医療崩壊はこうして起こる――コロナに揺れる医療現場のリアル | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
いまこそ学び直し!あべとしきと考える社会問題の構造20
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2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大により、すべての人が、ひとつの社会問題の「当事者」となりました。不安に溢れる今だからこそ、困難な状況にある人たちへの想像力をもち、社会全体で「やさしい関心のセーフティネット」が築けたら――そんな思いで、私たちリディラバは、4月5日から毎日毎晩、社会問題に関するオンライン勉強会「リディズバ」をスタートしました。 熱量あふれる勉強会のようすを、記事と動画でお届けします。
2020/5/5(火)
医療崩壊はこうして起こる――コロナに揺れる医療現場のリアル
2020/5/5(火)
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医療崩壊はこうして起こる――コロナに揺れる医療現場のリアル
2020/5/5(火)
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 あべ  いま、新型コロナウイルスの影響で「医療崩壊が起こる」と報じられているものの、実際「医療崩壊ってどんなふうに起こるの?」ということは、まだイメージできていないという人が多いのではないでしょうか。


それに、地域の病院がいまどういう状態なのかも、なかなか想像がつかないんじゃないか。今回は、まさに現場の最前線で医療に従事されている青木先生にお話を伺い、みなさんと医療現場の現状や課題について考えていきたいなと思っています。

 

<青木信也(あおきしんや)>
医療法人SHIODA塩田病院総合診療科・部長。2007年滋賀医科大学医学部卒業。地域で役に立つ医師を目指して初期研修から湘南鎌倉総合病院で過ごし、小児から高齢者までどんな主訴の人も診る北米型ER(救急救命)研修を積む。その間、鹿児島や沖縄の島々で離島研修も経験。2013年北海道松前町立松前病院で「総合診療医」として慢性期外来、病棟、訪問診療、終末期ケアなどに従事し、市立函館病院の要請で道南部のドクターヘリにも乗る。長崎県上五島病院で1年間の離島医療+オーストラリア、クィーンズランド州での3ヶ月のrural general practitioner研修を経て、現在にいたる。「地域での医学教育」「地域医療」を自分の軸にしている。

 

 

※上記ダイジェスト動画・本記事は、リディラバ主催のオンライン勉強会「リディズバ」第16回(4/21)を要約・編集したものです。

※動画全編は記事末尾にあります。リディラバジャーナル有料会員の方、もしくは有料会員の方によるシェアURLから記事をご覧いただいている方は、ご視聴いただくことができます。新規ご登録はこちら(非会員の方でも、シェアURLから1週間無料で該当記事を読むことができます)
※「リディズバ」前々日に青木医師に取材した記事「現場の医師が訴える「Stay Home」の背景にある医療崩壊の危機」も合わせてご覧ください。

感染防止と収入減……ジレンマの中での診療

 あべ  いま青木さんは千葉の病院に勤めていらっしゃいますけども、コロナの影響ってどのくらい出ているんですか?

 

 青木  コロナに感染した患者さんを診る……という直接的な影響はまだありませんが、間接的な影響はあります。特に私たちのような私立病院だと、外来の患者さんが減ったり、感染防止のため一度の外来で処方を長めに出したりしているんですけど、その点で医療収入は減っていますよね。

 

 あべ  これは日本の医療の非常に特徴的なところだなと思っていて。ある種、診療回数が売り上げと連動する形になっていますよね?

 

 青木  特にクリニックの先生をイメージしてもらえば良いと思うんですけど、1回受診すると再診料がいくら、というように保険点数で売り上げが決まります。ですので、患者さんが来れば来るほど再診料という点数が取れて、クリニックとしては経営が安定すると。

 

 あべ  その前提で今回のコロナの話が出てきたときに、ひとり感染した患者さんを受け入れたら院内感染が起きるかもしれない、そうすると外来患者さんの診察もできなくなるリスクがあると。

 

そういう意味でいうと、実は病院側は、感染の恐れがある患者さんの受け入れを非常に嫌がるんじゃないかなと思うんですけど。

 

 青木  そこでいまクリニックの先生たちは悩んでいると思います。患者さんの数自体が減る怖さもありますけど、スタッフや受付の方に感染の不安を抱えながら働かせるのもどうか、という点で悩まれていて。

 

熱のある患者さんはなるべく断りたいという本音もあると思います。一方で、そうした方々を診ないと医療収入はなくなる。また定期の外来患者さんも診たいけども、たくさん人が来てしまうと感染が広がってしまうかもしれない。本当にジレンマの中で診療されていると思います。

