高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じるこ
高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。
高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。
高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。
リディラバジャーナル構造化特集「偏向する高齢者〜ネットが生み出す親子の分断〜」。
第3回となる本記事では、考えや価値観を偏らせるもの(2章)として、人の考えや価値観が偏向する際の要因を整理する。
第1回の記事でぺんたんさんは、陰謀論を信じる母親の心の内をこう推察した。
「『私が見つけた真実を大切な人に教えてあげないと』という正義感や使命感があったと思います。私のことを心配してくれているから、情報を送ってきてくれていると感じました」
「母は仲間を求めているようにも見えました。『私と一緒にこの問題に怒ってくれる人はいませんか?』と」
人はなぜ偽・誤情報や陰謀論を信じ、考えや価値観が偏ってしまうのか。特に高齢者が偽・誤情報や陰謀論を信じる背景には、どのような要因があるのだろうか。
今回は「陰謀論を信じるプロセス」を取り上げながら、人の考えや価値観が偏向する際の心理的な要因と、高齢者に特有の要因について考察する。
根底にある社会への不信感。陰謀論を信じるきっかけとは
<2022年3月16日に福島県沖で発生した地震は、人為的に引き起こされた「人工地震」である>
<安倍晋三元首相の銃撃の真犯人は他におり、近くの商業ビルの屋上にスナイパーがいた>
これらは「偽・誤情報、陰謀論の実態と求められる対策(Innovation Nippon 2022)」の調査で挙げられている、国内の陰謀論の事例だ。(※1)
宗教学者で国内外の陰謀論に詳しい辻隆太郎さんによれば、陰謀論とは「少数の隠れた権力グループが、世の中に見えないところで、自分たちの都合の良いように出来事を操っている」という考え方を指す。
1978年京都府生まれ。北海道大学文学部卒、同大学大学院文学研究科宗教学研究室博士後期課程単位取得退学。著書に『世界の陰謀論を読み解く』、共著に『情報時代のオウム真理教』など。
同調査では、こうした陰謀論6つのうち、1つ以上見聞きしたことのある人の割合は「19.1%」と示された。真偽判断については、見聞きした人のうち2〜3割が「正しい」と答えた。
陰謀論は社会で広く認知されている事実や、多くの人が信頼している事実とは異なるが、なぜ一定数の人が信じてしまうのか。
辻さんは、陰謀論を信じる人の心理的要因についてこう話す。
「社会の秩序が揺れ動いて不安を感じたり、社会正義が崩れたように見えたとき、『いまの社会は何者かの制御下にある』と考えることで秩序を保とうとする。その考え方の一つに陰謀論があります。
秩序が揺れ動くタイミングは、新型コロナウイルスのような疫病や、災害、あるいは政権交代などさまざまです。
社会が不安定である理由(何者かの存在)が明らかになれば、一人でポツンと社会の中に立たされている状態から抜け出せる。どうすればいいかわからないという不安から逃れられます」
また「陰謀論を信じる人に見られる共通点として、社会への不信感がある」と続ける。
「『世の中で正しいとされている情報はすべて嘘だ』『社会の主流の説明は信じられない』といった不信感が多く見られます。
もし社会で一般的に説明されていることに納得し、不満がなければ、陰謀論を信じることはありません。
社会への不信感については、社会の権威側の信頼性が落ちているという課題もあるように思います」
社会が不安定になったとき、社会を信用できなくなったとき。
秩序や自身の感情を乱す「何者かの存在」を見出そうとする中で、人は陰謀論へ傾倒していくことがある。
「この真実を伝えなければ」陰謀論を信じ込んでいく要因
「陰謀論を信じる」と一口に言っても、信じる程度は人によってグラデーションがある。
「『嘘か本当か分からないけど面白い』『心から信じていないけれど、可能性はあるかもしれない』『これは世界の真実である』など、さまざまです」(辻さん)
その中で、陰謀論を心から深く信じ込んでいく人は、周囲の人間と衝突し関係が分断されることがある。
陰謀論を深く信じ込んでいく人の心理的要因には、何があるのか。
辻さんは「優越感、使命感、孤独感が関わっているのではないか」と話す。
「『自分は真実を知っている』という優越感、『世の中に真実を広めないといけない』という使命感、そして『自分だけが知っているのに周囲に理解してもらえない』という孤独感は、共通の要素としてあります。
特に孤独感と優越感は密接に結びついています。『周囲の人々には理解してもらえないかもしれないが、それは自分だけが真実を知っているからだ』と感じることで、より確信が深まっていくのだと思います」
「偽・誤情報、陰謀論の実態と求められる対策(Innovation Nippon 2022)」の調査では、陰謀論を拡散した人についてその理由を尋ねたところ、以下のような結果が出ている。
特に「怒り」「不安」「人・組織・社会のためになる」「人・組織を正す必要がある」といった回答が高い割合を示しており、ここまで辻さんが話してきた心理的要因との関連性がうかがえる。
ネットやSNS利用の影響は?陰謀論を信じる人とメディア環境の関係
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