• 新しいお知らせ
    ×
構造化特集
偏向する高齢者 第4回
公開日: 2023/7/10(月)

「真実に気づいて」に多くの反応。高齢者の偏向を加速させるネットのふたつのメカニズム

公開日: 2023/7/10(月)
構造化特集
偏向する高齢者 第4回
公開日: 2023/7/10(月)

「真実に気づいて」に多くの反応。高齢者の偏向を加速させるネットのふたつのメカニズム

公開日: 2023/7/10(月)
構造化の視点

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じるこ

・・・もっと見る

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。

高齢者がネットやSNS上の偽・誤情報、陰謀論を信じることで、考えや価値観が偏り、親子の関係が分断される事象が起こっている。なぜ高齢の親は偽・誤情報や陰謀論を信じてしまうのか。偏向した親と子ども、家族にはどのような分断が生じるのか。“偏向”と“分断”の構造に迫る。


オーディオブック(ベータ版)

リディラバジャーナル構造化特集「偏向する高齢者〜ネットが生み出す親子の分断〜」。
 
第4回となる本記事では、考えや価値観を偏らせるもの(2章)として、偏向の背景にあるネット・SNS環境の現状や課題を探る。

 

 


 

 

偽・誤情報や陰謀論を信じ込んでいった要因に、SNSからの影響は間違いなくある——。

 

第1回の記事でそう話したのは、陰謀論を信じる母親を持つぺんたんさんだ。

 

「(SNSからの影響は)ネット動画による考えや価値観への影響はもちろん、仲間を見つけるという点でも大きいと感じます。

 

(中略)これだけの人が共感してくれるんだから間違っていないんだと、より信じ込んでいったのはあると思います」

 

現代のネット・SNSは、ユーザーの興味関心に応じて情報が届けられたり、同じような興味関心を持つ人とつながりやすい環境がある。

 

個人に最適化された環境は、人が偽・誤情報や陰謀論を信じ込み、考えや価値観が偏向することに影響しているのだろうか。

 

ネット・SNS環境の現状や課題を探る。

 

自分の価値観に合った情報が流れてくる。
「フィルターバブル」とは

ネットやSNS上で取得する情報が同質化、過激化していく要因の一つとして考えられるのが「フィルターバブル」だ。

 

フィルターバブルとは「インターネット上の情報が、個々のユーザーの関心や過去の検索履歴、閲覧履歴などに基づいて選択的に表示される現象」を指す。

 

 

フィルターには、ユーザーにとって良い側面とリスクがある。

 

「フェイクニュースを科学する」等の著者である笹原和俊さん(東京工業大学環境・社会理工学院准教授)は、こう話す。

 

笹原和俊(ささはら・かずとし)
東京工業大学環境・社会理工学院准教授。東京大学大学院総合文化研究科修了。博士 (学術)。名古屋大学大学院情報学研究科講師等を経て現職。学外ではカリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員、インディアナ大学客員研究員、JSTさきがけ研究者を務めた。専門は計算社会科学で、ビッグデータ分析、計算モデル、オンライン実験などの手法を用いて、社会現象の理解と社会課題の解決に取り組んでいる。主著に『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(化学同人)、『ディープフェイクの衝撃 AI技術がもたらす破壊と創造』((PHP新書)がある。

 

「ユーザーはインターネット上にある情報をすべて見ることはできないため、フィルターが必要になります。

 

フィルターはユーザーの過去の履歴を学習し、その人にぴったりな情報を提供したり、おすすめの商品やサービスをレコメンドしたりする。

 

ユーザーにとっては嬉しい技術ですよね。

 

一方で、自分の価値観に合った情報ばかり触れることで、異なる視点に触れる機会が減少し、偏った認識や固定観念を持ってしまう可能性があります

 

第1回の記事でも、ぺんたんさんは「(母から怪しいYouTube動画が)半年ほど定期的に送られてきて、内容はますます過激になっていった」と話していた。

 

実際に、フィルターの機能が偏向を促すという研究成果や調査結果はあるのだろうか。

 

「海外では一部、その傾向を示す研究成果があります。

 

たとえば、YouTubeのレコメンド機能とコンテンツの過激化について調べた研究がありました。

 

オルト・ライト(過激に右傾化していないが政治的な考え方は右寄り)の動画を対象に行われたもので、『ユーザーにおすすめされる右派系動画の内容は、クリックするうちに過激化していくか?』が調べられました。

 

結果、クリック数の増加に伴い、おすすめされる動画の内容は過激化していく傾向が見られました

 

YouTubeのレコメンド機能のアルゴリズムは明かされていないため、プラットフォーマー側がどのような仕組みでおすすめする動画を決めているかはわかりません。

 

