• 新しいお知らせ
    ×
いまこそ学び直し!あべとしきと考える社会問題の構造20
2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大により、すべての人が、ひとつの社会問題の「当事者」となりました。不安に溢れる今だからこそ、困難な状況にある人たちへの想像力をもち、社会全体で「やさしい関心のセーフティネット」が築けたら――そんな思いで、私たちリディラバは、4月5日から毎日毎晩、社会問題に関するオンライン勉強会「リディズバ」をスタートしました。 熱量あふれる勉強会のようすを、記事と動画でお届けします。
公開日: 2020/5/5(火)

ベンチャー界のゴッドマザーに聞く、有事におけるリーダーシップ

公開日: 2020/5/5(火)
公開日: 2020/5/5(火)

ベンチャー界のゴッドマザーに聞く、有事におけるリーダーシップ

公開日: 2020/5/5(火)

新型コロナウイルスの感染拡大により、すべての国、自治体、企業のリーダーたちが先行きの見えない中での意思決定を迫られ、その決断に世間の注目が集まっています。


また、こうした有事にこそ、社会的に弱い立場に立たされている方々を助けるはずのソーシャルセクターが、当事者を助けるための(経済的・組織的な)体力が足らず、本当は困っている人たちに対してサポートをしなければならないのに自分たちが苦境に陥っている、という状況もあります。


そこで今回は「ベンチャー界のゴッドマザー」として知られ、多くの企業のリーダーシップ育成に尽力されている岡島悦子さんにお話を伺い、有事におけるリーダーシップの在り方を考えていきます。

 

<岡島悦子(おかじまえつこ)>
経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。 「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。 成長ステージに合致した経営チーム組成のための「経営チーム診断/強化コンサルティングサービス」を提供。経営課題に合わせ「次世代経営者抜擢(苗代プログラム)」「外部招聘」「経営チーム合宿」等の支援サービスを提供。経営者やファンド等の株主から「経営×人」領域のディスカッション・パートナーとして高く評価されている。三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002年、グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画、2005年より代表取締役。2007年、プロノバ設立、代表取締役就任。 株式会社丸井グループ 、ランサーズ株式会社、株式会社セプテーニ・ホールディングス、 株式会社ユーグレナ、株式会社マネーフォワード等、多数の社外取締役やアドバイザーを歴任。

 

 

※上記ダイジェスト動画・本記事は、リディラバ主催のオンライン勉強会「リディズバ」第22回(2020/4/26開催)を要約・編集したものです。

動画全編は記事末尾にあります。リディラバジャーナル有料会員の方、もしくは有料会員の方によるシェアURLから記事をご覧いただいている方は、ご視聴いただくことができます。新規ご登録はこちら

(非会員の方でも、シェアURLから1週間無料で該当記事を読むことができます)

非常事態になる前に、「決め方を決めておく」

 あべ  岡島さんが社外取締役を務められている丸井グループが、臨時休業中のテナント家賃と共益費を全額免除という、素晴らしい施策を出していましたね。※

 

 岡島  そうですね。その他にも色々な施策を出していて、取引先の方々にとっては良い施策になるんじゃないかなと思います。

 

丸井グループはこうした有事になる以前から、「共創経営」という言葉を掲げてきました。将来世代のためにインクルーシブな(あらゆる人が孤立したり排除されたりしない)世界をつくっていきましょうという中で、お取引先の方々とサステナブルな関係性を強化していく。

 

なので今回も、このコロナをなんとか生き延びて、そのあとまた一緒にやっていきましょうということですね。


もともとの方向性が決まっているので、こういう意思決定が速くできる。もちろん財務基盤がしっかりしているというのはあるんですけれども。

 

 あべ  経営陣からすれば、自分たちの売上利益を手放す、経営的にはマイナスな意思決定ですよね。

 

 岡島  有事になってから決め方を急に決めるとか、ほとんど無理だと思います。


そうではなく、日頃どんな戦略をもっていて、どんな財務体質なのか、みたいなことがとても重要です。結局この有事には、多数決でみんな集まってものごとをゆっくり議論することはできないので、そういう意味では「決め方を決めておく」ということが重要なんです。

 

※丸井グループは、2020年4月22日、新型コロナウイルスを乗り越えるためのパートナーシップ強化について発表。テナント各社に対し、休業期間中の家賃および共益費を全額免除する等の施策を打ち出した。

有事に必要なのは「現場と生の情報でつながっている」こと

 あべ  コロナ対応におけるリーダーシップという観点で、あの人良かったな、ここが素晴らしかったな、と注目している人がいたら教えてください。

 

