スマホを開けば、賭けは始められる—&mda
スマホを開けば、賭けは始められる——。ギャンブルのオンライン化が進んだ2020年代、依存は「より若く、より早く、より高額に」深刻化しやすくなった。なぜ本人も家族も気づけないまま、借金や生活崩壊まで加速してしまうのか。入口の広がり、歯止めの効きづらさ、発覚と支援の遅れ。2020年代に入りギャンブル依存がより陥りやすく、抜け出しにくくなっている構造を明らかにする。

スマホを開けば、賭けは始められる——。ギャンブルのオンライン化が進んだ2020年代、依存は「より若く、より早く、より高額に」深刻化しやすくなった。なぜ本人も家族も気づけないまま、借金や生活崩壊まで加速してしまうのか。入口の広がり、歯止めの効きづらさ、発覚と支援の遅れ。2020年代に入りギャンブル依存がより陥りやすく、抜け出しにくくなっている構造を明らかにする。
スマホを開けば、賭けは始められる——。ギャンブルのオンライン化が進んだ2020年代、依存は「より若く、より早く、より高額に」深刻化しやすくなった。なぜ本人も家族も気づけないまま、借金や生活崩壊まで加速してしまうのか。入口の広がり、歯止めの効きづらさ、発覚と支援の遅れ。2020年代に入りギャンブル依存がより陥りやすく、抜け出しにくくなっている構造を明らかにする。
※本記事には、借金、家庭内での金銭被害、希死念慮等に関する記述が含まれます。過去の辛い体験を想起し、心身に負担が生じる可能性があります。ご自身の状態に合わせて、無理のない範囲でお読みください。
リディラバジャーナル構造化特集「2020年代のギャンブル依存〜より早く、より若く、より深刻にハマる病〜」。
第2回となる本記事では、依存症に陥りやすい構造(1章)として、当事者家族へのインタビューをもとに2020年代のギャンブル依存の実態を見ていく。

「家族で過ごしているとき、私がスマホを見ていると、夫に注意されたこともあって。それくらい、夫がスマホを触っている姿を見かけることは少なかったんです。だからオンラインのギャンブルをやっているなんて——まして高額の借金があるなんて、考えもしませんでした」
当事者家族の由紀さん(仮名)は、当時の夫・慎一さん(仮名)についてこう振り返る(取材時点の2025年では離婚が成立している)。借金が発覚したのは取材時点から4年前、2021年のことだった。

イメージ画像(写真AC)
始まりは“嗜み”として好んでいた競馬だった。いつのまにか頻度が増え、PCやスマホでできるギャンブルに移行。それから家族に見えない中で借金が一気に膨らみ、生活を揺さぶっていく——。
当事者はどのような過程を辿って依存状態へ陥り、抜け出せなくなるのか。そばにいる家族はどのような困りごとを抱えるのか。本記事では、2020年代のオンラインギャンブルの実態——その「陥りやすさ」と「抜け出しにくさ」を、由紀さんの証言から描き出す。
入口は競馬、加速はスマホ。気づかれないままオンラインへ
由紀さんと慎一さんは現在ともに40代。慎一さんは実家の家族が競馬好きで、とはいえ「依存するほどではない」雰囲気の中で育ったという。大学生になって自分で競馬を始めた慎一さんも、当初は数百円賭ける程度だった。
「夫は大学の同期なんですが、当時から友達と一緒に競馬場へ行っていました。『競馬は大人の嗜みだ』と。私は賭けたことはありませんが、『競馬場でイベントをやっているから行こうよ』と誘われることはよくありました」
慎一さんは後に、依存のきっかけとして「仕事のストレス」と「場外馬券場の存在」を挙げていたという。
勤務先の近くに場外馬券場があり、地方競馬はほぼ毎日レースがある。仕事を少し早めに切り上げれば地方レースの馬券を買える——慎一さんはそう気づき、通うようになった。最初はストレス解消のつもりだったが、次第にのめり込んでいった。
由紀さんは、家計を管理していたにも関わらず、当時はまったく気づかなかったという。
「PCやスマホでも徐々にやるようになっていたと思うのですが、全然わかりませんでした。
むしろ家族みんなでいるとき、私が友達とLINEをしていると、夫は『家族といるときにもスマホなんて、ママ、スマホ依存なんじゃないの?』なんて笑っていたくらい。私の前でスマホを触っている姿は、ほとんど見なかったんです」
