• 新しいお知らせ
    ×
構造化特集
偏向する高齢者 第6回
公開日: 2023/7/15(土)

「あなたのため」と、ぶつかり合う。偏向した親と子が分断する背景

公開日: 2023/7/15(土)
構造化特集
偏向する高齢者 第6回
公開日: 2023/7/15(土)

「あなたのため」と、ぶつかり合う。偏向した親と子が分断する背景

公開日: 2023/7/15(土)
構造化の視点

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じるこ

・・・もっと見る

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。


オーディオブック(ベータ版)

リディラバジャーナル構造化特集「偏向する高齢者〜ネットが生み出す親子の分断〜」。

 

第6回となる本記事では、あきらめきれない親子関係(3章)として、偏向した親と子どもの分断の背景にある、親子特有の難しさに迫る。

 

 


 

前回紹介した「親のSNS利用に関するアンケート」の結果から、SNSを通じて考えや価値観が偏向した親と子どもの間には、コミュニケーション上の問題が発生していることがわかった。

 

「陰謀論やスピリチュアル、その他不確かな情報に踊らされ、それを強要してくる」

 

「きちんとした対話が成立しなくなり、今後が不安」

 

親と子どもの衝突には、家族という関係特有の要因が働いている側面もある。第1回の記事でぺんたんさんはこう語った。

 

「もし友人や知人だったら、もう少し距離を取るか、あるいは関係を切ることだって考えていいと思います。でも私にとって、親は違います。『いまの自分があるのはあの頃の母のおかげ』という消せない事実がある。

 

(中略)正直に言えば、対立した相手が母じゃなかったら、とっくの昔にブロックして関係を終わらせています」

 

親子はなぜ衝突しやすいのか。対立が深まってしまう心理的要因とは何か

 

偏向した親と子どもの分断の背景にある、親子関係特有の難しさを考える。

「どうしても放っておけない」偏向する親への子どもの不安

親の考えや価値観が偏向していくとき、子どもはどのような不安を抱えるのか。

 

第1回のぺんたんさんへのインタビューや、第5回のアンケート結果からは以下のような声が聞かれた。

 

「愛する存在である母が変わっていく様を見るのは、本当にしんどいですね。(中略)『(自分が)許せない人』になっていくことが、特につらいです」(1回:ぺんたんさんより)

 

「YouTubeの地震予知や、病院に行かずに〇〇で病気を治す、みたいな非科学的な動画を真に受けています。現在目に見える被害は無いですが、こちらがそんなの嘘だよと言っても聞く耳を持ちません。そのうち騙されないか不安です」(5回:アンケート項目「親のSNS利用について具体的に感じた不安」の回答より)

 

家族の人間関係に悩む人を支援してきた渡辺裕子さん(NPO法人日本家族関係・人間関係サポート協会 代表理事)は、偏向する親への子どもの不安をこう推察する。
 

渡辺裕子(わたなべ・ひろこ)
NPO法人日本家族関係・人間関係サポート協会理事長/「渡辺式」家族看護研究会副代表。1982年千葉大学大学院看護研究科修了後、市町村保健師として勤務。その後「家族看護研究所」「家族ケア研究所」を立ち上げ、2022年から現職。長年、患者・家族、職場の人間関係に悩む看護職のサポートを行ってきた。「NPO法人日本家族関係・人間関係サポート協会」では、「ケアが循環する社会の実現」を理念に掲げ、一般市民を対象とした「かぞくのがっこう」のほか、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」に関する各種セミナーを実施している。

 

「親子関係には、関係が希薄な場合もあれば、依存や支配傾向が見られるケースもあります。関係性は人それぞれであり、一概には言えませんが、親の変化に強い切なさや寂しさを覚える子どもは少なくないと思います

 

親の考えや価値観が変わっていくことへの不安はもちろん、『騙されて財産を奪われたりしないか』『親戚や近所の人に迷惑がかからないか』と、親が被害者・加害者になることへの不安もあるでしょう。

 

子どもの中には偏向する前の親のイメージがあるので、『もとに戻ってほしい』『目を覚まさせなければ』と強く思い、親と衝突することが考えられます

 

また、自分が親と向き合わないことへの罪悪感も生まれる可能性があります。

 

親の差別的な発言や振る舞いに対して、見て見ぬふりをしたり、話題を変えたり、無視するような態度をとったりする。でも、親は一生懸命に自分の思いを伝えようとしている。

 