 岡島  素晴らしいなと思うのは、福岡市長の高島(宗一郎)さん。


ラム・チャランという学者が「難局においてリーダーに絶対必要な6つの資質」を提唱しているのですが、そのうちのひとつが「現場と生の情報でつながっている」こと。


高島さんの場合だと、保健所の情報が常にアップロードされてきていて、それをTwitterなりYoutubeなり、SNSで開示する。

 

いま感染者の状況がこうで……ということを、かなり生のままのデータで憶測ではなく言っているので、やっぱりリアルだと思うし、みんながいまテレワークだったりする中で、トップの人たちが生の情報を持っていないと、現場は「あのリーダーは、キレイゴトばっかり言ってるよな」って話になるじゃないですか。

 

 あべ  福岡市の場合、100万人という規模の都市であれだけデータをきちっと引っ張り上げてくるような、組織とかカルチャーをつくれていたということが大きいですよね。

 

 岡島  自治体だけじゃなくて民間のセクターもそうなんですけど、テレワークになって顕著になってくるのは、みんな忖度もできなくなってきたし、オンライン会議をやっていると、わりとズバッと言わないと伝わらないですよね。ある意味、言語化能力がすごく問われる。


ただ、後だしジャンケンみたいな議論はあまり良くなくて。平時にやっていなかった人たちに対して、いまあなたたち平時にやってなかったから困ってるんでしょ、みたいなことを言っても課題解決にはならない。


そういう意味では今回がチャンスで、いわゆるデジタルトランスフォーメーションみたいなこと、本当だったら2025年ぐらいまで起こらなかっただろう変化が、グッと前倒しになったことをチャンスだと思って、やっていかないと、という気はしますね。

仕事、家族、幸せ。私たちの「価値観」が問われている

 あべ  このコロナの後の社会は、どうなっていくと思いますか。

 

 岡島  今後は、抜本的な産業構造の変化が起こると思っていて、今まであった業界の種類や職種みたいなものが壊れて、組み直されるんじゃないかと思うんですよね。


労働市場の再配分は、もっともっと起こってくると思う。副業もあるだろうし、もしかしたら「家族」というもの自体も、変化していくかもしれない。


唯一言えるのは、これから働く期間が20代から80代までと伸びていく中で、いつでもどこでも稼げる力、しかもそれが常に変化している、そういう力を持っていることが重要なんですよね。


個人の専門性、強み、わたしが「タグ」って言ってるものなんですけど、そんなに大それたものじゃなくて、あべさんだったら「社会問題」で「マグロ船で働いてた」、「いつも同じ赤いTシャツ着てる」みたいな「タグ」があって、仕事に呼ばれる。


「想起される自分になれるか」ということがすごく重要。

 

 あべ  そうですね。労働市場がガラガラポン!になると、企業側は正規雇用をしなくなっていって、何か危機があった時に、すぐ人を切りやすいように非正規雇用に切り替えていく、ということがあるかもしれない。


極端に言えば、社会保障をベーシックインカムみたいな形に近づけていって、本当に一部の生産性の高い人だけが働いて、その人たちが稼いだものを再配分していくというパターンもあり得るなと思っているんですけど。


それから、「民主主義ってなんだっけ」という問いですよね。市場原理にだけ従って働いてきたら、いきなり個人の努力ではどうにもならないような危機にさらされて、自分が、市場原理とは関係ない部分での社会参画をしてこなかった、ということに初めて気づく。

 

 岡島  「働くってなんだっけ」と「民主主義ってなんだっけ」という2つの論点は、密接に関わっていると思っていて、抽象的でふわっとしているんですけど、結局は「自分にとっての幸せってなんだっけ」ということに尽きるんだろうと思います。


コロナをきっかけに家族と過ごす時間が増えた人たちも多く、人間関係を見直したりとか、ここで、個々人が自分にとってのウェルビーイングを見直す中での、「働くってなんだっけ」。

 

 あべ  これまでは一緒に暮らす家族と価値観が合ってなくてもまぁいいやというのがあったと思うんですよね。ただ、今回それが大事だよね、ということが急に表面化してきた。

 

 岡島  こうした機会に、家族としての価値観とか、個人としての「働く」・「生活する」ことの価値観をもう一回見直すといいと思いますね。


実は働いている場所はここじゃなくてもいいかなとか、自分はこういう暮らし方がいいなとか、もしかしたら週に3日しか働かないとかもあり得るよな、とか。いろんなオプションが増えてくる気がしますね。

 

(動画全編につづく)

 