地域の病院が共倒れするリスクも

 あべ  病院が経営体である以上は、経営補償みたいなものがないと患者さんを受け入れるのは相当大変ですよね。

 

 青木  それこそ私たちのような私立病院は、行政からの補填というのはなかなか難しい。なので、できれば地域で役割分担をしたいですね。

 

たとえば公立・私立の病院がそれぞれ協力して「今回この患者さんはうち(私立病院)で診るけど、かわりに公的病院には少し負担していただいてコロナの患者さんをメインに受け入れてほしい」という形がとれるといいなと思っています。

 

特に私たちの病院が院内感染を起こしてしまうと、整形外科や脳卒中診療科などの機能も止まってしまう。私たちの他にもう一つ、地域で救急を担う公立病院があるんですが、それらの機能は有していないので、私たちが潰れるとそうした患者さんが軽症であっても三次病院(もっとも緊急性の高い重症患者を受け入れる病院)にいってしまう。これは医療崩壊につながる恐れがあります。

 

 あべ  もともと地域の医療が脆弱な状況にあって、その上で一度広がり始めるとなかなか止められない感染症が発生したと。これは院内感染のリスクがあると同時に、ひとつの病院で感染が広がると、ほかの地域の病院もドミノ倒しでバタバタと倒れていっちゃうということなんですね。

 

一方、都内では高度な機能を持つ大学病院などが、感染リスクの高さから救急を受け入れないようにしているという話を聞きました。こうした事態が続くと、どこに行っても救急を受け入れてもらえない厳しい状況になると思うんですが、その辺りはどうですか。

 

 青木  これはトップダウンで「ここは発熱患者を診る病院」といった役割分担を明示していかないと、本当に共倒れすると思うんですね。

 

もともとガンの治療に特化している病院や、先進的な医療を提供している病院は、その機能を残すために発熱患者は診ないとか。あるいは、発熱患者を診る病院にはそれなりのインセンティブを与えるなどの措置が必要だと思います。

私たちが医療現場をバックアップするには?

 あべ  感染症は地震などと違って、医師を派遣して医療現場をサポートしたりすることが難しいじゃないですか。移動させればさせるほど感染が広がってしまう。そういうなかで、どうすれば医療現場をバックアップできるのでしょうか。

 

 青木  人的な支援は難しいですね。今回のネックは、人が移動するとウイルスも移動するということなので。僕たちが絶対に感染していないという保証もない。だから、まずは患者の絶対数を増やさないでほしい。それが本音です。

 

 あべ  いまの緊急事態宣言やステイホームは理にかなっていると。

 

 青木  そうですね。もしいまロックダウンすると、本当にキツい状況になる方がたくさんいらっしゃると思います。私たちもそうです。

 

でも、みんなが一緒に足並みをそろえれば、我慢する期間は短くて済むんですよね。たとえば、ロックダウンするとしても一回では済まないと思うんです。

 

一度締めて、また緩めて……ということをたぶん1年間はやると思うんですけど、足並みがそろわないとこの状況はダラダラと長く続いてしまう。

 

医療者は急に増やせないですし、毎年入って来る医師の数も決まっています。そういう意味でも、患者さんの分母は増やしたくない。

 

 あべ  分母を増やさないためには、とにかくちゃんと家にいると。

 

 青木  私にも妻と子どもがいて、単身赴任なんですけどこれまでは毎週末ちゃんと帰っていました。でも、いまは帰れません。自分がウイルスを移しても困るので。ほかの医療従事者の方も家族を犠牲にして……といったら変ですけど、自分たちも仕事なので仕方ないと思ってやっています。

 

とにかくいまは、「三密」を避けてほしいんです。もし自分たちが取る行動で、間接的に自分の大切な人やお子さんが感染した場合、軽症に当たればいいんですけど、少なからず重症の側に入ってしまう可能性があります。

 

しかも私たちの感覚だと、その可能性は低くない。なので、自分が重症者側になってしまうこともある、ということは想像しておいてほしいです。

 

重症になると、最期、家族と手さえ握れないんですよね。会えないまま亡くなってしまう、それで本当にいいのかということを想像していただいて、いま一度みなさんには自分自身の行動を見直したり、周りの人たちに声をかけたりしてもらえたらなと思います。

 

(動画全編につづく)

 

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【オンライン勉強会「リディズバ」第17回(4/21開催)】

・テーマ:コロナに揺れる医療現場の現場を緊急レポート

・語り手:安部敏樹、ゲスト:青木信也さん

・時間:約65分間

 

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