親の思いに応えないことに罪悪感が生まれるから、放っておけなくなる……ということはあると思います

 

 

冒頭で触れたぺんたんさんの言葉にもある通り、友人や知り合いなどとは違い、親となると簡単には心理的・物理的距離を取れないことがある。

 

その背景には、親の変化そのものへの不安、親が被害者・加害者になることへの不安、そして子ども自身の罪悪感などがあることが考えられる。

「助けるために言っている」
偏向する親が子どもに思うこと

相手のことを放っておけない気持ちは、親も同じように抱えることが考えられる。第1回でぺんたんさんは母親の心情をこう推察していた。

※リディラバジャーナルについてもっと知りたい方はコチラ
リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
note
リディラバジャーナル編集部
noteのicon
起業家が受ける不当な圧力・セクハラ。背景にあるものは?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年7月26日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「障害者が子どもを産むな」ひとつでもできないことがあれば子どもをもってはいけないのか?
2024年7月19日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
芸術祭なのに、米作りに雪かき?「大地の芸術祭」が挑む地域づくりとは
2024年7月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
「夏休みに特別な体験をさせられない」子どもの体験格差は、学ぶ意欲や将来の可能性にまで影響を及ぼす?
2024年7月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
メディアが作り出した? 生活保護費引き下げにつながった世論
2024年7月1日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
在日クルド人に対するSNSでのヘイトスピーチ。書き込みへの法的措置の意義とは?
2024年6月21日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
輪島・珠洲の断水解消も、水道は使えない。復興を左右するのは世間の関心の深さ
2024年5月31日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
少しずつ可視化されてきた「恋愛的にも性的にも惹かれない」人たち。アロマンティック・アセクシュアルとは?
2024年5月24日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
喜べない教員の給与増。残業が残業だと認められない給特法とは?
2024年5月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
勤務時間15分減で退職金ゼロ?非正規の人の労働条件を改善するための制度のはずが…
2024年5月14日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
性犯罪の被害者の約半数が子ども。わが子をグルーミングから守るには?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年5月7日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
動物の虐待摘発過去最多。「保護犬・保護猫」前進の裏で生まれる課題
2024年4月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
スクールカウンセラー約250人が雇い止め。子どもの心の健康を支える専門職なのに任期は1年?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2024年4月4日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
依存症の人に必要なのは「反省や刑罰」ではなく「治療と仲間」
2024年3月29日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「同性婚を認めないのは違憲」互いの違いを尊重できる成熟した社会へ
2024年3月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
能登半島地震、深刻なボランティア受け入れ態勢不足が課題
2024年3月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
学校の死亡事故の7割が国に未報告。求められる事故検証システム
2024年3月1日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「思いこみ」も背景に?女性管理職への道を阻むもの【なぜ少ない?学校教育現場の女性管理職】
2024年2月23日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。こちらの記事の最後には、全文無料で読める!「学校経営の新時代、女性管理職の可能性 ~ロールモデル・取り組み事例資料集~」もご紹介しています。ぜひご活用ください!

続きをみる
旭川いじめ事件から3年。再発防止が進まない訳は…
2024年2月16日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
DVから逃げられなくなる!?「共同親権」このまま進めて本当に大丈夫?
2024年2月2日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「被災地へボランティアに行くのは迷惑?」悩んでいる人にこそ読んでほしい!【3.11から学ぶ。構造化特集を全記事お届け!】
2024年1月12日

みなさん、こんにちは。リディラバジャーナルです。

1月1日、能登半島地震が発生しました。亡くなられた方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、被害に遭われたすべての方にお見舞い申し上げます。

続きをみる
市販薬を覚せい剤代わりにする若者たち。その背景には孤独孤立か?
2023年12月22日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
万引きを繰り返すのは手癖が悪いのか、それとも?「万引き依存症」をご存知ですか?
2023年12月15日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
大学進学は親の財力やきょうだいの数によって左右されていいのか?
2023年12月11日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
反ワクチン情報を流す医師がいるのはなぜ?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2023年12月1日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
×
CONTENTS
intro
偏向の先にある親子の分断
no.
1
no.
2
考えや価値観を偏らせるもの
no.
3
偏向する高齢者〜ネットが生み出す親子の分断〜
no.
4
あきらめきれない親子関係
no.
5
no.
6
ネット右翼化する高齢者
no.
7
偏向への対策の難しさ
no.
8