リディラバジャーナル有料会員の方、もしくは有料会員の方によるシェアURLから記事をご覧いただいている方は、以下の動画全編をご視聴いただくことができます。 ※有料会員の新規ご登録はこちら。(非会員の方でも、シェアURLから1週間無料で該当記事を読むことができます)

 


【オンライン勉強会「リディズバ」第22回(2020/4/26開催)】

・テーマ:岡島悦子が贈る「社会課題」のススメ

・語り手:安部敏樹、ゲスト:岡島悦子さん

・時間:約91分間

 

▼動画全編▼

※リディラバジャーナルについてもっと知りたい方はコチラ
note
リディラバジャーナル編集部
noteのicon
『ネットで全て分かる』は本当? ――兵庫県知事選から見える情報収集の"偏り"を考える
2024年11月22日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
【強迫症啓発週間】発達障害支援に欠けた「学校・家庭・福祉をつなぐ"あいだ"の存在」
2024年10月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「東大だと結婚が難しくなるから、慶應にしておけば」国際ガールズ・デーに読みたい、女子にかけられている呪い
2024年10月11日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
東京・埼玉で相次いだ闇バイトによる強盗。指示役に脅されていた若者も?
2024年10月4日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「選択的夫婦別姓制度」が総裁選の焦点に?日本の姓の歴史の背景をひもとく
2024年9月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
新しい認知症観とは?“常識”を捨て、認知症の人に「寄り添う」ことが、その人らしさの尊重に繋がる
2024年9月6日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「9月1日」を乗り越えた子どものその後は?SOSを聞き逃さず、切れ目のない支援を
2024年8月30日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
子どもは「安心して学校を休む権利」をもっている。夏休み明けの子どもの自殺防止に役立つチェックリストも
2024年8月23日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「食品ロス」が「日本の食料自給率」を救う?2つの社会課題を解決へ導く循環型システム
2024年8月9日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「パパは寝てる」Tシャツの裏で、男性の育休取得率は過去最高に。新旧の価値観がぶつかり合う転換期
2024年8月2日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
起業家が受ける不当な圧力・セクハラ。背景にあるものは?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年7月26日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
「障害者が子どもを産むな」ひとつでもできないことがあれば子どもをもってはいけないのか?
2024年7月19日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
芸術祭なのに、米作りに雪かき?「大地の芸術祭」が挑む地域づくりとは
2024年7月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
「夏休みに特別な体験をさせられない」子どもの体験格差は、学ぶ意欲や将来の可能性にまで影響を及ぼす?
2024年7月8日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
メディアが作り出した? 生活保護費引き下げにつながった世論
2024年7月1日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
在日クルド人に対するSNSでのヘイトスピーチ。書き込みへの法的措置の意義とは?
2024年6月21日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
輪島・珠洲の断水解消も、水道は使えない。復興を左右するのは世間の関心の深さ
2024年5月31日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
少しずつ可視化されてきた「恋愛的にも性的にも惹かれない」人たち。アロマンティック・アセクシュアルとは?
2024年5月24日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
喜べない教員の給与増。残業が残業だと認められない給特法とは?
2024年5月17日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ!リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
勤務時間15分減で退職金ゼロ?非正規の人の労働条件を改善するための制度のはずが…
2024年5月14日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
性犯罪の被害者の約半数が子ども。わが子をグルーミングから守るには?【ニュースに潜む社会課題をキャッチ!】
2024年5月7日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
動物の虐待摘発過去最多。「保護犬・保護猫」前進の裏で生まれる課題
2024年4月12日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
スクールカウンセラー約250人が雇い止め。子どもの心の健康を支える専門職なのに任期は1年?【ニュースから読み取る社会課題!リディラバジャーナル】
2024年4月4日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず。

続きをみる
依存症の人に必要なのは「反省や刑罰」ではなく「治療と仲間」
2024年3月29日

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

日々流れてくるさまざまなニュース。一見、局所的で自分とはかかわりのないように見えるニュースも、その出来事をとりまく社会課題を知ると、見え方が大きく変わってくるはず

続きをみる
「同性婚を認めないのは違憲」互いの違いを尊重できる成熟した社会へ
2024年3月18日

ニュースに潜む社会課題をキャッチ! リディラバジャーナル

みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルです。

続きをみる
×
CONTENTS
intro
いまこそ学び直し!あべとしきと考える社会問題の構造20
no.
1
no.
2
no.
3
no.
4
no.
5
no.
6
no.
7
no.
8
no.
9
no.
10
no.
11
no.
12
no.
13
no.
14
no.
15
no.
16
no.
17
no.
18
no.
19
no.
20