手を出さずにはいられない――痴漢と万引きに見る、依存症の構造 | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
いまこそ学び直し!あべとしきと考える社会問題の構造20
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2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大により、すべての人が、ひとつの社会問題の「当事者」となりました。不安に溢れる今だからこそ、困難な状況にある人たちへの想像力をもち、社会全体で「やさしい関心のセーフティネット」が築けたら――そんな思いで、私たちリディラバは、4月5日から毎日毎晩、社会問題に関するオンライン勉強会「リディズバ」をスタートしました。 熱量あふれる勉強会のようすを、記事と動画でお届けします。
2020/5/11(月)
手を出さずにはいられない――痴漢と万引きに見る、依存症の構造
2020/5/11(月)
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手を出さずにはいられない――痴漢と万引きに見る、依存症の構造
2020/5/11(月)
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いま、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で、自宅で過ごす方のアルコール依存やゲーム依存などが懸念されています。

 

世の中には、さまざまなモノ・コトにまつわる「依存症」が存在しています。それらはなぜ「依存症」と呼ばれるほどに深刻化してしまうのでしょうか。

 

今回は、常習的な痴漢行為・万引き行為を題材として、語り手・安部敏樹(あべとしき)とともに依存症の構造に迫っていきたいと思います。

 

 

※上記ダイジェスト動画・本記事は、リディラバ主催のオンライン勉強会「リディズバ」第11回(4/15開催)を要約・編集したものです。

※動画全編は記事末尾にあります。リディラバジャーナル有料会員の方、もしくは有料会員の方によるシェアURLから記事をご覧いただいている方は、ご視聴いただくことができます。新規ご登録はこちら

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依存症の背後には「認知の歪み」が存在している

まずは「痴漢」の例を見ていきましょう。痴漢という犯罪においては、加害者が最初に捕まるまで7〜8年かかる、といったデータがあります。


痴漢をやってしまう人たちは、逮捕されて初めて、あれ?俺って悪いことしてたの?ってなることが多いんです。明確に、これが犯罪であって、女性からNOと言われている行為である、と自覚するのは逮捕がきっかけになってくる。


つまり、加害者の中に「認知の歪み」があるんですね。痴漢をして女性の体に触ったとき、相手が声をあげないと、あれ、この女性は大きな声を出して暴れなかったぞ、つまり、認めてくれているんだ、という認知をしてしまうんです。


えーっ、そんなわけないだろ、って話なんですけど、驚くべきことに、加害者の中ではそういう認知になってしまっている現実があります。

 

痴漢を、女性に対するコミュニケーションの一環であると思っている人もいるので、自分は大丈夫、受け入れられている、そう思うことで、さらに認知の歪みが加速していく。


そうすると、逮捕されるまではこれが犯罪であると認知しないので、加害者ひとりに対して、多いときには被害者が数万人にまで膨れあがってしまう。逆に言うと、この加害者の人たちに焦点を当てないと、どれだけ被害者を守ろうと思っても解決しないんです。

構造を整理すると見えてくる、2つの課題

ここでの大きな問題は、こうした加害者の人たちが逮捕された後に、適切な治療にアクセスできていないことなんです。依存症は治療しないと乗り越えられません。たとえどんなに厳しく処罰しても、治療されないかぎりはまたやってしまう人もいます。

 

ただ、必ずしもそうした専門的な治療ができる人は多くなくて、そもそも治療できる環境が整っていないんですね。


そしてもうひとつ、そもそも、犯罪者に対する治療ってなんなんだって話があるんです。


被害者感情に寄り添う考えからすると、なぜ加害した人たちを、わざわざ税金で治療してあげなきゃいけないのか、という見方になる。

 

僕は、治療は絶対にした方がいいと思います。これまで取材した加害者の中で、30年かけて約3万人に痴漢をしてしまった人がいたのですが、彼が最初の10年で逮捕されて、治療されていれば、約2万人の被害者が救われたわけです。(「痴漢し続けて30年…元加害者の告白」


