若年妊娠:【若年妊娠】性と生殖の自己決定を歪める社会 | リディラバジャーナル
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【若年妊娠】性と生殖の自己決定を歪める社会
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構造化の視点
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意図しない妊娠の割合が高い10代の妊娠。10代の中絶だ

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意図しない妊娠の割合が高い10代の妊娠。10代の中絶だけでも1日あたり約40件、年間にして1万件以上行われています。本特集では、その背景に潜む性教育の課題や、避妊へのアクセスハードルの高さなどの社会の側の問題にフォーカス。性と生殖の自己決定を歪める社会の構造を考えます。

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年間1万4128件。

 

これは2017年度に、国内で10代の女性が行った人工妊娠中絶(以下、中絶)の件数だ。1日あたり約40件の中絶が行われている。

 

他方で、10代の母による出生数は9898人。

 

つまり、10代の女性が妊娠した場合には、出産よりも中絶を選択する割合が高い。

 


「平成29年人口動態統計」「平成29度衛生行政報告例の概況」をもとに編集部作成。

 

こうしたデータからは、10代の妊娠の場合は“意図しない妊娠”が多いことが示唆される。

若年妊娠は自己責任なのか

今回取り上げる特集テーマは「若年妊娠」。

 

中絶と出産、どちらを選択するにせよ、10代の妊娠は「妊娠したのは自己責任」「淫らなことをしている」と批判されたり、タブー視されたりすることが多い。

 

しかし本当に、若年妊娠は自己責任と言えるのだろうか。

 

大学生時代から全国700校以上の学校で性教育の講演を行っている産婦人科医の遠見才希子(えんみ・さきこ)さんはこう話す。

 

「セックスをすれば妊娠する可能性があることは常識だと思うかもしれません。ですが、安全日があるとか、中学生は妊娠しづらいとか、腟外射精をすれば大丈夫といった誤った情報から、妊娠しないと思ってしまうこともあります」

 

日本では、性教育が十分に行われておらず、ネット上には誤った情報が氾濫している。そうした情報をもとに「避妊したつもり」になっている人々もいる。

 

さらに日本では避妊法も限られている。

 

2018年に国際基督教大学を卒業した福田和子さんは、スウェーデンへの留学を機に、他の国では手に入る様々な避妊法や、避妊や性に関する信頼できる情報が日本にはないことに問題意識を抱いた。

 

帰国後、福田さんは性や避妊にまつわる日本にないものについて発信する、「#なんでないの」プロジェクトを立ち上げ、情報発信やアンケート調査を行なっている。

 

「#なんでないの」プロジェクトのホームページ。

 

本特集では若年妊娠を切り口に、こうした妊娠、中絶、出産をめぐる社会の認識や制度を問い直していく。
 

若年者が妊娠に至るまで、そして中絶、出産を行うにあたっては、さまざまな困難に直面する。

自己決定が難しい環境に置かれて

「とりわけ中高生の場合、学校と家庭が世界のすべてのように思えてしまいます。そこで認められないことは、自分の存在を認めてもらえる居場所がなくなってしまうことです。そうすると、性的に求められることを通じて、『自分は誰かに必要とされている』ことを実感したいと考えるようになります」

 

こう語るのは、性暴力をなくすべく啓発活動を行ってきたNPO法人しあわせなみだ(東京都)理事長の中野宏美さん。

 

中野さんは意図しない若年妊娠の背景には、社会的な孤立や自己肯定感の低さ、そうした状況に起因する性暴力などが隠れていることがあると指摘する。

 

しかしそうした事情にかかわらず、意図しない妊娠をした女性たちは突如として、中絶や出産という重い選択を迫られる。

 

未成年の場合、経済的に自立するのが難しく、心身ともに発達段階にあるがゆえに、妊娠後の選択は家族をはじめとする周囲の大人たちや、パートナーの意見や態度に大きく左右される。

 

たとえば、「高校を卒業して、進学あるいは就職してから結婚をする」というレールの通りに生きていくことを“正解”として、親が出産に反対することもある。周囲の環境や価値観によって、本人が望む選択をできないことがあるのだ。

 

また出産と中絶のいずれを選ぶにしても、その負担は当事者の女性たちに押し付けられていると言わざるを得ないのが現状だ。

 

前出の遠見さんは、日本の中絶方法を例に挙げ、そうした現状について警鐘を鳴らす。

 

 

「日本では中絶の際に掻爬(そうは)という手術が行われることがあります。これは世界的に時代遅れで行うべきではないとされています。どうしてそんな状況なのかと調べていて感じたのは、その根底に既得権益や男尊女卑の問題があるのではないかということです」

 

こうした妊娠、中絶、出産の現場から見えてくる社会課題を9回にわたって明らかにしていく。

 

政府が少子化対策や女性活躍を掲げるなかで、社会は若年妊娠をどう受け止め、どう支援していくべきか――。読者のみなさんにも考えてもらいたい。

 

 

第1章 避妊

 

(Shutterstock)

 

第1回【「知らないうちに生徒を傷つけていた…」学校現場の性教育を考える】では、学校現場における性教育への批判や、性教育のあり方について考える。

 

第2回【「なんでないの?」限られた避妊へのアクセス】では、諸外国と比較して、避妊のための情報やサービスにアクセスしづらい日本の現状を再考する。

 

第3回【意図しない妊娠の背景に潜む孤独】では、家族関係の歪みや、学校での孤立、性暴力など意図しない若年妊娠の背景にある問題に迫る。

 

第4回【「日本の女性は守られていない」世界から遅れた緊急避妊薬の現状】では、避妊の失敗や性暴力などによる意図しない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」をめぐる議論から、女性の自己決定権や健康を守る権利について考える。

 

第2章 中絶

 

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第5回【1日あたり450件。中絶という選択の実態】では、中絶を選択する理由やその背景にある社会的な要因をみていく。「自己責任」とは言えない中絶の実態とは。

 

第6回【「医療は人を罰するものではない」産婦人科医が語る日本の中絶現場】では、世界から遅れた日本の中絶の現状と、その背景にある医療現場の課題に焦点を当てる。

 

第3章 出産

 

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第7回【「若いからダメな母親と決めつけないでほしい」10代で出産した母が伝えたいこと】では、17歳で妊娠した女性が感じた若年妊娠に対する社会の視線について語ってもらった。

 

第8回【いかに妊婦の自己決定を支援するか】では、周囲の意見に左右されやすい環境において、いかに若年妊婦の支援をしていくのか考える。

 

最終回【編集長安部が考える「若年妊娠」】では、編集長安部が若年妊娠を取り巻く社会の課題について綴る。

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