しかしその間、慎一さんはスポーツベッティングに手を出していた。サッカーや野球などスポーツの結果(勝敗や得点など)にお金を賭ける行為で、日本では違法ギャンブルに当たる。
だが慎一さんは当時、SNSで「登録すればキャッシュバック」といった投稿を目にし、「簡単に始められそうだ」と惹かれてしまった。
そして次に、オンラインカジノへ。慎一さんがハマったルーレットは二択でわかりやすく、結果もすぐに出る。そのぶん短い時間で何ゲームも賭けてしまい、借金も一気に増えた。
「借金を抱えていたと分かった後のことですが、オンラインカジノのプレイ画面を見せてもらったことがあります」と由紀さんは説明する。
「掛け金が100ドル単位なんです。パッと見は100円くらいの感覚に見える。それを分単位で何度も賭けるから、どんどん賭けて、すぐに数百万円使ってしまう。スマホ上だとお金を使っている感覚が薄いのもあるのでしょう。
そのとき見たサイトは私がアカウントを削除したんですが、オンラインカジノのサイトはいくつもあります。夫は8つのサイトを使い分けていました」
慎一さんがギャンブルをしている姿を、由紀さんが目にすることはほとんどなかった。それでも裏側では、借金が膨れ上がっていた。
由紀さんが最初に異変に気づいたのは、慎一さんが生活費用の口座のお金を使い始めたときだった。
「夫の給与が振り込まれる生活費用の口座からお金を引き出しに行ったら、ずっと記帳が終わらなかったんです。やっと終わって記帳されたものを見ると、1万円、3万円、5千円、1万円……と何行も続いていて、『これはなんだろう?』と。夫に聞いて、そこで初めてオンラインのギャンブルにお金を使っていることがわかりました」
大金の引き出しが発覚し、話し合いの場が持たれた。だがこのときは「生活費を使ってしまった」程度の問題として終わってしまったという。
慎一さんは「もうすぐボーナスが入るから大丈夫」「ストレスでギャンブルをしてしまった」と説明し、由紀さんも「さほど大きな額ではない」と納得してしまった。
「コロナ禍で家にこもりがちだったし、ちょっとストレスが溜まっていたのかなと。
ドラマみたいにギャンブルで全財産を使ってしまうのは、意志の弱い人がすることだと思っていました。『この人は私より賢いから大丈夫』と、信じることにしました。
むしろ私がパパを寂しくさせてしまったのもよくなかった、と反省して、家族で食事する時間を増やしたりもしました。本人も『もうしない』と言うので、その1回で終わりだろうと最初は片付けてしまったんです」
入口が多く、家族に見えないまま、短時間で高額化する——オンラインギャンブルはそうして進んでいった。
では、家族に露見し反省したことで、ギャンブルはやめられるのか——。本人の気持ちや決意だけではやめられないのが“依存症”だ。慎一さんはこの後、さらに抜け出せない状態となっていく。
発覚しても止まらない。数百万の家庭内窃盗と「死に場所を探す」までのメンタル不調
生活費口座の使い込みが発覚した際、由紀さんは慎一さんに「クレジットカードは使ってないよね?」と確認した。ところが慎一さんはその会話をきっかけに、「クレジットカードでもできる」ことに気づき、ショッピング枠でギャンブルにお金を使い始めてしまう。
クレジットカード、口座、キャッシング、消費者金融——。あっという間に借金は増えていった。後に分かったのは、キャッシングで200万円、クレジットカードは7枚で800万円の使用。さらに由紀さんが把握していなかった、慎一さんの勤務先の持ち株配当金口座も切り崩されていた。
「クレジットカード会社から『いつもと違う使い方をしている』と確認の連絡があって、それがきっかけで使い込みや借金が次々に発覚しました。夫に確認したら、数年前から消費者金融にまで借金があったこともわかったんです。
でも当時は、私が自分を責める気持ちのほうが強かった。『マンションとか、子どもの教育費とか、お金がかかってストレスだった』と言われて……。ちゃんとパパのお世話ができてなくてごめんねって。私も追い込まれてしまった。
気持ちの辛さもありましたが、現実的にお金が足りないので、私がパートで働く時間を増やし始めたんです」
しかし由紀さんの思いとは裏腹に、慎一さんのギャンブルと借金は止まらなかった。勤め先の会社カードにも手を出し、両親へ援助をお願いしながらも、督促状がいくつも届くようになる。