刑務所に入ったら、処罰することと同時に、治療することで再犯を防ぐプロセスを制度化した方がいいなと思っています。

 

もうひとつの大きな課題が、社会の側の認知の問題です。

 

たとえば、スカートの短い女性が、お母さんとかから「あなたそんな格好して痴漢に遭うわよ」と言われたりするじゃないですか。その話って、まるで痴漢を受けた側が悪いかのような論法になっちゃっているんです。


社会の認識として、そんな派手な服着てるやつが悪いって話になっちゃうと、被害者側も「わたしが悪かったのね」と自分を責めて、告発をしなくなる。そうすると、痴漢の実態が可視化されないので、加害者が見つかるまでの時間が遅くなるんですよね。

 

そうすると、どんどん被害者の数が増えてしまう。社会的な蔑視というか軽視というかね、痴漢された側が悪いという考え方が、結局、問題を拡大させてしまっている側面がすごくあるんですよ。

 

この「痴漢」のように、加害者の再犯率が高くて、見えない暗数も多くて、被害者と加害者の非対称性が高い(加害者ひとりに対して、被害者が大勢出てくる)問題は、シンプルに、加害者の常習化をどう止めるか、それを治療でどうやるかを考えるべきなんです。ただ、その認識が広がらないから、なかなか解決しにくい。

「くりかえす加害者」を、どう食い止めるか

クレプトマニアという言葉を知っていますか。これは、万引き等を繰り返してしまう「窃盗症」を指します。

 

万引きしてしまう人って、お金がないのかなって思いがちなんですが、世帯としては裕福な人もいるんです。

 

以前、窃盗症の女性に取材をしたときは驚きました。その方は、万引きをやめられずに何度も捕まり、子どもを連れて国外に逃亡、そして3年半におよぶ逃亡生活の末、日本に強制送還されて1年3ヶ月の刑務所生活を送りました。(「盗む行為にとりつかれたようだった」窃盗症当事者の告白

 

そこまでするなら、万引きやめたらいいのにって思う方も多いでしょう。でも、認知が歪んでいるからそうなってしまう。どうしてもやめられないんです。

 

痴漢にしろ万引きにしろ、依存症の方は、家族関係のストレスなどが心の中にあって、それを何らかの形で解消したい気持ちがあります。


いずれにしても、出口がないんです。認知の歪みがあるから治療機関にはアクセスしづらいですし、逮捕されて拘置所に行っても、まずは加害者を処罰することが根本にあるので、治療にはなかなかつながりづらい現状があります。

 

被害者の方が、加害者を罰したいと思う気持ちは、もちろんあると思うんですよ。ただ、加害者を罰してもまたやるんですよね。


そう考えたら、加害者を治療した方が社会にとってメリットがある。つまり、次の被害者を出さないということですよね。そういう視点から考えていくと、何をすべきか冷静に考える役割を、第三者が担っていくべきだと思います。

 

以前、リディラバジャーナルで「元・痴漢加害者の告白」という記事を出しました。加害者の方が、実はまったく別の文脈で、自分も被害者であると言っていたんですよ。学校内で性被害を受けたと。


過去の性被害が原因で、別の人に対して加害行為を繰り返しているとは言い切れない。それは必ずしも科学的に言える話ではないですから。


けれど事実として、加害者は、過去に被害者でもあった。社会のひずみが誰かに寄せられたら、また別の人に行く。そういう話は、よく見てきました。

 

加害者がダメだと言うのは簡単なんだけれども、加害者の中にある被害者性にしっかり目を向けてみると、問題解決の手がかりになり得る。


新たな被害者を出さないために、どう再犯させずに留めるか。そこに焦点を絞っていきたいところです。
 

(動画全編につづく)

 

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【オンライン勉強会「リディズバ」第11回(4/15開催)】

・テーマ:「60分でゼロからわかる!」依存症の構造

・語り手:安部敏樹

・時間:約72分間

 

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