高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じるこ
高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。
高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。
高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。
リディラバジャーナル構造化特集「偏向する高齢者〜SNSが生み出す親子の分断〜」。
第1回となる本記事では、偏向の先にある親子の分断(1章)として、考えや価値観の偏向した親と子どもの分断の実態を明らかにする。
「なぜ差別的なことを言うようになったんだろう。こちらの言うことを全く聞いてくれないんだろう。
母が陰謀論者に変わっていく様を見て、僕はとにかく混乱していました。愛する人が自分の最も嫌うタイプの人間に変貌する。心が揺れ動いて、しんどかったです」
東京都内に住む30代男性のぺんたんさんは、60代の母親の変化についてそう吐露する。
30代男性。陰謀論を信じる母親との出来事を赤裸々につづった『母親を陰謀論で失った』(note)が話題に。現在は会社員として働く傍ら、陰謀論で家族を失った人々との交流を図っている。
ぺんたんさんの母親はどのような経緯で陰謀論を発信するようになったのか。話の通じなくなっていく親と向き合う、ぺんたんさんの心情とは。インタビューを通じて実態を見ていく。
敵を見つけ、真実に気づき、攻撃する側へ――。
母親が陰謀論に染まるまで
ーお母さまが偽・誤情報や陰謀論を信じるようになった経緯をお聞きしたいのですが、ぺんたんさんはいつ頃お母さまの異変に気づいたのでしょうか?
はじまりはコロナ禍の2020年夏頃です。当時、離れて暮らす母親とはチャットか電話でやりとりしていましたが、突然LINEで怪しいYouTube動画が送られてきたんです。
その動画では「政府は何年も前から新型コロナウイルスの流行を計画していた」といった内容を、素性のよくわからない男性が話していました。
以前から母がYouTube動画を観ていることは知っていましたが、それは可愛い動物の動画などで、変な動画が送られてくるとは思ってもみませんでした。
後で同居している父から聞いたところによれば、コロナ禍になってから母は根拠のない怪しい動画をよく見るようになったと話していました。
私は動画が送られてきたときは、一過性のものだろうと深刻に受け止めませんでした。母はもともと心配性で、コロナに感染することを非常に恐れていて。
外に出られず不安だろうし、家でYouTubeばかり見ていたら、確かに訳のわからない動画も少しは信じたくなるよな、と。
そのうち送られなくなるだろうと思っていましたが、その後も半年ほど定期的に送られてきて、内容はますます過激になっていきました。
大まかに言うと3つの段階に分けられて、進むごとにひどい内容に変わっていきました。
最初の段階は「コロナ禍は仕組まれている」という敵についての言及。次の段階では「多くの人が世界の真実に気づき始めている」という真実への言及。
そして最後の段階では「(真実に気づいた人は)どうすれば敵を倒して平穏な生活に戻れるのか」という、敵への攻撃的な発言が含まれるようになりました。
ーぺんたんさんはお母様に対して、どのような反応をされていたんですか?
基本的にはスタンプなどのリアクションで反応し、会話はあまり続けないようにしていました。
ただ、中には特定の人に対する差別的な発言など、看過できないものもあったので、内容が激化するにつれて私も反論するようになったんです。
あるとき、母と電話で話している最中に、母の主張に強く反対したことがあったんですね。そしたら、耳をつんざくような大声で怒りをぶつけられて。
もちろん子どもの頃に怒られたことはありますが、これまでとは明らかに違う、敵意をむき出しにした怒りでした。
なんというか、声のトーンが違うんですよ。憑依されている、乗っ取られているというか……。言っていることが母の本心ではなく、動画で聞いた内容をそのまま再現しているような感じがして。
母の急変ぶりには、本当に大きなショックを受けました。
ー話し合いは難しい状態だったんでしょうか。
会話が成立しないんですよね。私が「それはエビデンスあるの?」と問いかけても、「いまはその話をしているんじゃない」と。まるで「あなたの方が陰謀論者なのよ」と、そう言わんばかりの勢いでした。
全く話が通じないので、もう対話はあきらめました。いまは距離を置いていて、母とは必要最低限の事務的な連絡のみを取るようにしています。
「真実を知ったからには伝えなきゃ」
偏向の背景にある正義感や使命感
ーお母さまはもともと、偽・誤情報や陰謀論を信じやすい傾向があったのでしょうか。
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