いよいよ、まずい——。そう感じた由紀さんは、慎一さんとともにギャンブル依存に詳しい医師のいるメンタルクリニックを受診し、弁護士に債務整理(借金を整理する手続き)も依頼した。
「病院ではギャンブル依存症の自助グループを勧められました。夫は仕事柄、医学の知識があったので『エビデンスはあるんですか?』と質問したのですが、『行ってみなければわからない』という旨の返答で、それで怒ってしまったんです。二度と行くか、と。
債務整理もお願いしていたのですが、手続きの最中にまた新たな借金をして規約違反になってしまって。借金は元通りです。
この頃、クローゼットに無造作に入れてあった私のブランド品が盗られていたり、子どものお年玉を貯めていた子ども名義の貯金から50万円も引き出されたりしていて。
私は怖くなって、ぬいぐるみのお腹に貴重品を入れて抱いて寝ていました。仕事に行くときには貴金属含め貴重品をすべて持って行っていた。職場の鍵のかからないロッカーの方が、安全と感じていたんです」
そして慎一さんは、次第に深刻なメンタル不調に陥っていく。
「夫は家にこもりがちになって、寝たきりのようになってしまいました。会社も休職して、歩く姿は高齢のおじいさんみたいで。
私が仕事から帰宅したとき、玄関に靴があるとホッとして、何か無くなったものはないかを確認して。夫が寝ていると安心しました。
この頃は、夫から『死ぬのにいい木がないか探しながら散歩したけど、このあたりは犬の散歩が多いからすぐに見つかっちゃいそうだからやめた』と言われたり、『寝室で首を吊ってみた』と首の傷を見せられたこともあり、生きた心地がしませんでした。
私も『またギャンブルをやってしまったと報告されたらどうしよう』と不安を抱えながら、毎日仕事から帰っていました」
ギャンブル依存症は自殺念慮とも深く関わる。独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの報告書(※1)によれば、当事者のうち「自殺念慮がある・あった」と回答した人は全体の70.7%にのぼる。
発覚しても抜け出しにくい、ギャンブル依存の困難。由紀さんの話からは、依存症が本人にとっても家族にとっても負担の大きいものであることが見えてくる。経済面だけでなく精神面への影響も大きく、家族の中だけで解決することは難しい。
「自分だけじゃない」の安堵と、それでも抜け出しづらい現実
あるとき、慎一さんはSNSでギャンブル等依存症啓発週間に行われるセミナーを見つけ、「自助グループは何に効くのかよくわからないけど、偉い先生が何を話すのか聞いてみたい」と言って自ら参加した。
参加して依存症当事者のメンバーとも話す中で、慎一さんは「自分だけじゃなかった」と安堵の表情を見せたという。
由紀さんも、慎一さんから家族のための自助グループのチラシをもらって行くようになった。ホッとしたのは、由紀さんも同じだった。
「子どもがいるから、辛くても家で泣けなかったんです。だから外で泣いてから帰っていました。でも自助グループに行ったら、同じ状況の方がいっぱいいて。みんな明るくて驚きました。
『うち借金がすごくあって、マンション売ることが決まってるんです』って言ったら、普通は引いちゃうじゃないですか。かわいそうとか言われる。でもそれがなかった。『借金はいくら?』『ギャンブルの種類は?』って、みんな冷静で。いままで親にしか話せなかったことを、初対面の方たちに泣きながら話していました。
ただ話を聞くうちに、家族としてやっちゃダメなことを私は全部やっていたな、とも気づきました。お金の管理を代わりにしてはいけないとか、べったり支えるようになってはいけないとか。
私たち夫婦は共依存状態になっていたんですよね。大人なのに、それぞれがひとりで立てていないことを指摘されてハッとしました」
自助グループに通い始めてから、慎一さんも次第に元気になっていったと由紀さんは振り返る。「自分だけじゃない」とわかったことに加えて、自分の役割を見つけたことも大きかったという。
「当時は2022年で、新型コロナウイルスの給付金で約4,000万円が誤送金され、オンラインカジノに使ってしまった人のニュースが出た直後でした。世の中が『オンラインカジノって何?』と注目し始めたタイミングだった。
