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いまこそ学び直し!あべとしきと考える社会問題の構造20
2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大により、すべての人が、ひとつの社会問題の「当事者」となりました。不安に溢れる今だからこそ、困難な状況にある人たちへの想像力をもち、社会全体で「やさしい関心のセーフティネット」が築けたら――そんな思いで、私たちリディラバは、4月5日から毎日毎晩、社会問題に関するオンライン勉強会「リディズバ」をスタートしました。 熱量あふれる勉強会のようすを、記事と動画でお届けします。
公開日: 2020/8/5(水)

日本最大の通信制高校・N高から学ぶ、いま考えるべきオンライン教育

公開日: 2020/8/5(水)
公開日: 2020/8/5(水)

日本最大の通信制高校・N高から学ぶ、いま考えるべきオンライン教育

公開日: 2020/8/5(水)

 あべ  コロナショックをきっかけに、多くの学校がオンライン授業への完全移行やカリキュラムの組み直し、試験の実施形態の変更など、いままでの教育システムを抜本的に変えていく必要に迫られています。

 

今回は、N高等学校に立ち上げから携わる角川ドワンゴ学園の園さんに、現在の日本の中学・高校が抱える問題点やその中でN高が果たしてきた役割、オンライン教育の未来について伺います。

 

<園利一郎(そのりいちろう)>
早稲田大学卒。広告会社勤務を経て、2010年よりドワンゴで動画共有サイトniconicoやニコニコ超会議の宣伝広報。2015年より同社教育事業本部および学校法人角川ドワンゴ学園においてN高等学校の立ち上げに参加。省庁や自治体と連携した教育拠点づくりや、中高生を対象としたワークショップ、キャリア学習、プロジェクト学習を通した能力開発プログラムの開発に取り組む。

 

 

※上記ダイジェスト動画・本記事は、リディラバ主催のオンライン勉強会「リディズバ」第26回(2020/4/30開催)を要約・編集したものです。

※動画全編は記事末尾にあります。リディラバジャーナル有料会員の方、もしくは有料会員の方によるシェアURLから記事をご覧いただいている方は、ご視聴いただくことができます。新規ご登録はこちら

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生徒たちを苦しめる「選択肢のなさ」

 あべ  そもそもN高の立ち上げの際に何を目指していたのか、教えてもらって良いですか。

 

   ネトゲ廃人とかギークと呼ばれる人たちが生きていけるような会社をつくろう、というコンセプトがドワンゴ立ち上げ当初はあったと聞いています。社会も変わり、いまとなってはエンジニアは花形の職業だし、プログラミングができることは高い価値のあるスキルの一つになっています。

 

N高も似ていると思います。通信制高校というと、今、良いイメージを持つ方は少ないかもしれません。でも、通学時間や場所に縛られなかったり、映像でさまざまな授業が受けられたりと良い面もあるので、そういった特長を活かしつつ、「通信制高校をつくる」というよりも「新しいネットの高校をつくる」というスタンスからスタートしています。

 

 あべ  社会問題の一つに、子どもの自殺がありますよね。自殺者はこの十数年、ほぼ全ての世代が右肩下がりなんですけど、10代だけは減らないんですよね。高校や中学でドロップアウトして不登校になった子どもの受け皿がないことも、その一つの要因として考えられます。

 

社会に戻るルートが複線化されていないので、ドロップアウトしたら基本的にはもう社会に戻ってこれません、というような話が多い。

 

新しい形態の学校をつくることは、そうした受け皿の一つになりえますよね。

オンライン教育が抱える残酷性

 あべ  オンラインになると、いろいろな選択肢が用意されていて、アクションさえすれば多くのことができる。だけど、逆に言えばアクションしないとその選択肢には届かない。これってインターネットの持つジレンマだなあと思うし、すごく残酷な世界ですよね。

 

今後、モチベーションの格差はどんどん開いていく。意欲がある人はたくさんのチャンスを手に入れ、意欲のない人との結果の差も大きくなっていく。

 

