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      2024/12/10(火)
構造化特集
男たちの「#MeToo」
公開日: 2018/7/1(日)

【男たちの「#Metoo」】こぼれ落ちる性暴力被害

公開日: 2018/7/1(日)
構造化特集
男たちの「#MeToo」
公開日: 2018/7/1(日)

【男たちの「#Metoo」】こぼれ落ちる性暴力被害

公開日: 2018/7/1(日)
構造化特集 : 男たちの「#MeToo」
構造化の視点

社会的なムーブメントになった「#MeToo」。声を上げ

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社会的なムーブメントになった「#MeToo」。声を上げるのは女性であることが多いですが、男性のなかにも性被害者がいます。長らく不可視化されてきた男性の性被害者たちは何を語るのか。なぜ彼らは声を上げることができなかったのか。男性の性被害が社会問題化しない理由について、社会構造から考えます。


「魂の殺人」とも言われる性暴力。被害者は身体的に傷を負うだけでなく、精神的な傷も深く負います。

 

フラッシュバックやPTSD(心的外傷後ストレス障害)にさいなまされ、それを一生背負って生きていくことを余儀なくされるため、最悪な事態としては自殺に至ることも……。

 

「平成29年版 犯罪白書」によれば、2016年の性暴力犯罪の認知件数は、強姦が989件、強制わいせつが6188件。強姦は男女別に算出されていないものの、強制わいせつの被害は全体の97%を女性が占めています。

 

 

こうした数字が物語るように、性暴力が語られる際、被害件数の多さから女性被害者に注目が集まります。

 

2017年より世界を駆け巡っている「#MeToo」のムーブメントでも、性暴力被害を告発しているのは女性が中心。しかし、被害者は女性だけではありません。

 

今回の特集は【男たちの「#MeToo」 こぼれ落ちる性暴力被害】。

 

これまでスポットライトがあたることのなかった男性の性暴力被害にフォーカスをあて、被害の実態や被害者を取り巻く社会状況について考えます。

 

※本特集では、正確な実態をお伝えするために性暴力被害についての生々しいエピソードも含まれます。フラッシュバックやPTSD(心理外傷後ストレス障害)を懸念される方は、十分に注意しながらご覧ください。

女性以上に可視化されない男性被害

「中学生の頃、部活の顧問だった先生から肛門性交されていました。挿入されるのが、ものすごく痛かった。毎回もう涙が出そうなぐらい。本当に痛かったです」

 

そう話す男性(50代)は当時12歳。学校の先生から日常的に性暴力を受けていました。

 

加害者である先生は、何人もの非行少年を更生させたとして、地域の人たちからの信望はとても厚かったと言います。その先生には家族がおり、「子どもも3人くらいいた」と男性は話します。

 

 

これまでに600人近くの男性から性暴力被害の相談を受けているカウンセリングオフィスPomuの心理カウンセラー・山口修喜さんは、次のように話します。

 

「寄せられる男性からの被害相談は、およそ3歳から成人までの被害体験。その被害の実態は女性と相違があるわけではありません。8〜9割くらいは同じ傾向があります」

 

山口さんは「それでも男女の違いはいくつかある」として、男性の場合は性暴力を受けていることに対してより恥を感じやすいと話します。

 

「生々しい話ですが、自分の性器が勃起するといった形であからさまに興奮していることが見えてしまう。相手からも『勃起しているじゃないか』と言われれば、本人も混乱してしまいます。そうしたこともあって、男性は自らの被害を認識できないこともあるんです」

 

冒頭の男性も「圧倒的な力関係があって抵抗できなかったというのはありますが、正直なところ、被害に遭ったという認識はいまも薄いかもしれません」と話します。

 

 

こうした例に限らず、性暴力はただでさえ被害届が出されないケースが多く、認知されない事件は相当数に上ると言われています。

 

2016年だけでも強姦と強制わいせつは、合わせて7000件以上の被害が認知されているものの、実際にはその数倍もの人が被害を経験していると言われています。

 

さらに男性の場合、自らの被害性を認識しづらいことや被害に遭ったことに女性以上に恥じらいを感じてしまうことから、可視化されない男性の被害は女性以上になることも想定されます。

「社会問題」と認識されにくい男性被害

2017年7月、刑法の性犯罪規定が110年ぶりに改正され、強姦罪は強制性交等罪に名称が変わり、男性も被害の対象に含まれるようになりました。また、被害者の告訴がなくても加害者を起訴できるようになっています。

 

今回取材した男性の性暴力被害者や関係者が口を揃えるのは、法改正は大きな一歩ではあるものの、支援体制が追いついていないということ。

 

昨今、社会的なイシューとなっている性暴力ですが、刑法は改正されても、男性も性暴力の被害に遭うことの社会的認識が進んでいないのが現状です。

 

2018年5月から6月にかけてリディラバジャーナルで特集した「痴漢大国ニッポン」特集では、痴漢は「加害者=男性/被害者=女性」という構図が圧倒的に多いことから、「痴漢は男性の問題である」という論点が分散しないよう、あえて構図を限定しました。

 

 

しかし現実には、その構図は逆転したり、ともに同性であるケースも存在しています。

 

男性の性暴力被害もこうした構図と同様に、表出している数字が少ないがゆえに社会的に「問題」と認識されにくく、性暴力被害が語られる際にこぼれ落ちてしまっているのが実情です。

 

そこで、本特集ではこれまで社会的なイシューとして論点にされづらなかった男性の性暴力被害に着目。全7回の記事を通じ、男性の性暴力被害の構造を解き明かします。

 

 

第一章は【性暴力被害者の苦悩】

 

 

第一回【いじめからレイプに…男たちの「#MeToo」】では、ある男性が性暴力被害について告白。いじめから性暴力まで発展した経緯について語ります。

 

第二回【先生からの性暴力…男たちの「#MeToo」】では、中学校時代に性暴力被害に遭っていた男性にインタビュー。赤裸々な被害実態を聞きました。

 

第二章は【誤解される被害実態】

 

 

第三回【認識できない被害…男たちの「#MeToo」】では、前回で性暴力被害について告白した男性の「その後」を描きます。

 

第四回【加害者には女性も…男たちの「#MeToo」】では、もう一人の男性被害者が、被害に遭わせた女性加害者や二次加害について打ち明けます。

 

第三章は【問われる社会の認識】

 

 

第五回【被害を訴える難しさ…男たちの「#MeToo」】では、男性被害者の話から、被害を訴える際の女性との相違やその難しさについて考えます。

 

第六回【社会の軽視と偏見…男たちの「#MeToo」】では、性暴力被害を受けた男性に対してどのように社会は向き合っているのかを解き明かします。

 

そして、第七回【リディラバ安部が考える男性の性暴力被害】では、リディラバジャーナル編集長の安部が、男性の性暴力被害者を取り巻く現況について考えるコラムをお届けします。

 

ーーー

 

刑法の改正からおよそ1年。その間に男性の性暴力被害を取り巻く状況が変化したとは言えず、調査データや情報すらほとんどないのが現状です。本特集を通じ、男性たちの「#MeToo」に少しでも思いを馳せていただけると幸いです。

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CONTENTS
intro
性暴力被害者の苦悩
no.
1
no.
2
誤解される被害実態
no.
3
no.
4
問われる社会の認識
no.
5
no.
6
安部コラム
no.
7