そこで夫は『オレ、説明できますよ』と。仕事で培ったスキルも活きたのでしょう。オンラインカジノについての資料をつくり、自助グループのメンバーとして説明会もがんばっていました」
夫婦で自助グループに通い、由紀さんも家族としてどう関わるかの気づきを得た。そして、二度目の債務整理のためマンションを売り、家族は前向きに動き出した——はずだった。
慎一さんは、それでも依存症から抜け出せなかった。再びスマホでギャンブルを始め、由紀さんのクレジットカード情報や口座情報も、隙を見て盗まれていた。
「口座への不正アクセス通知が何度も私のスマホに来て、最初は『何だろう』と。マンションを売って900万円ほど入ってきた口座があったんですが、夫はそこからお金を下ろして使おうとしていました。
闇金への支払い期限日だったようです。仕事中に夫に何度も電話をかけて、やめるように伝えようとしました。でも電話がつながったのは、その日が返済期限だった40万円の引き出しが済んだ後でした。
もう怖くて、一緒に生活できないと思いました。家族会の方と支援団体の代表の方、回復した当事者の方に間に入ってもらって、『一旦家から出て欲しい。後日、今後のことを話し合おう』と伝えてもらいました。
そして、再度設けられた話し合いの場で『これから死にます』と言う夫に、代表の方が『死のうと思ってるなら一度入院してみよう』と説得し、夫は入院することになりました」
周囲の支援により入院した慎一さん。しかし約半年後、退院に向けてスマホを使えるようになった後、病院内で再度オンラインカジノに手を出し、会社のカードを使い込んでしまう。
その後、当事者支援部の助けがあり、病院からスマホを持ち込めない回復施設に身を移すことになる。
ところが約半年後、由紀さんのもとに回復施設から連絡が届く。
「慎一さんが逃げました」
本人から一度だけ由紀さんに電話があったが、慎一さんは無銭飲食で警察に保護される。由紀さんが迎えに行けない旨を伝えると、慎一さんは実家に引き取られた。それから4ヶ月後、離婚が成立する。
「そこからは弁護士を介しての連絡なので、詳細はもうわかりません。ただ、離婚から1ヶ月後、義両親のクレジットカードを200万円分使い込んで、実家からも逃げたと聞きました。
その後、生活保護を受けているという話も聞きましたが、いまどうしているのか、どこにいるのかはもうわかりません。本当にオンラインカジノで身を壊してしまったんだ、と思いました」
医療機関や支援団体につながり、依存から抜け出していく人はいる。一方で、慎一さんのようにつながってもなお深刻な状態に陥ってしまう場合もある。
ここまで由紀さん・慎一さんのエピソードを通じて、2020年代のギャンブル依存の実態を見てきた。

慎一さんが依存状態に陥った背景からは、オンラインギャンブルの裾野の広がりや、誘いの増加など、第1回で触れた「依存に陥りやすい構造」も改めて見えた。
次回は、今回明らかになった実態を踏まえ、ギャンブル依存から「抜け出しにくい構造」を明らかにする。
※1 独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター「令和5年度 ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査 報告書」
※2026年3月6日:本文中で使用している画像がイメージ画像である旨を追記し、掲載画像を一部調整しました。

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル
続きをみる毎年5月14日〜20日は、ギャンブル等依存症や関連して生じるさまざまな問題について理解をし、予防などへつなげることを目指す、「ギャンブル等依存症問題啓発週間」。この期間、リディラバジャーナルで特集している「2020年代のギャンブル依存」(全6回)の記事を無料公開いたします。
2020年代のギャンブル依存のキーワードは、キーワードは「より若く、より早く、より高額に」。本特集では、「だらしない」といった偏見や誤解の多いギャンブル依存の「陥りやすい構造」、「抜け出しにくい構造」、「予防・回復の仕組構築の難しさ」の3つの視点から整理しています。
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