ただ、研究成果としては“フィルターによって情報が過激化する傾向がある”ということは言えると思います

 

 

フィルターの機能によって、ユーザーは自分の興味関心に合った情報を受け取り、最適な商品やサービスを選ぶことができる。

 

一方で、自分の考えや価値観と異なる視点に触れる機会が減少し、偏った認識や言説を信じ込んでいく可能性がある。

同意見の人とばかり繋がるように。
「エコーチェンバー」とは

ネット・SNS上の偏った情報や過激な言説を信じ込んでいくと、偽・誤情報や陰謀論に触れたり、考えや価値観が偏ったりする可能性がある。異なる価値観との衝突から、他者との分断につながる恐れもある。

 

このようなプロセスを加速させる要因の一つに考えられているのが、「エコーチェンバー」という現象だ。

 

エコーチェンバーとは「同じ意見をもつ人々が集まり、自分たちの意見を強化し合うことで、多様な視点に触れることができなくなる現象」を指す。

 

笹原さんは「フィルターバブルと同様、どれだけ分断に影響しているかは定量的に明らかになっていません。あくまで原理的に起こりうるという話になりますが」と述べた上で、次のように話す。

※リディラバジャーナルについてもっと知りたい方はコチラ
リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
note
リディラバジャーナル編集部
noteのicon
【強迫症啓発週間】発達障害支援に欠けた「学校・家庭・福祉をつなぐ"あいだ"の存在」
2024年10月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「東大だと結婚が難しくなるから、慶應にしておけば」国際ガールズ・デーに読みたい、女子にかけられている呪い
2024年10月11日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
東京・埼玉で相次いだ闇バイトによる強盗。指示役に脅されていた若者も?
2024年10月4日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「選択的夫婦別姓制度」が総裁選の焦点に?日本の姓の歴史の背景をひもとく
2024年9月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
新しい認知症観とは?“常識”を捨て、認知症の人に「寄り添う」ことが、その人らしさの尊重に繋がる
2024年9月6日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「9月1日」を乗り越えた子どものその後は?SOSを聞き逃さず、切れ目のない支援を
2024年8月30日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
子どもは「安心して学校を休む権利」をもっている。夏休み明けの子どもの自殺防止に役立つチェックリストも
2024年8月23日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「食品ロス」が「日本の食料自給率」を救う?2つの社会課題を解決へ導く循環型システム
2024年8月9日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「パパは寝てる」Tシャツの裏で、男性の育休取得率は過去最高に。新旧の価値観がぶつかり合う転換期
2024年8月2日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
起業家が受ける不当な圧力・セクハラ。背景にあるものは?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年7月26日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「障害者が子どもを産むな」ひとつでもできないことがあれば子どもをもってはいけないのか?
2024年7月19日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
芸術祭なのに、米作りに雪かき?「大地の芸術祭」が挑む地域づくりとは
2024年7月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
「夏休みに特別な体験をさせられない」子どもの体験格差は、学ぶ意欲や将来の可能性にまで影響を及ぼす?
2024年7月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
メディアが作り出した? 生活保護費引き下げにつながった世論
2024年7月1日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
在日クルド人に対するSNSでのヘイトスピーチ。書き込みへの法的措置の意義とは?
2024年6月21日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
輪島・珠洲の断水解消も、水道は使えない。復興を左右するのは世間の関心の深さ
2024年5月31日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
少しずつ可視化されてきた「恋愛的にも性的にも惹かれない」人たち。アロマンティック・アセクシュアルとは?
2024年5月24日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
喜べない教員の給与増。残業が残業だと認められない給特法とは?
2024年5月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
勤務時間15分減で退職金ゼロ?非正規の人の労働条件を改善するための制度のはずが…
2024年5月14日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
性犯罪の被害者の約半数が子ども。わが子をグルーミングから守るには?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年5月7日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
動物の虐待摘発過去最多。「保護犬・保護猫」前進の裏で生まれる課題
2024年4月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
スクールカウンセラー約250人が雇い止め。子どもの心の健康を支える専門職なのに任期は1年?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2024年4月4日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
依存症の人に必要なのは「反省や刑罰」ではなく「治療と仲間」
2024年3月29日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「同性婚を認めないのは違憲」互いの違いを尊重できる成熟した社会へ
2024年3月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
能登半島地震、深刻なボランティア受け入れ態勢不足が課題
2024年3月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
×
CONTENTS
intro
偏向の先にある親子の分断
no.
1
no.
2
考えや価値観を偏らせるもの
no.
3
偏向する高齢者〜ネットが生み出す親子の分断〜
no.
4
あきらめきれない親子関係
no.
5
no.
6
ネット右翼化する高齢者
no.
7
偏向への対策の難しさ
no.
8