらに近い特性のある子どもが小中学校の通常学級で抱える困りごとを明らかにする。
1980年生まれ、千葉県出身、早稲田大学卒。発達障害/発達性トラウマ障害当事者。高機能自閉症(ASD)と複雑性PTSDを抱える。
※本記事では、困難の実態や当事者の心理について詳しく触れています。実態をお伝えするために生々しいエピソードもあるため、フラッシュバックやPTSD(心理外傷後ストレス障害)を懸念される方は、ご留意ください。
生きている世界が違う。
小学生時代の周囲とのギャップ
――まず小学生のときの宇樹さんの様子をお聞きしたいのですが、周囲との違いを感じていたことや、「いま振り返ると自閉スペクトラム症(ASD)の特性かもしれない」と感じることはありますか?
「そうですね。当時から『自分だけ世界から浮いている』というか、世界が隔たっている、自分は違う文化圏にいると思っていました。
うまく言語化できないけれど『どこかみんなと違う』というのはずっと感じていて。自分が理解できないことに付き合わされている感覚というか。
そもそも、人とコミュニケーションをとるときの前提が違うんですよね。
私は『論理的に考えたときにそれが正しいか正しくないか』をいちばん大事にして、物事を判断したり、人と話したりするんですよ。
『論理的に筋が通っていることが正しいことである』と考えるのはおそらく私の生まれ持った気質で、ここはASD的な側面なのかなと思います。こういったところを一般には『ASD的なこだわり』と評するのかもしれません。
事実を指摘するということが、誠実であると思っていたんです。
クラスメイトや先生に対して、自分が少しでも間違ってると思ったら『間違ってませんか』と言う。
人を尊敬するときには、尊敬するべき論理的な理由がなければ尊敬しないし、誰かに従うときにも、従うべき論理的な理由がなければ従わない。
でも周りの定期発達の人たちは、たとえば『(論理的な理由がなくても)大人には従う』といった暗黙のルールで動いてるところがある。
私は生来の気質もあって、そういったものに相容れなかったんだと思います」
――周囲との違いや、相入れなさを感じたエピソードはありますか?
「小学校低学年の頃から、たとえば『答えがわかるんだけどわからないって言う』とか『褒められたら謙遜する』とか、みんな当たり前にやっていたことに関して、全く意味がわからないと思っていたんです。
私、当時は勉強ができたんですけど、あるときクラスメイトから『勉強ができてずるい』って言われて。
『授業を聞いてたらわかるじゃん、何でわかんないの』って返したら、『お高くとまってる』『性格が悪い』と言われて、嫌われて。
いまとなっては言っちゃいけないことだってわかるんですけど、当時はわからなくて『事実を表明するのは誠実なことであり、誠実であるのは正しいこと』と思っていたんです。
特に女の子の集団って、すごく同調圧力が働くというか。『劣ってはいけないけど優れてもいけない』『みんな横並びじゃないといけない』という無言の圧力がある。
でも私は『優れてることはいいことであり、優れているのが事実なら事実として表明するのは正しい』と思っていたんですよ。だから謙遜もしないし、自分に何かできることがあったらすごくアピールしました。
でも、そういうのが嫌われる。
発達障害でない人たちにとっては、『私たち仲間だよね』と確認することが何よりも大事で、コミュニケーションの土台は共感であるということが、当時の私には全くわかりませんでした」
(写真:宇樹さん提供。修学旅行中にカメラマンが撮った一枚。当時宇樹さんはいじめにあっており、このときはカメラマンが「一緒に入って」と促し、しぶしぶ横の二人は受け入れるという状況だったという)
――たしかに集団が生まれ始めるタイミングは、困りごとがあらわれやすいように思います。
「ほかにもこんなエピソードがありました。
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