本来教育は格差を抑える方向に機能するものなんだけど、それをオンラインにしてしまうと、「教育」なのに格差が開いていかないかと。そこはどう思っていますか。

 

   個人的な意見になりますが、僕はそこは楽観的なんです。格差が生じても、その格差が放っておかれるかというと、そうではないんじゃないかなと。モチベーションを持つのが難しい人たちに対して、モチベーションを発見するようなサポートや、べつにモチベーションなんて高くなくても安心安全に生きていける社会接続の仕方などが、中期的には形成されていくと考えています。

 

そもそものところでは「格差と考えずに“多様性”と捉える」という視点もあると思います。格差は、ある特定の尺度に依って高低を評価をするものですよね。多様な尺度や価値観があるんだという前提をみんなが持てるようになればいいのかなと思います。

集まらなくても生徒に行動変容を起こすことはできるのか

 あべ  集まらない教育って、どうやったらいいんですかね。


僕らとしては、現場の価値を重視しています。現場に行くと、異様とも言える情熱と問題意識をもとに行動しているリーダーがいるんですよね。かつ、問題をリアリティを持って知ることができる。

 

そういう体験のなかで、当事者意識が喚起される。周りの人と議論することによってそこから新しいプロジェクトが創発されていくこともあります。

 

でも、いまは感染症が広がっていて、現場に集まりづらくなっている状況です。それでも、いままでの現場の価値をできるだけ残して、あるいはこれまで以上の付加価値をつけて提供していくためには、何ができるのかを考えたい。

 

   僕らもオンラインでのコミュニティ作りやZoomでの授業は数年前からやっているんですけど、リアルの強度はなかなか再現し難いというのが正直な実感ですね。

 

でも、おもしろい大人と会ったときに「この人おもしろい!」とわくわくするのは、対話していくなかで起きることなので、リアルだけではなくネット上でも実現できると思っています。

 

 あべ  ツアーの現場で何かに気づいた中高生の目の輝きって、素晴らしいと思うんです。自分の中に出てきた「気づいてしまった。俺がやらねばならない!」という主体性は、この時代において最も価値あるものだと思います。ほとんどの場合は良い意味での勘違いなんですけどね。

 

そういう主体性が高まる瞬間を、勘違いする余地がすごく少ないオンラインでどう作れば良いのか。

 

   たとえばリディラバさんがやられているようなスタディツアーだと、日常から離れ、親からも学校の友達からも離れて、社会課題の現場という普段とはかけ離れた価値体系まで移動するわけじゃないですか。だからガツンとくるし、思い込みの変化も生じる。

 

そういう価値体系の移動を、オンラインにいながらにして作るアプローチが必要なんじゃないかと思います。

 

 あべ  うちのスタディツアーでなぜあんなに勘違いをしてくれる人が多かったかというと、その場所にアクセスすることに対するエクスクルーシブさ(特別感)があるから。親も先生も社会問題の現場にアクセスしない中、僕はアクセスしちゃったよ、という部分が勘違いさせるんだと思うんですよね。

 

一方で、インターネットはみんなに対してフラットにアクセスさせるんですよ。この中でエクスクルーシブさをどうつくるのかがすごく大事だなと感じていて、そのために必要なことの一つはコミュニケーションだと思っています。

 

オンラインであったとしても、自分が質問したことで現地の人から普段は答えないであろうことを引き出せたな、と思ったとしたら、その瞬間にエクスクルーシブさが出てくるじゃないですか。ここに勘違いが起こる可能性はあるなと思っていて、そういう仕掛けをどうつくるかが重要なのかなと思っています。
 

(動画全編につづく)

 

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【オンライン勉強会「リディズバ」第26回(2020/4/30開催)】

・テーマ:あつまらない教育は日本の教育問題を解決するのか

・語り手:安部敏樹、ゲスト:園利一郎さん

・時間:約83分間

 

▼動画全編▼

 

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